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第二十五章
第百五話:苦しみの向こう(1)
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二週間ぶりの更新で申し訳ありません。
色々とありまして…><
◆一つ目:ガイウス皇帝陛下
◆二つ目:瀬里奈
********************************************
◆
レイアの計画が進行して今日で一週間。
「儂もプール入りたかったな…」
毎日送られてくる報告書。決して第三者に読まれてはならない重要な内容だ。それ故に、非常に高度な暗号化が施されている。今日も手紙に書かれているのは一言だけ『モッモキュー』…いや、本当にこれだけ。
『なるほどなるほど。今、翻訳致しますね。読み終えたら焼却をお願い致します』とエリスと名前の書かれた服をきた蟲がプレートを掲げた。可愛い蟲じゃの~。毎日、クッキーやらを焼いて持ってきてくれるあたりが実によく出来た心配りだ。
儂の付き人になったエルメスがそのやりとりを不思議そうに見ている。
元々は、『ネームレス』ギルド本部にスパイとして送り込んだ者だ。なかなか、仕事が出来るいい女である。それを裏付けるかのようにレイアから蟲を分け与えられた数少ない者だ。
「どうしたエルメスよ。そんなに、その手紙の内容が気になるか? どうしてもと言うなら教えてやっても良いぞ」
「お戯れをガイウス皇帝陛下。私のような身分の者がその内容を知ってしまえば、朝日は拝めません」
メイドだけに…冥土の土産になる可能性はある。レイアから蟲を預けられているからには、外部に情報漏洩するような愚かな行為をする者ではないだろう。それに、側付きにするにあたり神器プロメテウスで身元から内面、好物に至るまで全ての情報を丸裸にしている。
「冗談じゃよ」
さて、エリスちゃんが翻訳している蟲言語を後ろから覗いて見たが…相変わらず仕事が早いな。既に、南方諸国連盟での仕事を終えて早々に帰還すると書かれている。本来ならば、食料だけを潰す予定だったが…今回の遠征は、想定外の出来事が多発した。
信じられないとは言わないが、そこまでやるのかと疑問に感じてしまうほどの内容だ。ギルドの想像を絶する不正。
人体実験、拉致監禁、横領、偽貨幣…その被害総額は、恐ろしい数字だ。大国ですら傾くだろう。被害者には悪いがこちら側としてはありがたい情報だ。ギルドを責める良い材料になった。
拉致監禁から解放した者達の親元には、『神聖エルモア帝国』の皇帝という立場で連絡を入れている。迎えに来られない事情がある者は、こちらが責任をもって送り届ける旨も伝えている。それまでの間は、この地上で一番安全であるレイア宅の地下に居る方が良いだろう。
死んだはずの子供達がギルドのサロンで強制労働させられていた事実を知ればどう思うかは目に見えている。跡目を継げない者達とはいえ、身分の高い者の子供が大量に居たのだ。ギルド…延いては南方諸国連盟に対する感情は、ぶっちぎりで下がるに違いない。
本来の予定とは少し変わってしまったが、儂も動くとしよう。
レイアの帰還と同時に『神聖エルモア帝国』からは、大々的にギルドが拉致監禁していた者達を救い出し、解放したと宣伝する。『ウルオール』からは、ギルドがほぼ独占状態であった治癒薬に代わる第二の薬…ペニシリンを安価で売り出す。その為の準備も滞りなく進んでいる。
お互いにwin-winの関係で居るために手柄を分けないといけないからな。
………
……
…
午後になり、本来予定に無かったのだが急を要する要件だと言うことで無理矢理会見をねじ込んできた者がいる。現皇帝であるこの儂に対してこのような事をする者など数少ない。いいや、出来る者が少ないと言った方が正しいな。
何処の誰かと思えば、レイアの一件を知らぬ存ぜぬで突き通しただけでなく、しつこいと戦争も視野に入れて行動するぞと脅し文句を掛けてきたギルドではないか。………分かっていたがな。
「儂の記憶違いで無ければ、本日の会見にギルドの者がいた記憶は無いのだがキース・グェンダル君」
「この度は、急な会見に応じて頂き誠にありがとうございます。手土産にお詫びの品を持って参りました」
胡散臭い男だ。そんな男からの贈り物を素直に受け取るはずが無い。どのような細工がされているか分からないからな。護衛の者に手土産という名の小箱を開けさせた。その中から出てきたのは白い蝗だ。
「ほほぅ、『神聖エルモア帝国』の皇帝に対して蟲の死骸を送りつけるとはな。ギルドは、もう少し頭が良い連中だと思ったが…戦争が望みとあれば、受けるぞ」
「仕掛けてきたのは、そちらのくせによく言う。現在、我々ギルド総本山のある南方諸国連盟が未曾有の大災害に落ちようとしている。色々とある原因の一つがその蟲だ!! 知らぬとは言わせんぞ。アルビノのイナゴは、『蟲』の使い手であったレイア・アーネスト・ヴォルドーの物であろう」
