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王女、再会する。
69.
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「なぁっ……⁉︎」
何で戻って来ているんですか⁉︎と叫びかけるも、クシュナは口で詠唱をしながら異なる魔法の印を手指で結び、更に双方の不足を詠唱と印の隙間を使って互いに補うと言う離れ技を行っているため、言葉を発する余裕はさすがにない。
同時詠唱の破綻を危惧し、物凄い剣幕でカトレアを見るのみに留まらざるを得ないクシュナを横に、カトレアは連続で発動され続けている魔法の対象先に目を凝らす。
ーーなんで戻って来てるんだ⁉︎
ーーあのド派手無礼千万男は何してるんだ⁉︎
ーーなんでもいいから早く外に出て!
余裕がない中で、器用に必死な表情でカトレアに訴えるクシュナを振り返り、カトレアはニッと笑って親指を立てる。
ーー…………え、伝わった?
クシュナはあまり割けない思考と余裕の中で、思わず自らの希望全開の儚い期待に期待する。
「これ、リオウさんに貰って来たから!ひとまずアレを魔法で足止めしたらこれで坑道を崩落させて、魔法で防御するか、高速で移動するとかして一緒に逃げよ!」
任せて!と言わんばかりにカトレアが取り出したのは、細めの爆弾と思われるものを束ねたものだった。
ーーじゃなくて!そうじゃなくて!!しかもほぼ俺頼りで雑過ぎる!!!
クシュナの百面相を意に介さず、カトレアは更に言葉を発っせられないクシュナへと一方的に話し続ける。
「時間稼ぎは任せといて!」
ーーちーーーがーーーーーーう!!!!
バッチんとウインクしてくるカトレアに心中で雄叫びをあげて、クシュナはカトレアを必死に見つめながら首をぶんぶんと激しく振る。
そんな最中も同時詠唱を続けられるクシュナの器用さと集中力、実力が最年少国家魔術師となる所以とも言えた。
しかしてそんなクシュナの想いは虚しく届かず、目の前から広間へと飛び出していくカトレアの長い金色の髪の残像へと手を伸ばすことも叶わぬままに、ただ見送る他ない。
ーーあんの…………っ……アホ王女ーーっっ!!!
同時詠唱を続けたままにわなわなと震え出し、クシュナは魔法の発動が切りの良いところに差し掛かると、半ばヤケクソに自身の左親指の先を噛んで傷つけ、その血を自らの右腕に滑らす。
心なしか強く噛みすぎたのか、予想よりも多く流れる血と痛みに構う暇なく、クシュナはなるべくタイムラグの少ないカトレアへのフォロー魔法と、足止めが可能な中等レベルの魔法を瞬時に組み込んでいく。
言いたいことは掃いて捨てるほどあるが、迷っている暇はなかった。あのアホ王女を連れ出せる人員がどう考えても現状クシュナしかいない以上、出来得る限りカトレアを守りながら何とかしろと自身に言い聞かせる他ない。
いい加減にしろとひどく憤慨する一方で、けれど自身のために迷わずに戻って来たのであろうその小さな背中は、クシュナの視線を捕らえて離さなかったーー。
何で戻って来ているんですか⁉︎と叫びかけるも、クシュナは口で詠唱をしながら異なる魔法の印を手指で結び、更に双方の不足を詠唱と印の隙間を使って互いに補うと言う離れ技を行っているため、言葉を発する余裕はさすがにない。
同時詠唱の破綻を危惧し、物凄い剣幕でカトレアを見るのみに留まらざるを得ないクシュナを横に、カトレアは連続で発動され続けている魔法の対象先に目を凝らす。
ーーなんで戻って来てるんだ⁉︎
ーーあのド派手無礼千万男は何してるんだ⁉︎
ーーなんでもいいから早く外に出て!
余裕がない中で、器用に必死な表情でカトレアに訴えるクシュナを振り返り、カトレアはニッと笑って親指を立てる。
ーー…………え、伝わった?
クシュナはあまり割けない思考と余裕の中で、思わず自らの希望全開の儚い期待に期待する。
「これ、リオウさんに貰って来たから!ひとまずアレを魔法で足止めしたらこれで坑道を崩落させて、魔法で防御するか、高速で移動するとかして一緒に逃げよ!」
任せて!と言わんばかりにカトレアが取り出したのは、細めの爆弾と思われるものを束ねたものだった。
ーーじゃなくて!そうじゃなくて!!しかもほぼ俺頼りで雑過ぎる!!!
クシュナの百面相を意に介さず、カトレアは更に言葉を発っせられないクシュナへと一方的に話し続ける。
「時間稼ぎは任せといて!」
ーーちーーーがーーーーーーう!!!!
バッチんとウインクしてくるカトレアに心中で雄叫びをあげて、クシュナはカトレアを必死に見つめながら首をぶんぶんと激しく振る。
そんな最中も同時詠唱を続けられるクシュナの器用さと集中力、実力が最年少国家魔術師となる所以とも言えた。
しかしてそんなクシュナの想いは虚しく届かず、目の前から広間へと飛び出していくカトレアの長い金色の髪の残像へと手を伸ばすことも叶わぬままに、ただ見送る他ない。
ーーあんの…………っ……アホ王女ーーっっ!!!
同時詠唱を続けたままにわなわなと震え出し、クシュナは魔法の発動が切りの良いところに差し掛かると、半ばヤケクソに自身の左親指の先を噛んで傷つけ、その血を自らの右腕に滑らす。
心なしか強く噛みすぎたのか、予想よりも多く流れる血と痛みに構う暇なく、クシュナはなるべくタイムラグの少ないカトレアへのフォロー魔法と、足止めが可能な中等レベルの魔法を瞬時に組み込んでいく。
言いたいことは掃いて捨てるほどあるが、迷っている暇はなかった。あのアホ王女を連れ出せる人員がどう考えても現状クシュナしかいない以上、出来得る限りカトレアを守りながら何とかしろと自身に言い聞かせる他ない。
いい加減にしろとひどく憤慨する一方で、けれど自身のために迷わずに戻って来たのであろうその小さな背中は、クシュナの視線を捕らえて離さなかったーー。
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