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7 白いレオタードにトキメキ
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7 白いレオタードにトキメキ
美月は電話の後、持って来てくれる翔君のことを忘れるほど、いつものように家事に追われていた。
「今日の晩御飯は・・・、ゴミ出し日は明日だっけ、・・・洗濯を早くしないと・・・」 お母さんは学校を第一に考えるように言っていたけど,美月は家に帰るとやることがいっぱいあるのだ。何かをすると言うよりもやらなければならないものばかりなのである。
昨日は,翔君がカレーを作ってくれたので,今日は美月がシチューを作った。スマホで作り方を見て、野菜が堅くないか心配しながら時間をかける。火の側から離れられず、近くの出来る家事をした。このように要領よくやらないと終わらない。
「お姉ちゃん、夕飯、遅いよ、まだ!」
忙しくない心に余裕がある時なら何とも思わない言葉だが、気持ちに余裕がなく、イラッとくる。それでも、無言で幼い弟、妹の前から去っていく。何か言葉を言えば感情的に言ってしまいそうだからだ。
夕食をおかあさんの所に持って行って,薬といっしょに置くと,
「美月,ごめんね,こんなお母さんで,ごめんね,でも,体操は続けて頑張って,お母さん,応援したいの」
お母さんの目から涙が流れた。美月は、そんなお母さんを見て、お母さんの心の苦しさを感じ取った。お母さんは、自分が惨めで自らを責めているから、美月は平静を保ってできるだけ明るく振る舞った。
「お母さん、大丈夫よ、家事も勉強も、体操部もちゃんとできているから、お母さんの娘ですから・・・へへへ~」
美月は,お母さんに心配をかけたくなかったので、今日の体操部のレオタードなどが隠されたことは伝えなかった。体操競技会でさらに良い記録をお母さんに報告できるように練習し、どんなことがあっても頑張ることを心に強く思った。
「お姉ちゃん,夕食,まだ~」
弟と元気になった星奈ちゃんが食事を、また催促している。美月は楽しい会話をして二人を和ませようと一生懸命だ。
「星奈、おりこうさんに寝てたから、顔がとってもかわいいよ」
美月の疲れた顔には二人とも気付かない。
「星奈より、お姉ちゃんも、かわいい・・」
星奈ちゃんの言葉に心が救われる。
「太陽、今日も太陽のように明るく過ごせたかな」
一人だけに話しかけずに、美月は星奈ちゃんに声をかけたら、何でもいいから太陽君にも声をかけるようにしている。
「お姉ちゃん、それ、親父ギャグだよ~~~」
三人で楽しい夕食を済ませた後、美月は食器等の洗い物,二人を入れるお風呂の準備だ。
「星奈ちゃんは,熱があったから,今日のお風呂はお休みにしてね,太陽,お風呂にはいちゃって」
太陽君は,今日もゲームに夢中だったけど、ちらっとお姉ちゃんを見た。忙しそうに動いている。そんな姉ちゃんの汗を見て,素直にお風呂に入って自分の部屋に行った。
「お姉ちゃん、おやすみ~」
ピンポ~ン,ピンポ~ン・・・・・
翔が美月の体操用の用具一式,机の上にあったということで先生に頼まれて持ってきてくれたのだ。
「あっ、翔君、学校から連絡があったよ、持ってきてくれてありがとう」
中の物を見たかどうか気になるところだが、あえて聞かなかった。
「ねえ,美月さん,何があったの? 練習を休んで,こんな大事な物を忘れてさ・・」
美月は隠されたことを翔にも話せなかった。自分がされたことをだれにも知られたくないのだ! 恥ずかしい。自分が惨めに感じてしまうから・・・・。
「あっ,お母さん!」
二人の話し声を聞いて、寝ていたお母さんが起きてきた。
「美月のお友達,ありがとね,これからも美月を宜しくお願いします。私が病気で美月に頼っているから,美月は言わないけど大変だと思うの,あっ,昨日,カレー作ってくれたんだって,それから,美月を助けてくたたんだって,本当にありがとう」
お母さんは,知っていた。太陽君や星奈ちゃんがお母さんに話したのだろう・・・
「頼みついでに,無理なお願いを聞いてくれるかしら、今日,美月は体操部やってこなかったみたいね、体操の練習を3日休んだら1週間遅れるって言われているわ,どうしてやってこなかったのか聞かないから、美月、練習に付き合ってもらいなさい、ごめんなさいね、美月の練習につきあってあげてくれないかな・・,家に練習スペースがあるから,少しでいいの,お願い、この通り」
お母さんは、翔に頭を下げてお願いした。美月の体操への期待が、今のお母さんの力なのだ。美月も、それを感じている。
「お母さん,翔君に悪いから,言わないで、お願い、帰ってもらおうよ、ねっ~」
美月は翔を遅くしてしまうことだけでなく、男に見られるのが恥ずかしい。お母さんの言いつけで練習はレオタードを着るのだ。
「いいですよ,僕で良かったら、体操の動きの補助ぐらいならできそうです、でも、男の僕で美月さんが気にしないか心配です」
当然、美月は嫌だったがお母さんの方を見て、休んだ理由を聞かれるよりは翔に練習を付き合ってもらう方が良いと考えた。
「美月,練習してちょうだい! さっき約束したでしょ,翔君って言うんだ,奥の部屋で待ってて,美月,練習で感覚を忘れないように,ちゃんとレオタード着てやるのよ」
わかっていたが、はっきり言われると驚いた。
「えっ・・うん,お母さん」
翔は美月の自宅にある奥の練習場へ行き,美月は恥ずかしいけど白い練習用レオタードに着替えて練習場に来た。最初に入っていた翔は、美月の白いレオタードに胸がドキドキしていた。
