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☆第3章終了時点における登場人物紹介(ファーストネームでの昇順)☆ネタバレ含む

★特別付録その3★ 第3章までの重要語句索引

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 第3章までの重要語句索引(昇順)です。
 ややどうでもいい語句も中には含まれています。
 そして、今後の展開においての少しばかりのヒントも……

【あ行】
●青い月:あおいつき
 レイナの魂が誘われた、この異世界の月はなぜか青い。
 その冴え渡るような青さは、マリアやジョセフの瞳によく例えられる。

●アドリアナ王国:あどりあなおうこく
 レイナがアンバーの「星呼びの術」によって、誘われた異世界の国。
 首都はシャノン。
 現在の国王は、ジョセフとマリアの父であるルーカス・エドワルド。
 異世界にあるいくつかの国のなかで、最も平和であり広大な領土を持つ国である。

●アポストル:あぽすとる
 死してこの異世界の精霊となった魔導士のこと。
 ”この世を守る大きな存在”とも、作中では表現されている。

(豆知識)
 作中に名前もしくは存在をにおわせた、または実際にアポストルとなった者は、今のところは以下の3人だけである。
  ・アンバー・ミーガン・オスティーン
  ・ゲイブに手紙を託したちょっと怖いお兄ちゃん
  ・ニーナレーン(現時点では伝説)

●アリスの町:ありすのまち
 レイナがこの異世界で移動することとなった3番目の町。
 ダニエルの実家(立派なお城)がある町。
 そして、アンバーの最期の地となった町。

●アレクシスの町:あれくしすのまち
 レイナがこの異世界で移動することとなった5番目の町。
 やや牧歌的な雰囲気の町。
 アダムとジェニーの家が”あった”町。

●暗黒に飲まれし民たち:あんこくにのまれしたみたち
 アポストルからの2回目の啓示にあった一説。
 この”民たち”とは、59年前、闇へと消えたユーフェミア国の民たちのことを指しているのか?

●異世界:いせかい
 レイナからすると、アンバーの魔術によって誘われたこの世界が異世界である。
 だが、このアドリアナ王国で暮らしている者たちからすると、レイナの魂がいた世界こそが異世界である。
 特にフランシスは、レイナがいた異世界に興味深々である。

●ヴィンセント:ヴぃんせんと
 「希望の光を運ぶ者たち」の1人である、ヴィンセント・マクシミリアン・スクリムジョー。
 燃えるような赤毛で、全身より強烈なフェロモンを発する超美男子の彼であるが、その正体については、まだ不明である。
 普通の人間に見えるが、おそらく普通の人間ではないヴィンセント。
 赤子の彼が”木のゆりかごに乗せられた状態で海岸へと打ち上げられた”――つまり、海からやってきた? ということが、今後、彼の正体の鍵になるに違いない。

●運:うん
 人間として生を受け、そして人生という物語を紡いでいくうえで、生まれもった身分や容姿、能力、それらと同等、いやそれら以上の大きなウェイトを占めているもの。
 けれども、やれ絶世の美女だの、やれ高貴な身分だの、やれ魔導士の力だの、やれ怪力だの……といった生まれ持ったものも、人生のスタート地点において、かなりのウェイトを占めていると思わずにはいられない。
 運も、生まれ持ったものもどちらも、人間社会において生きる人間にとっては、それぞれの人生という物語において、多大な影響を与えるものであるだろう。

●影生者:えいせいしゃ
 2000人に1人ぐらいの確率で、この世に生を受ける能力者。
 魔導士よりも、希少な存在。ダリオいわく、魔導士の亜種版。
 自分の肉体より外部に気を発することができるのが魔導士なら、この影生者たちは対峙する対手に目くらましのように肉体を見えなくすることができる者たちである。
 四文字の漢字で言うなら、透明人間。
 魔導士の力を持っていない人間でも、その肉体に気――魂が放つ輝きは誰もが持っている。影生者たちは、その肉体が放つ気を増減させ、まるで目くらましのように、いるはずの者を自由自在にその場にいない者とすることができるのだ。

(豆知識)
 アリスの町で、レイナたちの護衛をジョセフより承ったにも関わらず、報酬だけを持ち逃げした2人の金髪碧眼の兄妹であるが、影生者たちの出生率から推測すると、おそらく同時にこの世に生を受けた者たち――つまりは、男女の双子であるだろう。

