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第九章《赫姫と国光》
【九】
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なんだか、重い。
全身に敷布団を何重か乗せられているような重みがある。それに息苦しい。背を向けて遠ざかりたくなる。
だが引っ張られるように、苦しみが増す場所へと連れていかれてしまう。そこでようやく意識が覚醒したのだと気づく。
「……っあーちゃん!」
何者かにがばっと抱きつかれ、紅子はくぐもった悲鳴をあげる。見覚えのある桃色の髪が視界に映り、無意識に手をかけた。
「サクラさん」
ポンポンと軽く肩を叩き、さりげなく彼女を引き剥がす。
「よかったよぉぉ目が覚めて……っ!血を流して倒れてるの見っけたときは本当に死んじゃってるのかと……っ」
涙と鼻水でくしゃくしゃになった顔を手で覆いながらまた泣き出す。
彼女がこの屋敷にいたことは知っていた。弥生が刺されてすぐに、茂みの中から彼女が顔を見せたのだ。
彼女は見覚えのある石を手にしていた。春の宮の屋敷にいた際、もし何かが起きたときにと渡されていた春の宮の能力でできた石だった。人体の回復を早める作用があり、重症の弥生にも効果が見込める。
「助けてくれてありがとうございます。それより」
どうしてここにいるのか、今はいったいどういう状況なのか。聞きたいことはたくさんあった。だが今知らねばならないのは、
「あの男……私のすぐそばに倒れていた男はどこですか?あとレン、レンを見ませんでしたか?」
サクラの肩を握る力が強まる。サクラの元主を「男」だとぼかしたのは、今そこをつつかれれば、当事者だったサクラに対して事情を説明する羽目になるだろうと踏んだからだ。軽く説明してやりたい気持ちは山々だが、その時間すら今は惜しい。
「あ、えっと……レンはわかんない。男の人っていうのも、見かけてないよ」
聞き終える前に立ち上がり走り出す。
嫌な予感が胸を占めていた。
いつの間にか、披露宴会場は戦場と化していた。人の血はあまり見当たらないものの、物理的な破壊は多い。
どうか間に合ってほしい。
もしあの男に手を出していたとしたら、誰でもきっと勝ち目はない。あの男にかけられたのは神の呪いなのだから。
レンに至っては、殺してはならないのだ。
中庭を囲む廊下を走り、ようやくその背を見つけた。
「殺しては駄目!」
彼の側へ駆け寄った紅子は小さな悲鳴を呑み込んだ。
足元に、血に塗れたレンの身体が転がっていた。伏していて生死がわからない──と思われた矢先、微かな呼吸音が紅子の耳に届いた。今にも息絶えそうな、弱々しいものだ。しかしそれゆえに「レンのものだ」という確信に繋がった。
「若奥様、なぜ止めるのですか?野杏を殺したのはこの女です。私はこの女を許せません」
「駄目なの!殺してしまったら連鎖は断ち切れない!今は……っ」
そこまで続けた紅子は続く言葉を喉に留めた。目の前の男が、弥生の従者が、見たこともない表情をしていたからだ。
初めて顔を合わせたときの警戒させるような雰囲気ではない。もはや殺気を散らしているといってもいい。
──見ないふりをしているだけです。
以前クロはそう言った。壊れてしまいそうだから、と。こういうことかと紅子は瞳を揺らす。
「連鎖といいましたが、種を撒いたのはこの女でしょう」
紅子は何も言えなかった。おそらくクロのいう連鎖は野杏を殺したことを指しているのだろうが、背景を観た紅子は反論の言葉を持ち合わせていなかった。
殺さないでほしいのは、人が本来持たないはずの能力を持って生まれてくる者たちをもう生み出さないでほしかったから。祖母は能力を他者に打ち明けたことで、戦争の兵器として使われた。そう話す母親は、悲しげな目を伏せながら言った。
きっと悲しみの感情だけではなかったことだろう。憎しみ、恨み、そういった娘の前では見せようとしなかった負の感情が濃く渦巻いていたことだろう。
だがそれは紅子の願望にすぎない。神の能力を返上すれば、水不足の土地へ援助することも難しければ、愛する者の深い傷を癒すこともできなくなる。それに──……。
──もし、能力を消滅させたら……龍の血を引く人たちはどうなるんだろう。
初めてその問いに行きついた。
龍は眷属だ。それらが居なくなったとしたら、残らないとしたら。混血の者はどうなるのだ。今その血を引く子孫はどうなるのだ。
