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story .03 *** 貧窮化した村と世界的猛獣使い
scene .15 天命作戦
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周りにいる人々は拘束するばかりで、誰も攻撃していない。
リージアは眉をひそめると、
「それが矢を放つと火を吹いて来るんだよ! そのせいであのざまさ!」
そう言って村の方を一瞥し、言葉を続ける。
「接近しようものならあの素早い尻尾で攻撃してくるし! 知ってる? マンティコアの尻尾の先は猛毒針って。屈強そうな男がイチコロだよ」
リージアの視線の先では、医者らしき人物に手当てをされながらも、苦しそうに呻く男たちが複数名うずくまっていた。どの男も大柄で、いかにも力自慢と言った様子だ。
「魔術で攻撃しようにも、初級魔術じゃアリにくすぐられてんのかって位しか効かなくてさ。回復系はともかく上級の攻撃魔術使える奴なんて今時いないんだよね」
攻撃しようにも攻撃することのできない状況がもどかしい、表情からその気持ちが痛いほどに伝わってくる。
誰もが手軽に使える科学技術が発展し、魔術を習得しなくとも生活するのには困らなくなった今、多くの獣人達は苦労して中級以上の魔術を覚えなくなった。それはアルテトの様に他の者を寄せ付けない、伝統ある村でも同じなのだ。科学帝国の使いであるリージアがこの村に良く出入りしているのもその証拠であろう。
「ハンターをさ、何人かがを探しに行ったんだけど、今の今まで音沙汰なしさ」
少しの間の後、思い出したかのようにリージアが言う。
ハンターとは、モンスターを倒すことを生業にしている者達の事だ。昔に比べてモンスターの数が減ったことと、生活区にモンスター除けの結界が張られるようになったことで食いつなげるほどの仕事が取れなくなり、ほとんどの者が引退したと言われている。
仮にいたとしても、普段モンスター被害の少ないアルテト付近では見つけることは難しいだろう。その上、この場所にたどり着けるのがいつになるか分かったものではない。
リージア達の体力や、残りの拘束具の数を考えると、やはり早めに自分たちでどうにかする他なさそうだ。
「そういやロルフっておつむが良いんじゃないの? どうにかできない?」
突然向けられた期待の眼差しに、ロルフは思わず呆気にとられる。
ロルフも今時の獣人なのだ。そんなことを言われても……いや、どうにかしたいという気持ちで来たのは間違えではないのだが。混じり合う感情を抑えつつ、こちらへ向かう際に考えていたことを思い返す。
マンティコアの弱点は確か、水と氷。寒さに弱いタイプのモンスターであったはずだ。となれば、
「村の放水設備に空きは、」
「ない! 村の消火でいっぱいいっぱいだって」
ロルフの言葉を最後まで聞かずにリージアが答えた。
村の状況からしてそうだろうとは思っていたが、そんなに食い気味に答えられると思っていなかったロルフは少し戸惑う。期待されたように感じたのは思い違いだったのだろうか。
「ですよね……」
「村の馬鹿どもが村から攻撃なんか仕掛けなければね、まぁ、私らも水が弱点だって後から知ったんだけどさ。……それで?」
「はい?」
「それだけじゃないんでしょ?」
リージアの問いに、ロルフは視線を地面に向けながら眼鏡のブリッジに指を添える。
ない訳ではないが……ロルフがそう思うのと同時に、マンティコアの右前足がブン! と振りかざされた。その動きに合わせて、右前足に繋がれたロープを持つ男達が吹き飛ぶ。
「他にも策はあるっちゃあ、あるんだね?」
考える素振りをしながらも、“ない”とは答えないロルフに対しリージアは急き立てるように言う。
「何だっていいよ! あんたを信じる! 何もしないよりはましさ!」
普段と変わらない様子でロルフと会話をしていたため気づかなかったが、初めから闘っていたリージア達の体力は思っていたよりも消耗していた。額に浮かぶ汗と痛々しいロープの食い込み跡が、そろそろ彼女たちが限界であることを物語っている。
「……わかりました」
数秒の沈黙の後、ロルフはそう答えた。
「今から話しますが、とてもまともとは思えな」
「そういうのはいいよ、後で聞く! で、作戦は?」
先程吹き飛ばされた男たちが体勢を整えたのか、リージアは僅かに笑いを取り戻しながらロルフを急かす。
ロルフは頷くと、作戦を告げた。
「いいじゃん、面白そうだ! ロルフが尻込みしてた理由が良くわかるね」