仕掛けてきたのは…ギルドであろう。儂を笑い殺すきか。
「そうだな。今は、亡き『蟲』の使い手の蟲だろうな。他ならぬギルドの手によって殺されたのだ。忘れたわけではあるまい。だが、それがどうした? 『蟲』の使い手が死んだ今…その白い蝗は、一介のモンスターであろう。その責任を『神聖エルモア帝国』に問うのは筋違いだ。用が済んだのなら帰れ…この手土産の件は、後日正式に謝罪を要求させて貰おう」
流石に、数十万のイナゴを全員無事に帰還させるまでには至らなかったようだな。戦闘力を考えれば仕方の無いことか。さて、後日の謝罪は何を要求するかな。いいや、後日とは言わずに直ぐに請求しないとダメだ。間もなく、存在すら無くなる可能性があるのだから。
「っち!! いいえ、まだお話がありますガイウス皇帝陛下。南方諸国連盟に対して人道的な支援を要請したい。具体的には、食料や医療物資を…」
「はあ~…キース・グェンダル君。君が『神聖エルモア帝国』と『ウルオール』にあるギルドを取り纏めている存在なのは知っている。だからこそ、やりたくもないこんな会見の場にいるのだろう。当然、知っているだろう…私とヴァーミリオン王家のギルドに対する感情が最悪な事を」
これ以上、無いくらいに最悪だ。
「ならば、買い取りをさせて頂きたい。『神聖エルモア帝国』が備蓄している災害時の余剰物資を市場価格の5割増しで買い上げる。ギルドとしてはどうしても纏まった量を確保したい。此方が渡す代金で買い換えには十分な額になる」
最初に比べれば幾分かマシだな。人道的支援とか、要するに無償提供しろとの事だったからな。ギルドの口から人道的支援とか、頭に蛆でも湧いたかと思ったぞ。レイアの報告書にあった数々のギルドの非人道的な行為を思い出してしまったわ。この場でその件を追求しても楽しいだろうが…まだ、早いな。
帝都に備蓄している災害時の物資などは、毎年交換できるようにレイアが買い上げてくれている。おかげで、常に新しい物資が備蓄されている。国民を守る立場としては、実にありがたいことだ。レイアにとっても古物資は、蟲達への食事として利用しているのでお互いに良い関係が築けている。
だから、貴様等に売る予定など更々ない。長期契約も結んでいるからそれを反故にするのは、大国の指導者としてあるまじき行為だ。
「残念だが、既に余所と契約済みじゃ。買い付けの話は、自ら足を運んで契約しろ。ただ、商人達は耳ざといからな…南方諸国で大飢餓が発生する可能性があると分かれば一体幾らふっかけられるか見物じゃな」
既に、瀬里奈殿が農家と直接契約を行って十分な代金の支払いまで終えている。だから、大商人でも大量の物資を確保出来ていないだろう。その事までは、流石に知らないようだな。瀬里奈殿との契約を反故にして、ギルドに尻尾を振る農家も出てくるだろうが…そいつらの末路など決まっている。
「…大勢の民に死ねというのが『神聖エルモア帝国』の方針と言うことですか」
「大勢の民? よいか、『神聖エルモア帝国』に納税して初めて我が国の民なのだ。なぜ、今の対応で非難されなければならない?属国ならまだしも南方諸国連盟は敵対国であろう。自国の問題であるならば、自分達でなんとかしろ!! 」
普段は、此方の害のある行為しかしないくせ。いざ問題が発生するとすり寄ってくる始末。本当に、頭が痛い。こいつ等は、自分達が世界の中心だとでも思っているのだろうか。
「支援は、していただけないと回答でよろしいですか?」
「支援という事ならば、出来ないと回答しておこう。『神聖エルモア帝国』と同盟国である『ウルオール』は、今年度は豊作だと聞いている。悪いが、そちらを当たるんだな」
本人も分かっていると思うが、『ウルオール』がギルドに対して支援などあり得るはずが無い。ヴァーミリオン王家の王族二人を娶ったレイアを殺害した組織なのだ。場合によっては、生きて帰る事は叶わないだろう。
「『ウルオール』ですか…時間的猶予の問題もありますが、あの国に今私が訪れたら間違いなく生きて出して貰えないでしょうね」
「だろうな。儂ですら、レイアを亡き者にした貴様等を殺したいと思っている。だが、貴様をこの場で殺さないのはなぜだか分かるか?」
「いいえ、検討も付きません」
「南方諸国連盟の代表としてこの場にいる貴様を殺してしまえば誰が代わりに馬車馬の如く働くのだ。その間に死ぬ者達の数は、計り知れん。そんな大量虐殺に手を貸す事などしたくは無いのだよ」
「そう思われるのでしたら、是非食料などの物資を融通して欲しいのですがね」
そもそも、ギルドの連中が南方諸国から集めた金を真面目に運用していたら災害時の食糧不足なんて事もなか…いいや、違った。それもレイアが襲撃する予定だったな。
「そうじゃの…儂の知り合いに貴様等が望む纏まった量の食料や医療物資を提供出来る者がいる。紹介料次第では、場をセッティングしてやるぞ」
「いかほどをお望みで?」
次期皇帝就任祝いの品を準備しないといけないから、その代金を全額負担させるか。
「たった300億セルで構わん」
