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男女のことは誰にも分らないけれども、真の問題はそれじゃない!「Episode2 会話形式オムニバス2品」
Episode2-A 致命的な欠点
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「ねえ、聞いてくれる? 比呂(ひろ)がついに田中さんに告白するんだって」
「あんたの言う比呂って確か教育学部の男子よね? っていうか、あんたの幼馴染でもあったっけ? ……え、何? 今にも泣きそうな顔をしているけど、もしかして好きなの?」
「うん、好きだよ。すごく好き。幼稚園から大学まで、ずっと同じで……実際に数回告白したよ。でも毎回、私のことは女として見ることができないって断られるんだ」
「私はあんたのこと、客観的に見ても可愛いとは思うけどな。少なくともブスではないよ。これはお世辞でも何でもなく……」
「ありがと……でも、男の子って何だかんだ言って、女の子の見た目にこだわるっていうか、まず見た目から入っていくじゃん? 比呂に好きな子ができて、その相手が同じ大学の田中さんだって聞いた時に、もう完全に勝ち目はないって思った」
「まあ、確かに田中さんは凄い美人っていうか、正直なところ、うちの大学のミスキャンパスとかよりもルックスレベルは遥かに上だよね。どこか浮世離れしたような雰囲気のある美人っていうか……それはさておき、あんたが自分のことを好きだって知っているくせに恋愛相談とかしてくるワケ? 人をバカにするにも程があるんじゃない? あんたもちょっとはプライド持ちなよ」
「……そうだよね、本当に。自分でもバカだと思う。でも、これから先、比呂が私のことを見てくれる日が永遠に来ないのだとしたら、もういっそのこと比呂が田中さんのものになってくれた方がいいかなって。だから……」
「だから、何? もしかして、二人の仲を取り持ったの?」
「うん、取り持った。田中さんに比呂のことを伝えたの。田中さんも今はフリーだし、比呂の気持ちはとてもうれしいって。でも、二つの条件があるって」
「二つの条件?」
「第一の条件は、田中さんが『あなたのハートを私にください』って言った時、『はい。喜んで』と即座に答えてくれること。第二の条件は『はい。喜んで』って答えてくれた、その日のうちに田中さんの家に来て共に一夜を過ごしてくれることだって。 私はその二つの条件をそのまま比呂に伝えたの。それが今日の昼頃、だから……きっと比呂は今…………」
「へ、へえ……田中さんって不思議ちゃんのうえに結構ユルいんだ。そういった女に、心理的にも身体的にも即行で乗っかろうとしている男も男だと思うよ。失恋はつらいだろうけど、そんな男だったって分かって良かったじゃん……って、あんた何、泣きながら笑ってんの?」
「……つらいよ、苦しいよ。まるで私の心臓も抉り出されたみたい……で、でも……っ……これでもう比呂は田中さんだけじゃなくて、他の女の子を見ることはない。私には向けられることのなかった眼差しを他の女の子に向けることだって永遠にないんだって思うと……っ……」
「永遠って……今頃、あいつらがヤッてるとしても、すぐに別れちゃうかもしれないでしょ? ユルいモン同士でくっついてくれていた方がいいけど、男女のことなんて誰にも分からないんだから。第一、あんたにだって、これからもっと好きな人ができるかもしれないわけで。良かったら、私のサークルの男子とかアルバイト先の男子とか紹介するけど? 彼女がいない男子も彼女を欲しがっている男子も結構な数いるんだし」
「ううん、私には新たな恋をすることなんて許されない。片思いのままに終わったこの恋を葬って、先に進むことなんて絶対に許されない。この罪をずっと背負っていくのが私に科せられた罰なんだよ。……比呂が真実を知ったとしたなら、私のことを殺したいほど恨むはず。私が知っていたのに伝えなかったから……田中さんの致命的な欠点を……」
「……致命的な欠点って何? まさか、ワキとか足とかが物凄く臭いとか、金遣いが荒過ぎてパパ活中毒とか、それとも股がユルいがゆえの性病持ちとか?」
「ううん、そんなんじゃない。…………田中さんは普通の食事もするけど、実は若い男のハートが……心臓が大好物で……それも活け造りっていうか、新鮮さを保ったまま、まだビクビク動いているのがさらにいいんだって。でも、いくら食人鬼のクォーターとはいえ、若い男なら誰彼構わず襲うわけにもいかないから、『あなたのハートを私にください』って先に要望をきちんと伝えて、本人の了承を得たうえでいただくことにしているんだって」
(完)
「あんたの言う比呂って確か教育学部の男子よね? っていうか、あんたの幼馴染でもあったっけ? ……え、何? 今にも泣きそうな顔をしているけど、もしかして好きなの?」
「うん、好きだよ。すごく好き。幼稚園から大学まで、ずっと同じで……実際に数回告白したよ。でも毎回、私のことは女として見ることができないって断られるんだ」
「私はあんたのこと、客観的に見ても可愛いとは思うけどな。少なくともブスではないよ。これはお世辞でも何でもなく……」
「ありがと……でも、男の子って何だかんだ言って、女の子の見た目にこだわるっていうか、まず見た目から入っていくじゃん? 比呂に好きな子ができて、その相手が同じ大学の田中さんだって聞いた時に、もう完全に勝ち目はないって思った」
「まあ、確かに田中さんは凄い美人っていうか、正直なところ、うちの大学のミスキャンパスとかよりもルックスレベルは遥かに上だよね。どこか浮世離れしたような雰囲気のある美人っていうか……それはさておき、あんたが自分のことを好きだって知っているくせに恋愛相談とかしてくるワケ? 人をバカにするにも程があるんじゃない? あんたもちょっとはプライド持ちなよ」
「……そうだよね、本当に。自分でもバカだと思う。でも、これから先、比呂が私のことを見てくれる日が永遠に来ないのだとしたら、もういっそのこと比呂が田中さんのものになってくれた方がいいかなって。だから……」
「だから、何? もしかして、二人の仲を取り持ったの?」
「うん、取り持った。田中さんに比呂のことを伝えたの。田中さんも今はフリーだし、比呂の気持ちはとてもうれしいって。でも、二つの条件があるって」
「二つの条件?」
「第一の条件は、田中さんが『あなたのハートを私にください』って言った時、『はい。喜んで』と即座に答えてくれること。第二の条件は『はい。喜んで』って答えてくれた、その日のうちに田中さんの家に来て共に一夜を過ごしてくれることだって。 私はその二つの条件をそのまま比呂に伝えたの。それが今日の昼頃、だから……きっと比呂は今…………」
「へ、へえ……田中さんって不思議ちゃんのうえに結構ユルいんだ。そういった女に、心理的にも身体的にも即行で乗っかろうとしている男も男だと思うよ。失恋はつらいだろうけど、そんな男だったって分かって良かったじゃん……って、あんた何、泣きながら笑ってんの?」
「……つらいよ、苦しいよ。まるで私の心臓も抉り出されたみたい……で、でも……っ……これでもう比呂は田中さんだけじゃなくて、他の女の子を見ることはない。私には向けられることのなかった眼差しを他の女の子に向けることだって永遠にないんだって思うと……っ……」
「永遠って……今頃、あいつらがヤッてるとしても、すぐに別れちゃうかもしれないでしょ? ユルいモン同士でくっついてくれていた方がいいけど、男女のことなんて誰にも分からないんだから。第一、あんたにだって、これからもっと好きな人ができるかもしれないわけで。良かったら、私のサークルの男子とかアルバイト先の男子とか紹介するけど? 彼女がいない男子も彼女を欲しがっている男子も結構な数いるんだし」
「ううん、私には新たな恋をすることなんて許されない。片思いのままに終わったこの恋を葬って、先に進むことなんて絶対に許されない。この罪をずっと背負っていくのが私に科せられた罰なんだよ。……比呂が真実を知ったとしたなら、私のことを殺したいほど恨むはず。私が知っていたのに伝えなかったから……田中さんの致命的な欠点を……」
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(完)
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