●おしおきリスト:おしおきりすと
 魔導士・フランシスが自分に失敬なふるまいをした者に、いつかおしおきをするために、彼の脳内に書き留めているリスト。結構、根に持つタイプであるらしい。
 彼を変質者呼ばわりしたカールとダリオ、そして彼の顔真似をしたルークも、そのおしおきリストに加わったことが作中で明らかとなった。

●オプション:おぷしょん
 フランシスが手に入れている魔導士としてのオプションで判明しているのは、今のところは彼が神人の力を手に入れているということだけである。
 だが、こいつには、まだ他にもオプションがついている模様だ。
 そもそも、フランシスは作中でアンバーに以下のようにも言っている。

「おやおや私が魔導士という力に”加え”、神人の力を手に入れた経緯については、聞かないのですか。聞いてくれるものと思っていましたのに……」 
(第2章―3― 風の棺に運ばれし者(1)より抜粋)

 以上のことより推測すると、フランシスは生まれた時は魔導士としての力を持っていなかったということだろう。

●お前が言うな:おまえがいうな
 作中、フランシスやマリアに何度も突っ込みたくなる言葉。
 ちなみに、オーガストがフランシスに突っ込んでいた。


【か行】
●神人:かみびと
 レイナがいた元の世界でもなく、レイナが誘われたこの異世界でもなく、また別の異世界に住む人々のこと。
 その神人たちが住む世界は、この異世界との距離が非常に近く、1つの海を越えるぐらいの感覚であるらしい。時々、異世界の者が神人の世界に飛ばされたり、神人が時折、異世界に姿を現すこともあると、文献には記されている。

 以下が判明している神人の特徴である。
・程度の違いはあるが、一様にして皆美しい容姿を持っている
・翼もないのに鳥のように空を自由に飛び回れ、尾びれもないのに魚のように水の中を泳ぐことができる
・肉体年齢は、各々が一番美しく、体力ともに最高潮のところで止まり、老いることや病に苦しむことはない
・ただし、彼らにも死は訪れる
・魔術を使える者はいない
・神人として生まれた者の証明として、彼らの右手の薬指の付け根には永久に消すことができない刻印が刻まれている
・その刻印の模様は神人の世界にて、それぞれが与えられた役割――例えば「護る者」「導く者」などによって異なっている

(豆知識)
 神人と契った(セックスした)者は、右手ではなく左手の薬指に刻印が入る。
 アンバーは、フランシスの左手の薬指に模様が刻まれているのを確認した。
 だが、フランシスは神人たちと契ったわけではないと言っていた。そもそも、自分たちの前に現れた神人たちは、皆、男だったと。
 フランシスは男でも、契ることができないわけではないと言っていたが……
 さて、彼はどのような経緯で神人の力を手に入れたのだろう?

●神人の板:かみびとのいた
 フランシス一味である、ネイサンとローズマリーが乗っていた木の板。
 神人の力をまだ手に入れていないネイサンとローズマリーは、空を飛ぶ性質を持っているこの木の板に乗って、登場&退却していった。
 魔導士の力を持っていない者には、古びてささくれだったただの木の板にしか見えなかったが、実際に手を触れたアダムには、この神人の板に隠された忌まわしく哀しい秘密が分かったらしい。
 おそらく、彼がルークたちと行動をともにする後押しをした自称の1つが、この神人の板であるだろう。

●神人の船:かみびとのふね
 フランシス一味のアジトとなっている空に浮かぶ船。
 オーガストは、”呪われた船”と形容していた。断末魔が聞こえてきそうだとも、彼は思っていた。
 フランシスが魔術で空に浮かび上がらせ、動かしているわけではない。
 フランシスいわく、”この船は生きているのです。この船を動かしている”者たち”がいるのです”と……

●頑固じいさん:がんこじいさん
 アダム・ポール・タウンゼントのこと。
 だが、ジェニーや町の人より、”頑固なところ”があると言われているだけで、実際の頑固さを示すこれといったエピソードはない。

