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なずみのホラー便 ※公開順

第４５弾 美女の秘密 PART２

　過去作のタイトルはそのまま。違ったテーマと具材で調理し、PART２としてお届けいたします。
※過去作の美女は画家でしたが、今回の美女は詩人です。

過去作
⇒【R15】美女の秘密【なずみのホラー便　第2弾】


　”妙齢の美女（社会的にも成功している）に男が強引に迫る”といった導入部は、過去作と同じ。
　ちなみに、過去作の男が手にしていたのは血のように赤い薔薇だが、今回の男が手にしていたのは”百合の花束”。

　裏設定であるも、この”百合”という花は、作者が別の連載で使用しているルノルマン・カードによると、”成熟”を意味するため今回の花束としてチョイスした。
　そう、”成熟”だ。
　なんと、今回の強引な男は”肉体には成熟しきった”老人であったというオチだ。美女との年の差は、五十歳以上。

　男（老人）からの強引な求愛を嫌がった美女は「やめてください！！　もう、いい加減にして！！」と、奴を突き飛ばしてしまった。
　後頭部を強打し、男は死亡。
　状況的には完全なる正当防衛であったとはいえ、美女は人を殺してしまった。

　と、その時、背後に気配を感じた彼女は振り返った。
　見覚えのある若い男が”宙に浮かんでいた”。

　明らかに人外の者であるこの若い男は、数年前の夜に美女に”さらなる美貌と成功・名声・財産を授けるための交渉”にやってきた。
　だが、その当時の美女はこの男との”契約は結ばなかった”。
※　前作の美女は、決して逃れられない腋毛と引き換えに、自身の美貌、富、名声を手に入れたが、本作の美女は”未契約”だった。

　若い男は言う。
「こんな男のために、あんたが今までに必死で(自分の力だけで）築いてきたものを失うことはない。俺がこの事態を片づけてやる（死体の後始末をしてやる）」と。
　そして――
「仮に他の者に何を聞かれても、あんたはシラを切りとおせばいい。今夜のことは、俺とあんただけの”秘密”だ」とも。

　
　彼の助けを借り”殺人という秘密”を共有することになるも、その交換条件（代償）は一体、何であるのか？　と慄く美女。
　美女からの問いに「俺があんたに望む交換条件は一つだけだ。あんたがこれからも詩を書き続けることだ」と答える彼。

　この彼もまた、世間の者たちと同じく彼女の詩の愛好者であった。人外の者ではあるものの、一人のファンとしての立場で彼女を”助けよう”としてくれたのだ。


　その後……
　”秘密の一夜”より、ちょうど三年の月日が経った。
　美女は、ただ一人で暮らしていた屋敷の浴槽にて手首を切り自殺。この三年の間、彼女は一篇の詩も世に発表してはいなかった。

　自身が抱えることになった”秘密”に――自身が犯した罪に、真っ当な精神を持っていたからこそ、ジワジワと押し潰されていった彼女には、もう詩を生み出すことは無理であったのだ。

　彼女の遺書には、ただ一言、「ごめんなさい」と記されていた。

　その遺書は自身が殺めてしまった男に対してのものか、あの夜に人外の者が助けてくれたにも関わらず契約を破った（詩を生み出し続けることができなかった）ことを詫びるつもりのものか、それとも他の誰かに宛ててのものかは、不明のままである。


⇒【R15】美女の秘密　PART２【なずみのホラー便　第45弾】
（完結日：2019年11月3日）


★作者コメント★
　”過去作のタイトルはそのまま、違ったテーマと具材で調理”というアイデアは、ベッドの上でウトウトしていた時にひらめいたものです。

　不思議なことですが、うーんうーんと悩み続けていても、その悩みをふわりと手放しつつある”現実と夢の狭間にいる時”に、パッと答えや解決策がひらめくことが多々ありますね。