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story .05 *** 秘められし魔術村と死神一族
scene .23 真の再会
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叫ぶ様なその謝罪に、その場にいる全員の視線がランテに集まる。
「あのな、ラン」
「悪気があった訳じゃないの! ただエルラを助けたい一心でっ作戦だって綿密に練ったし! あんな、途中であいつがっ」
ロルフは小さく息を吐くと、ロルフの言葉を遮るように弁解を始めたランテの方に身体を向けた。
別にその話を始めるつもりだった訳ではないのだが、そう思いつつもロルフの動きに身体をびくりとさせ言葉を詰まらせるランテに、ロルフは出来るだけ優しく声をかける。
「俺たち……いや、俺は怒っちゃいない。ただ悲しいんだ」
モモが今どうしているかを考えると、こうはしていられないという焦りは出てくる。だが、夜になると暴風雪が起きやすいこの場所で、今捜索をすることをモモが望むだろうか。そう考えてこの屋敷に身を置くことを選択したのだ。
それに、ランテの気持ちが解らない訳でもない。
「確かに俺達は部外者だ。ランテにとっては綿密に作り上げた作戦の中で動く駒の一つってだけだったかもしれない。だがな、予め伝えておいてくれたら、もっと警戒する事だってできたはずだろ?」
ランテが作戦の説明時にわからないと言っていた交換条件。それは恐らく生命系の色持ち能力者との引き換えだったのだろう。
なぜかモモがそうであることを知ったランテは、人数が必要であることを理由にロルフ達を巻き込んだ。だが、作戦に参加してもらえないリスクを減らすため、交換条件を濁したのだ。そして、頑なにランテがモモと組みたがっていたのもそれが理由。できれば作戦通りに、もしそれが叶わなくてもエルラだけは救出することができるように。
ランテの後ろで、今の会話ではあまり内容が理解できていないであろうエルラもばつが悪そうに俯く。
悪いのは全てあの小男であることに違いはない。ただ、今まで共に過ごしてきた仲間として、言わなければならないことがある。
ランテとエルラが過ごしてきた年月には、絆には、到底敵わないだろうが、それでも。
「俺たちが仲間を失って、ランテと同じ気持ちにならないと思うか?」
ランテは、エルラを攫われたときの気持ちを思い出したのか、強く自分のズボンの裾を握りしめると肩を震わせて泣き出した。そしてそのまま膝から崩れ落ちる。
「ごめん、ごめんなさい……何でもするから、うち……何でもっなんでもするよぉ」
ランテにとってのエルラとは、それほどの存在なのだろう。
とは言え、これほどまでに泣きじゃくられるとは思ってもみなかったロルフは、少しの、いや、かなりの罪悪感に言葉を失う。
「ランテ、悲しい時はご飯だよ!」
そんなロルフに助け船を出したのは、シャルロッテだった。
この重たくなった空気をものともせずに、明るい口調でそう言ってランテの元へ行くと、取り皿に山ほどの料理を取り分けはじめる。
「でも……うち……」
「ランテは悪い人じゃない。エルラがすごく心配だっただけ、そうでしょ?」
わからない話をシャルロッテなりに解釈した結果、一番大事なのはそこだと判断したらしい。
「それに私、楽しそうにしてるランテの方が好き!」
「シャルルン……」
ランテはシャルロッテの言葉に、先程とは別の意味で瞳を潤ませると「ありがとう」そう言って椅子を立て座り直した。
「こんなに食べられるかな」
シャルロッテの盛った料理の量に、ランテが苦笑する。
「食べられる食べられる! 朝飯前!」
「これ夕食なんだけど」
そそくさと自分の席に戻り料理を頬張るシャルロッテの横で、ロロが呆れたようにツッコミを入れた。
――コツコツコツ。
と、いつも通りの和やかな空気になった部屋に響いたのは、配膳が済んでから閉じられていた扉をノックする音だった。
「エルラ!」
ゆっくりと開かれる扉の向こうから現れる人影を見るや否や、誰よりも早くその姿に反応したランテは再び椅子をなぎ倒す勢いで立ち上がると、部屋に入って来た女性に抱き着く。
「心配かけてごめんなさい、ランテ」
エルラはそう言うと、先程まで洗脳されていたとは思えない程に穏やかな表情で微笑んだ。
だが、ランテの心配はそれだけでは収まらなかった様だ。「大丈夫?」「どこも痛いところはない?」そんな声をかけながらエルラの身体を舐めるように隅から隅まで確認し始めた。
「ふふ、大丈夫ですよ」
ランテの猛心配に、エルラは口元に手を当てくすくすと笑う。
「本当に?」
「はい、本当です」
ランテはその言葉に安堵した様子で瞳を潤ませると、再度エルラに抱き着いた。「良かった……本当に良かった……」そう何度も呟くランテに、エルラも優しく腕を回す。
と、驚いたようにエルラは目を瞬かせた。再会を喜ぶ二人を見つめる者たちの存在にやっと気付いたらしい。
「あ、あの、ランテ」
「ん?」
エルラの疑問に気付いたランテは、浮かんだ涙を手の甲で拭うと「あ、そっか、記憶にないよね」そう言ってロルフ達の紹介を始める。
「皆の協力があってエルラを助けられたんだ。皆のお陰で……」
ランテはそこで言葉を区切ると、ロルフ達の方に身体を向け深々と頭を下げた。
「本当にありがとう」
そんなランテの動きに合わせて、エルラも美しく礼をする。
「ね、二人も早く食べようよ!」
そう言ってシャルロッテが二人の元へ駆け寄り手を引こうとする。が、思ったように前に進めず後ろを振り返る。