●近親相姦:きんしんそうかん
 マリアの性的嗜好の1つ。

●希望の光を運ぶ者たち:きぼうのひかりをはこぶものたち
 ルーク・ノア・ロビンソン(18)
 ディラン・ニール・ハドソン(18)
 トレヴァー・モーリス・ガルシア(20)
 アダム・ポール・タウンゼント(83)
 ヴィンセント・マクシミリアン・スクリムジョー(23)
 ダニエル・コーディ・ホワイト(19)
 フレデリック・ジーン・ロゴ(19)
  以上の7名のこと

●くすぶりつづける命の残り火:くすぶりつづけるいのちののこりび
 アンバーが命を落とした戦いにおいて、フランシスが退却する際、ジョセフに”くすぶり続ける命の残り火にはくれぐれもお気をつけくださいませ”と言った。
 これが何を指しているのかは、まだ明らかにはなっていない。

●凍った騎士:こおったきし
 フレデリック(フレディ)・ジーン・ロゴならびに、彼と同じく、約200年前に魔導士に奇襲され、その肉体だけでなく、魂までも氷漬けにされ、肉体が死を迎えても魂が生まれ変わることが許されなかった7人の騎士たち。
 アダムの魔導士としての力により、7人の騎士のうち、6人の魂は無事に解放することができた。
 最後のフレディの番が来た時、悪しき者たちからの襲撃により、フレディのみが、生者でも死者でもない状態で「蘇生」してしまい、ルークたちの仲間に加わることとなった。

●国王 ジョセフ・ガイ:こくおう じょせふ・がい
 今より約200年ほど前にこのアドリアナ王国を治めていた国王。
 フレディと同じ時代に生きていた人物。
 今は平和なアドリアナ王国であるも、約200年前は内乱や他国からの奇襲で非常に不安定であった。そんななかにあっても、国王ジョセフ・ガイは文武にたけ、非常に有能な国王であり、民たちに人気があったと歴史には残っている。

(豆知識)
 国王ジョセフ・ガイの治世において、戦地に赴く若者たちの間で両手首に腕輪を付けるのが流行った。いわゆるおまじない、もしくは願掛け。
 ”左の腕輪に自分が命をかけて愛する者、または絶対に忠誠を誓う者の名前を彫ってもらい、そして右の腕輪には自分の名前を彫る。こうして、左の腕輪に大切な者、右の腕輪に自分という唯一無二の存在の名を彫った腕輪を身につけることにより、例え、戦場で窮地に陥ったとしても、死の窮地から引き上げられるのだ”とのことを、ダニエルがレイナやルークたちに丁寧に解説してくれた。
 引きこもって本ばかり読んでいたダニエルであったが、きちんと本より得た知識を身に着け、役立たせたことが分かるエピソードでもあった。

●59年前のあの事件:ごじゅうきゅうねんまえのあのじけん
 今より59年前は、天変地異(ユーフェミア国が闇に消えたこと)だけでなく、様々な事件が起こった年であった。
 59年前の事件について、説明するよりも本編より抜粋する。

『当時、アダム・ポール・タウンゼントは、24才であった。
 ユーフェミア国が闇へと包まれて消えた同じこの年、このアドリアナ王国に”神人たち”が姿を現したのだ。一様にして美しい容貌をし、翼もないのに鳥のように空を飛べ、尾びれもないのに水の中を自由に泳ぐことのできる神人たちは、皆、男性であったと文献には残っている。
 その神人たちは、アダム・ポール・タウンゼント含む魔導士たちと友好的な関係を築き始めていた。特にアダムは、”トーマス”という神人と親しくしていたらしい。
 だが……
 ある日、サミュエル・メイナード・ヘルキャット含む複数の魔導士たちが襲撃をかけた。彼らはアダムの仲間である魔導士数人と、たまたまその近くにいた一般人10数名を巻き添えで殺害し、神人たちを1人残らず誘拐した。
 アダム含む他の魔導士たち、そして役人たちによる必死の追跡の結果、山の麓のある平らな一帯でおびただしい量の血痕が発見された。実際にその現場にいた者の話によれば、血痕というよりも”一面の血の海”といった表現の方が正しいとのことであった。
 アダム含む魔導士たちがその血の海に残っていた気を調べると、間違いなくその血はさらわれた神人たちのものであり、しかもその血痕量から神人たちの生存は絶望であると推測された。
 そして、当時、現場付近に居を構えていた複数の平民たちの話では、その神人たちの殺害推定時刻だと思われる深夜に、大きな船のような物体が上空にユラリと浮かび上がったと――
 その浮かび上がった”船”は、漆黒の夜空がまるで大海原であるかのように船を走らせ、そのまま漆黒の夜空に溶け込んでいった――との詳細な目撃情報まで文献に記されていた。』
(第3章―12― カールとダリオへの経過報告より抜粋)