ギルドの資産額を考えれば雀の涙ほどだ。この金額を高いとみるか低いとみるかは、その者の器が試される。何百万の命を救える可能性がたった300億セルで増えるのだ。
「即金で払いましょう」
さて、お膳立てはしたぞ。後は、瀬里奈殿に任せるとしよう。
◆
ガイウス皇帝陛下からの紹介状をもって、ノコノコとやってきたギルド幹部のギース・グェンダル。私の可愛いレイアちゃんを文字通り傷物にした男!! そんな殺したい程、憎い相手でも今は我慢する。
事前に来る事が分かっていなければ、間違いなく道中で畑仕事をしている蟲達が襲い掛かって殺していただろう。何名か腕利きの護衛を連れているようだが…地の利は、此方にあるし、数も圧倒的。
「実にお美しい。お噂は聞いておりますよセリナ・アーネスト・ヴォルドー様…よろしければ、今度お食事でもどうですか?」
「お世辞と分かっていても褒められて悪い気はしないわね。本題ですが、紹介状を確認させて頂いたわ。ガイウス皇帝陛下の紹介状があったにせよ。よくこの場所に顔を出せたわね」
ゴリフリーテさんとゴリフリーナさんが今にも怒りでその豪腕を振り下ろしそうだったので我慢してねと制した。ジュラルドさんも、念のため隠れて不審な動きがあれば即座に吹き飛ばす準備をしてくれている。
「こちらは、何百万の命を背負っている立場ですので、仕方がありません。しかし、ここに来る途中に沢山の蟲系モンスターを見かけました。農作業に従事していたように思えましたが…アレは、大丈夫なんですかね?」
嫌でも目に付くわよね。あれだけの数が農作業を行っていれば、だけど何ら問題ないわ。別に隠しているわけでもない。遅かれ早かれバレるのだから。
「何を警戒しているか分かりませんが…どこぞの誰かさんが、私の可愛いレイアちゃんに手を掛けたせいで蟲達の食料に大きな問題が発生しました。どこまでご存じかは知りませんが、レイアちゃんの魔力によって賄われていた蟲達の食事を用意しないといけないのですから」
「それは大変ですな。野に放たれても困りますのでしっかりと管理をお願い致しますよ。だからこそ紹介があったのでしょうね」
ミシミシ
ゴリフリーテさんから漏れる魔力で部屋がきしんだ。ガイウス皇帝陛下の紹介状を持っていようが、此方がその気になればミンチに変えることだって容易いというのに態度がでかいわね。
寧ろ、どうしようもない逆に開き直っている感じもするわね。
「お義母様が止めなければ、貴様などすぐに殺している。大きな態度にはそれ相応のリスクが伴うことを理解するがいい。旦那様を手に掛けたギルドなど本来なら一変の欠片も残さず消滅させても構わない。それを実行しないのは、ひとえにお義母様の意向だと言うことを忘れるな」
「これは、失言でしたゴリフリーテ様。心からお詫び申し上げます。では、あまりお時間を取らせるのも悪いですし、飢えに苦しむ人々がいるので本題に入りましょう。では、こちらを…」
ギルド幹部が要望事項と金額を纏めたリストを提示してきた。内容を確認してみたが物資、金額、期限などどれをとっても無難であった。
それが平時であるならば、定価の15%増しというのは魅力的だ。しかも、必要とされる量が数百万人を一ヶ月は食わせるだけの量となれば生み出す利益だけで左団扇で一生涯暮らせるであろう。
「話にならないわね。ギルドは、この程度のはした金で私から食料を買い上げるおつもりですか? 何百万の命を背負っていると言う割に、つまらない事をしますね。せめてこの程度頂かないと困ります」
ギルドが持ってきた見積もり金額の後ろに0を一つ付け足して返した。ギルドが元から15%増しで付けていたので市場価格の11.5倍になった。レイアちゃんへの慰謝料も考えれば妥当な額よね。
「これは…些か冗談が過ぎる金額ですな。小国が買える金額ですよ」
「あら、ごめんなさいね。書き損じたわ」
なるほど、南方諸国連盟ともなれば大国に匹敵するのよね…だからこの金額では安すぎると言いたいという事か。ギルドの総資産を考えれば当然か。それに今思い出したけど、レイアちゃんに出会う前には私も命を狙われた。その分を上乗せしないといけないわ。
今度は、先ほどの見積もりの頭の桁が3だったので少し線を繋げて8にして置いた。そして、笑顔でギルド幹部に突き返した。ちょっとした、大国家予算並を超える金額だが問題ない。
「ははは、ご冗談がお上手なお人ですな。なんですか、この金額は…大国といえどもこの額は出せませんよ」
「あら、そんな事はありませんよ。ゴリフリーテさん、ゴリフリーナさん…この金額でレイアちゃんが生き返るとしたら払えます?」
二人に記載した金額を見せた。『ウルオール』の王族でもある彼女達が払えるならばギルドが払えないと言い切る道理はあるまい。
「旦那様の命をお金で換算するのは好きではありませんが、この程度の金額で生き返るのでしたら即金で払いましょう」
「お姉様と同じ意見です。王族の財産と私達が溜め込んだ冒険者時代の財をつぎ込めば払えない額ではありません」
