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②美咲がレッドブルマになっても注意する人はいない。なぜなら、小さい頃には家族で住んでいたが、美咲の高校が地元に決まった時に、父親が転勤となり、家族で引っ越すことになったのだ。
 美咲にも一緒に引っ越して通信制の高校に行くこともできたが、この海と別れることが出来なかった。そこで、アパートの2階に一人で住み、1階にいる大家をばあちゃんと言って仲良くしている。釣った魚をあげて、その変わりに調理をしてくれるのだ。

 部活がないので、釣りに出かける。滑り止めのある靴を履き、レッドブルマに白いTシャツを中に入れる。魚女神とスパンコールで正面上に付けた飾りのある白い帽子をかぶり、飲み物の水をぶら下げ、リール竿と魚を生かしておくスカリを持って出かける。
 磯に着くと目的の岩まで、滑る岩のりなどに気を付けて深みへと行く。そこには、良くみかけるおじさんがいた。
「今日の魚の食いはどうですか」
「お~、レッドブルマ、釣りに集中して来るのが分からなかったよ、潮はこれからだから、狙うにはいいよ」
 おじさんは、腰まである胴つき長ぐつ、そして、ライフジャケット、釣りバックという一般的な服装で、釣れるポイントを美咲と協力しあっているのだ。釣りには、情報収集と情報交換が大切なのだ。
 美咲とおじさんでは服装や持ち物が違うだけでなく、その他も違いがある。例えば、今日のエサだ。おじさんは、お店で買ったアオイソメである。
 美咲は、岩の上から周りを見渡すとヤドカリを発見する。それを、潰さないで中身だけが出るように岩で叩くのだ。そして、出てきたヤドカリを柔らかい部分が針の先にくるようにつけるのだ。もちろん、割った後の貝の破片は海に流す。
 美咲は、岩から見て、やや深みの海藻の根元に、ヤドカリを着けたエサが自然に流れているかのように魚をさそう。
 じっと、集中しているとヒットした。
「きた、きた~、最初の1匹め、逃がさないよ~」
 美咲は、魚の走る方向を意識してリールを巻く。
「やった~、アイナメだ!」
「おお~レッドブルマは、来てすぐに釣れちゃうんだから、さすがだね、魚もかわいい女の子に釣られたいのかな、それとも、日光でテカテカに反射しているレッドブルマの誘惑に負けたのかな、はっははは~」
 美咲は、20cmほどの魚を愛用のスカリに入れた。これで、新鮮に持ち帰ることができるのだ。美咲は魚とキスをしたいほどかわいく思えた。それでも、その後、焼き魚になってしまうのだろう。
 美咲は、また、ヤドカリを探した。なるべく元気の良く動くのを手に採り、岩で潰して針に付け、今度は、白波のある方に目を向けた。
「メバル、つれないかな・・・・・・・」
 美咲は、メバルの身はもちろんだが、あら汁が好きだ。メバルからは、良い出汁がでるのだ。
 美咲は気づかなかったが、美咲を道路から見ているものがいた。偶然にも同じ高校で3年生の野上颯太だった。
「おい、女の子なのに、短い赤い半ズボンはいて釣っているやつがいるぞ」
「ああ~あれは同じ高校の陸上部美咲、短い半ズボンでなくて、陸上のユニフォームの赤いブルマですよ」
「あいつ、あんなの履いて釣っていて、頭おかしいのか」
「レッドブルマって言われていて、釣りをする人にとっては、ちょっと、有名ですよ」
「彼氏、いるのか?」
「わかりません、陸上よりも釣りが好きという変わりものですよ、でも、陸上の記録も、そこそこいいです」
「魚を釣っているのか、俺は、レッドブルマ美咲を釣ってやる!」
 春は、魚だけでなく、人間にとっても恋のシーズンだった。
 
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