 この事件を機に、サミュエル・メイナード・ヘルキャットは姿を消した。
 いわゆる指名手配犯である彼は、59年もの間、法の手をかいくぐっている。
 そして、魔導士・ヘレンは直接この事件には関与はしていないようだが、やはり彼女の人生を大きく変える出来事でもあったろう。
 またしても、59年前の事件について、説明するよりも本編より抜粋する。

『ふうっと溜息をついたフランシスは、依然として膝の上の本に目を落としたままのヘレンに問う。
「で、ヘレン。話は元に戻るのですが、59年前の事件はあなたの人生をも一変させる出来事でございましたね。まさか、あなたの保護者が私やサミュエルたちより、ちょろまかした”あれ”を”一番の愛娘”であったあなたに与えるとは思いませんでした」
 ヘレンの手がピタッと止まった。
 彼女は膝の上の物語を読んでいるふりをしながら、しっかりと自分の話を聞いている。いや、聞かずにはいられないとフランシスは分かっていた。
「盗人には罰を……と私とサミュエルがあの者の元へと駆け付けましたところ、既に彼はあなたの手によって……それ以来あなたは私たちの仲間となった。魔導士の力という種を持って生まれていながらも、育つ土俵が最低最悪であったことがあなたの人生最大の不運でございましたね」』
(第3章―2― そして、物語は動き出すより抜粋)

●言葉が通じる:ことばがつうじる
 レイナは、この異世界において、日本語以外をしゃべっているつもりはない。
 だが、どう見ても西洋人にしか見えない異世界の者たちに言葉が通じて、スムーズに意思の疎通ができている。これは大きな幸運であるだろう。

●駒:こま
 魔術による悪趣味な覗き見の際、フランシスがフレディ含む凍った騎士たち7人を指して言った言葉。
 そして、フランシスは、こうも言っていた。
 ”駒が108から101に減ったところで、それほど大きな打撃は受けませんからね”とも……
 つまり、約200年前にその肉体も魂も凍てつかせる、邪悪で陰険な呪いをかけられたのはフレディたち7人だけではないということだ。


【さ行】
●最低限のプライバシー:さいていげんのぷらいばしー
 フランシスが魔術でレイナたちの様子を覗き見する際に、守っていること。
 そもそも、覗き見の時点でフランシスは他人のプライバシーを侵害している。

●サマンサがマリアにかけられた液体:さまんさがまりあにかけられたえきたい
 おそらくフランシスがマリアの残虐な趣味のために、プレゼントした液体。
 成分不明。小瓶に入った血のように生臭い色をしたこの液体は、サマンサの若さに溢れていたなめらかな肌をジュクジュクと”焦がし続けた”。
 悪魔マリアとフランシスの手によって、サマンサが地獄を味わうこととなった非常に特殊な魔法薬。
 城に仕えるアンバーたち魔導士が、あらゆる知識、そして治癒の気を送り込んでも、回復の兆しはみられなかったが、アリスの町の山の麓での戦い後、フランシスが一時退却を表明して以来、彼女の火傷の具合は回復へと向かっているとのことである。

●サマンサを手引きした者:さまんさをてびきしたもの
 侍女・サマンサを手引きし、レイナを襲わせた者については、現時点では不明である。

●識字率:しきじりつ
 この異世界では、レイナが生まれ育った日本のような義務教育はない。
 そもそも、下流の生まれの者には教育の機会すら与えられないようだ。
 王族であるジョセフ、マリア、元貴族であるダニエル、教育を受けているアンバー、カール、ダリオは読み書きができる。
 ヴィンセントも、育ての親が教師であったため、おそらくできると思われる。
 ジェニーは祖父のアダムに読み書きを教わっていたらしいが、習得度はややあやしい。
 教育を受ける機会などなかったルーク、ディラン、トレヴァーは、文字の読み書きはできない。フレディは、何とか自分の名前や簡単な人名や地名のいくつかは書け、読めるといった具合であるらしい。

●シャノン:しゃのん
 アドリアナ王国の首都。
 レイナのこの異世界での始まりの場所。
 ジョセフ、マリア、アンバー、カール、ダリオの生誕地。

●自由:じゆう
 マリアが望んでいたこと。何にもとらわれず、自分のしたいこと(残虐&淫乱な欲望)を満たしたいと思っていた彼女。
 でも、そんなのは自由などではない。 

●ジョセフが見た夢:じょせふがみたゆめ

「その夢の中の私はいつものように床についている。そこに扉を開けて現れる者がいるのだ。そいつは……全身真っ黒焦げで白い骨がところどころ剥き出しになっており……完全に死者としか思えないそいつは、ケタケタと白い歯をむき出しにし笑いながら、寝ている私に向かって手を伸ばしてくる。私はそいつを切り殺そうと剣を抜く、だがそいつはそれよりも素早く私の腕を掴み、窓の外へと飛び出す。そして、まるで鳥のように夜空を飛び、私をどこかに連れていくのだ……」
(第1章―8― マリア王女について(1)より抜粋)

 夢の中とはいえ、ジョセフに迫りくる醜悪な死体。そいつは、ジョセフを「捉え」て、どこかに「連れて」行く。それはまさか、何か悪しき者からの迎えであり、彼を二度と戻っては来れぬ死者の国へと連れていくのでは――と、この話を聞いたアンバーはそう思わずいられなかった。
 果たして、これは単なる悪夢なのか、それとも……

●ジョセフとアンバー:じょせふとあんばー
 王子と臣下という身分の差はあったが、幼い頃からの深い絆で結ばれ、互いに思いあってもいたものの、結ばれることのなかった2人の男女。


【た行】
●中世ヨーロッパ:ちゅうせいよーろっぱ
 レイナから見たこの異世界の服装や情景を表現する時に、作者が使用している言葉。
 この異世界のおおよその情景を表す言葉だと思ってもらえればいい。

●デブラの町:でぶらのまち
 レイナが自分の意志に関わらず、移動してしまった町。
 アドリアナ王国の最北部に位置する小さな町。
 首都シャノンからは、馬でも20日以上はかかるらしい。ジェニー談では、人の出入りが多く、様々な職業の者が立ち寄るそうである。

●デメトラの町:でめとらのまち
 アドリアナ王国内の町。
 首都シャノンより、町を1つ挟んでいる。
 トレヴァーは以前、この町でジョセフとマリアを見たことがある。
 そして、トレヴァーはこの町でマリアが何をやらかしたのかを知っている。あのサイコパス王女が何をしでかしたかは、まだ作中では明らかになっていない。


【な行】
●ニーナレーンの伝説:にーなれーんのでんせつ
 現在にも語り継がれるアポストルとなった1人の女性の伝説。
 1000年前、神殿の巫女であった女性――ニーナレーンは海の上で追い詰められ、殺された。その後、彼女はアポストルとなり、この世界で数多の命が生まれいづる冥海を守るようになったとの伝説。

●肉体連鎖の術:にくたいれんさのじゅつ
 ジョセフたちによるマリア暗殺計画を感じ取っていたフランシスが、先手をうち、マリアと王妃エリーゼの肉体を連鎖させていた。
 つまり、マリアを殺せば王妃も死ぬぞ、と。
 フランシスが聞いてもいないのに、ベラベラしゃべったことにより、この暗殺計画をおそらく知らなかっただろう王妃の命はつながり、そしてアンバーがマリアの肉体を保護したまま、魂だけを追い出す「星呼びの術」を使い、レイナがこの異世界に誘われることとなったのだ。

●ノート:のーと
 レイナがアンバーの遺品として、ジョセフ王子より受け取った自由帳のようなアンティークなノート。
 このノートに、レイナはこの異世界で自分が遭遇したこと、学んだことを書き留めていっている。その”書く”という行為は、異世界で生きるしかないレイナの不安と恐怖、そして魂に刻まれた哀しみに波打つ心を静める役割を作中で果たしている。
 今は何もかもが、バラバラのピースのように、このノートに散らばっている。でも、いつの日か、レイナが書き留めた全てのピースがつながり、レイナの魂に響いてくるに違いない重要なアイテムである。


