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story .03 *** 貧窮化した村と世界的猛獣使い
scene .13 アルテトの危機
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わたしが言いたかったのはこれよ! と言わんばかりに、ロロは全員を見回す。
「待ってよ、ロロ。それはロロが一人で寝ちゃったからで……」
「そうだぞ嬢ちゃん、何でもかんでも人のせいにしちゃあいかん。自分にも原因があるかもしれない、そう考えるのが大人ってもんだぜ」
ロロの皿に追加のパンケーキを乗せながら、リェフはフライパンを持っているのとは逆の手でロロの頭をわしゃわしゃと撫でた。
口をへの字に曲げ、自分の手を除けようとしてくる小さな手をさっとかわし、
「さぁライザは店番に戻れ。お前らも食い終わったらどっか遊びにでも行ってこい!」
リェフはそう言ってロロの頭をぽんぽんと軽く叩いた。
*****
****
***
「……?」
ロルフは辺りを見渡す。どうやら本を読みながら眠ってしまったらしい。
あの後、リェフに諭されたロロは、渋々機嫌を直し、シャルロッテとモモを連れ三人で外へ出掛けて行った。
一方、店に残ったクロンとロルフはそれぞれ休憩することにしたのだった。
相変わらず賑やかな外の喧騒に耳を傾けつつ、腰かけたまま身体を伸ばしていると、バンッ! という音と共にロロが部屋へ飛び込んできた。
「ロルフ! 大変! どうしよう!」
そう叫ぶロロの息は切れ切れだ。
「どうした?」
「アルテトが……!」
小走りで後ろからついてきたシャルロッテとモモ、それと、ロロの声に何事かと隣の部屋で休んでいたクロンもやってきた。
「アルテトが襲われてるって!」
「襲われてる?」
その言葉を聞いたロルフの眉間にしわが寄る。まさか……またあの女だろうか。過った考えを吹き消すように、ロロが言葉を追加する。
「マンティコアが出てきて、村を破壊してるみたいなの! きっとわたしのせいだわ……わたしがロルフ達を連れて行ったりしたからっ」
そこまで言って、ロロはこぶしを握り締めながら俯く。
あの辺りには餌となり得るモンスターが少ないため、マンティコアレベルの大型モンスターが生きていくにはかなり厳しい環境だと言える。奴と遭遇した際に発見した白骨。あれは恐らくたまたま迷い込んだ商人や旅人のものなのであろう。たまにやって来る“餌”のみでは空腹が満たされず、耐え兼ねて近くの村を襲った、と言ったところだろうか。
しばらくして、バッと顔を上げたロロは、
「……ねぇ! どうしようロルフ!」
必死な眼差しで、ロルフの膝を掴み大きく揺らす。
情報の出所はともかく、ロロだけではなく、モモやシャルロッテの様子からも冗談などを言っている訳ではなさそうだ。
ロルフはロロを落ち着かせようと、その肩に手を乗せ考えを巡らせる。汽車に乗る事すら叶わない今、アルテトどころかモクポルトへ向かう事も難しいだろう。とは言え、もしここから徒歩で向かおうものなら二日はかかる。どうにかしてアルテトへ向かう事はできないだろうか。
そこまで考えたところで、コンコンコンとドアをノックする音がした。部屋の外から、開きっぱなしのドアを片手にライザがこちらを覗いている。
「ヴィオレッタ様がロルフ達に会いに来たよ」
「悪いなライザ、今それどころじゃ」
「それがあっちも急ぎなんだって」
ヴィオレッタが急ぎの用? 団長の説得に失敗でもしたのだろうか。だがそんなのは急ぎで伝えなくても良い内容だ。……いや、あの女ならそう言って呼び出すことも厭わないだろうか。
“店の前にいられちゃ商売どころじゃない”ライザがし出したジェスチャーから何となく意味を悟る。滞在させてもらっている立場からすると、ライザ達に迷惑をかける訳にはいかない、そう考えたロルフは、
「わかった」
そう言って重い腰をあげた。
残念ながら、アルテトへ向かうための方法は今のところ何も思いつきそうにない。だとすれば、話を聞くついでに何か方法を尋ねるのも悪くはないだろう。世界を飛び回っている彼女だからこそ思いつく方法が何かあるかもしれない。
大してしていない期待を胸に、階段を降り店の戸を開ける。すると、
「もう、遅いわよ! 事態を把握できてない様ね」
その姿が確認できる前に、ヴィオレッタの怒声が飛んできた。
腕を組み、足の爪先をパタパタとさせているところを見ると、かなり機嫌は悪そうだ。周りにファンらしき人々がいるが良いのだろうか。
「何の用だ?」
「何の用? アルテトが襲撃されているっていう噂ぐらい聞いているでしょう? ……まさか寝てたとか言うんじゃないでしょうね」
突然の鋭い指摘に、ロルフは眼鏡を軽く抑える。
そんなことよりも、なぜヴィオレッタがアルテトのことを気にかけているのか。そこが気になるところだ。
「そんなこと今はどうだっていいわ。全員揃ってるわね? アルテトへ向かうわよ」
ロルフが質問を口にする前にヴィオレッタはそう答えると、辺りにいる人達にスペースを開けるよう指示しだす。
「何ぼさっとしてるのよ! さっさと行くわよ!」
「どうやって行くっていうのよ! 汽車だっていっぱいで乗れな…」
