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そのまま俺たちは、当てもなくもう一度肩を並べて歩き始めた。
チェーン店のカフェとか、良く行く牛丼屋とか、そんな見慣れた景色には脇目もふらず、デジタルな模様のように四角く切り取られた空を見上げる。
「そういや、ここら辺に何があるのか知らないな?」
「そうだね。意外とこういうところで撮れちゃったりしてね?虹雲の群れ……」
そう言ったソラの視線が脇道へと流れる。
自然とその行き先を追いかけると、随分と古びた外階段を携えたビルが目に入った。
「なんか、不気味だな?」
「……そう?」
そこだけ、何十年も前からタイムスリップしてきたかのように感じる。その雰囲気に、俺の本能は「近づくな」という警鐘をならしていたが、ソラにとってはその雰囲気が、どうやら魅力的に感じたらしい。
いつもなら何か行動をする前に俺の意志を確認するはずのソラは、細い脇道をズンズンと進み、すでに錆びた外階段をバシャバシャと上り始めている。
しかも、一度も俺を振り返る事もなく。
「ソラ……?そんな、勝手に入ったら……」
自分から出た声が思いの外弱々しくて驚く。
誰のモノかも、何があるのかも知らない。
知らないというのは、怖い。
珍しく俺の前を進むソラは、その階段を三階分ほど上ってからようやく振り向いた。
「なんかさ、ワクワクするね?」
随分と久し振りに見た様な気がするソラの表情は、いつも通り笑っていて、大きく開けた口の端が、垂れた目尻にくっついてしまう寸前だった。
「……っそうだな」
俺は一口深呼吸を飲み込むと、下唇を噛む。踵に力が入ったせいで、さっきよりも足音が大きくなった気がした。
すれ違うのもやっとな幅しかないその階段で、俺はソラの横を無理やり追い越し、気が付いた時にはあと二階分くらい続いている、その階段の終点を目指していた。
チェーン店のカフェとか、良く行く牛丼屋とか、そんな見慣れた景色には脇目もふらず、デジタルな模様のように四角く切り取られた空を見上げる。
「そういや、ここら辺に何があるのか知らないな?」
「そうだね。意外とこういうところで撮れちゃったりしてね?虹雲の群れ……」
そう言ったソラの視線が脇道へと流れる。
自然とその行き先を追いかけると、随分と古びた外階段を携えたビルが目に入った。
「なんか、不気味だな?」
「……そう?」
そこだけ、何十年も前からタイムスリップしてきたかのように感じる。その雰囲気に、俺の本能は「近づくな」という警鐘をならしていたが、ソラにとってはその雰囲気が、どうやら魅力的に感じたらしい。
いつもなら何か行動をする前に俺の意志を確認するはずのソラは、細い脇道をズンズンと進み、すでに錆びた外階段をバシャバシャと上り始めている。
しかも、一度も俺を振り返る事もなく。
「ソラ……?そんな、勝手に入ったら……」
自分から出た声が思いの外弱々しくて驚く。
誰のモノかも、何があるのかも知らない。
知らないというのは、怖い。
珍しく俺の前を進むソラは、その階段を三階分ほど上ってからようやく振り向いた。
「なんかさ、ワクワクするね?」
随分と久し振りに見た様な気がするソラの表情は、いつも通り笑っていて、大きく開けた口の端が、垂れた目尻にくっついてしまう寸前だった。
「……っそうだな」
俺は一口深呼吸を飲み込むと、下唇を噛む。踵に力が入ったせいで、さっきよりも足音が大きくなった気がした。
すれ違うのもやっとな幅しかないその階段で、俺はソラの横を無理やり追い越し、気が付いた時にはあと二階分くらい続いている、その階段の終点を目指していた。
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