「だそうですよ…で、払います?流石に、即金で全額払えとは言いません。ですが、ギルドに対して何一つ信用していませんので物資は常に金銭と交換で引き渡します」
だんだんと、ギルド幹部の顔つきが険しくなってきた。実にいい気味だ。頭の中では色々と計算をしているのだろう。このまま取引をせずに帰った場合に何が起こるか。取引をするにしてもそれだけの金額をどこから引き出すのか。
だが、ギルド幹部にとって何もしないで帰るという選択肢は無い。幹部連中は、南方諸国の王族と強い繋がりがある連中が多いため、南方諸国を切って捨てるわけ事はできない状況だ。
「その金額設定では、南方諸国の民が何十万人も死んでしまいます。もう少し、金額設定を」
「どうやら、よく理解していないようですが…別に売らないという選択肢を取る事もできるのに、私達の善意で販売してあげようとしているのに何故!! そちらが、金額設定に対して文句をいうのかしら? ギルドは全面否定をしていますが、レイアちゃんにランクAを襲撃させ殺害した事実を忘れたわけではありませんよ」
「ヴァルドー侯爵に販売して頂かなくても、その値段ならば他国からでも十二分な量の物資が確保出来る。そちらの物資を余らせないためにもお互いの妥協点を探す方が健全だと思われますが」
妥協点…そんな物は存在しない。
「『神聖エルモア帝国』にある主だった農家とは直接契約をしております。今年度は、市場価格の3倍で買い上げる契約済。その契約を反故にしてギルドに売るのも勝手ですが…そんな農家は、数日の内に蟲達が突然襲い掛かる不幸に見舞われるかもしれませんね。他国から輸送する際にも不幸な事故があるかもしれません」
「言っておくが、『ウルオール』からは南方諸国連盟に対して期限付きではあるが、一切の輸出を禁止する旨のお触れを出す。私達の権限において可能な限り、各国にも圧力を掛ける。貴様等が行った行為を悔いろ」
ガイウス皇帝陛下も神器プロメテウスで知った情報を使い各国に圧力を掛てもらえる算段になっている。更に、今現在この屋敷の地下にはギルドのサロンから救い出した者達が帰国の手配が終わるのを待っている状況だ。もはや、ギルドに対する包囲網はほぼ完成済みだ。
「酷いですね。まるで、ギルドが何もかも悪いみたいに聞こえます。それに…貴方達の手際が良すぎです。やはりと言うべきですか、南方諸国連盟で発生した未曾有の大災害は人災でしたか」
ギルドも馬鹿ではないから気がついて当然かしら。そもそも原因がギルドという意味では間違いなく人災に相当する。
「いいえ、自然災害ですよ。ただ…蟲達が事前に教えてくれただけです。南の方まで出かけてくると。レイアちゃんの母であるこの私でも蟲達の自由意志を縛ることは出来ません。だから、自給自足をするために農作業をする蟲もいれば、ギルドに一矢報いるために世界に旅立つ者もおります」
「色々と問い詰めたいのですが、この場はこちらが不利です。分かりました提示額で契約をしましょう。貴金属や宝石が混ざっておりますが此方が乗ってきている馬車の荷台に約4000億セル相当の品が積まれております」
「鑑定は、全て蟲達が行います。偽物が混ざっていては困りますからね。後で、こちらの買取査定を提示します。安心してください市場価格の7割程度になりますので。代わりに、物資運搬は此方がサービスしましょう。南方諸国連盟の国境間際までは、安全且つ迅速に運搬しますので其方が各国に分配してください」
「えぇ、それで構いません」
ギィギギ(セリナ様。今、ギルドの者が一人勝手に動いたので始末してきました。この新居のMAP作成をしようとしていたと思われます)
私の配下の蟻が報告してきてくれた。懲りない連中だ事で。
「キース・グェンダルさん…部下の勝手な行動だと判断したので、こちらで部下を処理しました。次は、貴方にも責任を取って貰いますよ」
「………使えない部下を持つと上司は困る者ですね。厳重注意しておきます。後、一つだけ教えて頂きたいのですが。セリナ・アーネスト・ヴォルドー様は、蟲の言葉がおわかりで?」
「さて、どうでしょうか。では、物資の引き渡し地点を教えますのでそちらの荷台の物資はそのまま持って行ってくださいね。現地でも当然再確認しますので」
蟲が作った契約書にサインをさせた。
どうせ、ランクAをけしかけてくる気なのだろう。精々、内心ほくそわらっているがいい。最後に勝つのは、私達なのだから。
************************************************
PS:
こんな事がありました。
作者「なんとかなりませんか先生!!」
モッキュ(残念ですが、ここでは対応出来ません。紹介状を書きますのでそちらで診断を…)
………
……
…
モナナー(絹毛虫ちゃんからの紹介状を確認しました…手術です)
作者「えっ!? 」
みたいな展開があり、執筆意欲が衰えてしまい今に至りました。
ブスリとやられるので…今月は更新が絶望的な予感がしております。
申し訳ありませんorz
どうでもよい事ですが…幻想蝶外伝(実家に帰らせて頂きます or 惚れ薬)を検討中。本編執筆で余力があるときにかく予定です。