──弥生様は、どうなるの。春の宮様は、巫の子たちはどうなるの。
もしかしたら消えてしまうのではないか。
なにもかもが「なかったこと」となって、記憶にすら残らないのではないか。
そんな恐ろしい想像が紅子の脳を駆け巡る。
──私、自分のことばかり考えてる。
目尻を赤く染め、現実から逃れるようにきつく目を閉じた。
「紅子さん」
優しい声色につられて顔を上げる。
いつの間に。怪我はもう大丈夫なのですか。会いたかった。顔が見たかった。どうしてこちらにいらしてるんです。もう一度そうやって微笑んでほしかった。名前を呼んで欲しかった。
さざ波のように感情が胸に溢れ、次が浮かぶと同時に他の感情は透明になっていく。かと思えば同じような言葉が浮かぶ。
けれど、どれこれも言葉にする前に消えていく。言おうとする前にいなくなる。なんて声をかけるべきなのか、逡巡する前に唇が震え、声を絞り出した。
「無事で、よかった……っ」
しゃくりあげる彼女の両目から溢れた大粒の涙が、白い頬を伝い落ちていく。頭の後ろに手を回され、そっと胸に押し込まれた。
水に濡れた葉のような香りに、紅子は縋るように顔を埋めた。
「大丈夫です。大丈夫……僕たちは、死なないから。なんともないから」
幼子をあやすような囁きに、紅子の呼吸は整っていく。
「理由はわからないが、レンを殺してはならないということはわかった。連鎖と言ったあたり、おそらくあの男を殺すのも駄目なんだろ?」
「はい。私は能力を消そうとしているのです。ですがそれは、私の自己満足で……」
紅子は言い淀む。赤くなった目で弥生を捉え、
「私は、どうするのが正解なのかわかりません」と訴えた。
「能力が消えてしまえば、大事な誰かのことを助けられません。水不足になったときに助けられません。私は、なにもできない人間になってしまう」
「それが人間だよ、紅子さん。ふつうはなにもできないんだ。だから人は医療という分野を発展させたし、何十年もかけて自然の脅威に対して対策を練り続けている。……もどかしくはあるが、そういった波乱万丈な一生を歩むのが人間なんだ」
と、弥生は腕の中にある丸こい頭を撫でながら口角を上げた。
「きっとすぐには無理だろうせど、僕らだって人間なんだ。すぐに慣れるさ──共に悩んで、共に解決する道のりを探せばいいのだから」
弥生の言葉に再び瞳を潤ませつつも、「はい」と頷く。
「共に、参りましょう」
弥生の言葉をなにひとつ疑うことなく、彼女は幸せそうに微笑んだ。
全身に敷布団を何重か乗せられているような重みがある。それに息苦しい。背を向けて遠ざかりたくなる。
だが引っ張られるように、苦しみが増す場所へと連れていかれてしまう。そこでようやく意識が覚醒したのだと気づく。
「……っあーちゃん!」
何者かにがばっと抱きつかれ、紅子はくぐもった悲鳴をあげる。見覚えのある桃色の髪が視界に映り、無意識に手をかけた。
「サクラさん」
ポンポンと軽く肩を叩き、さりげなく彼女を引き剥がす。
「よかったよぉぉ目が覚めて……っ!血を流して倒れてるの見っけたときは本当に死んじゃってるのかと……っ」
涙と鼻水でくしゃくしゃになった顔を手で覆いながらまた泣き出す。
彼女がこの屋敷にいたことは知っていた。弥生が刺されてすぐに、茂みの中から彼女が顔を見せたのだ。
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「助けてくれてありがとうございます。それより」
どうしてここにいるのか、今はいったいどういう状況なのか。聞きたいことはたくさんあった。だが今知らねばならないのは、
「あの男……私のすぐそばに倒れていた男はどこですか?あとレン、レンを見ませんでしたか?」
サクラの肩を握る力が強まる。サクラの元主を「男」だとぼかしたのは、今そこをつつかれれば、当事者だったサクラに対して事情を説明する羽目になるだろうと踏んだからだ。軽く説明してやりたい気持ちは山々だが、その時間すら今は惜しい。
「あ、えっと……レンはわかんない。男の人っていうのも、見かけてないよ」
聞き終える前に立ち上がり走り出す。
嫌な予感が胸を占めていた。
いつの間にか、披露宴会場は戦場と化していた。人の血はあまり見当たらないものの、物理的な破壊は多い。
どうか間に合ってほしい。
もしあの男に手を出していたとしたら、誰でもきっと勝ち目はない。あの男にかけられたのは神の呪いなのだから。
レンに至っては、殺してはならないのだ。
中庭を囲む廊下を走り、ようやくその背を見つけた。
