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【R15】Episode7 中は嫌、外に出して
Episode7 中は嫌、外に出して(1)
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ユラユラと心地よい揺れに、私は目を覚ました。
”目を覚ました”なんて言っても、私は”ここ”が私自身の夢の中であると分かっている。
私の名前はナホ。年齢は27才。
”いつの間にやら”毎回、私は同じ夢を見るようになっていた。
夢の中の私は、こうしていつも船の中にいる。
そして、”いつも同じ船室”で夢の中の私は、目を覚ます。
夢の中でも眠り、夢の中でも目を覚まし、それを私自身がはっきり自覚しているなんて、なんともシュールなことだ。
身を横たえていたベッドから上体を起こした私は、もう見慣れてしまった船室内を改めてゆっくりと見回した。
夢にも色がある。
夢にも音がある。
そして、もちろん夢にも匂いがある。
広さは6畳程度の船室。
狭いにも程がある横長の窓からは、穏やかな波の音と潮の匂いが流れ込んできている。
もっと広い窓が作られていたなら、私は夢の中とはいえ、どこまでも続いているだろう大海原やどこまでも広がっているだろう青空を楽しむことができたに違いない。
せめて、この船室内が私好みのインテリアだったなら良かったのに。癒されたのに。
ここは殺風景にもほどがある。
”旅の楽しみ”も”住の楽しみ”も何もない。
最低限の寝起きだけをするための場所としか思えなかった。
刑務所に入ったことはないけど、まるで”刑務所みたいな船室”という表現がぴったりとくる。
”刑務所みたいな船室”なだけじゃなくて、今私が身に付けてる服だって”オレンジ色のつなぎ”――つまりはアメリカの囚人服だ。
いくら私が海外ドラマ好きとはいえ、囚人服はちょっと勘弁してほしい。
まあ、現実世界で”アメリカの囚人服”を身に付けることはないだろうし、ちょっと洒落にならないコスプレをしていると受け入れよう。
もし、私がここを”明晰夢ならでは”といった具合で、自由に変化させカスタマイズできるとしたなら……
この無機質で硬い灰色のベッドは、フワフワのインディゴブルーのベッドに。
もちろん、オーガンジーレースのカーテン付きのベッドだ。
ベッドだけでなく、船室内をホワイトとブルー系統で統一し、全体的に爽やかさよりも甘さを優先したインテリアへと変化させる。
私が心の中で幾度も思い描いている、”新婚家庭のインテリア”のシミュレーションとして。
新婚家庭のインテリア。
そう、私はもうすぐ結婚する。
康人と。
私の大好きな人と。
婚約者の康人は私と同じ27才。
”私のおじさん”が一時期、清掃のアルバイトとして勤めていた会社で、私は彼に出会った。
誰にでも優しくて闊達な康人にハートを奪われてしまった女は、私だけじゃなかった。
特に康人と同じ会社に勤めている女の中には、とてつもなくしつこくて自己中でストーカー気質の女が1人がいた。
”私と同じナホという名前”で、「私は康人を愛している。だから康人も私を好きに違いない。ううん、絶対にそうよ! そうなのよ!」と言わんばかりに思い込みが激し過ぎて、恋愛妄想の気がある凄く嫌な女。
けれども、そんなドロドロの困難をも乗り越え、私は康人と結ばれる。
数カ月後に結婚式を挙げ、年号が令和になってからの初めての年明けを、私は康人とともに迎える。
もしかしたら、その頃には今はぺったんこの私のお腹に”初めての赤ちゃん”だって宿っているかもしれない。
堅くて無機質なベッドに再び寝転がった私は、自分の左手を上にかざした。
手入れの行き届いた白くてすべすべの私の左手の薬指には、指輪はまだない。
この夢の中だけじゃなくて、現実世界においても。
だけど、私は康人が指輪を用意してくれているのをちゃんと知っている。
彼の家の引き出しにあった素敵な指輪。
私に渡すために引き出しの奥に、大切にしまってくれていた綺麗な指輪。
それを見つけた時は本当にうれしかった。
私は涙をこらえることができなかった。
指輪を見つけてしまった後、私は何も見なかったふりをして、康人にいつも通りに微笑みかけることは本当に大変だったことを思い出す。
クス、という思い出し笑いとともに、私はかざしていた左手をベッドへと下ろした。
と、その時、何かが私の左手をくすぐった。
ぬいぐるみだ。
単なるぬいぐるみじゃない。
これは、私の部屋にも――現実世界の私の部屋にも置いてあるぬいぐるみだ。
