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 民生委員が家庭に来てくれた。近所の方が通報してくれたらしい。退院した母と私が対応した。

「少し、話を聞かせてくださいね、お母さんは高齢者じゃないから働けると思うけど、うつ病で働けないんですね、それとも、働かないんですか」

「母は、心労があって体がだるくて動くのがつらいんです」

「働く気がでないんですね、私が、お医者さんに確認したら、心の病気なので、体のどこという具体的に悪いところはないそうですね、気持ちの問題とのこと、働いてみようと思いませんか」

「はい、子ども達に迷惑をかけたくないので、働きたいと思います、でも、体の調子がわるくて休むのが多かったら仕事場に迷惑をかけてしまいますし・・・」

「働けるということでいいですね、後は、気のもちようですよね」

「あのう、母を責めるような言い方に聞こえます、母は、したくてもできないんです」

「それは、あなたの考えでしょう、お母さんについて聞いているんです、お母さんは働けますね」

「はい・・・」

「みなさん、高齢者の世話をしながら子どもの面倒を見ているんですよ、がんばりましょうよ」

「母は、母なりに頑張ろうとしているんです、だから、私も出来ることはやってあげたいと思っています」

「偉いですね、子どもが親のお手伝いをするのは、いいことです、今までも出来たんですから、家庭で協力して頑張ってくださいね、現状では、支援は必要ないと、私は思います」

「あのう、お母さんの病気の介護や家事、弟や妹の世話、とても大変です、何か支援してもらえることはないんですか」

「もっと、大変な家庭がいっぱいあるんですよ、聞いた限りでは、支援はありません、頑張って下さいとしか、言いようがありません、お母さんの具合がもっと悪くなったら、また、話し合いましょう」

「えっ、お母さんや私たちが、もっと体を悪くしないといけないんですか」

「美月、失礼な言い方は、やめなさい!」

「だって、お母さん・・・」

「前は支援が必要だったかも知れないですが、現状は支援できません、でも、これから変化するかも知れないので、その時に、また、考えましょうって言っているんです」

「私は、みんなと同じように学校へ行って、勉強したり話したり、部活を、もっと、もっとやりたい! でも、今、いっぱいいっぱいなんです、少しでも良くなるようにお願いします」

 美月は民生委員に頭を下げたが、ちょっと怒ったように、
「私たち民生委員は、委嘱されてやっていますが、ボランてィアです、失礼します」

 何かつぶやきながら行ってしまった。結局、行政も学校も、地域もヤングケアラーにとっては、心の支えにもなってもらえなかった。ただ、もっと大変な家庭があることが分かり、頑張ろうという気持ちは高まった。
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