色々とありまして…><
◆一つ目:ガイウス皇帝陛下
◆二つ目:瀬里奈
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レイアの計画が進行して今日で一週間。
「儂もプール入りたかったな…」
毎日送られてくる報告書。決して第三者に読まれてはならない重要な内容だ。それ故に、非常に高度な暗号化が施されている。今日も手紙に書かれているのは一言だけ『モッモキュー』…いや、本当にこれだけ。
『なるほどなるほど。今、翻訳致しますね。読み終えたら焼却をお願い致します』とエリスと名前の書かれた服をきた蟲がプレートを掲げた。可愛い蟲じゃの~。毎日、クッキーやらを焼いて持ってきてくれるあたりが実によく出来た心配りだ。
儂の付き人になったエルメスがそのやりとりを不思議そうに見ている。
元々は、『ネームレス』ギルド本部にスパイとして送り込んだ者だ。なかなか、仕事が出来るいい女である。それを裏付けるかのようにレイアから蟲を分け与えられた数少ない者だ。
「どうしたエルメスよ。そんなに、その手紙の内容が気になるか? どうしてもと言うなら教えてやっても良いぞ」
「お戯れをガイウス皇帝陛下。私のような身分の者がその内容を知ってしまえば、朝日は拝めません」
メイドだけに…冥土の土産になる可能性はある。レイアから蟲を預けられているからには、外部に情報漏洩するような愚かな行為をする者ではないだろう。それに、側付きにするにあたり神器プロメテウスで身元から内面、好物に至るまで全ての情報を丸裸にしている。
「冗談じゃよ」
さて、エリスちゃんが翻訳している蟲言語を後ろから覗いて見たが…相変わらず仕事が早いな。既に、南方諸国連盟での仕事を終えて早々に帰還すると書かれている。本来ならば、食料だけを潰す予定だったが…今回の遠征は、想定外の出来事が多発した。
信じられないとは言わないが、そこまでやるのかと疑問に感じてしまうほどの内容だ。ギルドの想像を絶する不正。
人体実験、拉致監禁、横領、偽貨幣…その被害総額は、恐ろしい数字だ。大国ですら傾くだろう。被害者には悪いがこちら側としてはありがたい情報だ。ギルドを責める良い材料になった。
拉致監禁から解放した者達の親元には、『神聖エルモア帝国』の皇帝という立場で連絡を入れている。迎えに来られない事情がある者は、こちらが責任をもって送り届ける旨も伝えている。それまでの間は、この地上で一番安全であるレイア宅の地下に居る方が良いだろう。
死んだはずの子供達がギルドのサロンで強制労働させられていた事実を知ればどう思うかは目に見えている。跡目を継げない者達とはいえ、身分の高い者の子供が大量に居たのだ。ギルド…延いては南方諸国連盟に対する感情は、ぶっちぎりで下がるに違いない。
本来の予定とは少し変わってしまったが、儂も動くとしよう。
レイアの帰還と同時に『神聖エルモア帝国』からは、大々的にギルドが拉致監禁していた者達を救い出し、解放したと宣伝する。『ウルオール』からは、ギルドがほぼ独占状態であった治癒薬に代わる第二の薬…ペニシリンを安価で売り出す。その為の準備も滞りなく進んでいる。
お互いにwin-winの関係で居るために手柄を分けないといけないからな。
………
……
…
午後になり、本来予定に無かったのだが急を要する要件だと言うことで無理矢理会見をねじ込んできた者がいる。現皇帝であるこの儂に対してこのような事をする者など数少ない。いいや、出来る者が少ないと言った方が正しいな。
何処の誰かと思えば、レイアの一件を知らぬ存ぜぬで突き通しただけでなく、しつこいと戦争も視野に入れて行動するぞと脅し文句を掛けてきたギルドではないか。………分かっていたがな。
「儂の記憶違いで無ければ、本日の会見にギルドの者がいた記憶は無いのだがキース・グェンダル君」
「この度は、急な会見に応じて頂き誠にありがとうございます。手土産にお詫びの品を持って参りました」
胡散臭い男だ。そんな男からの贈り物を素直に受け取るはずが無い。どのような細工がされているか分からないからな。護衛の者に手土産という名の小箱を開けさせた。その中から出てきたのは白い蝗だ。
「ほほぅ、『神聖エルモア帝国』の皇帝に対して蟲の死骸を送りつけるとはな。ギルドは、もう少し頭が良い連中だと思ったが…戦争が望みとあれば、受けるぞ」
「仕掛けてきたのは、そちらのくせによく言う。現在、我々ギルド総本山のある南方諸国連盟が未曾有の大災害に落ちようとしている。色々とある原因の一つがその蟲だ!! 知らぬとは言わせんぞ。アルビノのイナゴは、『蟲』の使い手であったレイア・アーネスト・ヴォルドーの物であろう」
仕掛けてきたのは…ギルドであろう。儂を笑い殺すきか。
「そうだな。今は、亡き『蟲』の使い手の蟲だろうな。他ならぬギルドの手によって殺されたのだ。忘れたわけではあるまい。だが、それがどうした? 『蟲』の使い手が死んだ今…その白い蝗は、一介のモンスターであろう。その責任を『神聖エルモア帝国』に問うのは筋違いだ。用が済んだのなら帰れ…この手土産の件は、後日正式に謝罪を要求させて貰おう」
流石に、数十万のイナゴを全員無事に帰還させるまでには至らなかったようだな。戦闘力を考えれば仕方の無いことか。さて、後日の謝罪は何を要求するかな。いいや、後日とは言わずに直ぐに請求しないとダメだ。間もなく、存在すら無くなる可能性があるのだから。
「っち!! いいえ、まだお話がありますガイウス皇帝陛下。南方諸国連盟に対して人道的な支援を要請したい。具体的には、食料や医療物資を…」
「はあ~…キース・グェンダル君。君が『神聖エルモア帝国』と『ウルオール』にあるギルドを取り纏めている存在なのは知っている。だからこそ、やりたくもないこんな会見の場にいるのだろう。当然、知っているだろう…私とヴァーミリオン王家のギルドに対する感情が最悪な事を」
これ以上、無いくらいに最悪だ。
「ならば、買い取りをさせて頂きたい。『神聖エルモア帝国』が備蓄している災害時の余剰物資を市場価格の5割増しで買い上げる。ギルドとしてはどうしても纏まった量を確保したい。此方が渡す代金で買い換えには十分な額になる」
最初に比べれば幾分かマシだな。人道的支援とか、要するに無償提供しろとの事だったからな。ギルドの口から人道的支援とか、頭に蛆でも湧いたかと思ったぞ。レイアの報告書にあった数々のギルドの非人道的な行為を思い出してしまったわ。この場でその件を追求しても楽しいだろうが…まだ、早いな。
帝都に備蓄している災害時の物資などは、毎年交換できるようにレイアが買い上げてくれている。おかげで、常に新しい物資が備蓄されている。国民を守る立場としては、実にありがたいことだ。レイアにとっても古物資は、蟲達への食事として利用しているのでお互いに良い関係が築けている。
だから、貴様等に売る予定など更々ない。長期契約も結んでいるからそれを反故にするのは、大国の指導者としてあるまじき行為だ。
「残念だが、既に余所と契約済みじゃ。買い付けの話は、自ら足を運んで契約しろ。ただ、商人達は耳ざといからな…南方諸国で大飢餓が発生する可能性があると分かれば一体幾らふっかけられるか見物じゃな」
既に、瀬里奈殿が農家と直接契約を行って十分な代金の支払いまで終えている。だから、大商人でも大量の物資を確保出来ていないだろう。その事までは、流石に知らないようだな。瀬里奈殿との契約を反故にして、ギルドに尻尾を振る農家も出てくるだろうが…そいつらの末路など決まっている。
「…大勢の民に死ねというのが『神聖エルモア帝国』の方針と言うことですか」
「大勢の民? よいか、『神聖エルモア帝国』に納税して初めて我が国の民なのだ。なぜ、今の対応で非難されなければならない?属国ならまだしも南方諸国連盟は敵対国であろう。自国の問題であるならば、自分達でなんとかしろ!! 」
普段は、此方の害のある行為しかしないくせ。いざ問題が発生するとすり寄ってくる始末。本当に、頭が痛い。こいつ等は、自分達が世界の中心だとでも思っているのだろうか。
「支援は、していただけないと回答でよろしいですか?」
「支援という事ならば、出来ないと回答しておこう。『神聖エルモア帝国』と同盟国である『ウルオール』は、今年度は豊作だと聞いている。悪いが、そちらを当たるんだな」
本人も分かっていると思うが、『ウルオール』がギルドに対して支援などあり得るはずが無い。ヴァーミリオン王家の王族二人を娶ったレイアを殺害した組織なのだ。場合によっては、生きて帰る事は叶わないだろう。
「『ウルオール』ですか…時間的猶予の問題もありますが、あの国に今私が訪れたら間違いなく生きて出して貰えないでしょうね」
「だろうな。儂ですら、レイアを亡き者にした貴様等を殺したいと思っている。だが、貴様をこの場で殺さないのはなぜだか分かるか?」
「いいえ、検討も付きません」
「南方諸国連盟の代表としてこの場にいる貴様を殺してしまえば誰が代わりに馬車馬の如く働くのだ。その間に死ぬ者達の数は、計り知れん。そんな大量虐殺に手を貸す事などしたくは無いのだよ」
「そう思われるのでしたら、是非食料などの物資を融通して欲しいのですがね」
そもそも、ギルドの連中が南方諸国から集めた金を真面目に運用していたら災害時の食糧不足なんて事もなか…いいや、違った。それもレイアが襲撃する予定だったな。
「そうじゃの…儂の知り合いに貴様等が望む纏まった量の食料や医療物資を提供出来る者がいる。紹介料次第では、場をセッティングしてやるぞ」
「いかほどをお望みで?」
次期皇帝就任祝いの品を準備しないといけないから、その代金を全額負担させるか。
「たった300億セルで構わん」
ギルドの資産額を考えれば雀の涙ほどだ。この金額を高いとみるか低いとみるかは、その者の器が試される。何百万の命を救える可能性がたった300億セルで増えるのだ。
「即金で払いましょう」
さて、お膳立てはしたぞ。後は、瀬里奈殿に任せるとしよう。
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ガイウス皇帝陛下からの紹介状をもって、ノコノコとやってきたギルド幹部のギース・グェンダル。私の可愛いレイアちゃんを文字通り傷物にした男!! そんな殺したい程、憎い相手でも今は我慢する。
事前に来る事が分かっていなければ、間違いなく道中で畑仕事をしている蟲達が襲い掛かって殺していただろう。何名か腕利きの護衛を連れているようだが…地の利は、此方にあるし、数も圧倒的。
「実にお美しい。お噂は聞いておりますよセリナ・アーネスト・ヴォルドー様…よろしければ、今度お食事でもどうですか?」
「お世辞と分かっていても褒められて悪い気はしないわね。本題ですが、紹介状を確認させて頂いたわ。ガイウス皇帝陛下の紹介状があったにせよ。よくこの場所に顔を出せたわね」
ゴリフリーテさんとゴリフリーナさんが今にも怒りでその豪腕を振り下ろしそうだったので我慢してねと制した。ジュラルドさんも、念のため隠れて不審な動きがあれば即座に吹き飛ばす準備をしてくれている。
「こちらは、何百万の命を背負っている立場ですので、仕方がありません。しかし、ここに来る途中に沢山の蟲系モンスターを見かけました。農作業に従事していたように思えましたが…アレは、大丈夫なんですかね?」
嫌でも目に付くわよね。あれだけの数が農作業を行っていれば、だけど何ら問題ないわ。別に隠しているわけでもない。遅かれ早かれバレるのだから。
「何を警戒しているか分かりませんが…どこぞの誰かさんが、私の可愛いレイアちゃんに手を掛けたせいで蟲達の食料に大きな問題が発生しました。どこまでご存じかは知りませんが、レイアちゃんの魔力によって賄われていた蟲達の食事を用意しないといけないのですから」
「それは大変ですな。野に放たれても困りますのでしっかりと管理をお願い致しますよ。だからこそ紹介があったのでしょうね」
ミシミシ
ゴリフリーテさんから漏れる魔力で部屋がきしんだ。ガイウス皇帝陛下の紹介状を持っていようが、此方がその気になればミンチに変えることだって容易いというのに態度がでかいわね。
寧ろ、どうしようもない逆に開き直っている感じもするわね。
「お義母様が止めなければ、貴様などすぐに殺している。大きな態度にはそれ相応のリスクが伴うことを理解するがいい。旦那様を手に掛けたギルドなど本来なら一変の欠片も残さず消滅させても構わない。それを実行しないのは、ひとえにお義母様の意向だと言うことを忘れるな」
「これは、失言でしたゴリフリーテ様。心からお詫び申し上げます。では、あまりお時間を取らせるのも悪いですし、飢えに苦しむ人々がいるので本題に入りましょう。では、こちらを…」
ギルド幹部が要望事項と金額を纏めたリストを提示してきた。内容を確認してみたが物資、金額、期限などどれをとっても無難であった。
それが平時であるならば、定価の15%増しというのは魅力的だ。しかも、必要とされる量が数百万人を一ヶ月は食わせるだけの量となれば生み出す利益だけで左団扇で一生涯暮らせるであろう。
「話にならないわね。ギルドは、この程度のはした金で私から食料を買い上げるおつもりですか? 何百万の命を背負っていると言う割に、つまらない事をしますね。せめてこの程度頂かないと困ります」
ギルドが持ってきた見積もり金額の後ろに0を一つ付け足して返した。ギルドが元から15%増しで付けていたので市場価格の11.5倍になった。レイアちゃんへの慰謝料も考えれば妥当な額よね。
「これは…些か冗談が過ぎる金額ですな。小国が買える金額ですよ」
「あら、ごめんなさいね。書き損じたわ」
なるほど、南方諸国連盟ともなれば大国に匹敵するのよね…だからこの金額では安すぎると言いたいという事か。ギルドの総資産を考えれば当然か。それに今思い出したけど、レイアちゃんに出会う前には私も命を狙われた。その分を上乗せしないといけないわ。
今度は、先ほどの見積もりの頭の桁が3だったので少し線を繋げて8にして置いた。そして、笑顔でギルド幹部に突き返した。ちょっとした、大国家予算並を超える金額だが問題ない。
「ははは、ご冗談がお上手なお人ですな。なんですか、この金額は…大国といえどもこの額は出せませんよ」
「あら、そんな事はありませんよ。ゴリフリーテさん、ゴリフリーナさん…この金額でレイアちゃんが生き返るとしたら払えます?」
二人に記載した金額を見せた。『ウルオール』の王族でもある彼女達が払えるならばギルドが払えないと言い切る道理はあるまい。
「旦那様の命をお金で換算するのは好きではありませんが、この程度の金額で生き返るのでしたら即金で払いましょう」
「お姉様と同じ意見です。王族の財産と私達が溜め込んだ冒険者時代の財をつぎ込めば払えない額ではありません」
「だそうですよ…で、払います?流石に、即金で全額払えとは言いません。ですが、ギルドに対して何一つ信用していませんので物資は常に金銭と交換で引き渡します」