人気テーマパーク・マルチプルランドのマスコットキャラクター、ボンラレクだ。
フランス生まれのピンク色のネズミ、ボンラレク。
現在の2010年代ではなく1950年代のミッキー〇ウスによく似たデザインで、よりコミカルさと狡猾さまでをも増量した顔つきのピンク色のネズミ。
康人との初めてのデートは、マルチプルランドだった。
そして、康人からの初めてのプレゼントこそが、このボンラレクのぬいぐるみ。
私との初めてのデートで、康人はとっても緊張していたのか歩くのがとっても早くて、私は康人を見失わないようについていくのが精いっぱいだったことまでをも思い出す。
ふと、ボンラレクの口元が動いたように見えた。
今にも彼が喋り出すんじゃないかとも思えた。
よくよく考えると現実世界においても、私はいつもボンラレクを大切に抱いて眠っていた。
スピリチュアル的思考ではあるが、このボンラレクにも魂が生まれ、この夢の中で何か私にメッセージを伝えようとしているのではと……
しかし、私のスピリチュアル思考は、船室の扉の向こうから聞こえているバタバタという足音によって中断されてしまった。
足音の主は、相当に慌てふためいて、私がいるこの船室に駆け付けんとしているみたいだった。
予想通り、私の船室の扉がバァン! と開かれた。
夢の中とはいえ、女性の部屋に入るのにノックぐらいはして欲しかったけど、姿を見せた男性に私は驚いてしまって、文句を言うことなんて一瞬で忘れてしまった。
「――康人!」
起き上がった私は思わず康人の名を叫んでしまったけど、男性は康人ではなかった。
夢の中の康人であって、現実の康人ではないという意味ではない。
確かに彼は康人に似ていた。
けれども、正直、康人よりも数段ハンサムだ。
康人の面影をしっかりと残したまま、康人よりも顔の彫りが深く、身長も高く、体つきもしっかりとし、髪色は明るくなりと、外国人要素をかなり混ぜ込んでいる。
例えるなら、彼は”アメリカ版の康人”といった感じだ。
そのうえ、オレンジ色の囚人服を着ている私とは”対(つい)の設定にでもなっているのか”、彼はアメリカの警察官、いや刑務官の服を着ていた。
私のハートは確かに、康人に囚われてしまっている。康人の愛という”うれしい監獄”に囚われてしまっている私の深層心理が、こんな夢を私に見せているのだろうか?
「……ナホ、僕のことが分からないのですか?」
彼が私に問う。
彼が発した声こそ康人と同一であったも、現実の康人は恋人の私に対して、ベタな少女漫画に出てくる王子様キャラのような物言いは決してしない。
「ええ、私はあなたのことが分からないの。”この船室にいる夢”だけは、私は幾度も見ているんだけどね。あなたの名前は?」
「ナホ、僕の名前はアイディールです」
「アイディール? 変わった名前ね。でも、夢の中とはいえ、康人のそっくりさんに会うことができて、とってもうれしいわ。短い間かもしれないけど、よろしくね」
私は満面の笑みを、アイディールに返した。
けれども、私に微笑み返さんとしているアイディールの頬は、どこか固くぎこちないままだった。
「ナホ、僕のことも”この船の中でのこと”も何も覚えていないなら、それでいいのです。どうか、ここにいてください。ここでゆっくりと眠っていてください」
「ゆっくり眠って、お肌の調子を整えたいのはやまやまだけどね、夢っていつかは覚めるものでしょう? それに、康人似のあなたも素敵だけど、私は早く現実世界の康人に会いたいのよ。本物の康人にね」
「ナホ、”やはり”康人のことだけは覚えているのですね」
「当たりまえじゃない。私はもうすぐ康人と結婚するんだから。婚約者のことを忘れたりなんてしないわよ」
夢の中でも一途な私に、アイディールは傷ついたような表情を見せた。
そして、私の元へと駆け寄ってきた。
ベッドのアイディールにギュッと手を握られた私は、思わずビクリとしてしまった。
夢の中でも人肌の温かさはしっかりと感じることができるのか、いや、呼び起こすができるのか、私が実際に康人の手に触れた時の温かさが一気に蘇ってきたのだから。
「ナホ、康人のことは忘れましょう。いいえ、”あなた自身のため”にも絶対に忘れなければならないのです」
「え? それはどういう……」
「ナホ、僕がいます。”この船の中には”僕がいます。僕だけを見てください。僕はあなたのために生まれてきたのですから」
”私のために生まれてきた”なんて、少女漫画展開の極みともいえる甘くて切ない台詞を真摯な眼差しで口にしたアイディール。
私の胸の高鳴りを感じた。
アイディールは康人であっても、康人じゃない。
