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18. 潜入劇



 私たちはソルファス王国の王都への潜入方法を模索するのですが、一向にいい案が思い浮かばないのです。商人の馬車の荷物に紛れ込んで潜入するのもダメ、変装もできない。さてどうしたものですかね。

 少し考えを深くしていくのです。わたしはいつも通り意識を深いところまで潜る。今の私たちの状況を打開できる優秀な本は……そして一冊の本をみつける。そしてその本のページをめくる。

【伝説のスパイに聞く!バレずに潜入する方法】
 1.変装して、堂々と正門から入る。
 2.正体を隠したまま、裏門からこっそり侵入する。
 3.夜陰に乗じて城壁をよじ登る。
 4.屋根伝いに空から侵入する。
 5.【闇魔法】で透明化して忍び込む。
 6.【転移魔法】で一瞬のうちに王城へ飛ぶ。

 う~ん……ほとんど現実的ではないのです。そしてここに書いてあることはある程度話したのです。とりあえず1つずつ考えるのです。

 1.変装して、堂々と正門から入る。
 これは無理なのです! そもそもこの世界の常識として貴族や王族以外は街に入るときに身分証を提示しないといけないのです。

 2.正体を隠したまま、裏門からこっそり侵入する。
 これも無理なのです。そもそも私はこの国の人間じゃないですし、何より列車で顔を覚えられてますからね。

 3.夜陰に乗じて城壁をよじ登って侵入する。
 これならいけそうな気がしますけど、まず城壁の高さを考えると不可能に近いのですね。それに城壁の上には常に兵士が見張っているはずなのです。

 4.屋根伝いに空から侵入する。
 これは一番可能性がありそうですが、そもそもどうやって屋根の上に行くのかという問題もあるのですよね。しかも屋根ってもう王都の中に入っている前提なのですよこの書き方は。

 5.【闇魔法】で透明化して忍び込む。
 あぁ、これができれば楽だったんですけどねぇ。でも、私にはそんな高度な魔法使えませんし、全員分となるとすぐに魔力が枯渇してしまうのです。それに私は魔力がないし、聖女なのです。

 6.【転移魔法】で一瞬のうちに王城へ飛ぶ。
 論外なのです!!︎それが出来ればこんなに悩んでいないのです!

「はぁ~……なのです……」

 思わずため息が出てしまいました。結局どれも現実味がないのです。私は俯き地面を見ると、ふとあることに気づくのです。

「あれ……そういえば」

「どうしたのアリーゼ様?ボクなんかしちゃった?」

「あっいえ。今ふと思ったのですがここは廃墟の街なのに「水」があるのです。街中の水路に水が通っているのです。昨日も何事もなくスープを飲んでいたのです!」

 空がダメなら地下水路という手があったのです。この街の水路はかなり大きいものです。もし……そこにうまく潜り込めたら……

「それなら水路をたどって行けば入り口が見つかるんじゃない?」

「さすがはアリーゼ様!ボク全然思い浮かばなかったよ!」

「ふふん誉めるのです!」

 ロゼッタ様は私のそんな様子を見て呆れているのです。でもロゼッタ様もいつも今の私と同じことをしてるのです!

 私たちは早速行動に移すことにしたのです。すると街の外れに水を流すための魔法循環ポンプを見つけ、そこの近くに大きな地下へ降りる穴を見つけるのです。

 おそらくここが地下水路の入り口だと思うのです。私たちはゆっくりとその中を降りていくのです。

 地下水路の中には悪臭が立ちこめており、あまり長居したい場所ではありません。しかし、今は我慢するしかないのです。しばらく進むと広い空間に出るのです。そこには地下水が流れていて、とても綺麗な水が流れているのです。

 しばらく歩くのです。王都がある方角へ向かっているのでそろそろ近くまで来ていると思うのです。少し広い場所に着いたので一度休憩にすることにするのです。するとロゼッタ様がサリア様に尋ねる

「サリア。妹を助けたあとはどうするつもりなのじゃ?酷な事を言うが、もうジルベール国はないのじゃろ?」

「アリアと2人でひっそり暮らします。あの子と2人ならどんな場所でも幸せだと思うので」

「素晴らしい考えなのです!私たちが必ず救いだすのです!」

 サリア様はニッコリと笑顔で答える。その姿はとても美しく、そして強い意志を感じるのです。そして再び歩き出すのです。さらに進んでいくと複数の大きな魔法循環ポンプが見えてくる。

「この量の魔法循環ポンプ……もう王都の地下かもしれないね!」

「確かにその可能性はあるのです!」

 すると地上へ向かう階段を見つけるのです。急いで上へ上がることにしました。地上に出て周りを見渡す。そして目の前には巨大な城壁が見えるのです。ついに来たのです! ここは間違いなく王都なのです!しかも王都の中に入れているのです!

「ここは……間違いないのです!やっと着いたのです!」

「とりあえずどうしたらいいかな師匠?」

「少し危険じゃがミルディとフィオナで今の状況を確認してもらうしかなかろう。サリアはもちろん、ワシとアリーゼは列車で目立ちすぎておる」

 確かにそうなのです。ロゼッタ様の言う通り私とロゼッタ様は列車で目立ちすぎたのです。ここはミルディとフィオナに任せることにした私たちは、人が少ない王都の外れの広場で待つことにするのです。しばらくして、ミルディとフィオナは戻ってきたのです。

「王都の様子はどうだったのですか?」

「それが……その……」

 フィオナはサリア様をチラッと見ながら口を閉ざしてしまう。そんな様子を見た私はフィオナの目を見て優しく諭す。

「フィオナ。あなたは優しいのです。でも今のは優しさではないのです。サリア様がそれを望んでいないことはあなたも分かっているのです」

「アリーゼ様……その……王都内は混乱状態だったよ。王都の大広場で公開処刑をするらしいの。アリア=ジルベール様の……」

「!?なんて事……早く!アリアを!」

 勢いよく大広場に向かって飛び出そうとするサリア様の腕をロゼッタ様が掴む。

「バカ者!落ちつくのじゃ!お主1人で何とかできる問題ではないじゃろ!」

「でも!このままだと!妹の命が危ない!お願いします!私を妹の元へ連れて行ってください!なんでもやりますから!だから……どうか……」

 サリア様は泣き崩れてしまう。私はそんな彼女の姿を見ていられなくなり、思わず抱きしめてしまったのです。

 うーん……少し間に合いそうにないのですね……

 私は聖女なのです。こんな時こそ私がしっかりしないといけないのです。私はサリア様の頭を撫でると、静かに口を開く。まずはアリア様を助ける事を考えるのです。
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