【は行】
●話が長い:はなしがながい
 フランシスの特徴の1つ。
 このことによって、レイナは何度も命拾いをしている。

●花が喋った:はながしゃべった
 マリアの手によりこの世に生まれいづることができなかった弟王子は、喋る花としてジョセフとアンバーの前に現れた。
 彼は、”さる者より話を聞き、ニーナレーンの海から抜け出してきた”と、ジョセフたちに告げた。弟王子に話をした”さる者”について、現段階では不明である。

●棺:ひつぎ
 フランシスが持っているアイテム。
 蜘蛛の巣のようなヒビが幾多も入った、今にも崩れ落ちそうなほど古びた棺。
 その棺の中には、錆びた一本の剣と棺の中から”生えている”ような漆黒の手枷と足枷がある。
 ちなみに手枷と足枷は、この棺の中に一時的に囚われたアンバーによって壊された。
 彼は、この棺に”迎え入れる者”の第一候補として、アンバーを狙っていたらしい。
 アンバーが亡き今、彼がこの棺に迎え入れることとなるのは、一体……?
 以下は本編より抜粋。

「サミュエルの昔なじみの例の人を棺へと迎え入れる第一候補としております。けれども、比喩ではなく本当に棺桶に片足を突っ込みはじめているような例の人よりも、妙齢の美しい女性の方が絵的に映えるのですがねえ。ちょっと不満はありますが、致し方ないことです。ですが、万が一のこともありますので、予備の道具も見つけておかなければね……アンバーや例の人に比べたら、生まれ持った魔導士としての力はやや劣りますが、他人なのに双子みたいなあの失敬な魔導士コンビでもいいですね」
(第3章―2― そして、物語は動き出すより抜粋)

(豆知識)
 棺の中に入っていた剣で、フランシスは自分の喉を剣で貫いたとマリアに話していた。そして、その剣はアンバーの命を奪った凶器にもなった。

●フェイトの石:ふぇいとのいし
 フランシスとマリアが契約を結ぶために、マリアにプレゼントした魔術の効能がある石。
 この石は”レイナ(マリア)”の肉体を守り、フランシスたちにデブラの町に飛んでしまった”レイナ(マリア)”の居場所を知らせた。
 レイナがこの石に手を触れた時、なまめかしくていけない18禁の映像(マリアとフランシスのベッドイン直前まで)が、流れ込んでくるように彼女のなかで再生された。
 マリアがフランシスの逆鱗に触れたため、契約は終了することとなった。よって、フランシスはレイナ(マリア)”の左薬指につけられていたフェイトの石を砕いた。

●船:ふね
 現時点では比喩表現として、エピソードタイトルならび作中に幾度も出た言葉。
 だが、これから先、おそらくルークたちは実際に船に乗って、”暗黒に飲まれし民たち”のところに向かうものと見られる。

●フランシスが操る触手:ふらんしすがあやつるしょくしゅ
 本人いわく、通常は気品ある気品のある紫。
 遊び心を加えたいときは、舞台から浮かないような色にしているらしい。
※例:アリスの町の山の麓での純白の大蛇の気での攻撃など
 けれども、フランシスの堪忍袋の尾が切れそうな時は燃え滾る赤色である。実際に、自分の極めて紳士的な誘いを断ったアンバーには、赤色の触手で攻撃した。

●フランシスだけのユートピア:ふらんしすだけのゆーとぴあ
 第2章にて、フランシスがアンバーを魔術によって、招待――はたからみたら拉致した場所。
 フランシスの心に”残っている”世界を実体化した空間。
 100年以上の時を生きている彼の過去に起因する場所であるには間違いない。
 以下、本編より抜粋。 

『アンバーは、バッと辺りを見回したが、当のフランシスの姿は見えなかった。
 そのうえ、つい先ほどまで感じていた、冬の冷気と雪による、彼女の肌を刺す冷たさはなくなっていた。それどころか、春の名残を思わせるほどの、やわらかな空気がこの場には満ちているのだ。
――ここは……アドリアナ王国内にどこかにある教会には間違いはないはず。けれども……
 極めて荘厳な雰囲気が醸し出され、その装飾や構造もアドリアナ王国内の建物であることを示していた。そして、高い窓から差し込んでいる日の光は、まさに道に迷った者に対しての救いを示しているかのようであった。
 だが、アンバーは思う。
 ここは決して異国や異世界などではない。
 だが、自分が生きてきた19年の人生のなかにおいて、一度も感じたことのない風が漂っている。それはおそらく、1つの時代において吹いている風のようなものだろう。自分は生まれる遥か昔、そう現在より100年以上前の……』
(第2章―3― 風の棺に運ばれし者(1)より抜粋)

