5 / 10
4日目。 好きなシチュエーションは何ですか。
しおりを挟む
4日目。好きなシチュエーションは何ですか。
「雨宮くんは何か憧れのシチュエーションとかないの?」
「はい?」
今日は今日とて、マイペースに安定した花園ワールドを展開する花園さんに、雨宮くんはイヤそうに顔を歪めた。
なぜだかすっかりと、互いの学校終わりに落ち合って帰ることが恒例になりつつあるここ最近。
「ほら、あるでしょ、こう、こんな主人公になりたいなとか。胸熱!! みたいな山場展開とか!!」
「え? あ、あぁー……」
仲良く2人で横並びに帰りながら明らかな温度差が否めない二者間で、それでも質問された解答を探す素直な雨宮くんは、かつて読んだことのある漫画へと思考を巡らせる。
話題についていくために有名どころは押さえるけれど、正直そこまで入れ込まないタイプの雨宮くんは答えに窮して眉間にしわを寄せた。
ーー主人公、主人公……。カッコいい主人公……?
並んで歩きながら、うーんうーん。と眉間に更に深いシワを寄せて思考を巡らせる雨宮くんを、チラと見上げる花園さん。
ーー主人公……?
『……だすけて……っ』
『あたりまえだーっ!!』
『立てよド三流! 核の違いってやつを見せてやる!!』
『あきらめたらそこで試合終了だよ』
『駆逐してやる……っ!!』
『穴を掘ったら天を突く。墓穴掘っても掘り抜けて、突き抜けたなら俺の勝ち!!!』
ぼやぁと、浮かぶ名場面を想像し、ちょっと胸がくすぐられた雨宮くん。
久しぶりに見返そうかな、なんて思いはするも、果たしてそれを3次元において再現したいかと言われればそれは否。
ーーいや、待て。花園だって名場面を言っている訳ではなく、ようは男向けで言う所のヒロインとの絡み部分に想いを馳せているわけで……?
尚もうーん、うーんと考えて、ほわわわんと浮かぶ記憶に残る場面たち。
そんな俗に言うラッキースケベな展開を思い浮かべただけに飽き足らず、気づけばそのヒロイン像が花園さんに取って変わっていることに、雨宮くんはその目をかっぴらいて停止した。
「……雨宮くん?」
反応のない雨宮くんを危惧した花園さんの声に、雨宮くんはそっとその顔を見下ろす。
「あ、ない。大丈夫。俺のことは気にしないでください」
「え……? そ、そう?」
顔を押さえて明後日の方向へ逸らす雨宮くんに戸惑いつつも、花園さんの頭から疑問符は消えない。
「……? ほんとにどうかしたの? 雨宮く……」
「うん。大丈夫。気にしないで」
花園さんの日記には、今日の雨宮くんはなんか様子が変だったと記された。
「雨宮くんは何か憧れのシチュエーションとかないの?」
「はい?」
今日は今日とて、マイペースに安定した花園ワールドを展開する花園さんに、雨宮くんはイヤそうに顔を歪めた。
なぜだかすっかりと、互いの学校終わりに落ち合って帰ることが恒例になりつつあるここ最近。
「ほら、あるでしょ、こう、こんな主人公になりたいなとか。胸熱!! みたいな山場展開とか!!」
「え? あ、あぁー……」
仲良く2人で横並びに帰りながら明らかな温度差が否めない二者間で、それでも質問された解答を探す素直な雨宮くんは、かつて読んだことのある漫画へと思考を巡らせる。
話題についていくために有名どころは押さえるけれど、正直そこまで入れ込まないタイプの雨宮くんは答えに窮して眉間にしわを寄せた。
ーー主人公、主人公……。カッコいい主人公……?
並んで歩きながら、うーんうーん。と眉間に更に深いシワを寄せて思考を巡らせる雨宮くんを、チラと見上げる花園さん。
ーー主人公……?
『……だすけて……っ』
『あたりまえだーっ!!』
『立てよド三流! 核の違いってやつを見せてやる!!』
『あきらめたらそこで試合終了だよ』
『駆逐してやる……っ!!』
『穴を掘ったら天を突く。墓穴掘っても掘り抜けて、突き抜けたなら俺の勝ち!!!』
ぼやぁと、浮かぶ名場面を想像し、ちょっと胸がくすぐられた雨宮くん。
久しぶりに見返そうかな、なんて思いはするも、果たしてそれを3次元において再現したいかと言われればそれは否。
ーーいや、待て。花園だって名場面を言っている訳ではなく、ようは男向けで言う所のヒロインとの絡み部分に想いを馳せているわけで……?
尚もうーん、うーんと考えて、ほわわわんと浮かぶ記憶に残る場面たち。
そんな俗に言うラッキースケベな展開を思い浮かべただけに飽き足らず、気づけばそのヒロイン像が花園さんに取って変わっていることに、雨宮くんはその目をかっぴらいて停止した。
「……雨宮くん?」
反応のない雨宮くんを危惧した花園さんの声に、雨宮くんはそっとその顔を見下ろす。
「あ、ない。大丈夫。俺のことは気にしないでください」
「え……? そ、そう?」
顔を押さえて明後日の方向へ逸らす雨宮くんに戸惑いつつも、花園さんの頭から疑問符は消えない。
「……? ほんとにどうかしたの? 雨宮く……」
「うん。大丈夫。気にしないで」
花園さんの日記には、今日の雨宮くんはなんか様子が変だったと記された。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました
鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と
王女殿下の騎士 の話
短いので、サクッと読んでもらえると思います。
読みやすいように、3話に分けました。
毎日1回、予約投稿します。
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
年下の彼氏には同い年の女性の方がお似合いなので、別れ話をしようと思います!
ほったげな
恋愛
私には年下の彼氏がいる。その彼氏が同い年くらいの女性と街を歩いていた。同じくらいの年の女性の方が彼には似合う。だから、私は彼に別れ話をしようと思う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる