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復讐するために、私の全てを代償にすることにしました

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「気が変わった。婚約破棄する」

 屋敷に呼び出された私は、テスタ様から冷たい表情と声音で、そう言われた。
 他の女性に好意を抱いているのは知っていた。
   それでも私を選んでくれるのではないか。
   そんな希望を持っていたのに。

「……分かりました」

 引き止めても、テスタ様の気持が私に向くことはもうない。
 そう感じた私は足早に室内から出た。




「お主、我と契約するのか?」

 目の前で私を見下ろしている精霊様は、そう聞いてきた。
 もう決意は固い。その為にこうしてこの場にやってきたのだ。
 ここは町外れの森の奥にある、透き通った泉だ。
 精霊様が住んでいると噂では聞いていたが、まさか本当にいるとは。
 私の想いに応えてくれたのだろうか。

「はい。どうか、私に力を貸して下さい!」

 返答に満足したのか精霊様は頷き、両手を空にかざした。
 何やら呪文のようなものを唱え始める精霊様。
 やがて空中に光の粒が現れ、収束し、どんどんと大きさを増していき、やがて大きな球体となった。
 そして呪文が終わると同時にその球体は弾け、霧散して行った。

「これであいつに呪いはかかった。しばし様子を見るがいい」

 それを聞いて満足した私は、礼を言うと同時に頭を下げた。
 テスタ様、私を捨てたことを後悔するがいい。
 精霊様を見上げながら、ニヤリと笑みを浮かべた。




 それから一ヶ月程経ったある日。
 友人からこんな話を聞かされた。

「テスタ様なんだけどさ、亡くなったらしいわよ。不気味なことにガリガリに痩せ細っていたんだって。健康そうだったのに何があったのかしらね」

 どうやら精霊の呪いが効いたらしい。
 あの精霊は大地に潤いをもたらす存在と言われている。
 故に乾くことを極端に恐れていて、泉に気に入らない人間などが近づくと、その精気を根こそぎ吸いとってしまうと言われている。
 だが逆に精霊に気に入ってもらえれば、私みたいにその力を利用することが出来る。
 復讐が成功したことに満足し、家に帰って一息ついていた時。

(では代償をいただこうか)

 私の頭の中で精霊の声が聞こえた。

「分かっているわ。この世界にもう未練はない」

 私が答えると同時に、意識が急激に遠のいて行くのを感じた。
 精霊と契約するにあたって、目的を達成したら私の身体を捧げる契約をしていたのだ。
 身体の奥底から、命そのものが根こそぎ奪われていくのを感じる。
 数秒後には絶命していることだろう。
 私の意識はここで途絶えた。
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