●フランシスの遺体:ふらんしすのいたい
 この世界に「星呼びの術」によって誘われたばかりであったレイナの隣で、血だらけの死体となって転がっていた男性は、間違いなくフランシスであった。
 だが、フランシスはデブラの町で「生者」として、レイナの前に再び現れた。
 そのうえ、首都シャノンにてアンバー含む魔導士がフランシスの遺体を調べたところ、人形ではなく間違いなく生身の人間のものであったと。フランシスも、長ったらしい話の中で、あの遺体”も”間違いなく自分であると認めていた。
 訳が分からない話だ。
 フランシスの遺体は、火にくべても完全に骨になることはなかった。そう、まるで、くすぶり続けている命の残り火のように。
 今も、そのフランシスの遺体は、魔導士たちが首都シャノンの城の奥深くに封印しているとのことである。

●豊満:ほうまん
 作中でその体型をこの言葉で表現されたのは、デブラの町の宿の女将と超武闘派のローズマリーの2人である。
 だが、前者は脂肪によって、後者は筋肉によってである。

●星呼びの術:ほしよびのじゅつ
 アンバーが使用した魔術。レイナのこの異世界での物語の始まりとなった魔術。
 この「星呼びの術」によって、マリアの魂は本来の肉体を追い出され、代わりにレイナの魂がマリアの肉体に入ることとなった。
 この「星呼びの術」は、肉体の中にいざなう魂の指定はできない。
 肉体の中に入ることを望む者が自殺するなどはもってのほか。
 それこそ、夜空に流れる星の1つを偶然に呼び寄せ捕まえるようなものであり、ほんの数秒の差で、レイナではなく別の死出の旅へと赴く者の魂が入っていたかもしれない。

(豆知識)
 「星呼びの術」を使用してから約7日間は、魂と肉体がまだ完全になじみ込んでいないため、そこに衝撃を与えられると、その肉体が本人の意思にかかわらず消失ともいえる形で他の場所に移動してしまうことがあると文献も記載があった。
 この文献の事例通り、サマンサに襲われたレイナは首都シャノンから、アドリアナ王国の最北の町・デブラへと移動してしまった。
 そして、そこでレイナはルーク、ディラン、トレヴァーという、北の町の3人の青年たちと出会うことに。

(豆知識)
 「星呼びの術」を使って肉体にいざなった魂を強制的に追い出すと、その追い出された魂は冥海にも行けず、永遠にこの世界を彷徨い続けることとなるらしい。
 彷徨うその魂に気づくことができるのは、アポストルとなった魔導士ぐらいであるとのフランシス談。


【ま行】
●魔導士:まどうし
 レイナが誘われた異世界においての魔導士の定義は、肉体より自身の魂が持つ気を放出することができる人とのことであろう。
 ダイナミックなファンタジーのように、神獣などを操ったりできるわけではない。
 なお、今のところは、この異世界にはモンスターなども登場しない。モンスターのような心を持つ奴らはいるけど。
 その放出する魂の気を元に、炎や触手を生じさせたり、瞬間移動を行ったりする。
 ただし、瞬間移動は非常に体力と集中力を使うものである。

 この異世界での魔導士は、おおよそ500人に1人の割合で誕生する。
 魔導士の力を持つ者がこの世界で初めての産声をあげる時、その肉体が一瞬、金色に輝くのだ。
 その魔導士としての力の強さは生まれ持った時に決まっている。つまり、一種の才能であり、努力云々といった話ではない。
 だが、魔導士の力に善悪などといったものはない。どう使うかは、魔導士自身の心次第である。

●冥海:めいかい
 冥界でなく、冥海。
 この異世界でも、肉体は滅びても、魂は永遠のものであるらしい。
 その死せる魂は冥海へと誘われ、そして、また生まれ変わり……
 よくよく考えると、「星呼びの術」とは冥海へと向かう魂を呼び寄せ、定めた肉体に入れる術であるが、そこにレイナの魂が入ったということは、レイナが生きていた世界とこの世界の者たちが逝きつく先がいずれ同じ冥海であるとの証明でもあるだろう。


