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Episode6 『○○のくせに』シリーズ2品
Episode6-B 悪魔のくせに
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悪魔たちは知っていた。
人間という奴らの中にも時折、自分たち悪魔ですらドン引きさせるほどの所業を平然と行う者が生まれることを。
人間のくせに悪魔より悪魔らしい者が……
悪魔たちは、密かにその者たちの活動を応援していた。
今回のケース(case)に登場する3匹の小さな悪魔などは、エリックという男にとりわけ肩入れしていた。
全米を股に掛けて、現役活動中のエリック。
3匹の悪魔がエリックを高く評価していたのは、1度もパクられたことがないということに加え、いつも1人でその活動を抜かりなく完結させていたということだ。
まあ、エリック的には、パートナーなどいても裏切りや足手まといのリスクでしかないという理由であったのだが。
彼の犠牲者の遺体すら発見されず行方不明扱いとなっているケース(case)が圧倒的多数で、ごくたまに遺体が発見された場合でも、そのまま未解決事件(cold case)となってしまう風向きだ。
彼はだだっ広い全米を点々としつつも、時期を見ながら慎重に行動していた。
そのうえ、悪魔たちから見ても、彼は女の趣味(彼が獲物ととして定めるのは10代後半から30代前半にかけての女ばかり)が非常に良かった。
ひとたび獲物を捕らえた後の、彼の完膚なきまでの容赦の無さと残忍さは、”悪魔たちの中に潜む悪魔”をもさらに疼かせるものであった。
今宵も、密かに3匹の悪魔に応援されているなどとは露とも知らぬエリックは、道で獲物を見つけていた。
風のない夜であった。
夜空の月は、死神が持つ鎌のごとき形を成し、妖しく輝いていた。
エリックの定めた先には、まだ20才を少し過ぎたばかりかと思われる細身の女が歩いていた。
彼の殺戮ホルダーは、”約30年前に”3桁を突破しており、今宵の彼女は199人目の犠牲者となる。
200人まであと少しだ。
さらに、エリックの趣味の良さは、あの年になっても健在のようだ。
やはり、我らがエリックは、”入れる穴さえあれば他はどうでもいい”なんて妥協を許さない。
今夜の獲物は、まるで天使が間違って地上に生まれてしまったのかと思うほどに、清らかな美女だったのだから。
蛇のように音もなく背後より獲物へと忍び寄ったエリックは、グワッと牙を剥いて襲い掛かった。
美女は悲鳴をあげた。
エリックはそのまま、近くに止めている車に美女を拉致するつもりだったろう。
そして、現在の住居(もちろん地下室の防音もバッチリ)へと連れて行き、思う存分に自身の欲望を、彼女の清らかな肉体(ピュアな顔をしていながら、実は相当に経験豊富だったり、あるいは既婚者だったりなんてオチかもしれないが)にぶつけていただろう。
しかし、そうはならなかった。
「何するのよ! この変態!!」
喚きながらもがいた美女は、エリックの両腕からバッと逃れたかと思うと、渾身のアッパーカットをエリックにお見舞いしたのだ!
仰向けに倒れたエリックは、その拍子に後頭部を打ったのか、ぐったりとして動かなくなってしまった。
悪魔たちは驚いた。
体力的に脂が乗りに乗っていた頃のエリックなら、獲物からの反撃など絶対に許しはしなかっただろう。
しかし、初めて殺人を犯した14才の時から”長きにわたって”全米を股に掛けて活動していたエリックは、来月の2日に82才の誕生日を迎えるのだ。
稀代のシリアルキラーも、やはり年には勝てなかったか。
”永遠に力強い”という意味を持つ名前の男であっても、肉体的に永遠に力強くいられるわけなどなかったか。
自分の半分の年齢も生きていない年齢の女に、あっさりとノックアウトされてしまった。
「嫌だ……まさか、”もう”死んじゃったの?!」
美女は、慌てふためいていた。
だが、エリックはまだ死んでいなかった。
エリックの魂は、未練と執着と女たちの血と無念が絡みついた肉体に、まだしっかりと根付いている。
美女は、スマホを取り出し、どこかに電話をかけていた。
親にか、友達か、結婚しているなら夫か、それとも警察にか?