私が真に……現実に愛する人ではない。
でも、凛々しい刑務官のコスプレをしているうえ、私が真に愛している康人をさらにカッコよくしたような顔でそんな台詞を吐かれたら、夢の中とはいえ、胸がドキドキせずにはいられない。
つながった手から、私の胸の高鳴りが伝わったのか、康人はそっと手を離した。
そして――
「ナホ、あなたに2つのお願いがあります。1つ目は、決してここから出ないこと……すなわち”外にも”絶対に出ないこと。2つ目は、何か変化があったなら、どんな些細なことでも僕に教えてください」
アイディールの言っていることの”意味”が私には、よく理解できなかった。
けれども、何も答えることができない私を見たアイディールは、私の沈黙を「了解」と見なしたようであった。
「ナホ、僕はまたここに来ます。これからもずっと”不安定な航海”が半永久的に続くと思いますので、どうかお気をつけくださいませ」
そう言ったアイディールは、静かに私の船室を出ていった。
何が何だか分からない。
でも、これは夢なのだ。
夢なんてワケが分からなくて辻褄も合わないのが定番なのだ。
深く考える必要はない。
私は再び堅いベッドに横たわった。
しかし、いくら寝返りをうっても眠れそうになかった。
夢の中でなかなか眠ることができないってこともシュールだ。
けれども、次に目覚めた時は――”本当に目が覚めた時”は、私は本物の康人に会える。
目が覚めた時、携帯電話に表示されている日付を見た私は「また、こんなに日数が経っていたのね」と、毎回思ってしまう。
でも、私がほんの少し眠り過ぎることぐらい康人は許してくれている。
早く康人に会いたい。
会って口付けしたい。
ギュッと抱きしめて欲しい。
好き、好きだよ。大好きだよ、康人。
康人への思いで、私はより強く生きているって感じることができる。
その時だった。
ベッドの下から笑い声が聞こえた。
チュチュチュッという不気味な笑い声。
こわごわとベッドの下を覗き込んだ私の目に映ったのは、あのピンク色のネズミ、ボンラレクであった。
ここは夢の中だから、何でもありとはいえ、ベッドの上にいたはずのぬいぐるみが1人でベッドの下へと移動したうえ、笑い声までも立てているなんて、いかにもホラー映画な夢。
しかも、ボンラレクは動いている。
立ち上がって歩き出したうえ、私のベッドの上にピョーン! と飛び乗ってきた。
「ナホ、静かに。オイラだけはナホの味方だ」
喋り出したボンラレク。
イタズラっぽい笑みを浮かべたままボンラレクは喋り出した。
「ナホ、あいつの……アイディールの言うことなんて信じちゃダメだ。あいつはナホの敵だ」
「敵……?」
「ナホ、正確に言うと、ナホの敵はアイディールだけじゃない。この船にいるオイラ以外の者は全員、ナホの敵だ」
「全員が私の敵……?」
「ナホ、アイディールの奴は敵の中じゃ、まだまだ下っ端なんだ。あいつに与えられた役割は、ナホを監視することだけだ。それに、ナホの方があいつよりも先にこの船の中にいた」
「私の方が先……?」
「ナホ、この船の中での”ナホの記憶の一部”はナホに代わってオイラが保持している。だから、オイラはナホの敵たちについては、よぉく知っているんだ」
ニッと笑ったボンラレク。
「ナホ、忌々しい敵たちの大将は操舵室でふんぞり返っているネズミ船長という男だ」
「ネズミ船長……?」
ネズミがこの船の船長なのか?
テーマパークのマスコットキャラクターであるネズミ・ボンラレクがこうして普通に喋っていることから推察すると、その可能性はある。
それともネズミのような顔の男が、この船の舵を握っているというのだろうか?
「ナホ、ネズミ船長だけじゃなくて、ナホの敵はまだ他にもいる。特に要注意なのは、堅物で性悪で、地味にもほどがあるスーツが定番コスチュームの士騎子(しきこ)っていうおばさんだ。ネズミ船長に次ぐこの船のリーダーであるあいつは、時々ネズミ船長に代わって奴らの”指揮”をとっている」
「え、えっと……ネズミ船長とか士騎子っておばさんたちが、私を襲いに来る……殺そうとしにくるってことなの?」
ボンラレクは、ゆっくりと首を横に振る。
現実世界のボンラレクだったら、首を横に振ることも縦に振ることもできなかったと思うが、彼は「否定」の意を私に示した。
「ナホ、それはない。奴らはナホを完全に消す気はないらしい。消そうという意見もあったけど、ナホがこの船室内にずっといるなら……決して”外に出ようとしない”なら、自分たちと同じ船の中にいても構わないってことで、とりあえずはまとまっている」
私を消そうとする意見もあった!?
私は殺害の標的になっていた!!
しかも、”とりあえず”という言葉から推測するに、私は殺害の標的から完全に外されてはいないということだ!!
「ナホ、このままずっとここで暮らしたくなんてないだろう? いつか終わりがやってくるこの航海の最期の時まで閉じ込められたままなんて嫌だろう? ”中は嫌、外に出して”欲しいだろう?」
この船室に閉じ込められたまま……つまりは”夢から覚めない”なんて、絶対に嫌だ!
ずっと眠ったまま、現実世界の康人に会えないなんて絶対に嫌だ!
だって、私は康人の花嫁になるんだから。
康人の花嫁は、この私しかいないんだから。
「で、でも……夢から覚めるには……ここから出るにはどうしたらいいの?」
「ナホ、時を待つんだ。幸いにして、アイディールたちはオイラの存在に気づいていない。ナホの船室にいるのはナホだけだと思い込んでいる。さっき、あいつが言ったように『これからもずっと”不安定な航海”が半永久的に続く』ことになる。でも、不安定ということは、あいつらは”ナホをずっとこの船室内に留め続けることができない”ということなんだ。ナホがこの船室の扉を”内側から開けて”、外へと出るチャンスはきっとやってくる。だから、時を待つんだ」
※※※
ボンラレクは力強く「時を待て」なんて言ったけど、私が外へと出るチャンスはなかなかやってきそうになかった。
この船室に鍵はかけられていないはずだ。
けれども、私は船室の外から無言の圧力を感じる。
「お前は外に出るな」「絶対に絶対にお前は外に出ちゃいけない」「外に出たらいったいどうなると思っている?」「お前自身のためにも、お前はずっとここにいるんだ」と言わんばかりの凄まじい圧力が。
だから、私は囚人服を着たまま、最悪の寝心地でしかないベッドの上で目を開いたり、閉じたりを繰り返すしかなかった。
康人に会いたい。
私の康人への思いだけが膨らんでいく。
思いはこの狭い船室を満たすだけでなく、窓の外にまで広がり……どこまでも続いているであろう大海原までをも激しく波打たせるのではないかと思うほど。
いや、本当に海は激しく波打っているのかもしれない。
狭い窓からは外の様子を確認することはできないが、船体にこれでもかと打ち付けてくる波の音が聞こえてくるし、この船そのものもグワングワンと眩暈のように揺れる時がある。
嵐の前触れか?
いや、すでに嵐の真っただ中にいるのか?
でも……
私は感じた。
扉の外からの無言の圧力が弱まりかけていることに。
時は満ちたのか?
今なら、私は外へと出ることができるかもしれない。
今こそが、私がここから逃げる時なのかもしれない。
扉の外には、どんな光景が広がっているのか分からない。でも、ずっとここに居続けるよりはマシだ。
私は船室の扉を開いた。
音を立てないようにゆっくりと。
扉の向こうに広がっていたのは、意外にも私の想像力を逸脱していない船内の光景であった。
全体的な色彩は、鼠色でまとまっている廊下。
左右に壁には、それぞれ他の船室の扉が複数確認できた。
どうやら、私の船室は廊下の突き当りに位置していたらしい。
私は恐る恐る足を踏み出した。
廊下は物音一つせず、どこか黴臭く陰鬱な空気に満ちている。
一番近い位置の船室の扉に私は目を留める。
その扉の取っ手には、「今、外に出ています」という妙な文言のプレートがかけられていた。
「外出中」ではなく「外に出ています」という表現がどうもひっかかってしまう。
これはいったい……?
その時だった。
「ナホ! いけません! 早く! 早く中に戻ってください!!!」
廊下の向こうから、アイディールが必死の形相で駆けてきた。
まずい!
見つかってしまった!
アイディールに腕をガッと掴まれた私は、あっという間に自分の船室へと押し戻されてしまった。
私はベッドの上に乱暴に放り投げられた。
堅かったはずのベッドのスプリングが、弾力を急激に取り戻したかのように私の背中で弾んだ。
殺される?!
私は、殺されてしまう?!
助けて! 康人!
それに、ボンラレク!
康人だけではなく、ついでにボンラレクへの助けをも私は求めていた。
夢の中とはいえ、殺されるのは怖い。殺されるなんて絶対に嫌だ。
いや、私は今から殺されるのではない。
大切なモノを奪われてしまうのだ。
私に覆いかぶさったアイディールは、私の首を絞めようとしたのではなく、私の両手首を掴んで私の体の自由を封じたのだから!