【や行】
●ユーフェミア国:ゆーふぇみあこく
 現在より59年前より、闇に包まれ消えた幻の国。
 フランシスは、ユーフェミア国が闇に包まれ消えゆくのを”当時の”同士たちと目撃していた。
 その彼の”当時の”同士の1人が、サミュエル・メイナード・ヘルキャット。
 この消えてしまったユーフェミア国は、”フランシスの計画”の足掛かりとなるものらしい。
 以下は本編より抜粋。

『「お二方とも、ユーフェミア国はご存知ですか?」
「確か、今より59年前に、突如この世界から”いなくなってしまった”幻の国のはずだわ」
「その通りです、マリア王女。私は今から私が今から話す59年前に、まさにそのユーフェミア国が闇に包まれ消えゆくのを”当時の”同士たちと目撃しました。私の計画とは、そのユーフェミア国に関することなのです。あなた様にも気に入っていただけるかと。特にこの世に並ぶものもないほどの、あなた様のその美しさを永遠のものとすることもできるのですから……」
 フランシスの言葉に、マリアはその青き瞳を輝かせ、体温を持たないはずの頬を上気させた。だが、オーガストは今からフランシスに聞かされるであろう、その計画に背筋がゾワゾワと波打ち、落ち着かなかった。』
(第1章―10― ジョセフとアンバー(1)より抜粋)


『フランシスはもったいぶるように、そして重大な意味を含ませるように息を吐き、そして続けた。
「ユーフェミア国に関する私の計画をね」
「あの……ユーフェミア国の?」
 ユーフェミア国。それは、この世界より消失し、幻となってしまった国であった。
「そう、あなたがこの世に生を受ける40年前、ユーフェミア国は闇に包まれ、そして消えゆくところを私も当時の同士たちとしっかりとこの瞳で確認いたしました」
 フランシスはクククと、さらに嫌な笑い方をした。
「消えてしまった国。このアドリアナ王国においても、先々代の国王が幾人もの魔導士や兵士を乗せた、調査と救援のための船をユーフェミア国へと向かわせました。けれども、誰一人として、ユーフェミア国に行き着くことはできなかった……ですが、ユーフェミア国は、いや、まだユーフェミア国の民たちは生きております。あと数歩で地獄に踏み入れるほどの劣悪な環境で、命の炎をキリキリと燃やしながらね。私はそのユーフェミア国を”足掛かり”として、達成したいことがあるのです」
 目の前の悪しき魔導士から、語られる話。今のこの話が真実だとの証明は、何もないが――
 思わず喉を鳴らしたアンバーに、フランシスは、自分の左の手の甲を彼女にそっと見せた。』
(第2章―4― 風の棺に運ばれし者(1)より抜粋)


【ら行】
●リネットの町:りねっとのまち
 レイナがこの異世界で移動することとなった4番目の町。
 "首都シャノンに近い位置にあるためか、町の賑わいはデブラの町やアリスの町にやや勝っているように思われる町。
 けれども、その賑わいのなかに一種の落ち着きも見られた。
 その落ち着きの一因となっていたのは、町のなかでひときわ目立つ大きな図書館であった。この図書館は、首都シャノンの図書館と双璧の蔵書量であるらしく、学問を究めたい人にとっては、絶好の環境であった。
 ダニエルはこのリネットの町の宿に引きこもり、本を読みふけっていた模様。

●レイナ:れいな
 本作の主人公、河瀬レイナ。
 レイナという片仮名の名前であるが、ハーフやクォーターなどではない。
 灰汁の強い脇役たちに囲まれ、やや存在感の薄いヒロインである。
 だが、彼女はヒロインでありながらも、舞台の上で常にスポットライトが当たるヒロインではなく、舞台を影で支える役割を持っているヒロインであるのだ。
 これは、少しだけネタバレ。 

●レンガ積みの仕事:れんがつみのしごと
 ルークとディランが昔、(詳細な時期は不明だが)就いていた仕事。
 肉体的にもきつく、朝から晩まで親方に怒鳴り散らされ、精神的もきつい仕事であったらしい。
 だが、その経験が今の彼らの基礎体力等を作ったのかもしれない。
 ルーク、ディランの出生地や詳細な過去――彼らと旧知の仲である人物等は、第3章終了時点では、まだ不明である。
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