どっちにせよ、稀代のシリアルキラーももう終わりだ。
日本の言葉で表すなら「年貢の納め時」だ。
あっけないもんだ。
奴が今、暮らしているこの州においては、死刑制度は廃止されているから、肉体的な有効期限が来るまで刑務所暮らしってところだろう。
「……”エリック”? 私よ、アンジーよ」
天使と見紛う美女の名前は、”天使(アンジー)”であった。
いや、そんなことよりも、彼女が倒した男の名前もエリックなら、彼女が電話で助けを求めた男の名前もエリックとは……
何たる偶然の一致なのか?
「助けて、エリック。おかしな爺さんに襲われてつい殴っちゃったの…………ううん、白目を剥いて伸びているだけだから、まだ死んでないと思うわ…………そう、そうよ、そうなのよ。私一人じゃ”こいつ”を地下室に運べないだろうから、早く車で迎えに来て。”こいつ”を拉致するところ、誰かに見られでもしたらまずいから、急いで来て欲しいわ」
え?
ええっ?
風などない夜なのに、なんだか風向きがおかしくなってきている。
そして、悪魔たちは自分たちを疼かせる新たなる風までもが吹き始めていることをその肌で感じていた。
やがて、エリックがやって来た。
地面で伸びたままの老いた男を旧エリックとするなら、車からスマートに降り立った若い男を新エリックとしよう。
どうやら、新エリックはアンジーの夫であるようだ。
エリート然とし、表面的な育ちの良さと毛並みの良さを感じさせるも、どこか若い頃の旧エリックにも似た油断ならない目つきの男であった。
新エリックとアンジーは、旧エリックの体を素早く車のトランクへと押し込んだ。
そして、自分たちの棲家へと車を走らせた。
3匹の悪魔は、自分たちが応援していた旧エリックのことが気になり、というよりも見捨ててはおけず、奴が運ばれていった地下室に自分たちも忍び込んだ。
新エリックとアンジーの家の地下室は、やけにだだだだっ広いうえに、消そうとしても完全に消すことができない獣の血の臭いが漂っていた。
地下室の壁には、おあつらえ向きといった風に、拷問器具が幾つも並んでいる。
「今まで動物ではたくさん練習してきたけど、人間は初めてよね。ついに、この時がやって来たのね」
「ああ、俺たち夫婦の記念すべき一人目がしょぼくれた爺さんってところが、ちょっと不服だけど、あまり贅沢を言っていると機を逃してしまうからな」
「あら、このスケベ爺さんでいいじゃないの。こいつが、どこの誰だかも、今までどんな人生を送ってきたかも知らないけど、『もう殺してくれ!』と自分から懇願するほどに苦しめて、逃れることのできない死と絶望の淵へとジワジワと追いやっていくのも一興だと思うわ」
…………。
過去にも殺人夫婦が何組かいたことは、悪魔たちも知っていた。
例を挙げるなら、イギリスのイアン・ブレイディにマイラ・ヒンドレー、フレデリック・ウェストにローズマリー・ウエスト、カナダのポール・ベルナルドにカーラ・ホモルカといった具合に……
だがこれはまずい、と悪魔たちは顔を見合わせた。
今宵、新たな連続殺人が幕を開け、捕食者であったはずの旧エリックは自分自身が獲物の側へと回ってしまう。
まさにこれこそ、因果応報、天罰覿面と言えるかもしれない。
しかし、3匹の悪魔たちは、ほぼ半世紀という”短い間”であったも、自分たちが応援してきた旧エリックの格好悪い最期なんて見たくはない。
この夫婦の初めての殺人事件(murder case)の被害者が、旧エリックであってはならないのだ!
ついに、3匹の小さな悪魔は新エリックとアンジーの前にピョーンと飛び出した!
