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しおりを挟む「そ……っか。うん。約束した……な。もう、やめるよ。」
そんな独り言を「哀れだな」と茶化す声はもう聞こえない。
「今さら、もう一回夢を追いかけてみる……なんて言ったら笑うか?」
この質問を誰に投げかければいいのかを、俺はやっと気付くことが出来た。
ソラと交わした約束が俺のもとから逃げて行かないように、影のように伸びるその尾ヒレをしっかりと踏みつける。
「何もできないままの自分をやめて、一人でも多く助けるんだ。こんな歳になってから始めるなんて、笑う奴もいるかもしれない。また手が届かなかったことに後悔するかもしれない。それでも戦う……
──そんな、俺の物語を始めてみるよ……」
見上げた青空は雲に塗れ、不揃いな形に切り取られていた。心に秘めていたそんな想いを、独り言で宣言するなんて馬鹿みたいなのに、何処か晴れてゆくような心に不思議と笑みが零れていた。目に映る光景は、探していたあの時とはあまりに違う青空だけど、変に希望に満ちている。
この俺にできる事は限られていて、手の届く範囲も僅かだ。その中から俺にでも出来そうな所で選んだ。そんな風に折り合いをつけてみつけた夢だったけれど、それは、俺が、俺さえ努力すれば掴み取れる夢で、今、その一歩をやっと踏み出す。
踏みつけていた約束の尾ヒレを今度は引きずりながら、ソラに届けられないまま終わった想いを決して忘れないと誓う。
「できたらさ、もう一度会って話がしたい……な。」
もう一度ソラに会えたら、あの日の答え合わせがしたい。間違い続けてしまった日々の中で、本当は何を想っていたのかを確かめ合いたい。いや、それだけじゃないな……
また希望を抱けたことを、今度は必死で追いかける夢の話を、そんな未来をソラと語り合いたいんだ。今なら、これからならば、あの時よりも上手く言葉にできる気がするから……
少しずつ短くなってゆく煙草に視線を落とし、その先に揺れる煙の規則性を探す。苦みのある香りが、鼻先をかすめながら消えた。
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