このキスに意味はないからな

hana4

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「っおい、大丈夫か?」

 加護にペチペチと頬を叩かれていた須藤の意識が戻ってくる。

「痛え……」

 須藤はまだズキズキと痛む頭を押さえながらゆっくりと起き上がった。

「頭を打ったのか?どうした、黙ったままで……はっ!あ、あれは、事故だろ?あれはキ…ス…ではないから安心しろって!」
「はっ?ちげーよっ!今はそんなこと言ってる場合じゃねえって。俺、ちょっとだけ……見えちゃったっぽい」
「はあ?何がだよ?」
「いちいち耳元でうっせーな。頭痛ぇんだから静かにしろよ!ってかあれは、犯人……?たぶん、うん。
状況的にあれが犯人……だと思う」
「えっ?なんだお前、まさか、またそれ……オカルト的な……!?」

…………
……

 二人は側にあったベンチに座ると、加護の持っているタブレットを一緒に覗き込んだ。

「どうだ?この中にいるか?」
「……いや、いない」
「そうか。この近くで職質した奴らのリストだったんだが。いくら顔がわかったからって、この中にいないとなると手掛かりがないな。さて、どうしたもんか……」
「ねえ、それ俺に見せていいやつ?騒ぐ割には、俺の話し完全に信じてるし、機密情報もガバガバって……」
「機密……っ!まあ、きっと大丈夫だろう」
「ああ、やっぱダメなやつやのね。……でも、その写真とかと比べると……たぶんもっと若いよ、犯人……むしろ、もっと子供……」
「子供なのか?」
「ああ、まじキモいな。下手したら高校……いや、中学生かも?」
「嘘だろ?」
「そんなに驚くことでもないんじゃないか?」
「それはそうなんだが……実はな、被害者の通っていた学校が中高一貫校なんだ。だからお前のっていう犯人が真犯人だったとしたら、これは行きずりの犯行じゃなくて、彼女自身を狙った犯行……となると、行ってみるしかないのか?はぁ、流石にそれは気が重いよな?」
「行くって?学校に?嫌だね。俺は行かねえよ。それに、俺が犯人に顔バレしてるかもって脅してきたのそっちだかんな!」
「薄情なヤツめ!ここまで来て悔しくないのかよ?」
「はあ?バカ。今は、悔しいとかそういう話をしてんじゃねーよ。それに、仮に犯人がその学校に居たとしても、どうやって証明するんだよ?証拠も何も見つけて無いのに『きっと犯人はこいつだと思います!』とか言って指差せばいいの?」
「それもそうだな……あっ!お前、もうちょっと犯人特定出来そうなやつ見れない?」
「マジいい加減にしろって!それができるならとっくにやってるわ……」

 そう言った須藤は、唇を押さえたままで考え込んでしまった。
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