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story .01 *** うさぎと薬草と蛇
scene .9 モモと異能力
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「ちちち、違います! 私にはそんな力……」
だが確かに、小さいときから、お願いすると植物が少し動いたり、芽が出るようお祈りすると芽がでたり、少し変わったことはあった。しかし、それは多分ウサギ族の能力の延長で、話に聞いているような能力を持ち合わせている訳ではない――と思う。多分……
「心当たりはあるようだの」
ゴルトにそう言われると、本当に違うのか自身がなくなってくる。本当に自分は他のウサギ族と変わらないのだろうか。
というより、なぜそんなことを言ってくるのかがモモにはわからない。
「あっ……」
モモは一つの噂を思い出した。色持ちを売買する闇の商売屋がいるという話を。――も、もしかして、私が色持ちだったら、私を売るつもり……? 今まで出掛けていたのは商談だったりして……!
突然黙りこくってしまったモモをロルフとシャルロッテは不思議そうに見る。そんな二人まで敵に思えてきた。
今まで優しくしてくれていたのは、私を信頼させるためで、ゴルトさんが、今日コンメル・フェルシュタットを案内するように言ったのも、“最後の自由を楽しめ”とかそういう意味だったり……! モモの頭の中でぐるぐると推理が暴走していく。そして、いつぞやのように、思ったことを口走ってしまった。
「わわわわわたしなんて売れないです! 売れたとしてもこれっぽっちにもならないというか……そ、そもそも色持ちではないですし!」
突然立ち上がって叫びだしたモモに、ロルフとシャルロッテが吃驚する。ゴルトはというと、俯いて肩を震わせていた。――あぁ、やっちゃった……こんなこと言ったら殺されちゃうかもしれないのに……モモが絶望しかけた時だった。
「ク、ククク……面白いのぅ、モモは! 気に入ったぞ」
顔を上げたゴルトは、目に涙を浮かべて笑っていた。モモの心の内を知らないロルフとシャルロッテは、何が起きたのかわからず、ポカンとしてモモとゴルトを見比べている。
「あれ……?」
「自らを全くの潔白だとは言わぬが、そんな悪行は働いておらんよ。奴らは相当に汚いからの。まぁ、知らなくて済むに越したことはないであろうが」
ゴルトは、上品に涙を拭いながらそう言った。その姿は、モモを捕えようとしているようには見えない。
「そ、そうなん……ですか?」
――あ、あれ、私また何か勘違いを……また、思い込みでおかしなことを口走ってしまったのだろうか。モモは自分の顔が火照っていくのを感じた。
すると突然、ゴルトは真剣な眼差しでモモを見つめると、俯きかけたモモの顎に指を添えた。そして、緊張で宙を泳ぐモモの瞳をじっと見つめると、
「心配なのじゃ。森に住むウサギ族であるそなたが、扱いきれぬ能力に翻弄されぬかが」
そう言って指を離すと、ロルフをちらりと見て続ける。
「簡単に言えば、そなたの能力は植物を自由に操ることのできる力の様じゃの。本来、ウサギ族の能力を開花させるために憑依するニュンフェだが、その力を身に余らせていたが故に、ニュンフェ達もその制御の一部を担わされていると言ったところじゃろうか。最近ニュンフェが暴れるなどしていたのではないか?」
「っ! ……確かに、森に逃げ出すようになったのはここ最近かもしれないです」
最近の出来事を思い返してモモは目を見開く。
「ふむ、恐らくではあるが……ニュンフェ達もそなたから流れ出る力を制御しきれなくなってきたのであろう」
「そんな……」
自分の知らぬ間に、かわいい精霊に負担を掛けていたなんて……モモはニュンフェ達を見つめる。
「どうすれば、いいんでしょうか……」
「生き物を対象とする色持ちは、その対象であるもの――そなたの場合、植物じゃの。に、どちらの気力が上位であるかを見定められ、認められた場合のみ力を貸してもらえると聞く」
「もし、認められなかったら……?」
「その時は、植物に気を搾取されるであろうな。今のそなたのように、自身で制御できない場合も同様じゃ。先日も植物の中で長き時を過ごしたのであろう」
あの頃のことを思い返してみると確かにそうだ。ロルフ達と出会った日以外にも、度々ニュンフェが逃げ出して、茂みの中を歩き回った覚えがある。
「まぁ、インガンテスにはそう高気力の植物は存在せぬだろうからの、不幸中にも幸いだったの」
「……はい」
――高気力の植物にであっていたらどうなっていたんですか? モモはそう聞いてしまいそうになったが、なんだか怖かったのでやめておいた。主にゴルトが。
「ところでなんですけど……」
「ああ、忘れておった。力の制御の仕方であろう? その辺りはロルフに一任しようと思っての。わしに似たのか、ああ見えても多才でな。シャルに能力を使いこなさせたのも奴なのじゃ」
「そうなんですか……?」
“わしに似たのか”のところでロルフの眉がピクリと動いたような気がする。……が、そんなことはともかく、これ以上自分のかわいいニュンフェ達に負担を掛けるわけにはいかない。そう思ったモモは、ロルフに頼ることにした。
「お世話になってばかりですみませんが、よろしくお願いします」
「ああ、制御できるようにゆっくり鍛えよう。まぁ、頑張るのはモモだけどな」
「はい! 頑張ります!」
自分にそんな力があるとは、にわかには信じられなかったが、もし植物と話すだけではなく、操ることもできるとしたらとても楽しいのでは……? そう思い、モモは小さく心を躍らせるのであった。
だが確かに、小さいときから、お願いすると植物が少し動いたり、芽が出るようお祈りすると芽がでたり、少し変わったことはあった。しかし、それは多分ウサギ族の能力の延長で、話に聞いているような能力を持ち合わせている訳ではない――と思う。多分……
「心当たりはあるようだの」
ゴルトにそう言われると、本当に違うのか自身がなくなってくる。本当に自分は他のウサギ族と変わらないのだろうか。
というより、なぜそんなことを言ってくるのかがモモにはわからない。
「あっ……」
モモは一つの噂を思い出した。色持ちを売買する闇の商売屋がいるという話を。――も、もしかして、私が色持ちだったら、私を売るつもり……? 今まで出掛けていたのは商談だったりして……!
突然黙りこくってしまったモモをロルフとシャルロッテは不思議そうに見る。そんな二人まで敵に思えてきた。
今まで優しくしてくれていたのは、私を信頼させるためで、ゴルトさんが、今日コンメル・フェルシュタットを案内するように言ったのも、“最後の自由を楽しめ”とかそういう意味だったり……! モモの頭の中でぐるぐると推理が暴走していく。そして、いつぞやのように、思ったことを口走ってしまった。
「わわわわわたしなんて売れないです! 売れたとしてもこれっぽっちにもならないというか……そ、そもそも色持ちではないですし!」
突然立ち上がって叫びだしたモモに、ロルフとシャルロッテが吃驚する。ゴルトはというと、俯いて肩を震わせていた。――あぁ、やっちゃった……こんなこと言ったら殺されちゃうかもしれないのに……モモが絶望しかけた時だった。
「ク、ククク……面白いのぅ、モモは! 気に入ったぞ」
顔を上げたゴルトは、目に涙を浮かべて笑っていた。モモの心の内を知らないロルフとシャルロッテは、何が起きたのかわからず、ポカンとしてモモとゴルトを見比べている。
「あれ……?」
「自らを全くの潔白だとは言わぬが、そんな悪行は働いておらんよ。奴らは相当に汚いからの。まぁ、知らなくて済むに越したことはないであろうが」
ゴルトは、上品に涙を拭いながらそう言った。その姿は、モモを捕えようとしているようには見えない。
「そ、そうなん……ですか?」
――あ、あれ、私また何か勘違いを……また、思い込みでおかしなことを口走ってしまったのだろうか。モモは自分の顔が火照っていくのを感じた。
すると突然、ゴルトは真剣な眼差しでモモを見つめると、俯きかけたモモの顎に指を添えた。そして、緊張で宙を泳ぐモモの瞳をじっと見つめると、
「心配なのじゃ。森に住むウサギ族であるそなたが、扱いきれぬ能力に翻弄されぬかが」
そう言って指を離すと、ロルフをちらりと見て続ける。
「簡単に言えば、そなたの能力は植物を自由に操ることのできる力の様じゃの。本来、ウサギ族の能力を開花させるために憑依するニュンフェだが、その力を身に余らせていたが故に、ニュンフェ達もその制御の一部を担わされていると言ったところじゃろうか。最近ニュンフェが暴れるなどしていたのではないか?」
「っ! ……確かに、森に逃げ出すようになったのはここ最近かもしれないです」
最近の出来事を思い返してモモは目を見開く。
「ふむ、恐らくではあるが……ニュンフェ達もそなたから流れ出る力を制御しきれなくなってきたのであろう」
「そんな……」
自分の知らぬ間に、かわいい精霊に負担を掛けていたなんて……モモはニュンフェ達を見つめる。
「どうすれば、いいんでしょうか……」
「生き物を対象とする色持ちは、その対象であるもの――そなたの場合、植物じゃの。に、どちらの気力が上位であるかを見定められ、認められた場合のみ力を貸してもらえると聞く」
「もし、認められなかったら……?」
「その時は、植物に気を搾取されるであろうな。今のそなたのように、自身で制御できない場合も同様じゃ。先日も植物の中で長き時を過ごしたのであろう」
あの頃のことを思い返してみると確かにそうだ。ロルフ達と出会った日以外にも、度々ニュンフェが逃げ出して、茂みの中を歩き回った覚えがある。
「まぁ、インガンテスにはそう高気力の植物は存在せぬだろうからの、不幸中にも幸いだったの」
「……はい」
――高気力の植物にであっていたらどうなっていたんですか? モモはそう聞いてしまいそうになったが、なんだか怖かったのでやめておいた。主にゴルトが。
「ところでなんですけど……」
「ああ、忘れておった。力の制御の仕方であろう? その辺りはロルフに一任しようと思っての。わしに似たのか、ああ見えても多才でな。シャルに能力を使いこなさせたのも奴なのじゃ」
「そうなんですか……?」
“わしに似たのか”のところでロルフの眉がピクリと動いたような気がする。……が、そんなことはともかく、これ以上自分のかわいいニュンフェ達に負担を掛けるわけにはいかない。そう思ったモモは、ロルフに頼ることにした。
「お世話になってばかりですみませんが、よろしくお願いします」
「ああ、制御できるようにゆっくり鍛えよう。まぁ、頑張るのはモモだけどな」
「はい! 頑張ります!」
自分にそんな力があるとは、にわかには信じられなかったが、もし植物と話すだけではなく、操ることもできるとしたらとても楽しいのでは……? そう思い、モモは小さく心を躍らせるのであった。
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