HiH IDOL PROJECT

中村あんこ

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第127話『猛炎 12』

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 明るくなるまで待つ間、冴橋さえばしくんはホットココアを作ってくれた。たわいない世間話でたくさん笑った。心から笑った。冴橋くん本人が言うように、彼は、くだらない話で人を笑わせるのが得意みたいだ。

兜馬とうま「もうすぐ着くって~。車だから、さっと乗ったら大丈夫だよ、多分。」

インターホンが鳴る。

兜馬「あ、来た来た。おはよ~♪」

?「お前なぁ!?僕はお前のマネージャーでもお手伝いさんでもないんだぞ!?」

兜馬「けどまぁ暇だったでしょ、楠矢くすや♪」

楠矢「暇じゃない。」

兜馬「でも来てくれるんだもんね。」

楠矢「行かなきゃ蜜留みつるに頼むとか言うからぁ……。で、頼みって何。」

兜馬「まぁ、入って入って。」

楠矢、と呼ばれた男の人が入ってきた。そして私を見て、目を見開いた。

楠矢「……え、どういう……」

兜馬「昨日のレッスンの帰り、道で具合悪そうにしてたから連れて帰ってきた。だから楠矢、舞央ちゃんのこと家まで送ってあげてよ!」

楠矢「は!?え……ぐ、具合が悪そうで連れて帰ってきた……?」

兜馬「ほんとだよ!?」

楠矢「いや嘘だとは思ってないけど!なんで連れて帰ってくるんだよ!?み……水谷みずたにさんのお家に帰せばいいだろ!?」

兜馬「だって住んでるところを言えないくらい具合悪かったんだもん。ねぇ、舞央ちゃん?」

舞央「あっ、う、うん。ほんとに、私が具合が悪くて。」

楠矢「だったら病院とか」

兜馬「舞央ちゃんが男と病院に来たら変な噂が立つでしょ。」

楠矢「そこまで考えられるなら家に上がらせることもためらってくれよ……」

兜馬「だって舞央ちゃん、具合が悪かったんだよ?そんなことよりアイドルだからとか、週刊誌とか、そっち優先なの?楠矢って人でなしだね。」

楠矢「違う、違うけど……。今これ以上、水谷さんに何かあったらどうするんだよ!エイチフェスに粉雪が出られなくなったらどうする!?兜馬が責任を負えるのか!?」

兜馬「俺と舞央ちゃんの間にやましいことは何も無いし、舞央ちゃんは本当に具合が悪かったんだよ。舞央ちゃんは寝てただけ、俺も洗濯とかしてたし、何も無かった。なんにも、週刊誌や世間が期待することは、なんにも無かったよ。」

楠矢「うん、分かってるよ。けどな」

兜馬「信じてくれない人たちの意見が優先なの?」

楠矢「……兜馬の言ってることは、一言一句正しいよ。でもね、そうもいかないんだよ。水谷さんなら分かるはずです。こっちが立てた小さな海風で、世間は大津波を起こせることを。」

舞央「……」

楠矢「兜馬も、もちろん水谷さんも何一つ悪くない。2人の交友関係を断つつもりもないよ、僕は。でも、もう少しだけ、ほんとにあと少しだけでいいから……アイドルとしての、危機感を持ってくれないか、兜馬。」

兜馬「嫌。」

楠矢「……分かった、いいよ、兜馬はもういい。水谷さん、送ります。車ですけど、できるだけサッと乗ってくださいね。ほんとにすみません、うちの兜馬が。」
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