「あな、たは……」
そう呟くエルラはその場で立ち尽くしたまま、目を見開いてシャルロッテの頭上を見つめていた。
「あのな、ラン」
「悪気があった訳じゃないの! ただエルラを助けたい一心でっ作戦だって綿密に練ったし! あんな、途中であいつがっ」
ロルフは小さく息を吐くと、ロルフの言葉を遮るように弁解を始めたランテの方に身体を向けた。
別にその話を始めるつもりだった訳ではないのだが、そう思いつつもロルフの動きに身体をびくりとさせ言葉を詰まらせるランテに、ロルフは出来るだけ優しく声をかける。
「俺たち……いや、俺は怒っちゃいない。ただ悲しいんだ」
モモが今どうしているかを考えると、こうはしていられないという焦りは出てくる。だが、夜になると暴風雪が起きやすいこの場所で、今捜索をすることをモモが望むだろうか。そう考えてこの屋敷に身を置くことを選択したのだ。
それに、ランテの気持ちが解らない訳でもない。
「確かに俺達は部外者だ。ランテにとっては綿密に作り上げた作戦の中で動く駒の一つってだけだったかもしれない。だがな、予め伝えておいてくれたら、もっと警戒する事だってできたはずだろ?」
ランテが作戦の説明時にわからないと言っていた交換条件。それは恐らく生命系の色持ち能力者との引き換えだったのだろう。
なぜかモモがそうであることを知ったランテは、人数が必要であることを理由にロルフ達を巻き込んだ。だが、作戦に参加してもらえないリスクを減らすため、交換条件を濁したのだ。そして、頑なにランテがモモと組みたがっていたのもそれが理由。できれば作戦通りに、もしそれが叶わなくてもエルラだけは救出することができるように。
ランテの後ろで、今の会話ではあまり内容が理解できていないであろうエルラもばつが悪そうに俯く。
悪いのは全てあの小男であることに違いはない。ただ、今まで共に過ごしてきた仲間として、言わなければならないことがある。
ランテとエルラが過ごしてきた年月には、絆には、到底敵わないだろうが、それでも。
「俺たちが仲間を失って、ランテと同じ気持ちにならないと思うか?」
ランテは、エルラを攫われたときの気持ちを思い出したのか、強く自分のズボンの裾を握りしめると肩を震わせて泣き出した。そしてそのまま膝から崩れ落ちる。
「ごめん、ごめんなさい……何でもするから、うち……何でもっなんでもするよぉ」
ランテにとってのエルラとは、それほどの存在なのだろう。
とは言え、これほどまでに泣きじゃくられるとは思ってもみなかったロルフは、少しの、いや、かなりの罪悪感に言葉を失う。
「ランテ、悲しい時はご飯だよ!」
そんなロルフに助け船を出したのは、シャルロッテだった。
この重たくなった空気をものともせずに、明るい口調でそう言ってランテの元へ行くと、取り皿に山ほどの料理を取り分けはじめる。
「でも……うち……」
「ランテは悪い人じゃない。エルラがすごく心配だっただけ、そうでしょ?」
わからない話をシャルロッテなりに解釈した結果、一番大事なのはそこだと判断したらしい。
「それに私、楽しそうにしてるランテの方が好き!」
「シャルルン……」
ランテはシャルロッテの言葉に、先程とは別の意味で瞳を潤ませると「ありがとう」そう言って椅子を立て座り直した。
「こんなに食べられるかな」
シャルロッテの盛った料理の量に、ランテが苦笑する。
「食べられる食べられる! 朝飯前!」
「これ夕食なんだけど」
そそくさと自分の席に戻り料理を頬張るシャルロッテの横で、ロロが呆れたようにツッコミを入れた。
――コツコツコツ。
と、いつも通りの和やかな空気になった部屋に響いたのは、配膳が済んでから閉じられていた扉をノックする音だった。
「エルラ!」
ゆっくりと開かれる扉の向こうから現れる人影を見るや否や、誰よりも早くその姿に反応したランテは再び椅子をなぎ倒す勢いで立ち上がると、部屋に入って来た女性に抱き着く。
「心配かけてごめんなさい、ランテ」
エルラはそう言うと、先程まで洗脳されていたとは思えない程に穏やかな表情で微笑んだ。
だが、ランテの心配はそれだけでは収まらなかった様だ。「大丈夫?」「どこも痛いところはない?」そんな声をかけながらエルラの身体を舐めるように隅から隅まで確認し始めた。
「ふふ、大丈夫ですよ」
ランテの猛心配に、エルラは口元に手を当てくすくすと笑う。
「本当に?」
「はい、本当です」
ランテはその言葉に安堵した様子で瞳を潤ませると、再度エルラに抱き着いた。「良かった……本当に良かった……」そう何度も呟くランテに、エルラも優しく腕を回す。
と、驚いたようにエルラは目を瞬かせた。再会を喜ぶ二人を見つめる者たちの存在にやっと気付いたらしい。
「あ、あの、ランテ」
「ん?」
エルラの疑問に気付いたランテは、浮かんだ涙を手の甲で拭うと「あ、そっか、記憶にないよね」そう言ってロルフ達の紹介を始める。
「皆の協力があってエルラを助けられたんだ。皆のお陰で……」
ランテはそこで言葉を区切ると、ロルフ達の方に身体を向け深々と頭を下げた。
「本当にありがとう」
そんなランテの動きに合わせて、エルラも美しく礼をする。
「ね、二人も早く食べようよ!」
そう言ってシャルロッテが二人の元へ駆け寄り手を引こうとする。が、思ったように前に進めず後ろを振り返る。
「あな、たは……」
そう呟くエルラはその場で立ち尽くしたまま、目を見開いてシャルロッテの頭上を見つめていた。
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