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Episode12 2021年ラストは『1,000字以内ショートホラー5品』
Episode12-D 黒雲と井戸端会議
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亜沙美さんは楽観的で明るい性格ではありましたが、一つのことに気を取られてしまうと、状況判断や優先順位をつけることができなくなってしまうという困ったところがありました。
そんな亜沙美さんも大人になり、いまや一人の男の子のお母さんです。
ある日のお昼過ぎ、亜沙美さんが窓の外を見ると、雲行きがあやしくなってきていました……というよりも、不吉な兆しのごとく黒雲が空を覆い始めています。
洗濯物を取り込まなきゃ、と家の外に出た亜沙美さんですが、お隣の奥さんも同じタイミングで外に出てきました。
亜沙美さんも、お隣の奥さんも、自分たちがしようと思っていたことをすっかり忘れ、そのまま井戸端会議に突入してしまったのです。
ペチャクチャペチャクチャと喋り続けていた亜沙美さんに、家の中からの息子くんの声が聞こえてきました。
「ママ、クモだよ!」
蜘蛛が出たのでしょうか?
「すぐ行くからちょっと待っててね」
亜沙美さんは答えました。
「すぐ行くから」と言ったくせに、なんと亜沙美さんはお喋りを再開したのです。
今の亜沙美さんは、お隣の奥さんとのお喋りに夢中で、洗濯物のことや洗濯物などとは比べ物にならないほど大切な息子さんのことも、二の次三の次といった状態です。
「ママ、クモがこっちに来るよ!」
息子くんの声は怯えていました。
普段の息子くんは、蜘蛛など何でもなさそうだったし、百足や蛙、蛇ですらそれほど怖がるというわけでもなかったはずだったのに。
「怖いよ! ”二人のクモ”がモクモクしながら、僕の方に来るよォ! 助けてェ、ママァァァ!!!」
亜沙美さんは慌てて、家の中へと戻りました。
そこで亜沙美さんが見たのは、人間の形をとった二つの雲が……すなわち、二人の”雲人間”が息子くんを小脇に抱え、連れ去ろうとしている光景でした。
(完)
そんな亜沙美さんも大人になり、いまや一人の男の子のお母さんです。
ある日のお昼過ぎ、亜沙美さんが窓の外を見ると、雲行きがあやしくなってきていました……というよりも、不吉な兆しのごとく黒雲が空を覆い始めています。
洗濯物を取り込まなきゃ、と家の外に出た亜沙美さんですが、お隣の奥さんも同じタイミングで外に出てきました。
亜沙美さんも、お隣の奥さんも、自分たちがしようと思っていたことをすっかり忘れ、そのまま井戸端会議に突入してしまったのです。
ペチャクチャペチャクチャと喋り続けていた亜沙美さんに、家の中からの息子くんの声が聞こえてきました。
「ママ、クモだよ!」
蜘蛛が出たのでしょうか?
「すぐ行くからちょっと待っててね」
亜沙美さんは答えました。
「すぐ行くから」と言ったくせに、なんと亜沙美さんはお喋りを再開したのです。
今の亜沙美さんは、お隣の奥さんとのお喋りに夢中で、洗濯物のことや洗濯物などとは比べ物にならないほど大切な息子さんのことも、二の次三の次といった状態です。
「ママ、クモがこっちに来るよ!」
息子くんの声は怯えていました。
普段の息子くんは、蜘蛛など何でもなさそうだったし、百足や蛙、蛇ですらそれほど怖がるというわけでもなかったはずだったのに。
「怖いよ! ”二人のクモ”がモクモクしながら、僕の方に来るよォ! 助けてェ、ママァァァ!!!」
亜沙美さんは慌てて、家の中へと戻りました。
そこで亜沙美さんが見たのは、人間の形をとった二つの雲が……すなわち、二人の”雲人間”が息子くんを小脇に抱え、連れ去ろうとしている光景でした。
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