「殺しては駄目!」
彼の側へ駆け寄った紅子は小さな悲鳴を呑み込んだ。
足元に、血に塗れたレンの身体が転がっていた。伏していて生死がわからない──と思われた矢先、微かな呼吸音が紅子の耳に届いた。今にも息絶えそうな、弱々しいものだ。しかしそれゆえに「レンのものだ」という確信に繋がった。
「若奥様、なぜ止めるのですか?野杏を殺したのはこの女です。私はこの女を許せません」
「駄目なの!殺してしまったら連鎖は断ち切れない!今は……っ」
そこまで続けた紅子は続く言葉を喉に留めた。目の前の男が、弥生の従者が、見たこともない表情をしていたからだ。
初めて顔を合わせたときの警戒させるような雰囲気ではない。もはや殺気を散らしているといってもいい。
──見ないふりをしているだけです。
以前クロはそう言った。壊れてしまいそうだから、と。こういうことかと紅子は瞳を揺らす。
「連鎖といいましたが、種を撒いたのはこの女でしょう」
紅子は何も言えなかった。おそらくクロのいう連鎖は野杏を殺したことを指しているのだろうが、背景を観た紅子は反論の言葉を持ち合わせていなかった。
殺さないでほしいのは、人が本来持たないはずの能力を持って生まれてくる者たちをもう生み出さないでほしかったから。祖母は能力を他者に打ち明けたことで、戦争の兵器として使われた。そう話す母親は、悲しげな目を伏せながら言った。
きっと悲しみの感情だけではなかったことだろう。憎しみ、恨み、そういった娘の前では見せようとしなかった負の感情が濃く渦巻いていたことだろう。
だがそれは紅子の願望にすぎない。神の能力を返上すれば、水不足の土地へ援助することも難しければ、愛する者の深い傷を癒すこともできなくなる。それに──……。
──もし、能力を消滅させたら……龍の血を引く人たちはどうなるんだろう。
初めてその問いに行きついた。
龍は眷属だ。それらが居なくなったとしたら、残らないとしたら。混血の者はどうなるのだ。今その血を引く子孫はどうなるのだ。
──弥生様は、どうなるの。春の宮様は、巫の子たちはどうなるの。
もしかしたら消えてしまうのではないか。
なにもかもが「なかったこと」となって、記憶にすら残らないのではないか。
そんな恐ろしい想像が紅子の脳を駆け巡る。
──私、自分のことばかり考えてる。
目尻を赤く染め、現実から逃れるようにきつく目を閉じた。
「紅子さん」
優しい声色につられて顔を上げる。
いつの間に。怪我はもう大丈夫なのですか。会いたかった。顔が見たかった。どうしてこちらにいらしてるんです。もう一度そうやって微笑んでほしかった。名前を呼んで欲しかった。
さざ波のように感情が胸に溢れ、次が浮かぶと同時に他の感情は透明になっていく。かと思えば同じような言葉が浮かぶ。
けれど、どれこれも言葉にする前に消えていく。言おうとする前にいなくなる。なんて声をかけるべきなのか、逡巡する前に唇が震え、声を絞り出した。
「無事で、よかった……っ」
しゃくりあげる彼女の両目から溢れた大粒の涙が、白い頬を伝い落ちていく。頭の後ろに手を回され、そっと胸に押し込まれた。
水に濡れた葉のような香りに、紅子は縋るように顔を埋めた。
「大丈夫です。大丈夫……僕たちは、死なないから。なんともないから」
幼子をあやすような囁きに、紅子の呼吸は整っていく。
「理由はわからないが、レンを殺してはならないということはわかった。連鎖と言ったあたり、おそらくあの男を殺すのも駄目なんだろ?」
「はい。私は能力を消そうとしているのです。ですがそれは、私の自己満足で……」
紅子は言い淀む。赤くなった目で弥生を捉え、
「私は、どうするのが正解なのかわかりません」と訴えた。
「能力が消えてしまえば、大事な誰かのことを助けられません。水不足になったときに助けられません。私は、なにもできない人間になってしまう」
「それが人間だよ、紅子さん。ふつうはなにもできないんだ。だから人は医療という分野を発展させたし、何十年もかけて自然の脅威に対して対策を練り続けている。……もどかしくはあるが、そういった波乱万丈な一生を歩むのが人間なんだ」
と、弥生は腕の中にある丸こい頭を撫でながら口角を上げた。
「きっとすぐには無理だろうせど、僕らだって人間なんだ。すぐに慣れるさ──共に悩んで、共に解決する道のりを探せばいいのだから」
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