だんだんと、ギルド幹部の顔つきが険しくなってきた。実にいい気味だ。頭の中では色々と計算をしているのだろう。このまま取引をせずに帰った場合に何が起こるか。取引をするにしてもそれだけの金額をどこから引き出すのか。
だが、ギルド幹部にとって何もしないで帰るという選択肢は無い。幹部連中は、南方諸国の王族と強い繋がりがある連中が多いため、南方諸国を切って捨てるわけ事はできない状況だ。
「その金額設定では、南方諸国の民が何十万人も死んでしまいます。もう少し、金額設定を」
「どうやら、よく理解していないようですが…別に売らないという選択肢を取る事もできるのに、私達の善意で販売してあげようとしているのに何故!! そちらが、金額設定に対して文句をいうのかしら? ギルドは全面否定をしていますが、レイアちゃんにランクAを襲撃させ殺害した事実を忘れたわけではありませんよ」
「ヴァルドー侯爵に販売して頂かなくても、その値段ならば他国からでも十二分な量の物資が確保出来る。そちらの物資を余らせないためにもお互いの妥協点を探す方が健全だと思われますが」
妥協点…そんな物は存在しない。
「『神聖エルモア帝国』にある主だった農家とは直接契約をしております。今年度は、市場価格の3倍で買い上げる契約済。その契約を反故にしてギルドに売るのも勝手ですが…そんな農家は、数日の内に蟲達が突然襲い掛かる不幸に見舞われるかもしれませんね。他国から輸送する際にも不幸な事故があるかもしれません」
「言っておくが、『ウルオール』からは南方諸国連盟に対して期限付きではあるが、一切の輸出を禁止する旨のお触れを出す。私達の権限において可能な限り、各国にも圧力を掛ける。貴様等が行った行為を悔いろ」
ガイウス皇帝陛下も神器プロメテウスで知った情報を使い各国に圧力を掛てもらえる算段になっている。更に、今現在この屋敷の地下にはギルドのサロンから救い出した者達が帰国の手配が終わるのを待っている状況だ。もはや、ギルドに対する包囲網はほぼ完成済みだ。
「酷いですね。まるで、ギルドが何もかも悪いみたいに聞こえます。それに…貴方達の手際が良すぎです。やはりと言うべきですか、南方諸国連盟で発生した未曾有の大災害は人災でしたか」
ギルドも馬鹿ではないから気がついて当然かしら。そもそも原因がギルドという意味では間違いなく人災に相当する。
「いいえ、自然災害ですよ。ただ…蟲達が事前に教えてくれただけです。南の方まで出かけてくると。レイアちゃんの母であるこの私でも蟲達の自由意志を縛ることは出来ません。だから、自給自足をするために農作業をする蟲もいれば、ギルドに一矢報いるために世界に旅立つ者もおります」
「色々と問い詰めたいのですが、この場はこちらが不利です。分かりました提示額で契約をしましょう。貴金属や宝石が混ざっておりますが此方が乗ってきている馬車の荷台に約4000億セル相当の品が積まれております」
「鑑定は、全て蟲達が行います。偽物が混ざっていては困りますからね。後で、こちらの買取査定を提示します。安心してください市場価格の7割程度になりますので。代わりに、物資運搬は此方がサービスしましょう。南方諸国連盟の国境間際までは、安全且つ迅速に運搬しますので其方が各国に分配してください」
「えぇ、それで構いません」
ギィギギ(セリナ様。今、ギルドの者が一人勝手に動いたので始末してきました。この新居のMAP作成をしようとしていたと思われます)
私の配下の蟻が報告してきてくれた。懲りない連中だ事で。
「キース・グェンダルさん…部下の勝手な行動だと判断したので、こちらで部下を処理しました。次は、貴方にも責任を取って貰いますよ」
「………使えない部下を持つと上司は困る者ですね。厳重注意しておきます。後、一つだけ教えて頂きたいのですが。セリナ・アーネスト・ヴォルドー様は、蟲の言葉がおわかりで?」
「さて、どうでしょうか。では、物資の引き渡し地点を教えますのでそちらの荷台の物資はそのまま持って行ってくださいね。現地でも当然再確認しますので」
蟲が作った契約書にサインをさせた。
どうせ、ランクAをけしかけてくる気なのだろう。精々、内心ほくそわらっているがいい。最後に勝つのは、私達なのだから。
************************************************
PS:
こんな事がありました。
作者「なんとかなりませんか先生!!」
モッキュ(残念ですが、ここでは対応出来ません。紹介状を書きますのでそちらで診断を…)
………
……
…
モナナー(絹毛虫ちゃんからの紹介状を確認しました…手術です)
作者「えっ!? 」
みたいな展開があり、執筆意欲が衰えてしまい今に至りました。
ブスリとやられるので…今月は更新が絶望的な予感がしております。
申し訳ありませんorz
どうでもよい事ですが…幻想蝶外伝(実家に帰らせて頂きます or 惚れ薬)を検討中。本編執筆で余力があるときにかく予定です。
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