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馴れ初め〈陽菜語り〉
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予想通りの反応すぎて笑いそうになってしまった。
私こと麻井陽菜は、もう二十五歳になる社会人だ。社会人二年目の新人である。
そんな私が好きになったのは、当時中学生だった男の子。え、犯罪?手を出さなきゃ大丈夫でしょ。
そもそも好きになったら年齢なんて気にならなくなると思うけど。という感性を持つのが、私という人間だと自負している。
ズバズバと意見を言うし自分の考えが別段間違っているとも思ってない。もちろん、間違っていると指摘されたら頭ごなしに否定したりなんかしない。ちゃんと考えますって。
私は私を自分の意見を持っている人間だと思ってる。
かといって、協調性が無いわけじゃない。一応日本人なので、人の輪は大事にするようにしている。
自分で言うのもなんだけど、割と顔は整っていると思う。告白も結構されてるし、彼氏は通算七人。でもみんな口を揃えて、
「イメージと違った」
と言う。なんと勝手な。
それで無駄に傷つくから彼氏は高校以来作っていない。
そしてそんな私が初めて自分から友達になりたいと思った異性がいた。
それが彼方君。
今まで付き合ってきた人はみんなクールな美形というカテゴリーに入っていた。
でも彼方君は、クール系な顔をしているけど中身は柴犬みたいなかわいいキャラだった。
そんなギャップのドツボに見事にハマってしまった。見た目はかっこよく見えるが、話せばほんとに可愛さが溢れ出している。中学生独特の初々しさというか、若さというか、そんな後光がさしているように見える。
なんで彼氏じゃなくて友達かというと、単純に男の人というより女友達に近い感覚があるから。その時は、異性の対象ではない気しかしなかった。
初めてカフェで彼を見かけた時、中学生男子が一人でカフェに来ている、という意外さで目で追った。
地元の中学校の制服のため尚更目立つ。
目で追っていると、思わず頬が緩んだ。
彼の頼んだメニューはキャラメルマキアートとミルクレープ。相当な甘党らしい。
その時点で私のハートはキュンと鳴った。
いわゆるギャップ萌えというやつだ。
しかも、それを食べたあとの顔。もう、最高。
本当に美味しそうに食べるもんだから、もっと食べさせたくなる。
そんな彼の様子から目を離せなくなっていった。
ほんとに、昔好きだった人にそっくり。
私は世にも珍しい、前世の記憶を持つ人間だ。
私の前世は海外の女の人。彼氏は私よりも年上の人だった。カルタという名を持つ彼は、美人で病弱でとても優しく甘党。
対して、私は強情で短気。それはまぁ生い立ちも関係しているわけだけど。人を信頼できない土地に生まれて、よく盗みもやっていた。この世界では信じられない行為だけど。
だけどそんな色褪せた世界の中でカルタに出会えた。
カルタと思いを通じ合わせることが出来た。
だけど彼は私を置いて逝ってしまった。
体が弱かったのはしっていたけど、まさか出会ってたったの七年間で死ぬなんて。
そんな彼は私に言った。
「もし生まれ変わったら、また君を見つけるよ」
見つけてよ。
キュッとスカートの上にある手を握りしめた。
見つけてよカルタ。現れてよ。またあの笑顔を見せてよ。大好き。大好きだったのに。愛していたのに。私は·····。
「···············カルタ」
知らぬ間に言葉が漏れ出てしまった。
周りに客が居なくてよかった。
「あの、良かったらこれどうぞ」
目の前にハンカチが差し出された。
驚いて顔を上げると、中学生の彼が心配そうにこっちを見ていた。
多分その時が一番最初に話した瞬間だ。
「カルタ、泣くほど好きなんですね」
彼は微笑した。
なんだか誤解されたようだ。
「え、ええ·····まぁ」
誤魔化すように笑う。
··········ん?泣くほど?
