チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【５５】目ざとい女【なずみのホラー便 第１５２弾】

目ざとい女

【問題文】

　由宇（ゆう）さんは、大学の仲良しグループの友人・理亜子（りあこ）さんのことが実は苦手でした。
　まあ、このこと自体は”女子あるある”です。
　なお、由宇さんが理亜子さんを苦手な理由の一つは、理亜子さんがやたらと人のコスメを使いたがるからでした。
　「だってぇ、私に合うかどうかは実際に使ってみないと分からないしぃ。ちょっとだけだから、いいじゃないのぉ」というのが、理亜子さんの言い分です。
　そんなある日、由宇さんは前から憧れていたデパコスブランド・○○○○の新作リップを購入しました。
　この新作リップだけは他人に……というより、理亜子にだけは絶対に使われたくない！　と考えた由宇さんは、メイクポーチの奥底――理亜子に上からポーチを覗かれても絶対に見えない奥底――にリップを隠すことにしました。
　ですが、仲良しグループでランチを取った後、トイレで皆でメイクを直していた時です。
「あ！　由宇ったら、○○○○の新作リップ、買ってたんだぁ。私にもちょっと使わせてぇ」と、理亜子さんは由宇さんのメイクポーチの奥底にあったリップを勝手にゴソゴソと取り出し、自身の唇――ガーリックパスタを食べた後の油でテカっている唇――にリップブラシも使わず、直にぬりぬりし始めました……。
　さて、なぜ、理亜子さんは由宇さんが新作リップを購入したのだと分かったのでしょうか？


【質問と解答】

キクちゃん　：　こ、これは……お気の毒とか言えないです。用心してメイクポーチの奥底に隠していたにもかかわらず、よりによって絶対に見つかりたくない人に見つかってしまうなんて…………。私が考えるに、これはネットの発達した現代だからこその経緯でバレてしまったのだと思います。由宇さんは自分のSNSに、○○○○の新作リップを買ったことをアップしていましたか？

チエコ先生　：　NO。憧れの○○○○の新作リップをついに手に入れた由宇さんも、SNSにアップして皆とシェアしたいのはやまやまだったけど、理亜子さんともSNSで繋がっているから、用心してガードを固めていたのよ。

キクちゃん　：　SNS経由で知られたのではなかった……ということは、由宇さんは他の人にリップを買ったことを話していましたか？

チエコ先生　：　NO。

キクちゃん　：　「人の口に戸は立てられぬ」と、そこら辺も用心していたんですね。……まさか、これは単に「壁に耳あり障子に目あり」と言いますように、皆でトイレというか……ランチに行く前にリップも含めてメイク直しをしている場面を、理亜子さんに見られてしまっていただけではないでしょうか？

チエコ先生　：　NO。もし、ランチに行く前に見られていたとしたなら、「あ！　由宇ったら、○○○○の新作リップ、買ってたんだぁ。私にもちょっと使わせてぇ」じゃなくて、「あ！　由宇って、○○○○の新作リップ、買ってたんだよねぇ。私にもちょっと使わせてぇ」という風な言い方になると思わない？

キクちゃん　：　……となると、由宇さんが持っている新作リップに理亜子さんが気づいたのは、やはりランチ後のトイレでしたか？

チエコ先生　：　YES。

キクちゃん　：　でも、リップは理亜子さんに上からポーチを覗かれても絶対に見えない奥底に隠されていたんですよね。うーん……理亜子さんはクレアボヤンス（透視）の力の持ち主でしたか？

チエコ先生　：　NO。キクちゃん、いくらなんでも飛躍し過ぎよ（笑）。そうなると何でも有りになってしまうわ。今回の問題は、常識の範囲内で考えてみて。

キクちゃん　：　今まで数々の常識を逸脱した水平思考クイズが出題されてきたというのに、今回に限っては常識の範囲内なんですね……。

チエコ先生　：　クレアボヤンスの力を持っていない人でも、メイクポーチの中身を覗き込まなくても見ることができるのって、どういった状態の時だと思う？

キクちゃん　：　……もしかして、由宇さんのメイクポーチはクリア素材のものだったんですか？

チエコ先生　：　YES。

キクちゃん　：　く、くだらな……いえ、奥底にリップを隠そうが、メイクポーチそのものがクリア素材だったら何の意味もないですね。

チエコ先生　：　ええ、由宇さんも用心はしていたけど、普段使いしていたメイクポーチの素材については盲点だったわね。こんなくだらないことが原因で目ざとい女にバレてしまったなんて……と後悔しきりでしょう。でも、そもそも人のコスメを勝手に使う人こそ、常識がないけどね。


（完💄）