「ナホ、お願いです……どうか、康人のことなんて忘れてください。あなたを本当に認めている者たちに気づいてください。そして、あなた自身も認めてください」
そう言ったアイディールは、自らの唇で私の唇をふさいだ。
”目を覚ました”なんて言っても、私は”ここ”が私自身の夢の中であると分かっている。
私の名前はナホ。年齢は27才。
”いつの間にやら”毎回、私は同じ夢を見るようになっていた。
夢の中の私は、こうしていつも船の中にいる。
そして、”いつも同じ船室”で夢の中の私は、目を覚ます。
夢の中でも眠り、夢の中でも目を覚まし、それを私自身がはっきり自覚しているなんて、なんともシュールなことだ。
身を横たえていたベッドから上体を起こした私は、もう見慣れてしまった船室内を改めてゆっくりと見回した。
夢にも色がある。
夢にも音がある。
そして、もちろん夢にも匂いがある。
広さは6畳程度の船室。
狭いにも程がある横長の窓からは、穏やかな波の音と潮の匂いが流れ込んできている。
もっと広い窓が作られていたなら、私は夢の中とはいえ、どこまでも続いているだろう大海原やどこまでも広がっているだろう青空を楽しむことができたに違いない。
せめて、この船室内が私好みのインテリアだったなら良かったのに。癒されたのに。
ここは殺風景にもほどがある。
”旅の楽しみ”も”住の楽しみ”も何もない。
最低限の寝起きだけをするための場所としか思えなかった。
刑務所に入ったことはないけど、まるで”刑務所みたいな船室”という表現がぴったりとくる。
”刑務所みたいな船室”なだけじゃなくて、今私が身に付けてる服だって”オレンジ色のつなぎ”――つまりはアメリカの囚人服だ。
いくら私が海外ドラマ好きとはいえ、囚人服はちょっと勘弁してほしい。
まあ、現実世界で”アメリカの囚人服”を身に付けることはないだろうし、ちょっと洒落にならないコスプレをしていると受け入れよう。
もし、私がここを”明晰夢ならでは”といった具合で、自由に変化させカスタマイズできるとしたなら……
この無機質で硬い灰色のベッドは、フワフワのインディゴブルーのベッドに。
もちろん、オーガンジーレースのカーテン付きのベッドだ。
ベッドだけでなく、船室内をホワイトとブルー系統で統一し、全体的に爽やかさよりも甘さを優先したインテリアへと変化させる。
私が心の中で幾度も思い描いている、”新婚家庭のインテリア”のシミュレーションとして。
新婚家庭のインテリア。
そう、私はもうすぐ結婚する。
康人と。
私の大好きな人と。
婚約者の康人は私と同じ27才。
”私のおじさん”が一時期、清掃のアルバイトとして勤めていた会社で、私は彼に出会った。
誰にでも優しくて闊達な康人にハートを奪われてしまった女は、私だけじゃなかった。
特に康人と同じ会社に勤めている女の中には、とてつもなくしつこくて自己中でストーカー気質の女が1人がいた。
”私と同じナホという名前”で、「私は康人を愛している。だから康人も私を好きに違いない。ううん、絶対にそうよ! そうなのよ!」と言わんばかりに思い込みが激し過ぎて、恋愛妄想の気がある凄く嫌な女。
けれども、そんなドロドロの困難をも乗り越え、私は康人と結ばれる。
数カ月後に結婚式を挙げ、年号が令和になってからの初めての年明けを、私は康人とともに迎える。
もしかしたら、その頃には今はぺったんこの私のお腹に”初めての赤ちゃん”だって宿っているかもしれない。
堅くて無機質なベッドに再び寝転がった私は、自分の左手を上にかざした。
手入れの行き届いた白くてすべすべの私の左手の薬指には、指輪はまだない。
この夢の中だけじゃなくて、現実世界においても。
だけど、私は康人が指輪を用意してくれているのをちゃんと知っている。
彼の家の引き出しにあった素敵な指輪。
私に渡すために引き出しの奥に、大切にしまってくれていた綺麗な指輪。
それを見つけた時は本当にうれしかった。
私は涙をこらえることができなかった。
指輪を見つけてしまった後、私は何も見なかったふりをして、康人にいつも通りに微笑みかけることは本当に大変だったことを思い出す。
クス、という思い出し笑いとともに、私はかざしていた左手をベッドへと下ろした。
と、その時、何かが私の左手をくすぐった。
ぬいぐるみだ。
単なるぬいぐるみじゃない。
これは、私の部屋にも――現実世界の私の部屋にも置いてあるぬいぐるみだ。
人気テーマパーク・マルチプルランドのマスコットキャラクター、ボンラレクだ。
フランス生まれのピンク色のネズミ、ボンラレク。
