28 / 50
第一章 アニマルモンスターの世界へようこそ!
28.これから
しおりを挟む
「あれは多分グルーミング……あれは多分毛づくろい……っ……アログルーミングは毛づくろいを親和行動の一種として行う猫同士の愛情表現で、飼い主などに対しても見られる行動で……っ」
「……何1人でぶつぶつ言っている」
「はつねっ、どうしたっ」
ジークに突然キス的な行為をされたという衝撃が未だ冷めやらず、自身を襲った事態を理屈で落とし込もうと初音は必死に頭を悩ませていた。
現にジークはあれからも普段通り、特段の変化を感じさせない憎たらしいほどの通常運転。
「親和行動、つまりは仲間意識。そう、仲間意識。それが近い気がする……っ」
変な汗をかきながらまだ湿った身体と衣服を風に吹かせつつ、初音は服を乾かすと言ったジークに連れられた大木のてっぺんで誰にともなく呟いた。
白い雲の浮かぶ空は青く、暖かな陽射しと乾いた風が髪を攫い気持ちいい。広がる森と、遠くに広がる平原。そのさらに向こうには霞むように建物の影が見えている気がした。
腕に抱いたネロの温もりに安堵を覚えるのと同時に、背後から伝わる熱に鼓動が落ち着かない。
「……あの、なんか……近くありません……?」
「…………別にいいが、落ちても知らないぞ」
大した足場もない樹上から、目も眩むような高さを見下ろした初音はごくりと喉を鳴らす。
樹上が得意なクロヒョウのジークにとっては何てことないのだろうが、自力で降りられないこの現状は、一歩間違えば樹上に運ばれたエサと言う貴重な心境を体験できた気もした。
「…………もし、人間の中に居場所がないなら…………ここに居てもいい。初音には借りもできたし……アイラも喜ぶ。反対する者はいないだろう」
ネロを抱いた初音を背後から抱えるジークに、落ち着かない心境で1人じりついていた初音は、ジークの呟きに動きを止めた。
「獣人と人間の関係は最悪だ。人間は魔法で獣人を制圧し好き放題。人間への鬱憤を溜めた結果、ハイエナみたいに問答無用の敵意を露わにするヤツや、単純にエサとして見るヤツも多い」
「……昨夜は魔法使いも多くいたのに、皆んなだけで本当に対処できたの……?」
「昨夜は特別だ。あそこにいた獣人たちの敵は理由を挟む余地がないほどに明確だった。あの頭数で魔法を完成させる暇さえ与えなければ、魔法のない人間など俺たちには赤子も同然だ」
「……それなのに、人間にはやっぱり敵わないの…………?」
魔法が脅威であることは理解しているけれど、本当にこんな事態となるほどに手立てがないものなのか不思議な気がした。
うまく言えず言い淀む初音を見下ろして、ジークが視線を遠くへと向ける。
「俺たちが勝てない理由は、獣人を妨げる魔法陣と魔法、それに人間の団結力だ。人間はまとまるのが上手い。対して俺たちはそもそもの捕食関係や、認知、力の差、利害関係が強すぎて互いに背中など預けられない。協力すれば済むことだとわかりきっているのに、結果これだけ人間に良いようにされている」
「ーー……じゃぁ、私やネロをそばに置いてくれるジークは、ハイエナたちが言ってたようによほど珍しいんだ」
ははと苦笑した初音に一瞬目を丸くしたジークは、視線を横へずらして戻す。
「……まぁ、それはお互い様だな」
「…………っ!?」
ぐいとジークに頭部へ顔を埋められた気配を感じて、初音はピクリと身体を強張らせる。
「……ここが安全だとは言えないが……もし初音が残るなら、できるだけの事はする」
「あ……ありがとう……」
そろりと背後を伺い見れば、いつもの無表情に近い、けれどどこか柔らかいジークの顔があった。
昨夜から出たままの黒くて丸い耳と尻尾がぴくりと揺れる。
「人間の街に帰りたいなら、それも可能な範囲で協力する。契約を破棄する方法を探してからにはなるが、初音がしたいように、すれば良い」
「…………」
どちらでも自由にしろと言う、ジークの空気が伝わって来た。どちらを選んだとしても、その選択を尊重してくれるとその瞳が告げている。
しばし言葉を失って初音は視線を揺らすと、乾きかけた制服が目に入り、初音は無意識にその衣服を掴んだ。
生活の基盤さえあれば、人間の街に居た方が住み易いのであろうことは理解できる。しかし現状そこに初音の居場所はないどころか、身の危険すらあるのは変わらない。
ジークやアイラに甘えて、正体不明の力を解明しながら暮らすことは、嫌どころかこれ以上ない程にありがたかった。
そう言って貰えたことが嬉しい。けれど何も知らずにその言葉に飛びつけたのは、きっとあの施設を見る前までだったと、どこかで何となくわかっていた。
「…………まだわからないことだらけだし、ジークやネロとの魔法……契約? のことも調べないといけない。私自身に何ができる訳でもないかも知れないけど、もしかしたら、ネロの時や昨日みたいに、何かできることがあるんじゃないかと思ってる」
屋敷にあった大量の資料を、火の海の中からわざわざ回収したジークや、手伝ってくれた動物と獣人たち。その意図は、聞かなくてもわかる気がした。
「もしまだあんな環境に取り残されてる動物や獣人たちがいるなら、何とかしたい。それにーー」
必然か偶然か、なぜか狙われる異世界者にとって、この世界が生きづらいことは身をもって知った。
「この制服の学生を探せないかなって。多分きっと、私と一緒で、どこかで1人、困ってると思うからーー」
