4 / 7
4
しおりを挟む
私が助けた男性の正体は、王族のハロルド家の次男、クロス様であることが判明した。
長居しても悪いと思い、私はあの後診療所を出て家へと帰った。
自室で一人腕を組み、目をつぶって思案する。
(クロス様は王の息子。でも確か王の息子は一人だったはず)
というのも、王子として世間に知られている男性は別にいるのだ。
名をバレリアと言う。
クロスと言う名前は聞いたことがない。
王族だと嘘をついている?
「うーーん……」
分からなかった。
素性もはっきりしない今、素直に彼を信頼するのは危険な気がした。
『お世話になったお礼もしたいし、素性も含めて一度説明させて欲しい』
と言われたのだった。
まぁ、それまでは色々考えても無意味か。
この数時間で色々疲れたし、もう時間も遅いしでクタクタだ。
お風呂に入って今日はもう寝るとしよう。
翌日。
町外れにある、大木の下に私は立っていた。
この木は何百年も前からあるらしく、町を見守る神聖な存在として大事にされていた。
クロス様から、昼の12時にここに来てくれと言われたのだ。
一体どんな話をされるのだろう。
正体はもしかしたら、噓をついている悪人の可能性だって十分にある。
昨日愛していた人に捨てられたばかりなのに、もう男を信用しかけているなんて馬鹿な女だと自分で思う。
でもクロス様は噓をついていない。
そんな気がしていた。
数分経った頃、こちらに歩いてくる人影が見えた。
向こうもこちらの存在に気づいたらしく、駆け足でやって来た。
「待たせてしまってすみません」
ペコリと頭を下げてきた。
(こうしてみると意外と身長大きいんだなぁ)
と感じた。
私も今来たところですからと返事し、クロス様に促されるまま私達はすぐそこにある山へと向かって歩き出した。
ん? 山?
人がいないところに連れていかれようとしている?
これってもしかしてピンチなのでは!?
急に嫌な汗が吹き出し、寒気さえしてきた。
ここで引き返すべきなのではないか。
そんな考えさえ浮かんでくる。
「あ、あの……どうして山なんかに?」
問われたクロス様は言いにくそうにしながらも教えてくれた。
「山に住んでるので……」
あ、本格的にまずいのでは?
底知れない恐怖が沸き上がってきて心臓がバクバク鳴る。
パニックになって来た時、男性の叫び声が聞こえてきた。
「クロスーー! 無事じゃったかぁ!!」
聞き覚えるあの声。
「お祖父様!?」
まさかこんな所で出会うなんて。
というか、クロス様と知り合いなの!?
謎だらけだった。
長居しても悪いと思い、私はあの後診療所を出て家へと帰った。
自室で一人腕を組み、目をつぶって思案する。
(クロス様は王の息子。でも確か王の息子は一人だったはず)
というのも、王子として世間に知られている男性は別にいるのだ。
名をバレリアと言う。
クロスと言う名前は聞いたことがない。
王族だと嘘をついている?
「うーーん……」
分からなかった。
素性もはっきりしない今、素直に彼を信頼するのは危険な気がした。
『お世話になったお礼もしたいし、素性も含めて一度説明させて欲しい』
と言われたのだった。
まぁ、それまでは色々考えても無意味か。
この数時間で色々疲れたし、もう時間も遅いしでクタクタだ。
お風呂に入って今日はもう寝るとしよう。
翌日。
町外れにある、大木の下に私は立っていた。
この木は何百年も前からあるらしく、町を見守る神聖な存在として大事にされていた。
クロス様から、昼の12時にここに来てくれと言われたのだ。
一体どんな話をされるのだろう。
正体はもしかしたら、噓をついている悪人の可能性だって十分にある。
昨日愛していた人に捨てられたばかりなのに、もう男を信用しかけているなんて馬鹿な女だと自分で思う。
でもクロス様は噓をついていない。
そんな気がしていた。
数分経った頃、こちらに歩いてくる人影が見えた。
向こうもこちらの存在に気づいたらしく、駆け足でやって来た。
「待たせてしまってすみません」
ペコリと頭を下げてきた。
(こうしてみると意外と身長大きいんだなぁ)
と感じた。
私も今来たところですからと返事し、クロス様に促されるまま私達はすぐそこにある山へと向かって歩き出した。
ん? 山?
人がいないところに連れていかれようとしている?
これってもしかしてピンチなのでは!?
急に嫌な汗が吹き出し、寒気さえしてきた。
ここで引き返すべきなのではないか。
そんな考えさえ浮かんでくる。
「あ、あの……どうして山なんかに?」
問われたクロス様は言いにくそうにしながらも教えてくれた。
「山に住んでるので……」
あ、本格的にまずいのでは?
底知れない恐怖が沸き上がってきて心臓がバクバク鳴る。
パニックになって来た時、男性の叫び声が聞こえてきた。
「クロスーー! 無事じゃったかぁ!!」
聞き覚えるあの声。
「お祖父様!?」
まさかこんな所で出会うなんて。
というか、クロス様と知り合いなの!?
謎だらけだった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
ピンクブロンド男爵令嬢の逆ざまあ
アソビのココロ
恋愛
ピンクブロンドの男爵令嬢スマイリーをお姫様抱っこして真実の愛を宣言、婚約者に婚約破棄を言い渡した第一王子ブライアン。ブライアンと話すらしたことのないスマイリーは、降って湧いた悪役令嬢ポジションに大慌て。そりゃ悪役令嬢といえばピンクブロンドの男爵令嬢が定番ですけれども!しかしこの婚約破棄劇には意外な裏があったのでした。
他サイトでも投稿しています。
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
その断罪、三ヶ月後じゃダメですか?
荒瀬ヤヒロ
恋愛
ダメですか。
突然覚えのない罪をなすりつけられたアレクサンドルは兄と弟ともに深い溜め息を吐く。
「あと、三ヶ月だったのに…」
*「小説家になろう」にも掲載しています。
手のひら返しが凄すぎて引くんですけど
マルローネ
恋愛
男爵令嬢のエリナは侯爵令息のクラウドに婚約破棄をされてしまった。
地位が低すぎるというのがその理由だったのだ。
悲しみに暮れたエリナは新しい恋に生きることを誓った。
新しい相手も見つかった時、侯爵令息のクラウドが急に手のひらを返し始める。
その理由はエリナの父親の地位が急に上がったのが原因だったのだが……。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
破滅は皆さんご一緒に?
しゃーりん
恋愛
帰宅途中、何者かに連れ去られたサラシュ。
そのことを知った婚約者ボーデンは夜会の最中に婚約破棄を言い渡す。
ボーデンのことは嫌いだが、婚約者として我慢をしてきた。
しかし、あまりの言い草に我慢することがアホらしくなった。
この場でボーデンの所業を暴露して周りも一緒に破滅してもらいましょう。
自分も破滅覚悟で静かにキレた令嬢のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる