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第一章 アニマルモンスターの世界へようこそ!

14.ハンター

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「ご、ごめんって……」

「ほんとに人間は理解しがたい……」

 ハァと不機嫌な顔でチッと舌打ちをするジークに、初音は変な汗をかきながら宥めに回る。

「や、だって急に舐めるから……っ」

「…………今更で騒ぐ必要が……?」

「んなっ!?」

 ニヤリと口の端を歪めて意地悪そうに初音を見下ろすジークに、初音は続ける言葉を失う。

「だっ……だって、あの時はクロヒョウの姿だったから……っ」

「ソレだって俺の配慮だろ」

「ぐぬ……っ」

 フッと勝ち誇ったように笑うジークに、初音は二の句が継げない。

 初音の気が少しでも和らぐようにわざわざ変身してくれたのかなとは思っていたが、改めてこんな感じで言われるとそれはそれで何か悔しかった。

「……ぁ…………あんな……ことさせちゃって、ごめんなさい……っ…………でも、あそこにいてくれたのがジークで……迷惑はかけちゃったけど、私は良かったって……本心から思ってるのは本当……っ」

 顔が真っ赤な気はするけれど、気づかないフリをして初音は続ける。

「ジークが何度も助けてくれて、アイラちゃんがいてくれたから、今笑えてるから……っ……だから、本当にありがとう」

「………………」

 気のない素振りで初音を無言で眺めたジークは、ふぅと小さく息を吐いて背を向ける。

「礼を言うには早いだろ、今に喰われても知らないからな」

「あ、足手まといにならないように頑張るから……っ」

 ワタワタと後を付いてくる初音をチラリと見て、ジークは少しだけ落ち着かない心境を誤魔化すようにその尻尾を揺らす。

「……まぁ、意外と悪くなかったけどな……。ガブリといきたい衝動をのは少し骨が折れたが……」

「は……っ!?」

 突然の柄にも無い告白に色々な意味でギョッとする初音。その姿にチラリと視線を流すと、ジークはニッと意地悪そうに笑う。

「また相手をしてやろうか。今度はガブリといくかも知れないがーー」

「いや、もうあんなこと頼むこと絶対ありませんから……っ!!」

 ギャァと赤いんだか青いんだかわからない顔で初音は吠える。そんな初音に、ジークはハハッと声を出して笑う。

 そんな無邪気な横顔になぜだか鼓動が速るのを止められず、初音は今更ながらジークの香りが漂う大きめの服を握りしめたーー。






 目の前に広がる惨状に、初音は思わず眉をしかめた。

 ジークの能力を試す場所と、初音の能力を確認するを探して森を歩いていた最中。

 いち早く異常を察知したジークについて駆けつければ、3人のハンターによって小鳥たちが捕獲されている場面に出くわした。

「あんな……人型ではなさそうな小鳥まで捕まえるの?」

「人間は気に入れば何でも捕まえる。材料、労働、愛玩、家畜、何でもありだ。身体能力で敵わない代わりに、魔法と道具でやりたい放題。……俺たちも他者を食しはするが、オモチャにはしない。……いや、一部ハイエナみたいに性格に難があるヤツもいるか……」

「………………」

 ジークの言葉に初音は押し黙る。世界は違えど、それはそのまま初音の世界にも当てはまる部分があるような気がして、言葉が出なかった。

「アイツらは鳥をターゲットにしてるんだろう。捕獲さえできれば鳥は危険度が低い種が多いし、色々と需要もあるんだろうな」

 バタバタと羽毛を散らして半狂乱になる鳥たちに対して、1人が逃げ惑う鳥たちを見えない力で縛り、残る2人が地に落ちた鳥を麻袋のようなものに投げ入れていた。

「…………助けることって……できるのかな……」

「…………」

 ボソリと呟いた初音の言葉に、ジークがじっとその真意を探るように初音を見る。

「……助けてどうするんだ」

「……どうもしないよ。ただ、助けて欲しそうに見えるから……。……私は……助けてもらえて、嬉しかった……し……」

「…………そうか」

 そう言うと、少しの沈黙の後にジークがカチャリと腰に下げた中剣を初音に無言で差し出す。

 差し出された剣を見てジークを見上げれば、その金色の瞳が静かに初音を見下ろしている。

「人間はどうにかできても、魔法のかかった檻や魔法刻印は獣人にはどうにもできない。例え人間がいなくなってもだ。だから、俺たちは捕まった同胞を助けることはしない。……だが人間なら……初音なら、助けられるはずだ」

「……わかった……でも、ジークは獣人なのに大丈夫なの……?」

 自分で言い出したことながら、危険な役回りは全てジークであることが心苦しかった。

「小動物狙いのハンターで連携も甘い。魔法使いが1人いるから、あいつを最優先で始末する。……あとはーー」

 そう言うや否やポンとクロヒョウの姿になったジークは、再びポンと人型に舞い戻る。

「えっ」

 ふるふると、人型にも関わらずその頭を獣のように振るジークのその姿に、初音は目を丸くした。





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