思い出すのもおぞましいあのオークション会場で、差し出されたその手が、縋りついたジークの手がなければ、どうなっていただろうと、今でも恐ろしい。
「……それにできたら……私も皆んなと一緒にいられたら、嬉しいーー」
ジークの心の内はわからない。 使い道として見られているのも確かであろう一方で、単身1人、明らかな危険も顧みずに舞い戻った、昨夜のジークの姿もまた真実だった。
そっと振り返ると、思ったよりも近い距離でジークの金の瞳と目が合った。
「……俺が断る、理由はないな」
「ネロもっ、いっしょっ!」
ふっと笑んだジークと、すりっと甘えてくるネロにほっとして、初音は息を吐く。
「ーーとりあえず寝るぞ、眠い」
「えっここでっ!?」
ジークの言葉にギョッとした初音の声だけが、乾いた風に攫われて流れていったーー。
「……何1人でぶつぶつ言っている」
「はつねっ、どうしたっ」
ジークに突然キス的な行為をされたという衝撃が未だ冷めやらず、自身を襲った事態を理屈で落とし込もうと初音は必死に頭を悩ませていた。
現にジークはあれからも普段通り、特段の変化を感じさせない憎たらしいほどの通常運転。
「親和行動、つまりは仲間意識。そう、仲間意識。それが近い気がする……っ」
変な汗をかきながらまだ湿った身体と衣服を風に吹かせつつ、初音は服を乾かすと言ったジークに連れられた大木のてっぺんで誰にともなく呟いた。
白い雲の浮かぶ空は青く、暖かな陽射しと乾いた風が髪を攫い気持ちいい。広がる森と、遠くに広がる平原。そのさらに向こうには霞むように建物の影が見えている気がした。
腕に抱いたネロの温もりに安堵を覚えるのと同時に、背後から伝わる熱に鼓動が落ち着かない。
「……あの、なんか……近くありません……?」
「…………別にいいが、落ちても知らないぞ」
大した足場もない樹上から、目も眩むような高さを見下ろした初音はごくりと喉を鳴らす。
樹上が得意なクロヒョウのジークにとっては何てことないのだろうが、自力で降りられないこの現状は、一歩間違えば樹上に運ばれたエサと言う貴重な心境を体験できた気もした。
「…………もし、人間の中に居場所がないなら…………ここに居てもいい。初音には借りもできたし……アイラも喜ぶ。反対する者はいないだろう」
ネロを抱いた初音を背後から抱えるジークに、落ち着かない心境で1人じりついていた初音は、ジークの呟きに動きを止めた。
「獣人と人間の関係は最悪だ。人間は魔法で獣人を制圧し好き放題。人間への鬱憤を溜めた結果、ハイエナみたいに問答無用の敵意を露わにするヤツや、単純にエサとして見るヤツも多い」
「……昨夜は魔法使いも多くいたのに、皆んなだけで本当に対処できたの……?」
「昨夜は特別だ。あそこにいた獣人たちの敵は理由を挟む余地がないほどに明確だった。あの頭数で魔法を完成させる暇さえ与えなければ、魔法のない人間など俺たちには赤子も同然だ」
「……それなのに、人間にはやっぱり敵わないの…………?」
魔法が脅威であることは理解しているけれど、本当にこんな事態となるほどに手立てがないものなのか不思議な気がした。
うまく言えず言い淀む初音を見下ろして、ジークが視線を遠くへと向ける。
「俺たちが勝てない理由は、獣人を妨げる魔法陣と魔法、それに人間の団結力だ。人間はまとまるのが上手い。対して俺たちはそもそもの捕食関係や、認知、力の差、利害関係が強すぎて互いに背中など預けられない。協力すれば済むことだとわかりきっているのに、結果これだけ人間に良いようにされている」
「ーー……じゃぁ、私やネロをそばに置いてくれるジークは、ハイエナたちが言ってたようによほど珍しいんだ」
ははと苦笑した初音に一瞬目を丸くしたジークは、視線を横へずらして戻す。
「……まぁ、それはお互い様だな」
「…………っ!?」
ぐいとジークに頭部へ顔を埋められた気配を感じて、初音はピクリと身体を強張らせる。
「……ここが安全だとは言えないが……もし初音が残るなら、できるだけの事はする」
「あ……ありがとう……」
そろりと背後を伺い見れば、いつもの無表情に近い、けれどどこか柔らかいジークの顔があった。
昨夜から出たままの黒くて丸い耳と尻尾がぴくりと揺れる。
「人間の街に帰りたいなら、それも可能な範囲で協力する。契約を破棄する方法を探してからにはなるが、初音がしたいように、すれば良い」
「…………」
どちらでも自由にしろと言う、ジークの空気が伝わって来た。どちらを選んだとしても、その選択を尊重してくれるとその瞳が告げている。
しばし言葉を失って初音は視線を揺らすと、乾きかけた制服が目に入り、初音は無意識にその衣服を掴んだ。
生活の基盤さえあれば、人間の街に居た方が住み易いのであろうことは理解できる。しかし現状そこに初音の居場所はないどころか、身の危険すらあるのは変わらない。
ジークやアイラに甘えて、正体不明の力を解明しながら暮らすことは、嫌どころかこれ以上ない程にありがたかった。
そう言って貰えたことが嬉しい。けれど何も知らずにその言葉に飛びつけたのは、きっとあの施設を見る前までだったと、どこかで何となくわかっていた。
「…………まだわからないことだらけだし、ジークやネロとの魔法……契約? のことも調べないといけない。私自身に何ができる訳でもないかも知れないけど、もしかしたら、ネロの時や昨日みたいに、何かできることがあるんじゃないかと思ってる」