(美月さん、白い妖精みたいだ・・・)
美月は電話の後、持って来てくれる翔君のことを忘れるほど、いつものように家事に追われていた。
「今日の晩御飯は・・・、ゴミ出し日は明日だっけ、・・・洗濯を早くしないと・・・」 お母さんは学校を第一に考えるように言っていたけど,美月は家に帰るとやることがいっぱいあるのだ。何かをすると言うよりもやらなければならないものばかりなのである。
昨日は,翔君がカレーを作ってくれたので,今日は美月がシチューを作った。スマホで作り方を見て、野菜が堅くないか心配しながら時間をかける。火の側から離れられず、近くの出来る家事をした。このように要領よくやらないと終わらない。
「お姉ちゃん、夕飯、遅いよ、まだ!」
忙しくない心に余裕がある時なら何とも思わない言葉だが、気持ちに余裕がなく、イラッとくる。それでも、無言で幼い弟、妹の前から去っていく。何か言葉を言えば感情的に言ってしまいそうだからだ。
夕食をおかあさんの所に持って行って,薬といっしょに置くと,
「美月,ごめんね,こんなお母さんで,ごめんね,でも,体操は続けて頑張って,お母さん,応援したいの」
お母さんの目から涙が流れた。美月は、そんなお母さんを見て、お母さんの心の苦しさを感じ取った。お母さんは、自分が惨めで自らを責めているから、美月は平静を保ってできるだけ明るく振る舞った。
「お母さん、大丈夫よ、家事も勉強も、体操部もちゃんとできているから、お母さんの娘ですから・・・へへへ~」
美月は,お母さんに心配をかけたくなかったので、今日の体操部のレオタードなどが隠されたことは伝えなかった。体操競技会でさらに良い記録をお母さんに報告できるように練習し、どんなことがあっても頑張ることを心に強く思った。
「お姉ちゃん,夕食,まだ~」
弟と元気になった星奈ちゃんが食事を、また催促している。美月は楽しい会話をして二人を和ませようと一生懸命だ。
「星奈、おりこうさんに寝てたから、顔がとってもかわいいよ」
美月の疲れた顔には二人とも気付かない。
「星奈より、お姉ちゃんも、かわいい・・」
星奈ちゃんの言葉に心が救われる。
「太陽、今日も太陽のように明るく過ごせたかな」
一人だけに話しかけずに、美月は星奈ちゃんに声をかけたら、何でもいいから太陽君にも声をかけるようにしている。
「お姉ちゃん、それ、親父ギャグだよ~~~」
三人で楽しい夕食を済ませた後、美月は食器等の洗い物,二人を入れるお風呂の準備だ。
「星奈ちゃんは,熱があったから,今日のお風呂はお休みにしてね,太陽,お風呂にはいちゃって」
太陽君は,今日もゲームに夢中だったけど、ちらっとお姉ちゃんを見た。忙しそうに動いている。そんな姉ちゃんの汗を見て,素直にお風呂に入って自分の部屋に行った。
「お姉ちゃん、おやすみ~」
ピンポ~ン,ピンポ~ン・・・・・
翔が美月の体操用の用具一式,机の上にあったということで先生に頼まれて持ってきてくれたのだ。
「あっ、翔君、学校から連絡があったよ、持ってきてくれてありがとう」
中の物を見たかどうか気になるところだが、あえて聞かなかった。
「ねえ,美月さん,何があったの? 練習を休んで,こんな大事な物を忘れてさ・・」
美月は隠されたことを翔にも話せなかった。自分がされたことをだれにも知られたくないのだ! 恥ずかしい。自分が惨めに感じてしまうから・・・・。
「あっ,お母さん!」
二人の話し声を聞いて、寝ていたお母さんが起きてきた。
「美月のお友達,ありがとね,これからも美月を宜しくお願いします。私が病気で美月に頼っているから,美月は言わないけど大変だと思うの,あっ,昨日,カレー作ってくれたんだって,それから,美月を助けてくたたんだって,本当にありがとう」
お母さんは,知っていた。太陽君や星奈ちゃんがお母さんに話したのだろう・・・
「頼みついでに,無理なお願いを聞いてくれるかしら、今日,美月は体操部やってこなかったみたいね、体操の練習を3日休んだら1週間遅れるって言われているわ,どうしてやってこなかったのか聞かないから、美月、練習に付き合ってもらいなさい、ごめんなさいね、美月の練習につきあってあげてくれないかな・・,家に練習スペースがあるから,少しでいいの,お願い、この通り」
お母さんは、翔に頭を下げてお願いした。美月の体操への期待が、今のお母さんの力なのだ。美月も、それを感じている。
「お母さん,翔君に悪いから,言わないで、お願い、帰ってもらおうよ、ねっ~」
美月は翔を遅くしてしまうことだけでなく、男に見られるのが恥ずかしい。お母さんの言いつけで練習はレオタードを着るのだ。
「いいですよ,僕で良かったら、体操の動きの補助ぐらいならできそうです、でも、男の僕で美月さんが気にしないか心配です」
当然、美月は嫌だったがお母さんの方を見て、休んだ理由を聞かれるよりは翔に練習を付き合ってもらう方が良いと考えた。
「美月,練習してちょうだい! さっき約束したでしょ,翔君って言うんだ,奥の部屋で待ってて,美月,練習で感覚を忘れないように,ちゃんとレオタード着てやるのよ」
わかっていたが、はっきり言われると驚いた。
「えっ・・うん,お母さん」
翔は美月の自宅にある奥の練習場へ行き,美月は恥ずかしいけど白い練習用レオタードに着替えて練習場に来た。最初に入っていた翔は、美月の白いレオタードに胸がドキドキしていた。
(美月さん、白い妖精みたいだ・・・)
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