現在の2010年代ではなく1950年代のミッキー〇ウスによく似たデザインで、よりコミカルさと狡猾さまでをも増量した顔つきのピンク色のネズミ。
康人との初めてのデートは、マルチプルランドだった。
そして、康人からの初めてのプレゼントこそが、このボンラレクのぬいぐるみ。
私との初めてのデートで、康人はとっても緊張していたのか歩くのがとっても早くて、私は康人を見失わないようについていくのが精いっぱいだったことまでをも思い出す。
ふと、ボンラレクの口元が動いたように見えた。
今にも彼が喋り出すんじゃないかとも思えた。
よくよく考えると現実世界においても、私はいつもボンラレクを大切に抱いて眠っていた。
スピリチュアル的思考ではあるが、このボンラレクにも魂が生まれ、この夢の中で何か私にメッセージを伝えようとしているのではと……
しかし、私のスピリチュアル思考は、船室の扉の向こうから聞こえているバタバタという足音によって中断されてしまった。
足音の主は、相当に慌てふためいて、私がいるこの船室に駆け付けんとしているみたいだった。
予想通り、私の船室の扉がバァン! と開かれた。
夢の中とはいえ、女性の部屋に入るのにノックぐらいはして欲しかったけど、姿を見せた男性に私は驚いてしまって、文句を言うことなんて一瞬で忘れてしまった。
「――康人!」
起き上がった私は思わず康人の名を叫んでしまったけど、男性は康人ではなかった。
夢の中の康人であって、現実の康人ではないという意味ではない。
確かに彼は康人に似ていた。
けれども、正直、康人よりも数段ハンサムだ。
康人の面影をしっかりと残したまま、康人よりも顔の彫りが深く、身長も高く、体つきもしっかりとし、髪色は明るくなりと、外国人要素をかなり混ぜ込んでいる。
例えるなら、彼は”アメリカ版の康人”といった感じだ。
そのうえ、オレンジ色の囚人服を着ている私とは”対(つい)の設定にでもなっているのか”、彼はアメリカの警察官、いや刑務官の服を着ていた。
私のハートは確かに、康人に囚われてしまっている。康人の愛という”うれしい監獄”に囚われてしまっている私の深層心理が、こんな夢を私に見せているのだろうか?
「……ナホ、僕のことが分からないのですか?」
彼が私に問う。
彼が発した声こそ康人と同一であったも、現実の康人は恋人の私に対して、ベタな少女漫画に出てくる王子様キャラのような物言いは決してしない。
「ええ、私はあなたのことが分からないの。”この船室にいる夢”だけは、私は幾度も見ているんだけどね。あなたの名前は?」
「ナホ、僕の名前はアイディールです」
「アイディール? 変わった名前ね。でも、夢の中とはいえ、康人のそっくりさんに会うことができて、とってもうれしいわ。短い間かもしれないけど、よろしくね」
私は満面の笑みを、アイディールに返した。
けれども、私に微笑み返さんとしているアイディールの頬は、どこか固くぎこちないままだった。
「ナホ、僕のことも”この船の中でのこと”も何も覚えていないなら、それでいいのです。どうか、ここにいてください。ここでゆっくりと眠っていてください」
「ゆっくり眠って、お肌の調子を整えたいのはやまやまだけどね、夢っていつかは覚めるものでしょう? それに、康人似のあなたも素敵だけど、私は早く現実世界の康人に会いたいのよ。本物の康人にね」
「ナホ、”やはり”康人のことだけは覚えているのですね」
「当たりまえじゃない。私はもうすぐ康人と結婚するんだから。婚約者のことを忘れたりなんてしないわよ」
夢の中でも一途な私に、アイディールは傷ついたような表情を見せた。
そして、私の元へと駆け寄ってきた。
ベッドのアイディールにギュッと手を握られた私は、思わずビクリとしてしまった。
夢の中でも人肌の温かさはしっかりと感じることができるのか、いや、呼び起こすができるのか、私が実際に康人の手に触れた時の温かさが一気に蘇ってきたのだから。
「ナホ、康人のことは忘れましょう。いいえ、”あなた自身のため”にも絶対に忘れなければならないのです」
「え? それはどういう……」
「ナホ、僕がいます。”この船の中には”僕がいます。僕だけを見てください。僕はあなたのために生まれてきたのですから」
”私のために生まれてきた”なんて、少女漫画展開の極みともいえる甘くて切ない台詞を真摯な眼差しで口にしたアイディール。
私の胸の高鳴りを感じた。
アイディールは康人であっても、康人じゃない。
私が真に……現実に愛する人ではない。
でも、凛々しい刑務官のコスプレをしているうえ、私が真に愛している康人をさらにカッコよくしたような顔でそんな台詞を吐かれたら、夢の中とはいえ、胸がドキドキせずにはいられない。
つながった手から、私の胸の高鳴りが伝わったのか、康人はそっと手を離した。
そして――
「ナホ、あなたに2つのお願いがあります。1つ目は、決してここから出ないこと……すなわち”外にも”絶対に出ないこと。2つ目は、何か変化があったなら、どんな些細なことでも僕に教えてください」
アイディールの言っていることの”意味”が私には、よく理解できなかった。
けれども、何も答えることができない私を見たアイディールは、私の沈黙を「了解」と見なしたようであった。
「ナホ、僕はまたここに来ます。これからもずっと”不安定な航海”が半永久的に続くと思いますので、どうかお気をつけくださいませ」
そう言ったアイディールは、静かに私の船室を出ていった。
何が何だか分からない。
でも、これは夢なのだ。
夢なんてワケが分からなくて辻褄も合わないのが定番なのだ。
深く考える必要はない。
私は再び堅いベッドに横たわった。
しかし、いくら寝返りをうっても眠れそうになかった。
夢の中でなかなか眠ることができないってこともシュールだ。
けれども、次に目覚めた時は――”本当に目が覚めた時”は、私は本物の康人に会える。
目が覚めた時、携帯電話に表示されている日付を見た私は「また、こんなに日数が経っていたのね」と、毎回思ってしまう。
でも、私がほんの少し眠り過ぎることぐらい康人は許してくれている。
早く康人に会いたい。
会って口付けしたい。
ギュッと抱きしめて欲しい。
好き、好きだよ。大好きだよ、康人。
康人への思いで、私はより強く生きているって感じることができる。
その時だった。
ベッドの下から笑い声が聞こえた。
チュチュチュッという不気味な笑い声。
こわごわとベッドの下を覗き込んだ私の目に映ったのは、あのピンク色のネズミ、ボンラレクであった。
ここは夢の中だから、何でもありとはいえ、ベッドの上にいたはずのぬいぐるみが1人でベッドの下へと移動したうえ、笑い声までも立てているなんて、いかにもホラー映画な夢。
しかも、ボンラレクは動いている。
立ち上がって歩き出したうえ、私のベッドの上にピョーン! と飛び乗ってきた。
「ナホ、静かに。オイラだけはナホの味方だ」
喋り出したボンラレク。
イタズラっぽい笑みを浮かべたままボンラレクは喋り出した。
「ナホ、あいつの……アイディールの言うことなんて信じちゃダメだ。あいつはナホの敵だ」
「敵……?」
「ナホ、正確に言うと、ナホの敵はアイディールだけじゃない。この船にいるオイラ以外の者は全員、ナホの敵だ」
「全員が私の敵……?」
「ナホ、アイディールの奴は敵の中じゃ、まだまだ下っ端なんだ。あいつに与えられた役割は、ナホを監視することだけだ。それに、ナホの方があいつよりも先にこの船の中にいた」
「私の方が先……?」
「ナホ、この船の中での”ナホの記憶の一部”はナホに代わってオイラが保持している。だから、オイラはナホの敵たちについては、よぉく知っているんだ」
ニッと笑ったボンラレク。
「ナホ、忌々しい敵たちの大将は操舵室でふんぞり返っているネズミ船長という男だ」
「ネズミ船長……?」
ネズミがこの船の船長なのか?
テーマパークのマスコットキャラクターであるネズミ・ボンラレクがこうして普通に喋っていることから推察すると、その可能性はある。
それともネズミのような顔の男が、この船の舵を握っているというのだろうか?
「ナホ、ネズミ船長だけじゃなくて、ナホの敵はまだ他にもいる。特に要注意なのは、堅物で性悪で、地味にもほどがあるスーツが定番コスチュームの士騎子(しきこ)っていうおばさんだ。ネズミ船長に次ぐこの船のリーダーであるあいつは、時々ネズミ船長に代わって奴らの”指揮”をとっている」
「え、えっと……ネズミ船長とか士騎子っておばさんたちが、私を襲いに来る……殺そうとしにくるってことなの?」
ボンラレクは、ゆっくりと首を横に振る。
現実世界のボンラレクだったら、首を横に振ることも縦に振ることもできなかったと思うが、彼は「否定」の意を私に示した。
「ナホ、それはない。奴らはナホを完全に消す気はないらしい。消そうという意見もあったけど、ナホがこの船室内にずっといるなら……決して”外に出ようとしない”なら、自分たちと同じ船の中にいても構わないってことで、とりあえずはまとまっている」
私を消そうとする意見もあった!?
私は殺害の標的になっていた!!
しかも、”とりあえず”という言葉から推測するに、私は殺害の標的から完全に外されてはいないということだ!!
「ナホ、このままずっとここで暮らしたくなんてないだろう? いつか終わりがやってくるこの航海の最期の時まで閉じ込められたままなんて嫌だろう? ”中は嫌、外に出して”欲しいだろう?」
この船室に閉じ込められたまま……つまりは”夢から覚めない”なんて、絶対に嫌だ!
ずっと眠ったまま、現実世界の康人に会えないなんて絶対に嫌だ!
だって、私は康人の花嫁になるんだから。
康人の花嫁は、この私しかいないんだから。
「で、でも……夢から覚めるには……ここから出るにはどうしたらいいの?」
「ナホ、時を待つんだ。幸いにして、アイディールたちはオイラの存在に気づいていない。ナホの船室にいるのはナホだけだと思い込んでいる。さっき、あいつが言ったように『これからもずっと”不安定な航海”が半永久的に続く』ことになる。でも、不安定ということは、あいつらは”ナホをずっとこの船室内に留め続けることができない”ということなんだ。ナホがこの船室の扉を”内側から開けて”、外へと出るチャンスはきっとやってくる。だから、時を待つんだ」
※※※
ボンラレクは力強く「時を待て」なんて言ったけど、私が外へと出るチャンスはなかなかやってきそうになかった。
この船室に鍵はかけられていないはずだ。
けれども、私は船室の外から無言の圧力を感じる。
「お前は外に出るな」「絶対に絶対にお前は外に出ちゃいけない」「外に出たらいったいどうなると思っている?」「お前自身のためにも、お前はずっとここにいるんだ」と言わんばかりの凄まじい圧力が。
だから、私は囚人服を着たまま、最悪の寝心地でしかないベッドの上で目を開いたり、閉じたりを繰り返すしかなかった。
康人に会いたい。
私の康人への思いだけが膨らんでいく。
思いはこの狭い船室を満たすだけでなく、窓の外にまで広がり……どこまでも続いているであろう大海原までをも激しく波打たせるのではないかと思うほど。
いや、本当に海は激しく波打っているのかもしれない。
狭い窓からは外の様子を確認することはできないが、船体にこれでもかと打ち付けてくる波の音が聞こえてくるし、この船そのものもグワングワンと眩暈のように揺れる時がある。
嵐の前触れか?
いや、すでに嵐の真っただ中にいるのか?
でも……
私は感じた。
扉の外からの無言の圧力が弱まりかけていることに。
時は満ちたのか?
今なら、私は外へと出ることができるかもしれない。
今こそが、私がここから逃げる時なのかもしれない。
扉の外には、どんな光景が広がっているのか分からない。でも、ずっとここに居続けるよりはマシだ。
私は船室の扉を開いた。
音を立てないようにゆっくりと。
扉の向こうに広がっていたのは、意外にも私の想像力を逸脱していない船内の光景であった。
全体的な色彩は、鼠色でまとまっている廊下。
左右に壁には、それぞれ他の船室の扉が複数確認できた。
どうやら、私の船室は廊下の突き当りに位置していたらしい。
私は恐る恐る足を踏み出した。
廊下は物音一つせず、どこか黴臭く陰鬱な空気に満ちている。
一番近い位置の船室の扉に私は目を留める。
その扉の取っ手には、「今、外に出ています」という妙な文言のプレートがかけられていた。
「外出中」ではなく「外に出ています」という表現がどうもひっかかってしまう。
これはいったい……?
その時だった。
「ナホ! いけません! 早く! 早く中に戻ってください!!!」
廊下の向こうから、アイディールが必死の形相で駆けてきた。
まずい!
見つかってしまった!
アイディールに腕をガッと掴まれた私は、あっという間に自分の船室へと押し戻されてしまった。
私はベッドの上に乱暴に放り投げられた。
堅かったはずのベッドのスプリングが、弾力を急激に取り戻したかのように私の背中で弾んだ。
殺される?!
私は、殺されてしまう?!
助けて! 康人!
それに、ボンラレク!
康人だけではなく、ついでにボンラレクへの助けをも私は求めていた。
夢の中とはいえ、殺されるのは怖い。殺されるなんて絶対に嫌だ。
いや、私は今から殺されるのではない。
大切なモノを奪われてしまうのだ。
私に覆いかぶさったアイディールは、私の首を絞めようとしたのではなく、私の両手首を掴んで私の体の自由を封じたのだから!
「ナホ、お願いです……どうか、康人のことなんて忘れてください。あなたを本当に認めている者たちに気づいてください。そして、あなた自身も認めてください」
そう言ったアイディールは、自らの唇で私の唇をふさいだ。
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