作戦を聞き終えるとそう言ってリージアは二ッと笑う。そして言葉を続けた。
「皆には私から指示を出す、早く二人を呼んできて!」
リージアは眉をひそめると、
「それが矢を放つと火を吹いて来るんだよ! そのせいであのざまさ!」
そう言って村の方を一瞥し、言葉を続ける。
「接近しようものならあの素早い尻尾で攻撃してくるし! 知ってる? マンティコアの尻尾の先は猛毒針って。屈強そうな男がイチコロだよ」
リージアの視線の先では、医者らしき人物に手当てをされながらも、苦しそうに呻く男たちが複数名うずくまっていた。どの男も大柄で、いかにも力自慢と言った様子だ。
「魔術で攻撃しようにも、初級魔術じゃアリにくすぐられてんのかって位しか効かなくてさ。回復系はともかく上級の攻撃魔術使える奴なんて今時いないんだよね」
攻撃しようにも攻撃することのできない状況がもどかしい、表情からその気持ちが痛いほどに伝わってくる。
誰もが手軽に使える科学技術が発展し、魔術を習得しなくとも生活するのには困らなくなった今、多くの獣人達は苦労して中級以上の魔術を覚えなくなった。それはアルテトの様に他の者を寄せ付けない、伝統ある村でも同じなのだ。科学帝国の使いであるリージアがこの村に良く出入りしているのもその証拠であろう。
「ハンターをさ、何人かがを探しに行ったんだけど、今の今まで音沙汰なしさ」
少しの間の後、思い出したかのようにリージアが言う。
ハンターとは、モンスターを倒すことを生業にしている者達の事だ。昔に比べてモンスターの数が減ったことと、生活区にモンスター除けの結界が張られるようになったことで食いつなげるほどの仕事が取れなくなり、ほとんどの者が引退したと言われている。
仮にいたとしても、普段モンスター被害の少ないアルテト付近では見つけることは難しいだろう。その上、この場所にたどり着けるのがいつになるか分かったものではない。
リージア達の体力や、残りの拘束具の数を考えると、やはり早めに自分たちでどうにかする他なさそうだ。
「そういやロルフっておつむが良いんじゃないの? どうにかできない?」
突然向けられた期待の眼差しに、ロルフは思わず呆気にとられる。
ロルフも今時の獣人なのだ。そんなことを言われても……いや、どうにかしたいという気持ちで来たのは間違えではないのだが。混じり合う感情を抑えつつ、こちらへ向かう際に考えていたことを思い返す。
マンティコアの弱点は確か、水と氷。寒さに弱いタイプのモンスターであったはずだ。となれば、
「村の放水設備に空きは、」
「ない! 村の消火でいっぱいいっぱいだって」
ロルフの言葉を最後まで聞かずにリージアが答えた。
村の状況からしてそうだろうとは思っていたが、そんなに食い気味に答えられると思っていなかったロルフは少し戸惑う。期待されたように感じたのは思い違いだったのだろうか。
「ですよね……」
「村の馬鹿どもが村から攻撃なんか仕掛けなければね、まぁ、私らも水が弱点だって後から知ったんだけどさ。……それで?」
「はい?」
「それだけじゃないんでしょ?」
リージアの問いに、ロルフは視線を地面に向けながら眼鏡のブリッジに指を添える。
ない訳ではないが……ロルフがそう思うのと同時に、マンティコアの右前足がブン! と振りかざされた。その動きに合わせて、右前足に繋がれたロープを持つ男達が吹き飛ぶ。
「他にも策はあるっちゃあ、あるんだね?」
考える素振りをしながらも、“ない”とは答えないロルフに対しリージアは急き立てるように言う。
「何だっていいよ! あんたを信じる! 何もしないよりはましさ!」
普段と変わらない様子でロルフと会話をしていたため気づかなかったが、初めから闘っていたリージア達の体力は思っていたよりも消耗していた。額に浮かぶ汗と痛々しいロープの食い込み跡が、そろそろ彼女たちが限界であることを物語っている。
「……わかりました」
数秒の沈黙の後、ロルフはそう答えた。
「今から話しますが、とてもまともとは思えな」
「そういうのはいいよ、後で聞く! で、作戦は?」
先程吹き飛ばされた男たちが体勢を整えたのか、リージアは僅かに笑いを取り戻しながらロルフを急かす。
ロルフは頷くと、作戦を告げた。
「いいじゃん、面白そうだ! ロルフが尻込みしてた理由が良くわかるね」
作戦を聞き終えるとそう言ってリージアは二ッと笑う。そして言葉を続けた。
「皆には私から指示を出す、早く二人を呼んできて!」
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