屋敷にあった大量の資料を、火の海の中からわざわざ回収したジークや、手伝ってくれた動物と獣人たち。その意図は、聞かなくてもわかる気がした。
「もしまだあんな環境に取り残されてる動物や獣人たちがいるなら、何とかしたい。それにーー」
必然か偶然か、なぜか狙われる異世界者にとって、この世界が生きづらいことは身をもって知った。
「この制服の学生を探せないかなって。多分きっと、私と一緒で、どこかで1人、困ってると思うからーー」
思い出すのもおぞましいあのオークション会場で、差し出されたその手が、縋りついたジークの手がなければ、どうなっていただろうと、今でも恐ろしい。
「……それにできたら……私も皆んなと一緒にいられたら、嬉しいーー」
ジークの心の内はわからない。 使い道として見られているのも確かであろう一方で、単身1人、明らかな危険も顧みずに舞い戻った、昨夜のジークの姿もまた真実だった。
そっと振り返ると、思ったよりも近い距離でジークの金の瞳と目が合った。
「……俺が断る、理由はないな」
「ネロもっ、いっしょっ!」
ふっと笑んだジークと、すりっと甘えてくるネロにほっとして、初音は息を吐く。
「ーーとりあえず寝るぞ、眠い」
「えっここでっ!?」
ジークの言葉にギョッとした初音の声だけが、乾いた風に攫われて流れていったーー。
5
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
異世界に転生したら溺愛ロマンスが待っていました!皇太子も騎士もみんなこの世界"好き"のハードル低すぎませんか!?~これサダシリーズ1~
国府知里
恋愛
歩道橋から落ちてイケメンだらけ異世界へ! 黒髪、黒目というだけで神聖視され、なにもしていないのに愛される、謎の溺愛まみれ! ちょっと待って「好き」のハードル低すぎませんか!?
無自覚主人公×溺愛王子のハピエン異世界ラブロマンス!
※ お知らせしました通り、只今修正作業中です! シリーズ2からお楽しみください!
便利な「しおり」機能をご利用いただくとより読みやすいです。さらに本作を「お気に入り」登録して頂くと、最新更新のお知らせが届きますので、こちらもご活用ください。
行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される
めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。
『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。
新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。
アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。
王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。
みゅー
恋愛
王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。
いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。
聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。
王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。
ちょっと切ないお話です。
王太子殿下の想い人が騎士団長だと知った私は、張り切って王太子殿下と婚約することにしました!
奏音 美都
恋愛
ソリティア男爵令嬢である私、イリアは舞踏会場を離れてバルコニーで涼んでいると、そこに王太子殿下の逢引き現場を目撃してしまいました。
そのお相手は……ロワール騎士団長様でした。
あぁ、なんてことでしょう……
こんな、こんなのって……尊すぎますわ!!
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
番なんてお断り! 竜王と私の7日間戦争 絶対に逃げ切ってみせる。貴方の寵愛なんていりません
ピエール
恋愛
公園で肉串食べてたら、いきなり空から竜にお持ち帰りされてしまった主人公シンシア
目が覚めたら ベッドに見知らぬ男が一緒に寝ていて、今度は番認定!
シンシアを無視してドンドン話が進んでいく。
『 何なの、私が竜王妃だなんて••• 勝手に決めないでよ。
こんなの真っ平ゴメンだわ!番なんてお断り 』
傍若無人な俺様竜王からなんとか逃げ切って、平和をつかもうとする主人公
果たして、逃げ切る事が出来るか•••
( 作者、時々昭和の映画•アニメネタに走ってしまいます 。すみません)
ザマァはありません
作者いちゃらぶ、溺愛、苦手でありますが、頑張ってみようと思います。
R15は保険です。エロネタはありません
ツッコミ処満載、ご都合主義ではごさいますが、温かい目で見守っていて下さい。
映画関連、間違えがありましたら教えて下さい
(*´ω`*)
全九話です。描き終えてありますので最後までお読みいただけます。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる