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しつこい男〈陽菜語り〉
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···············なんで居るの?
え、一人動物園?楽しいの?
ちょっと失礼なことを考えたりもしていたが、慌てて隣を盗み見る。
あーっやっぱり!
固まってるし!なんかすごい困惑してるし!
彼方君が隣で呆然とした様子で突っ立っている。
誤解されたかな、と思うとすごく焦る。
「彼方君、この人は··········。」
説明しようとすると、同僚·····永瀬玲が私の肩を引き寄せた。
いや、何してんの!?
「初めまして。えーと、君が陽菜の言ってた新しい彼氏?」
何でそう含みのある言い方するの!?
確かに彼氏は多かったけど!
あと肩に腕回すのやめろ!
「ちょっと、離して」
腕を思い切り捻りあげると「痛ててててっ!悪い!悪かった」と悲痛な声をあげるので、それ以上は何もせずに腕から逃れて彼方君に駆け寄る。
あー、彼方君の顔が青い··········。
「ごめんね、彼方君。突然変な人が。私の仕事場の同僚なの。··········昔、一時期だけ彼氏だったけど。」
流石にファーストネームを呼ばれてしまったので怪しまれてるだろうし、経験上先に言っておいた方がいい。
「私が彼方君の写真を皆に見せちゃって··········。」
と言うと、彼方君が「え」と顔を赤くする。
「そーそー。そいつ君の写真を堂々とスマホのロック画面にしてるんだぜ。『弟?』って聞いたら『彼氏』って嬉しそーな顔してさらっと言うしよぉ。フツーさぁ、歳離れてて、しかも相手が高校生だったら微妙な感じになると思うけどな」
半分くらい皮肉が入ってきてる。
ちょっとイラッときた私は、少し眉を上げる。
「いいじゃない。別に悪いことしてないし。隠す必要が無いもの」
ほら。堂々としてれば言ってきた方がたじろぐんじゃない。
「彼方君行こ」
まだ顔を赤くしてる彼方君の手を強引に引いて永瀬から遠ざかろうとした。
そしたら、反対の腕を永瀬が掴んだ。
「!何すんのよ」
まさかまだつっかかってくるとは。しぶといというか、しつこいというか。
嫌そうな空気を全面に醸し出して手を振り払う。
「まぁまぁ、そんな嫌そうな顔すんなって。今姪っ子と来てるんだけど、良かったら一緒に··········。」
「さ、行こ。彼方君」
彼の説明を受け流して先へ進もうとする。
ドンと何かにぶつかる。
「きゃっ」
可愛らしい声が目の前で放たれ、続いてベチャッと音がする。
「あーーっ!ごめんなさいぃ!」
ふわふわの髪の毛の女の子がペコペコと頭を下げる。
女の子のアイスが、見事に私の服のど真ん中に直撃していた。なんて漫画みたいな展開なのかしら。
「おいおい、希子。何やってんだ」
永瀬が呆れた様子で女の子を叱る。
この子が姪か。
「大丈夫よ。気にしないで」
私は笑顔で女の子に言う。
その横から、彼方君が腕を引いた。
「陽菜さん、服買いに行きましょう」
自然にコートを羽織らせてくれた。
今はもう秋半ば。ちょっと肌寒いくらいだから、アイスを喰らうと正直寒かったのだ。
「ありがと」
私は多分傍から見たら「あー、はいはい」と言いたくなるような顔で彼方君にお礼を言った。
「·····っいや。··········じゃあ、売店行きましょ。確か売ってたから。その場しのぎくらいにはなりますし」
そう言って、今度は彼から手を繋いだ。
あ、これ結構嬉しい。
思わず頬が弛緩する。
「あったかいね」
手を握り返すと、彼方君はまた頬を赤くさせた。
もしかして今の無意識だったのかな。
「いやいや、俺の姪がやらかしたから服は俺が買うよ」
良い雰囲気だったのわからないの?こいつ。
まぁ、だから別れたんだけど。
イライラッとくる私の表情に気づかないのか、馴れ馴れしくまた肩に手を置こうとする。
それを軽く避けて彼方君に向き合い笑顔を向ける。
「さっき通った店だよね?どんな服あったっけ」
さり気なく歩を進めて距離をとる。
「おいおい無視すんなって」
困った様子で後をついてくる。
金魚のフンみたいに。
気にせずに彼方君に話しかける。
「あ、あとぬいぐるみも見たいんだー」
そう言うと、彼方君は意外そうに目を瞬かせた。
「ぬいぐるみ、好きなんですか?」
あ、やっちゃったかな。
良い歳した大人がぬいぐるみって恥ずかしいかな。
「ううん。同僚のお子さんが今熱出してるからお見舞い用に」
口からさらっと本心じゃない言葉が漏れる。
いや、一応お菓子は買って渡そうとは思ってたけど。
ごめんね、言い訳にしちゃって。
内心で同僚の子供に謝る。
「··········そう、ですか」
彼方君はそう言ったけど何か考えているようだった。
バレてるのかな。引かれたかな。
嫌われるのはイヤだなぁ。
「お前そーゆーの好きだったか?」
後ろから金魚のフンが懲りずに話しかけてくる。
無視していると、笑いながら永瀬は話し続ける。
「似合わないことやめろよなー。そんなんだから長続きしねぇんだよ」
五月蝿いなぁ··········。
自然に手を握る力が少し強くなる。
すると、ピタリと彼方君が歩くのをやめた。
つられて私も立ち止まった。
え、一人動物園?楽しいの?
ちょっと失礼なことを考えたりもしていたが、慌てて隣を盗み見る。
あーっやっぱり!
固まってるし!なんかすごい困惑してるし!
彼方君が隣で呆然とした様子で突っ立っている。
誤解されたかな、と思うとすごく焦る。
「彼方君、この人は··········。」
説明しようとすると、同僚·····永瀬玲が私の肩を引き寄せた。
いや、何してんの!?
「初めまして。えーと、君が陽菜の言ってた新しい彼氏?」
何でそう含みのある言い方するの!?
確かに彼氏は多かったけど!
あと肩に腕回すのやめろ!
「ちょっと、離して」
腕を思い切り捻りあげると「痛ててててっ!悪い!悪かった」と悲痛な声をあげるので、それ以上は何もせずに腕から逃れて彼方君に駆け寄る。
あー、彼方君の顔が青い··········。
「ごめんね、彼方君。突然変な人が。私の仕事場の同僚なの。··········昔、一時期だけ彼氏だったけど。」
流石にファーストネームを呼ばれてしまったので怪しまれてるだろうし、経験上先に言っておいた方がいい。
「私が彼方君の写真を皆に見せちゃって··········。」
と言うと、彼方君が「え」と顔を赤くする。
「そーそー。そいつ君の写真を堂々とスマホのロック画面にしてるんだぜ。『弟?』って聞いたら『彼氏』って嬉しそーな顔してさらっと言うしよぉ。フツーさぁ、歳離れてて、しかも相手が高校生だったら微妙な感じになると思うけどな」
半分くらい皮肉が入ってきてる。
ちょっとイラッときた私は、少し眉を上げる。
「いいじゃない。別に悪いことしてないし。隠す必要が無いもの」
ほら。堂々としてれば言ってきた方がたじろぐんじゃない。
「彼方君行こ」
まだ顔を赤くしてる彼方君の手を強引に引いて永瀬から遠ざかろうとした。
そしたら、反対の腕を永瀬が掴んだ。
「!何すんのよ」
まさかまだつっかかってくるとは。しぶといというか、しつこいというか。
嫌そうな空気を全面に醸し出して手を振り払う。
「まぁまぁ、そんな嫌そうな顔すんなって。今姪っ子と来てるんだけど、良かったら一緒に··········。」
「さ、行こ。彼方君」
彼の説明を受け流して先へ進もうとする。
ドンと何かにぶつかる。
「きゃっ」
可愛らしい声が目の前で放たれ、続いてベチャッと音がする。
「あーーっ!ごめんなさいぃ!」
ふわふわの髪の毛の女の子がペコペコと頭を下げる。
女の子のアイスが、見事に私の服のど真ん中に直撃していた。なんて漫画みたいな展開なのかしら。
「おいおい、希子。何やってんだ」
永瀬が呆れた様子で女の子を叱る。
この子が姪か。
「大丈夫よ。気にしないで」
私は笑顔で女の子に言う。
その横から、彼方君が腕を引いた。
「陽菜さん、服買いに行きましょう」
自然にコートを羽織らせてくれた。
今はもう秋半ば。ちょっと肌寒いくらいだから、アイスを喰らうと正直寒かったのだ。
「ありがと」
私は多分傍から見たら「あー、はいはい」と言いたくなるような顔で彼方君にお礼を言った。
「·····っいや。··········じゃあ、売店行きましょ。確か売ってたから。その場しのぎくらいにはなりますし」
そう言って、今度は彼から手を繋いだ。
あ、これ結構嬉しい。
思わず頬が弛緩する。
「あったかいね」
手を握り返すと、彼方君はまた頬を赤くさせた。
もしかして今の無意識だったのかな。
「いやいや、俺の姪がやらかしたから服は俺が買うよ」
良い雰囲気だったのわからないの?こいつ。
まぁ、だから別れたんだけど。
イライラッとくる私の表情に気づかないのか、馴れ馴れしくまた肩に手を置こうとする。
それを軽く避けて彼方君に向き合い笑顔を向ける。
「さっき通った店だよね?どんな服あったっけ」
さり気なく歩を進めて距離をとる。
「おいおい無視すんなって」
困った様子で後をついてくる。
金魚のフンみたいに。
気にせずに彼方君に話しかける。
「あ、あとぬいぐるみも見たいんだー」
そう言うと、彼方君は意外そうに目を瞬かせた。
「ぬいぐるみ、好きなんですか?」
あ、やっちゃったかな。
良い歳した大人がぬいぐるみって恥ずかしいかな。
「ううん。同僚のお子さんが今熱出してるからお見舞い用に」
口からさらっと本心じゃない言葉が漏れる。
いや、一応お菓子は買って渡そうとは思ってたけど。
ごめんね、言い訳にしちゃって。
内心で同僚の子供に謝る。
「··········そう、ですか」
彼方君はそう言ったけど何か考えているようだった。
バレてるのかな。引かれたかな。
嫌われるのはイヤだなぁ。
「お前そーゆーの好きだったか?」
後ろから金魚のフンが懲りずに話しかけてくる。
無視していると、笑いながら永瀬は話し続ける。
「似合わないことやめろよなー。そんなんだから長続きしねぇんだよ」
五月蝿いなぁ··········。
自然に手を握る力が少し強くなる。
すると、ピタリと彼方君が歩くのをやめた。
つられて私も立ち止まった。
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