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case2:白金恵太様
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しおりを挟む予約管理サイトにアクセスすると11時からの予約は一件しか入っていない。
私はどうやら、気付いてはいけない事に気が付いてしまったみたいだ。
【白金恵太様】
(ん……白金?)
「アカリさーんっ!!」
その時、ミチナさんがこの部屋のドアを勢いよく開けて入ってきた。
急いでスマホを鞄に放り込み、「私は何も知りません」と言わんばかりの顔をして振り向く。
「もー、面倒くさいから予約変わってください!」
私の肩をガシッと掴んだミチナさんは、そう言いながら私の首をガクガクと揺らしてくる。
「面倒くさいって……ちょっと、お客さんにも聞こえちゃう……」
私はミチナさんをなだめながら、とりあえずその声のボリュームを下げてもらえるように頼もうとするが……
「あ゛ーーーっ!!」
その雄叫びと共に、ミチナさんの背後からガチャガチャとした模様の袖が伸びてくると、私はそれに思いっ切り指を差されていた。
「ほらあ、いるじゃないですか。俺、この人にやってほしくて予約したんですって!」
受付でミチナさんと押し問答をしていた彼も、ズカズカと私の部屋に入ってくる。
狭い部屋の中で彼が叫ぶような声を出したせいで、ミチナさんが特大の溜息をつく。
彼の要望はともかくとして、今一番の優先事項はミチナさんのご機嫌取りだ。
「指名制度がないことは、ご予約のページにも記載しておりますし……」
精一杯の反論をして、私がミチナさんの味方であることをアピールする。
「そんなの読んでないっすよ!」
しかし一向に食い下がらない彼は、あろうことかミチナさんを押しのけようとする。「チッ」というミチナさんの舌打ちが響き、私だけが青ざめていた。一触即発の二人の間に割って入ると、ミチナさんはもう一度大きなため息をつくために、思いっ切り息を吸いこもうとしている……
「ちょっと!うるさいんだけど~」
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