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第1章

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わたしのお披露目の日、それはわたしの活動できる時間帯の夜に行われた。
わたしのこの日の為に、礼儀作法をそれはもうスパルタに、教え込まれた。お母様に…

お母様の愛のある指導…それはもう怖かったですとも…
でもそのおかげでわたしはここに立っていられる。
わたしのお披露目なので、種族関係なくここには人間も招待されている。
今日のわたしのドレスは、何故か真っ赤なドレスであった。真っ白な髪に赤い瞳のわたしには赤がとても栄えているが、真っ赤って…まぁいいのだけれど、この服をチョイスしたのはお母様だし、文句など言うまい。うん。似合っていればいいのだ。

挨拶にきてくださる一人一人にわたしも淑女の礼をとる。
今日はわたしが主役なので、わたしから挨拶には行かず、この場で待つのがいいんだとか、だが緊張しているせいか、これがとても疲れるのだ。
ミーナが持ってきてくれたお水を飲む。
そして一段落着いたところで、父様がわたしに話しかけた。
「レイン、騎士がきた。これよりお前と騎士の契約の儀式を行う。剣を出せ。」

「はい、父様」

大丈夫、練習してきたんだから、

「疲れたか?もう少しだ、頑張れ。」


「はい、父様、大丈夫です。」

本当は、とても疲れていたけれど、大丈夫…発作も怒らないし、
父様と共に中央に向かう、すると、音楽が止み、談笑も止み、あたりは静まり返る。
わたし達の歩く道がすっと開けていく、中央にまもなくつく頃、ロイがすぐそばやな寄ってきた。
一体どこにいたんだろう…
ロイがわたしを守るようにわたしの後ろについて歩く、父様の後ろを歩く、なんて大きな背中なんだろう…今までに感じたことの無い、強さと威厳が父様から発せられているような気がする。
ドキドキする。みんなに注目されている。
やがて中央にたどり着き、奥に進むと、階段があり玉座がある。
階段には赤い絨毯が敷かれている。父様がふわりと飛び玉座に座る。
父様が座り、母様が右隣の少し小さな椅子にに座る。次に左斜め前に兄様が立つ。
わたしは階段を上り父様達の手前に立つ。
階段といってもすごく高い訳では無い。わたしにとってはなんだかとてつもなく高いように感じる。ロイがピタリと寄り添いわたしの隣にお座りする。ロイを撫でる。ロイを撫でていると落ち着く。ロイは撫でやすいように頭を下げてくれる。
準備が整ったと同時に、皆が甲部を垂らす。

ロイを撫でるのをやめ、わたしは目を瞑り、神経を集中させる。
騎士が近くにいれば、直ぐにわかると聞いたけど、難しい…
するとわかりやすいようにだろうか、気配が近づいてきてくれた。
目を開けると、まるで最初からそこにいたかのように、1人の男がそこにいた。
わたしは目が釘付けになった。
あれ…この人見たことがある気がする。でも、そんなはずは無い。なぜならこの人と今日会うのが初めてだから…

「皆の者顔を上げよ。」

父様がそう言っても彼は顔を挙げなかった。

「ん?どうした?よいのだぞ?顔を挙げぬか。」

父様が再度、顔をあげるのを促す。

「我が主はレイン様のみ、例え陛下であろうと従うつもりはありません。」

え…わたしは少し困ってしまった。父様に助けを求め振り返ると、父様はなぜか面白そうに口許が笑っていた。
でました。魔王の微笑み、わたしは苦い顔をして彼に視線を戻した。

「顔をあげてください。騎士様。」

「はい、我が主の仰せのままに…」

そういってゆっくりと顔を上げた。

わたしを見つめる真っ直ぐな瞳と目が合った…

その時わたしの中の何かが弾けて壊れた。

わたしはこの人を知っている。
そうだ…よく知っているじゃないか。

その男の洋装は、紫の髪でグラデーションがかかっていて、短く肩より上ぐらいの長さでまとめられている。髪の長さはわたしが知っているより短くて見慣れない。目は緑色でキラキラしているみたいに輝いている。吸い込まれそうになる。顔は甘い系のかわいい系である。その瞳が今は見開かれてすごく驚いたような表情をしている。

私はこの人をみた瞬間思い出した。既視感を感じる原因…これはわたしが前世好きだったゲームの中の話、わたしは前世に死ぬ前にこのゲームをよくしていた。
そして前世の記憶を取り戻して、わたしはレインとしてはいられなくなった。
急に全て思い出したがために、いつもの発作が起こる。パニック状態に陥っているため、隣にいるロイに流すなんてできない。
わたしは発作の中、泣きながら振り返る。
倒れそうになるのをロイが支えてくれている。

『レイン、どうしたんだ?、早くわたしに!レイン?』

兄様が心配そうに見つめてくる。兄様、よかった、今日はいつもの兄様だ。藍色の目をしている。
兄様が何か父様に言っている。するとうなづいてわたしに駆け寄り手を伸ばして抱きしめてくれた。泣きながら兄様に縋り付く…わたしの意識はだんだん遠のいていった。

「今日は娘のレインの為の物だったが、娘の急な発作によってすまないが中止させてもらう。」

意識が遠のく、いつもの兄様の腕の中のはずなのに、わたしはゾクリとした、兄様の中の誰かが笑ったような気がした。
小声でわたしにしか聞こえないような声で兄様が囁く「大丈夫だよ、レイン…、いや愛良。」わたしは寒気がした。鳥肌が立つ。
そしてわたしは必至に保っていた意識を手放させられた。眠らされたのだ、兄様に。
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