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嫉妬はどこへ?

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【問題文】

 クロエはブランドンと暮らす家で、友人たちを集めてのパーティーを計画しました。
 パーティー当日、友人たちが続々とクロエの家にやってきました。
 その中には、カップルであるジェレマイアとキンバリーの姿もありました。
 ジェレマイアが美人のキンバリーにベタ惚れであるのは、クロエも含めて誰もが知っています。
 長身でムッキムキの筋肉にゴッリゴリのタトゥーがトレードマークのジェレマイアは威圧感があり、如何にもアドレナリンの分泌が激しそうなタイプです。
 現に、以前にクラブでキンバリーにしつこくまとわりついてきた男に殴りかかっていきそうになったという物騒なエピソードまで保有していました。

 パーティーの時間は何事もなく過ぎゆきました。
 ふと、クロエはキンバリーの姿が見えなくなったことに気づきます。
 リビングを抜け出し、キンバリーを探しに行ったクロエ。
 当のキンバリーは、客室のベッドでブランドンと寝ていました。
 その光景を見たクロエの胸がズキンと痛みます。
 そして、背後に人の気配を感じたクロエが振り返ると、ジェレマイアが立っていました。
 ジェレマイアもキンバリーを探しに来たのでしょう。
 なお、ジェレマイアも客室の光景をしっかりと見てしまいました。
 ですが、彼は「しゃあねえな」と呟き、「俺たちは皆のところに戻って、飲み直そうぜ」とクロエに言いました。
 さて、なぜクロエもジェレマイアも怒らなかったのでしょうか?


【質問と解答】

キクちゃん : パーティーで姿が見えなくなった自分の恋人が別の人とベッドで寝ている……。これは最悪の光景ですね。なお、ジェレマイアさんはいかにも血の気が多そうですし、彼女を寝取られ……い、いえ、彼女が別の男性とベッドで寝ていて、黙って引き下がるとは思えないのですが。他人に止められても、殴りかかっていきそうな感じがします。

チエコ先生 : そうね。ジェレマイアの血の気に対する考察は当たっているわ。

キクちゃん : やっぱり、そうですよね。となると、キンバリーさんと寝ていた相手が、”ブランドンさんでなかった場合”、ジェレマイアさんは殴りかかっていっていましか?

チエコ先生 : YES。頭にカアッと瞬時に血がのぼったジェレマイアは、間違いなく相手をボッコボコにしていたでしょうね。

キクちゃん : ジェレマイアさんにとって、ブランドンさんがどういった存在であるのかを考えていこうと思います。衝撃の光景を見てしまったジェレマイアさんの「しゃあねえな」という言葉から推察するに……ジェレマイアさんは、ブランドンさんが相手なら”仕方ない”という劣等感を抱いていていたのでしょうか?

チエコ先生 : NO。

キクちゃん : 劣等感でないなら……自分の恋人が別の人に惹かれていることに前から気づいていて……とてもつらいことだけど、恋人を愛しているなら恋人の幸せを祈ろうと思ったのでしょうか? これはジェレマイアさんだけでなく、クロエさんも。

チエコ先生 : NO。

キクちゃん : もしかして、ジェレマイアさんとクロエさんの方が先に密かにデキていて……いや、あの、密かに付き合っていて、自分たちの方が先に浮気していたから、それぞれの恋人に浮気されても仕方ないと思ったのでしょうか?

チエコ先生 : NO。そんなドッロドロの恋愛模様じゃないわ。キクちゃん、今回の問題文を読んだキクちゃんはどういった光景を頭の中に描いている?

キクちゃん : えーと……今回の舞台はおそらくアメリカ? ……のような感じで、同じ年頃のリア充な男女が集まってホームパーティーをしている光景です。ホスト側のクロエさんはブランドンさんと一緒に暮らしていて……クロエさんとブランドンさんの方も、もちろんカップルですよね?

チエコ先生 : NO。カップルの定義は、昨今様々だけど恋愛感情によって彼女たちが結びついたとするなら、NOね。

キクちゃん : カップルじゃなかったんですね……。単に気の合う男女の友人でルームシェアをしていただけだったのかも? でも、クロエさんはキンバリーさんとブランドンさんがベッドで寝ている光景を見て傷ついていますし。もしかして、ブランドンさんに片思いしていたのかな……?

チエコ先生 : キクちゃん、クロエとブランドンの関係にもう少し踏み込んでみて。

キクちゃん : 彼女たちは友人ですか?

チエコ先生 : NO。

キクちゃん : 家族ですか?

チエコ先生 : YES。

キクちゃん : 兄弟ですか?

チエコ先生 : NO。

キクちゃん : ……文脈的に父親とは思えないし、そもそも父親が自分の友人とベッドで寝ていたなんて、気持ち悪いにも程がある光景ですし……ブランドンさんはクロエさんの息子ですか?

チエコ先生 : NO。

キクちゃん : 兄弟でもなく、息子でもない。となると、ブランドンさんはクロエさんのペットですか?

チエコ先生 : YES。正解よ。ブランドンは、4歳のゴールデン・レトリバーよ。フワフワの毛並みのお利口さんで、とっても可愛いの。

キクちゃん : 可愛い犬と一緒に寝ていたら、誰も怒れませんよね。血の気が多いジェレマイアさんも「しゃあねえな」ってなりますよ。ほのぼの光景ですね。

チエコ先生 : そうね。ちなみにクロエの胸がズキンと痛んだのは、飼い主としての嫉妬によるものよ。「もうブランドンったら、いつもあんなに『ママ♪ ママ♪』って私にべったり甘えてくるのに、キンバリーともあんなに気持ちよさそうに寝ているなんて……」ってね。


(完🐶)
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