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王女、戸惑う。

81.

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「パル、ハクア様と知り合いだったの?そんなこと言わなかったから全然知らなかった」

「知り合いって言うかぁ、腐れ縁に近い感じぃ?基本的に僕たちみたいな存在は互いに関与しない……って言うかぁ、他者に対して興味関心自体がないんだけどぉ、人間の近くにいる者同士互いに多感な方なんだろうねぇ」

 荒れた毛並みを自らで毛繕いするパルを中心に、ハクアとクシュナ以外の一行は円状に集まってそんなパルを見上げる。

 ぷりぷりと怒り冷めやらぬハクアはクシュナを連れてどこかへとずんずん足音荒く去って行ってしまい、残された一行は吹き飛ばされたパルが戻るのを待って作戦を練っている最中だった。

「腐れ縁?ってことはハクア様も精霊なの?」

 ん?とパルを見つめるカトレアをしばし見つめ返し、パルは口を開く。

「カトレアたちから見たらほぼほぼ精霊みたいなもんかなぁ。ハクアはちょっと特殊なんだけどねぇ」

「へぇ……?」

 パルの言葉にまだ何か含みは感じたものの、言わないと言うことはそう言うことなのだろうと結論付け、カトレアは他の話題へと移す。

「……でもなんだか、仲良さそうね?」

「えぇっ⁉︎カトレアぁ!さっき何を見てた訳ぇ⁉︎」

「お互いに遠慮はないけど、ホントに嫌いって感じではなさそうかなって」

 小首を傾げるカトレアに、雷でも落ちたかのような反応を見せて、パルが素早く反応する。

 ウソでしょ!と開いた口が塞がらないパルを眺めながら、カトレアは苦笑しながら続けた。

「あんまりパルのあぁいう感じ見たことなかったから、ちょっと新鮮かも」

「……カ、カトレアぁ…………いやぁ…………まぁ、いいやぁ……。それよりぃ、そんな悠長なこと言ってる場合ぃ?ハクアはあんなだしぃ、大人しく言うこときく感じじゃないと思うよぉ」

「あのお色気姉ちゃんがおらな話は進まんのか?」

「ここはハクアの領分だからねぇ。借りられるものなら借りるのが無難な気はするかなぁ。でもハクアってあんなんだからねぇ」

「そんな2回も言わなくても」

「怒ってしまいましたし、普通にお願いしても無理そうですネ」

 ふぅとため息をついて両腕を物憂げに組むパルに、カトレアが突っ込み、リオウが乾いた笑いで応じる。

「……だとしても、せっかくここまで来たんだもの。諦めるわけにはいかない」

「……ちゅうよりもや。嬢ちゃんは王女なんやろ。嬢ちゃんが頼んだら断れないんちゃうんか?王族命令やろ?」

「……それはそうなんだけど、神殿に対して強制はできないというか、もちろん邪険にもされはしないんだけど、できれば強制はしたくないと言うか」

「……難儀なやっちゃな」

 ハァと息を吐いてめんどくさと明後日を見やるグレンを一瞥し、カトレアはすくっと立ち上がる。

「とにかく!ひとまずもう一度頼んでみましょ!」

 座ったままに見上げるグレンとリオウ、パルはそんなカトレアを不安げに見つめた。
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