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 あまりの衝撃内容に言葉を失う私の頬を、ヘラがそっと撫でる。

「喜んでいるアマベルも、泣いているアマベルも、嬉しそうなアマベルも、謝るアマベルも、様々な顔と声で鳴くアマベルを、俺はずっと箱の中から見ていた。……あぁ、男どもを股にかけるアマベルもいて、あれは興味深かったけど食指は全く動かなかったかな」

 な、何のお話しでしょうかと私は口の端を引きつらせる。

「そんなアマベルを何十、何百、何千、何万回と見せられ続けて、だいたいはあの性悪どもに奪われた……っ」

 し、性悪ってメインキャラの人たちのことですよね? と思ったが口に出せそうな雰囲気ではない。

「途中であまりにムカついてあいつらを焼き払ったら、他の住人のキルは禁止になった」

 チッと舌打ちをして不満気な顔をするヘラに、そりゃそうでしょうね! と心の中で突っ込みを入れる。

「ーーそんな時、キミが現れた」

「え、私……?」

 相変わらず押し倒されたままに、思わずと自分を指し示す私に、ヘラはこくりと頷く。

「群がる男どもに一切と興味を示さず、むしろ迷惑そうに遠ざけるアマベルを見て、今までと違うとすぐに気づいた」

 ま、まぁその通りと言えばその通りではあるけれど、私の意図とはズレて見えている気がしないでもない。

「ま、まさか、それで……っ?」

「この機会を逃してはいけないと、男嫌いなアマベルの側にいられるように女の姿に化けて、恩を売り、都合の良い存在となって、ついでに軽度な邪魔者どもを排除して、アマベルに近づいた」

 なんかもうそこまでして頂いて申し訳ないです。と変な心境になってきて私は心の中で頭を下げる。

「そうして今日やっと、その口から俺の名を呼ぶその声を聞いて、俺はアマベルに触れることができたんだーー」

 その赤い瞳が怪しく光り、私は思わずジリジリと身をよじらせて逃げることを画策するも、両手首を掴まれてただ怯えるしかできない。

「俺以外の男に鳴かされるアマベルが、許せなかった」

「へ、ヘラ……っ?」

「俺は誰よりも、俺を選んでくれたお前を愛している」

「あ、あり、がとう……ございます……っ」

 や、やばい。いつの間にか予想外に夢中になっていたお話しが終わってしまった気がする。

「夢にまで見たアマベルが、今俺の腕の中にいることが信じがたい」

 熱を込められた、潤んだ赤い瞳から視線が逸らせない。

「そ、そうまで言ってもらえるとなんというか……っ」

「ーー本来の姿の俺は好かないか……?」

「えっ!?」

 しゅーんと、すがるような瞳で見つめられて、言葉に詰まった。

 正直に申し上げて男性の姿のヘラは、女の子であった時の好感度を持ち越したままの男性として私の中ではすでに認知されており、その理由も懇切丁寧に赤裸々にその好意を向けて頂き、更にはその圧倒的なビジュアルである。

 少し(?)強引ではあるも、変態とは違うその気遣いと優しさは伝わるし、ヘラを不快に感じることもなかった。

 なかったが、特段断る理由がないような気もして来た反面で、頭の端にチラつくゲームのハード設定だけがただただ引っかかる。

「俺に触れられるのは……イヤか……」

「………………えぇっと……っ」

 あなた魔王なんですよね? と思わず突っ込まずにはいられないヘラの有り様に、私は顔を歪めて唇を引き結ぶと、しばしその瞳を閉じて、意を決して口を開く。

「ーーわ、私もヘラのことは好き……だけど、急なことなのと、あの、こう、色々と経験が少ない……と言うか、その、そんな感じなので、か、加減を……して頂けるとありがたい……と、言いますか……っ、……あ、あの、聞いてます……?」

 視線を合わせられないまま、確実に真っ赤であろう顔でボソボソと呟くのに、ヘラからの反応があまりにもなくて、不安を覚えた私はそっと視線を上げる。

「……あ、あの……っ?」

 私の上に乗ったままに自身の顔を両手で覆ったヘラが、プルプルと小刻みに震えていた。

「ーーこんな日がくるなんて……っ」

「…………………なんて言うか、そんなに喜んでもらえて恐縮……です……」

 ふふと、さすがゲームの世界感だなと苦笑する私を、その細くて綺麗な指の間から、ヘラの赤い瞳が覗き見ていることに気づいてびっくりする。

「良かった。できれば同意の上で、優しくしたかったから」

「……へ?」

 どこか不穏な言葉を吐いて、弧を描くヘラのその唇の意味を、私はすぐに思い知らされることとなるーー。




☆☆☆

 以降は短いですが、比較的に直接的? な音声のみでお送りしておりますのでご注意下さい。とは言え詳細は書いてません←のであまり期待もしないで下さい。。。滝汗←

 ここでリターンして最終話に飛んで結末だけ見てお帰りになっても何ら問題はございません。。。。←何














「ふっ、ぅっ、やっ、でっ、電気っ、明かりっ、消してぇ……っ!!」

「…………消してはあげたいけど、アマベルのことが見たいから……っ」

 しゅーんと、思ってもいなさそうな表情を、私は潤んだ瞳で憎々し気に見やる。

 出たよ出た、その顔っ! その顔すれば大抵通ると思ってるでしょこの悪魔ーーじゃなかった魔王……っ!!

「んぅうっ……っ」

「……気持ちいい?」

 蹴飛ばしたい。魔王らしいけど。

「かわいい」

 そう言って、ヘラは私の涙を舐め取って、そのまま口を塞ぐ。

「んぅっ」

 ぐたりと力の抜けた私の身体をヘラが見下ろす。満足そうにその赤い瞳を細めると、ヘラはそっと手を伸ばしたーー。
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