ふと気づいて目元に手を当てるとかすかに濡れていた。
泣いていたのか。
恥ずかしい。
「あ、すみませんいきなり·····。あの、これ良かったらどうぞ」
と言いながら彼が取りだしたのは個別包装のキャラメル。
常備しているのだろうか。
思わず吹き出してしまった。
「ありがと」
笑いながらそう言うと、彼は赤面しながら一礼して離れていった。
優しいところも似てる。よく見たら髪の色と瞳の色を変えれば··········。
はっとした。
現世に生きている自分が、過去の住人と今を生きている人を重ねるなんて。
ちょっとした隙さえあればカルタを探す自分が嫌になる。
終わったはずなのに。
再び、重いため息が口から漏れ出た。
そんな日も過ぎて、私たちは相席までする仲になった。
きっかけとしては満席だったからっていう理由なのだが。
それ以来勉強面で頼られたりして、私はちょっと嬉しかったり。
顔を合わせる度に、相も変わらずカルタに似ているところを探してしまう。
次からやめよう、もうやらないようにしよう、なんて思うのに、気づけば、目が、耳が、カルタを無意識に追いかける。
だから、もう開き直った。
私はカルタが好きで今も忘れられない。
カルタの生まれ変わりとしか思えない彼を誰かに渡したくない。
いつか、彼自身を好きになりたい。
そんなふうに思えた自分がいたことに気づいた。
だから、私は彼に提案をした。
「ねぇ、付き合って」
これが私の、気持ちの踏ん切りの付け方。
利用してごめんね。
心の奥底にその言葉をし舞い込んで、私は笑顔を向けて彼と談笑する。
多分、これからもずっと。
私こと麻井陽菜は、もう二十五歳になる社会人だ。社会人二年目の新人である。
そんな私が好きになったのは、当時中学生だった男の子。え、犯罪?手を出さなきゃ大丈夫でしょ。
そもそも好きになったら年齢なんて気にならなくなると思うけど。という感性を持つのが、私という人間だと自負している。
ズバズバと意見を言うし自分の考えが別段間違っているとも思ってない。もちろん、間違っていると指摘されたら頭ごなしに否定したりなんかしない。ちゃんと考えますって。
私は私を自分の意見を持っている人間だと思ってる。
かといって、協調性が無いわけじゃない。一応日本人なので、人の輪は大事にするようにしている。
自分で言うのもなんだけど、割と顔は整っていると思う。告白も結構されてるし、彼氏は通算七人。でもみんな口を揃えて、
「イメージと違った」
と言う。なんと勝手な。
それで無駄に傷つくから彼氏は高校以来作っていない。
そしてそんな私が初めて自分から友達になりたいと思った異性がいた。
それが彼方君。
今まで付き合ってきた人はみんなクールな美形というカテゴリーに入っていた。
でも彼方君は、クール系な顔をしているけど中身は柴犬みたいなかわいいキャラだった。
そんなギャップのドツボに見事にハマってしまった。見た目はかっこよく見えるが、話せばほんとに可愛さが溢れ出している。中学生独特の初々しさというか、若さというか、そんな後光がさしているように見える。
なんで彼氏じゃなくて友達かというと、単純に男の人というより女友達に近い感覚があるから。その時は、異性の対象ではない気しかしなかった。
初めてカフェで彼を見かけた時、中学生男子が一人でカフェに来ている、という意外さで目で追った。
地元の中学校の制服のため尚更目立つ。
目で追っていると、思わず頬が緩んだ。
彼の頼んだメニューはキャラメルマキアートとミルクレープ。相当な甘党らしい。
その時点で私のハートはキュンと鳴った。
いわゆるギャップ萌えというやつだ。
しかも、それを食べたあとの顔。もう、最高。
本当に美味しそうに食べるもんだから、もっと食べさせたくなる。
そんな彼の様子から目を離せなくなっていった。
ほんとに、昔好きだった人にそっくり。
私は世にも珍しい、前世の記憶を持つ人間だ。
私の前世は海外の女の人。彼氏は私よりも年上の人だった。カルタという名を持つ彼は、美人で病弱でとても優しく甘党。
対して、私は強情で短気。それはまぁ生い立ちも関係しているわけだけど。人を信頼できない土地に生まれて、よく盗みもやっていた。この世界では信じられない行為だけど。
だけどそんな色褪せた世界の中でカルタに出会えた。
カルタと思いを通じ合わせることが出来た。
だけど彼は私を置いて逝ってしまった。
体が弱かったのはしっていたけど、まさか出会ってたったの七年間で死ぬなんて。
そんな彼は私に言った。
「もし生まれ変わったら、また君を見つけるよ」
見つけてよ。
キュッとスカートの上にある手を握りしめた。
見つけてよカルタ。現れてよ。またあの笑顔を見せてよ。大好き。大好きだったのに。愛していたのに。私は·····。
「···············カルタ」
知らぬ間に言葉が漏れ出てしまった。
周りに客が居なくてよかった。
「あの、良かったらこれどうぞ」
目の前にハンカチが差し出された。
驚いて顔を上げると、中学生の彼が心配そうにこっちを見ていた。
多分その時が一番最初に話した瞬間だ。
「カルタ、泣くほど好きなんですね」
彼は微笑した。
なんだか誤解されたようだ。
「え、ええ·····まぁ」
誤魔化すように笑う。
··········ん?泣くほど?
ふと気づいて目元に手を当てるとかすかに濡れていた。
泣いていたのか。
恥ずかしい。
「あ、すみませんいきなり·····。あの、これ良かったらどうぞ」
と言いながら彼が取りだしたのは個別包装のキャラメル。
常備しているのだろうか。
思わず吹き出してしまった。
「ありがと」
笑いながらそう言うと、彼は赤面しながら一礼して離れていった。
優しいところも似てる。よく見たら髪の色と瞳の色を変えれば··········。
はっとした。
現世に生きている自分が、過去の住人と今を生きている人を重ねるなんて。
ちょっとした隙さえあればカルタを探す自分が嫌になる。
終わったはずなのに。
再び、重いため息が口から漏れ出た。
そんな日も過ぎて、私たちは相席までする仲になった。
きっかけとしては満席だったからっていう理由なのだが。
それ以来勉強面で頼られたりして、私はちょっと嬉しかったり。
顔を合わせる度に、相も変わらずカルタに似ているところを探してしまう。
次からやめよう、もうやらないようにしよう、なんて思うのに、気づけば、目が、耳が、カルタを無意識に追いかける。
だから、もう開き直った。
私はカルタが好きで今も忘れられない。
カルタの生まれ変わりとしか思えない彼を誰かに渡したくない。
いつか、彼自身を好きになりたい。
そんなふうに思えた自分がいたことに気づいた。
だから、私は彼に提案をした。
「ねぇ、付き合って」
これが私の、気持ちの踏ん切りの付け方。
利用してごめんね。
心の奥底にその言葉をし舞い込んで、私は笑顔を向けて彼と談笑する。
多分、これからもずっと。
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