「お前ら、今すぐにそいつを解放するんじゃ!」
「そいつは、わしら悪魔が見守ってきた者じゃ!」
「そいつを殺すのはわしらが許さんぞえ!」
なんと、悪魔のくせに、人間の命を助けようとしている。
その人間が悪魔より悪魔らしい者であるのはさておき……
悪魔たちの中にも天使の心は潜んでいたのであろうか?
さらに言うなら、旧エリックが爺さんなら、悪魔たちはもっと爺さんであり、その喋り方にも年季が入っていた。
しかし、新エリックもアンジーも、3匹の悪魔を前にして、全く動じることはなかった。
それどころか、顔を見合わせた彼らは、馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
「悪魔って、想像していたより小さいのね。悪魔のくせに、ボウリングのピンぐらいの大きさだったなんて」
「ああ、そうだな。それに揃いも揃って、マヌケ面の老いぼれだ」
そうだ、神をも恐れぬ者たちは、悪魔だって恐れはしない。
何も知らずに気を失ったままの旧エリックだけでなく、自分たちの風向きまでもが変わり始めたことに悪魔たちは今さらながら悟った。
こっちは3匹、相手は2人。
しかし、この2人は人間のくせに、悪魔より悪魔らしい者たちだ。
圧倒的な体格差もあるうえに、この地下室から逃げる退路はもうすでに断たれてしまっているだろう。
悪魔たちは震え出した。
悪魔のくせに震え出した。
ハンディングナイフを手にした新エリックがゆっくりと近づいてくる。
ボウガンを手にしたアンジーもゆっくりと近づいてくる。
「こいつらのただでさえ裂け気味の臭い口を生きたまま、もっと裂いたら面白い顔になりそうだな」
「悪魔のグラスゴースマイルって奴かしら? それに、悪魔の血って何色なんでしょうね?」
(完)
【後書き】
本作ですが、殺人を推奨ならび讃美する意図はございません。
また、殺人の被害に遭って亡くなった方々を貶める意図もございません。
不快に思われる箇所も多々あるかと思いますが、表現の一環として、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。
人間という奴らの中にも時折、自分たち悪魔ですらドン引きさせるほどの所業を平然と行う者が生まれることを。
人間のくせに悪魔より悪魔らしい者が……
悪魔たちは、密かにその者たちの活動を応援していた。
今回のケース(case)に登場する3匹の小さな悪魔などは、エリックという男にとりわけ肩入れしていた。
全米を股に掛けて、現役活動中のエリック。
3匹の悪魔がエリックを高く評価していたのは、1度もパクられたことがないということに加え、いつも1人でその活動を抜かりなく完結させていたということだ。
まあ、エリック的には、パートナーなどいても裏切りや足手まといのリスクでしかないという理由であったのだが。
彼の犠牲者の遺体すら発見されず行方不明扱いとなっているケース(case)が圧倒的多数で、ごくたまに遺体が発見された場合でも、そのまま未解決事件(cold case)となってしまう風向きだ。
彼はだだっ広い全米を点々としつつも、時期を見ながら慎重に行動していた。
そのうえ、悪魔たちから見ても、彼は女の趣味(彼が獲物ととして定めるのは10代後半から30代前半にかけての女ばかり)が非常に良かった。
ひとたび獲物を捕らえた後の、彼の完膚なきまでの容赦の無さと残忍さは、”悪魔たちの中に潜む悪魔”をもさらに疼かせるものであった。
今宵も、密かに3匹の悪魔に応援されているなどとは露とも知らぬエリックは、道で獲物を見つけていた。
風のない夜であった。
夜空の月は、死神が持つ鎌のごとき形を成し、妖しく輝いていた。
エリックの定めた先には、まだ20才を少し過ぎたばかりかと思われる細身の女が歩いていた。
彼の殺戮ホルダーは、”約30年前に”3桁を突破しており、今宵の彼女は199人目の犠牲者となる。
200人まであと少しだ。
さらに、エリックの趣味の良さは、あの年になっても健在のようだ。
やはり、我らがエリックは、”入れる穴さえあれば他はどうでもいい”なんて妥協を許さない。
今夜の獲物は、まるで天使が間違って地上に生まれてしまったのかと思うほどに、清らかな美女だったのだから。
蛇のように音もなく背後より獲物へと忍び寄ったエリックは、グワッと牙を剥いて襲い掛かった。
美女は悲鳴をあげた。
エリックはそのまま、近くに止めている車に美女を拉致するつもりだったろう。
そして、現在の住居(もちろん地下室の防音もバッチリ)へと連れて行き、思う存分に自身の欲望を、彼女の清らかな肉体(ピュアな顔をしていながら、実は相当に経験豊富だったり、あるいは既婚者だったりなんてオチかもしれないが)にぶつけていただろう。
しかし、そうはならなかった。
「何するのよ! この変態!!」
喚きながらもがいた美女は、エリックの両腕からバッと逃れたかと思うと、渾身のアッパーカットをエリックにお見舞いしたのだ!
仰向けに倒れたエリックは、その拍子に後頭部を打ったのか、ぐったりとして動かなくなってしまった。
悪魔たちは驚いた。
体力的に脂が乗りに乗っていた頃のエリックなら、獲物からの反撃など絶対に許しはしなかっただろう。
しかし、初めて殺人を犯した14才の時から”長きにわたって”全米を股に掛けて活動していたエリックは、来月の2日に82才の誕生日を迎えるのだ。
稀代のシリアルキラーも、やはり年には勝てなかったか。
”永遠に力強い”という意味を持つ名前の男であっても、肉体的に永遠に力強くいられるわけなどなかったか。
自分の半分の年齢も生きていない年齢の女に、あっさりとノックアウトされてしまった。
「嫌だ……まさか、”もう”死んじゃったの?!」
美女は、慌てふためいていた。
だが、エリックはまだ死んでいなかった。
エリックの魂は、未練と執着と女たちの血と無念が絡みついた肉体に、まだしっかりと根付いている。
美女は、スマホを取り出し、どこかに電話をかけていた。
親にか、友達か、結婚しているなら夫か、それとも警察にか?
どっちにせよ、稀代のシリアルキラーももう終わりだ。
日本の言葉で表すなら「年貢の納め時」だ。
あっけないもんだ。
奴が今、暮らしているこの州においては、死刑制度は廃止されているから、肉体的な有効期限が来るまで刑務所暮らしってところだろう。
「……”エリック”? 私よ、アンジーよ」
天使と見紛う美女の名前は、”天使(アンジー)”であった。
いや、そんなことよりも、彼女が倒した男の名前もエリックなら、彼女が電話で助けを求めた男の名前もエリックとは……
何たる偶然の一致なのか?
「助けて、エリック。おかしな爺さんに襲われてつい殴っちゃったの…………ううん、白目を剥いて伸びているだけだから、まだ死んでないと思うわ…………そう、そうよ、そうなのよ。私一人じゃ”こいつ”を地下室に運べないだろうから、早く車で迎えに来て。”こいつ”を拉致するところ、誰かに見られでもしたらまずいから、急いで来て欲しいわ」
え?
ええっ?
