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story .04 *** 忍び寄る影、崩れ去る日常
scene .15 話し合い
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ロルフが音の方へ視線をやると、上部に入りかけた本棚の下部から、覗き込むようにして少女がこちらを見ていた。
「あぁロロか。どうした?」
「ご飯だから呼んできてってモモが」
「もうそんなに経ったのか」
そう言えばこの部屋に入ってからというもの、時間を気にするのを忘れていた。
ロルフは本を魔道ポーチへとしまうと、ロロと共に部屋を後にした。
*****
****
***
「ワタシも白水の大陸に向かうのは賛成ね」
食事を終えた後、ロルフ達は今までにあった出来事や今後のことについて話し合っていた。
相も変わらずシャルロッテが大人しい理由が気になるが、今は現状確認と今後の行動を決めることが先決だ。
「リージアの言っていた事が本当ならば、アナタ達が見たと言う美女がローシャである可能性が上がったという事でしょう? もしかしたらリージアと同じ場所で力を得たのかもしれないし」
ココット・アルクスでの騒動の犯人が、自身の双子の妹である可能性が高まったからか、ヴィオレッタはさりげなく彼女の事を美女と言っているがそこはスルーでよいだろう。
「でも本当にできるの? 色持ちじゃなかった人が色持ちの力を得るなんてこと」
「私は聞いたことないかな……」
「僕も知らない」
「俺もそんな話は聞いたことがない」
それにリージアが得たという力を目撃する前にこちらに飛んできてしまったため、その言葉が事実であるかどうかも怪しい。
とは言え、あの時のリージアの顔は通常の精神状態の顔ではなかった。――そう、まるで……
「ふぅん、そう」
ローシャであろう人物の表情を思い出しかけたロルフは思考を止めたつもりだったが、考えは読み取られてしまったらしい。
「ローシャも正気を失ってしまっている、という訳ね」
「悪い……」
「別にいいわ、現状を少しでも知れたのだから」
そうは言うものの、ヴィオレッタの表情は少し複雑そうだ。
「……んまぁ、だからこそかしら。この段階で一番怪しいのは帝国じゃない? 行ってみれば何かわかるかもしれないでしょ」
「あぁ、だからそのために、俺は明日ヴィオレッタとリェフさんの所へ行って貨物船への伝手がないか聞いて来るよ。その後できれば白水の大陸から」
「やだ」
今までじっと話を聞いていたシャルロッテが久しぶりに口を開いた。俯いているが、不満そうな表情をしていることはよくわかる。
「ゴルトのお店に行きたい。遠くに行く前にゴルトがどうしてるのかちゃんと確認したい」
「シャル……」
ずっと静かだったのはゴルトを心配していたからだったのか。
確かにあれだけの大事であったのだから、いくらゴルトでも無事であることを報告しに来るだろう。わざわざ訪れないにしても魔道水晶に連絡が入るはずだ。それが無いという事は……
心のどこかでゴルトであれば大丈夫、無条件でそう思っていた自分に、ロルフは少し嫌気がさした。いくらゴルトであっても、あれだけの数のロボットを相手に無傷でいられる訳がない。
ロルフは少し迷った後にふぅ、と息を吐くと、隣の席に座るシャルロッテの顔を覗き込む様にして言った。
「わかった。明日一度コンメル・フェルシュタットへ出てみよう。できれば店まで」
「ほんと!」
「あぁ、ただ、街の様子によってはゴルトを探すことはできない。それでいいな?」
一瞬輝いた瞳が少し曇ってしまったが、シャルロッテは「わかった」そう言いながら小さく頷いた。
「悪いがヴィオレッタもそれでいいか?」
「……まぁいいわ。できるだけ早い方がよいのだけれど」
自分と同じように家族を心配するシャルロッテの気持ちを汲んだのか、ヴィオレッタは割とあっさりと了承した。
「じゃぁ、俺達は明日コンメル・フェルシュタットを少し見てくる。その後俺とヴィオレッタでリェフさんの店へ。明日中に戻れるか分からないから悪いがモモ、屋敷と三人を頼む」
「はい、わかりました」
「ロロとクロンも本当にいいんだな?」
アルテトの近くを通る明日であれば家へ帰ることも出来る、その選択肢を提示したロルフに、ロロは大きく首を振り共に行く、そう答えたのだった。
また危険な目に合わせるかもしれない、そう思い本当であれば帰らせたいロルフであったが、ロロの強い気迫に折れる形で同行を許可したのだ。
「他の大陸に行けるなんてまたとない機会だもの! ここで帰るくらいなら最初からついてきてないわ! それに、帝国が関係しているのならお母さんの手がかりも何か掴めるかもしれないし……」
「わかった。クロンは?」
「僕ももちろんついて行きます」
「よし」
力強く頷きながらそう言ったクロンに、ロルフも頷く。少し不安が残る表情だが、初めからロロを止めようとしなかったことを考えるとそれでよいとは思っているのだろう。
「明日以降の日程はリェフさんの返答次第にはなるが、いずれにしても長旅になる。薬周りは不安があればモモに相談しておくこと」
ロルフはそれぞれの顔を見渡した後、「よろしくな」モモにそう言った。
モモは長く店を空ける事を懸念していたが、村を襲った者が何者なのか、何が目的だったのかを明らかにしたいとのことで、やはり行動を共にすることを選んだ。怪我をする危険が伴うかもしれない旅路に、薬剤師がついてきてくれると言うのは実に心強い。