ロルフの後ろから飛び出して、反論しようとしたロロの言葉を遮るようにヴィオレッタが指笛を吹く。すると、先程ヴィオレッタがスペースを開けさせていた場所に、音もなく二頭のモンスターが姿を現した。
「待ってよ、ロロ。それはロロが一人で寝ちゃったからで……」
「そうだぞ嬢ちゃん、何でもかんでも人のせいにしちゃあいかん。自分にも原因があるかもしれない、そう考えるのが大人ってもんだぜ」
ロロの皿に追加のパンケーキを乗せながら、リェフはフライパンを持っているのとは逆の手でロロの頭をわしゃわしゃと撫でた。
口をへの字に曲げ、自分の手を除けようとしてくる小さな手をさっとかわし、
「さぁライザは店番に戻れ。お前らも食い終わったらどっか遊びにでも行ってこい!」
リェフはそう言ってロロの頭をぽんぽんと軽く叩いた。
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「……?」
ロルフは辺りを見渡す。どうやら本を読みながら眠ってしまったらしい。
あの後、リェフに諭されたロロは、渋々機嫌を直し、シャルロッテとモモを連れ三人で外へ出掛けて行った。
一方、店に残ったクロンとロルフはそれぞれ休憩することにしたのだった。
相変わらず賑やかな外の喧騒に耳を傾けつつ、腰かけたまま身体を伸ばしていると、バンッ! という音と共にロロが部屋へ飛び込んできた。
「ロルフ! 大変! どうしよう!」
そう叫ぶロロの息は切れ切れだ。
「どうした?」
「アルテトが……!」
小走りで後ろからついてきたシャルロッテとモモ、それと、ロロの声に何事かと隣の部屋で休んでいたクロンもやってきた。
「アルテトが襲われてるって!」
「襲われてる?」
その言葉を聞いたロルフの眉間にしわが寄る。まさか……またあの女だろうか。過った考えを吹き消すように、ロロが言葉を追加する。
「マンティコアが出てきて、村を破壊してるみたいなの! きっとわたしのせいだわ……わたしがロルフ達を連れて行ったりしたからっ」
そこまで言って、ロロはこぶしを握り締めながら俯く。
あの辺りには餌となり得るモンスターが少ないため、マンティコアレベルの大型モンスターが生きていくにはかなり厳しい環境だと言える。奴と遭遇した際に発見した白骨。あれは恐らくたまたま迷い込んだ商人や旅人のものなのであろう。たまにやって来る“餌”のみでは空腹が満たされず、耐え兼ねて近くの村を襲った、と言ったところだろうか。
しばらくして、バッと顔を上げたロロは、
「……ねぇ! どうしようロルフ!」
必死な眼差しで、ロルフの膝を掴み大きく揺らす。
情報の出所はともかく、ロロだけではなく、モモやシャルロッテの様子からも冗談などを言っている訳ではなさそうだ。
ロルフはロロを落ち着かせようと、その肩に手を乗せ考えを巡らせる。汽車に乗る事すら叶わない今、アルテトどころかモクポルトへ向かう事も難しいだろう。とは言え、もしここから徒歩で向かおうものなら二日はかかる。どうにかしてアルテトへ向かう事はできないだろうか。
そこまで考えたところで、コンコンコンとドアをノックする音がした。部屋の外から、開きっぱなしのドアを片手にライザがこちらを覗いている。
「ヴィオレッタ様がロルフ達に会いに来たよ」
「悪いなライザ、今それどころじゃ」
「それがあっちも急ぎなんだって」
ヴィオレッタが急ぎの用? 団長の説得に失敗でもしたのだろうか。だがそんなのは急ぎで伝えなくても良い内容だ。……いや、あの女ならそう言って呼び出すことも厭わないだろうか。
“店の前にいられちゃ商売どころじゃない”ライザがし出したジェスチャーから何となく意味を悟る。滞在させてもらっている立場からすると、ライザ達に迷惑をかける訳にはいかない、そう考えたロルフは、
「わかった」
そう言って重い腰をあげた。
残念ながら、アルテトへ向かうための方法は今のところ何も思いつきそうにない。だとすれば、話を聞くついでに何か方法を尋ねるのも悪くはないだろう。世界を飛び回っている彼女だからこそ思いつく方法が何かあるかもしれない。
大してしていない期待を胸に、階段を降り店の戸を開ける。すると、
「もう、遅いわよ! 事態を把握できてない様ね」
その姿が確認できる前に、ヴィオレッタの怒声が飛んできた。
腕を組み、足の爪先をパタパタとさせているところを見ると、かなり機嫌は悪そうだ。周りにファンらしき人々がいるが良いのだろうか。
「何の用だ?」
「何の用? アルテトが襲撃されているっていう噂ぐらい聞いているでしょう? ……まさか寝てたとか言うんじゃないでしょうね」
突然の鋭い指摘に、ロルフは眼鏡を軽く抑える。
そんなことよりも、なぜヴィオレッタがアルテトのことを気にかけているのか。そこが気になるところだ。
「そんなこと今はどうだっていいわ。全員揃ってるわね? アルテトへ向かうわよ」
ロルフが質問を口にする前にヴィオレッタはそう答えると、辺りにいる人達にスペースを開けるよう指示しだす。
「何ぼさっとしてるのよ! さっさと行くわよ!」
「どうやって行くっていうのよ! 汽車だっていっぱいで乗れな…」
ロルフの後ろから飛び出して、反論しようとしたロロの言葉を遮るようにヴィオレッタが指笛を吹く。すると、先程ヴィオレッタがスペースを開けさせていた場所に、音もなく二頭のモンスターが姿を現した。
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