風などない夜なのに、なんだか風向きがおかしくなってきている。
そして、悪魔たちは自分たちを疼かせる新たなる風までもが吹き始めていることをその肌で感じていた。
やがて、エリックがやって来た。
地面で伸びたままの老いた男を旧エリックとするなら、車からスマートに降り立った若い男を新エリックとしよう。
どうやら、新エリックはアンジーの夫であるようだ。
エリート然とし、表面的な育ちの良さと毛並みの良さを感じさせるも、どこか若い頃の旧エリックにも似た油断ならない目つきの男であった。
新エリックとアンジーは、旧エリックの体を素早く車のトランクへと押し込んだ。
そして、自分たちの棲家へと車を走らせた。
3匹の悪魔は、自分たちが応援していた旧エリックのことが気になり、というよりも見捨ててはおけず、奴が運ばれていった地下室に自分たちも忍び込んだ。
新エリックとアンジーの家の地下室は、やけにだだだだっ広いうえに、消そうとしても完全に消すことができない獣の血の臭いが漂っていた。
地下室の壁には、おあつらえ向きといった風に、拷問器具が幾つも並んでいる。
「今まで動物ではたくさん練習してきたけど、人間は初めてよね。ついに、この時がやって来たのね」
「ああ、俺たち夫婦の記念すべき一人目がしょぼくれた爺さんってところが、ちょっと不服だけど、あまり贅沢を言っていると機を逃してしまうからな」
「あら、このスケベ爺さんでいいじゃないの。こいつが、どこの誰だかも、今までどんな人生を送ってきたかも知らないけど、『もう殺してくれ!』と自分から懇願するほどに苦しめて、逃れることのできない死と絶望の淵へとジワジワと追いやっていくのも一興だと思うわ」
…………。
過去にも殺人夫婦が何組かいたことは、悪魔たちも知っていた。
例を挙げるなら、イギリスのイアン・ブレイディにマイラ・ヒンドレー、フレデリック・ウェストにローズマリー・ウエスト、カナダのポール・ベルナルドにカーラ・ホモルカといった具合に……
だがこれはまずい、と悪魔たちは顔を見合わせた。
今宵、新たな連続殺人が幕を開け、捕食者であったはずの旧エリックは自分自身が獲物の側へと回ってしまう。
まさにこれこそ、因果応報、天罰覿面と言えるかもしれない。
しかし、3匹の悪魔たちは、ほぼ半世紀という”短い間”であったも、自分たちが応援してきた旧エリックの格好悪い最期なんて見たくはない。
この夫婦の初めての殺人事件(murder case)の被害者が、旧エリックであってはならないのだ!
ついに、3匹の小さな悪魔は新エリックとアンジーの前にピョーンと飛び出した!
「お前ら、今すぐにそいつを解放するんじゃ!」
「そいつは、わしら悪魔が見守ってきた者じゃ!」
「そいつを殺すのはわしらが許さんぞえ!」
なんと、悪魔のくせに、人間の命を助けようとしている。
その人間が悪魔より悪魔らしい者であるのはさておき……
悪魔たちの中にも天使の心は潜んでいたのであろうか?
さらに言うなら、旧エリックが爺さんなら、悪魔たちはもっと爺さんであり、その喋り方にも年季が入っていた。
しかし、新エリックもアンジーも、3匹の悪魔を前にして、全く動じることはなかった。
それどころか、顔を見合わせた彼らは、馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
「悪魔って、想像していたより小さいのね。悪魔のくせに、ボウリングのピンぐらいの大きさだったなんて」
「ああ、そうだな。それに揃いも揃って、マヌケ面の老いぼれだ」
そうだ、神をも恐れぬ者たちは、悪魔だって恐れはしない。
何も知らずに気を失ったままの旧エリックだけでなく、自分たちの風向きまでもが変わり始めたことに悪魔たちは今さらながら悟った。
こっちは3匹、相手は2人。
しかし、この2人は人間のくせに、悪魔より悪魔らしい者たちだ。
圧倒的な体格差もあるうえに、この地下室から逃げる退路はもうすでに断たれてしまっているだろう。
悪魔たちは震え出した。
悪魔のくせに震え出した。
ハンディングナイフを手にした新エリックがゆっくりと近づいてくる。
ボウガンを手にしたアンジーもゆっくりと近づいてくる。
「こいつらのただでさえ裂け気味の臭い口を生きたまま、もっと裂いたら面白い顔になりそうだな」
「悪魔のグラスゴースマイルって奴かしら? それに、悪魔の血って何色なんでしょうね?」
(完)
【後書き】
本作ですが、殺人を推奨ならび讃美する意図はございません。
また、殺人の被害に遭って亡くなった方々を貶める意図もございません。
不快に思われる箇所も多々あるかと思いますが、表現の一環として、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。
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