「俺からは以上だ」
ロルフがそう告げると、話し合いは終了した。
「あぁロロか。どうした?」
「ご飯だから呼んできてってモモが」
「もうそんなに経ったのか」
そう言えばこの部屋に入ってからというもの、時間を気にするのを忘れていた。
ロルフは本を魔道ポーチへとしまうと、ロロと共に部屋を後にした。
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「ワタシも白水の大陸に向かうのは賛成ね」
食事を終えた後、ロルフ達は今までにあった出来事や今後のことについて話し合っていた。
相も変わらずシャルロッテが大人しい理由が気になるが、今は現状確認と今後の行動を決めることが先決だ。
「リージアの言っていた事が本当ならば、アナタ達が見たと言う美女がローシャである可能性が上がったという事でしょう? もしかしたらリージアと同じ場所で力を得たのかもしれないし」
ココット・アルクスでの騒動の犯人が、自身の双子の妹である可能性が高まったからか、ヴィオレッタはさりげなく彼女の事を美女と言っているがそこはスルーでよいだろう。
「でも本当にできるの? 色持ちじゃなかった人が色持ちの力を得るなんてこと」
「私は聞いたことないかな……」
「僕も知らない」
「俺もそんな話は聞いたことがない」
それにリージアが得たという力を目撃する前にこちらに飛んできてしまったため、その言葉が事実であるかどうかも怪しい。
とは言え、あの時のリージアの顔は通常の精神状態の顔ではなかった。――そう、まるで……
「ふぅん、そう」
ローシャであろう人物の表情を思い出しかけたロルフは思考を止めたつもりだったが、考えは読み取られてしまったらしい。
「ローシャも正気を失ってしまっている、という訳ね」
「悪い……」
「別にいいわ、現状を少しでも知れたのだから」
そうは言うものの、ヴィオレッタの表情は少し複雑そうだ。
「……んまぁ、だからこそかしら。この段階で一番怪しいのは帝国じゃない? 行ってみれば何かわかるかもしれないでしょ」
「あぁ、だからそのために、俺は明日ヴィオレッタとリェフさんの所へ行って貨物船への伝手がないか聞いて来るよ。その後できれば白水の大陸から」
「やだ」
今までじっと話を聞いていたシャルロッテが久しぶりに口を開いた。俯いているが、不満そうな表情をしていることはよくわかる。
「ゴルトのお店に行きたい。遠くに行く前にゴルトがどうしてるのかちゃんと確認したい」
「シャル……」
ずっと静かだったのはゴルトを心配していたからだったのか。
確かにあれだけの大事であったのだから、いくらゴルトでも無事であることを報告しに来るだろう。わざわざ訪れないにしても魔道水晶に連絡が入るはずだ。それが無いという事は……
心のどこかでゴルトであれば大丈夫、無条件でそう思っていた自分に、ロルフは少し嫌気がさした。いくらゴルトであっても、あれだけの数のロボットを相手に無傷でいられる訳がない。
ロルフは少し迷った後にふぅ、と息を吐くと、隣の席に座るシャルロッテの顔を覗き込む様にして言った。
「わかった。明日一度コンメル・フェルシュタットへ出てみよう。できれば店まで」
「ほんと!」
「あぁ、ただ、街の様子によってはゴルトを探すことはできない。それでいいな?」
一瞬輝いた瞳が少し曇ってしまったが、シャルロッテは「わかった」そう言いながら小さく頷いた。
「悪いがヴィオレッタもそれでいいか?」
「……まぁいいわ。できるだけ早い方がよいのだけれど」
自分と同じように家族を心配するシャルロッテの気持ちを汲んだのか、ヴィオレッタは割とあっさりと了承した。
「じゃぁ、俺達は明日コンメル・フェルシュタットを少し見てくる。その後俺とヴィオレッタでリェフさんの店へ。明日中に戻れるか分からないから悪いがモモ、屋敷と三人を頼む」
「はい、わかりました」
「ロロとクロンも本当にいいんだな?」
アルテトの近くを通る明日であれば家へ帰ることも出来る、その選択肢を提示したロルフに、ロロは大きく首を振り共に行く、そう答えたのだった。
また危険な目に合わせるかもしれない、そう思い本当であれば帰らせたいロルフであったが、ロロの強い気迫に折れる形で同行を許可したのだ。
「他の大陸に行けるなんてまたとない機会だもの! ここで帰るくらいなら最初からついてきてないわ! それに、帝国が関係しているのならお母さんの手がかりも何か掴めるかもしれないし……」
「わかった。クロンは?」
「僕ももちろんついて行きます」
「よし」
力強く頷きながらそう言ったクロンに、ロルフも頷く。少し不安が残る表情だが、初めからロロを止めようとしなかったことを考えるとそれでよいとは思っているのだろう。
「明日以降の日程はリェフさんの返答次第にはなるが、いずれにしても長旅になる。薬周りは不安があればモモに相談しておくこと」
ロルフはそれぞれの顔を見渡した後、「よろしくな」モモにそう言った。
モモは長く店を空ける事を懸念していたが、村を襲った者が何者なのか、何が目的だったのかを明らかにしたいとのことで、やはり行動を共にすることを選んだ。怪我をする危険が伴うかもしれない旅路に、薬剤師がついてきてくれると言うのは実に心強い。
「俺からは以上だ」
ロルフがそう告げると、話し合いは終了した。
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