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有名人に助けてもらっちゃったよ!

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 気合を入れたはいいけれど、やはり気合だけではどうにもなりませんでした。

 私は今、地べたと接吻中。あぁ、五秒後には死に戻りかー……。

 目をぎゅっとつむり、処断の時を待った。待った。ひたすら待った――。

「あれ?」

 おかしい。死んでないよ、私。トカゲさん、あきらめた?

 その時、すさまじい轟音が周囲に響き渡った。同時に背に感じる激しい熱。

「きゃっ! なになに、いったい何なの!?」

 私は熱さで顔を上げるに上げられず、じっと地面とにらめっこをしながら成り行きに任せた。

 数分おとなしく臥せっていると、音は止み、熱も消えた。私はゆっくりと体を起こす。

「おいっ、あんた、大丈夫だったか?」

 背後から男の声がした。振り返るとそこには、二人の男女が立っている。

「ちょっとカレル、人がいるのに炎のブレスはなかったんじゃない? 彼女の背、煤だらけになってるよ?」

 女性――私と同い年くらいに見える――の言葉に、私はハッとして自分の背中に手を回した。手の平にはべっとり黒いすすがついている。どうやら着ていた外套が、炎で焦げたらしい。

 幸い安物だったし、外套は帰ったら処分しちゃおう。今はそれよりも、目の前の二人組だ。どうやら命の恩人みたいだし。

 私は立ち上がり、二人の様子を凝視した。

 二人とも私と同年代、高校生っぽい感じかな? 男の子は深緑色のローブを着て、フードをかぶっている。零れ落ちている髪は、金色だ。手に持つ銀色のロッドがまた、不思議と私を惹きつける。何だろう、この感覚。

 女の子は、長い金髪を後頭部でくくっている。ちょっと小柄だけれど、すごくきれいな娘だった。なんだか気後れしちゃう。ただ、容貌以上に着ている装備が目を引いた。手に持つのは、おそらくは薙刀かな? で、服装はそれに合わせて稽古着と袴だ。顔立ちが日本人離れしているから、装備品とのギャップで必要以上に目を引く。

「危ないところを助けてくれたみたいだね。どうもありがとう」

 私は礼を述べ、頭を下げた。

「いや、気にしないで。オレたちはたまたま通りがかっただけだし、それに、ボスを倒せてこちらも利益は十分得られた。ボス撃破初回ボーナス付きってことは、やはりここは未踏ダンジョンなのか?」

 私がうなずくと、少年はにっこりと笑った。

 そっか、初めてのボス討伐だから、ボス撃破初回ボーナスも付いたんだ。ってあれ、私ももしかしてもらっちゃってる!?

 慌ててアイテムボックスを確認すると、見慣れない鉱石が一つ収まっていた。『精霊鉱』と名付けられた鉱石は、七色に輝き神秘的な雰囲気を醸し出していた。

「あ、あの。私も初回ボーナスもらっちゃっているんだけど、これあなたたちに返した方がいいかな? 私が倒したわけじゃないし」

「いいんじゃない? そのまま持っていって。あなたもボスのターゲットにされていたわけだし、戦闘に加わっていたって認識で間違っていないと思うよ」

 少女は手を振って、返さなくてもいいとアピールしている。

 であれば、ありがたくもらっておこうっと。これで武器を精錬すると、なんかすごいものが作れそうな気がするんだよね。鉱石自体からなんだかエネルギー?っぽいのが出ている気がするし。

「じゃ、ありがたく。あ、私レンカって言うの。これでも一応、ヴィーデの街一番のコヴァーシュだって言われているんだ」

「あ、君がレンカか。こいつはちょうどよかったかも。っとと、オレはカレル。一応精霊使いをやっている。で、彼女は槍士のユリナだ」

「ユリナよ、よろしくね、鍛冶屋さん」

 私は二人と握手をした。

 動じないふりをしているが、内心の私は驚きのあまり仰天していた。まさか、サーバートップグループの攻略パーティーの一員と出会えるなんて。

 カレルはサーバー最強の精霊使いって言われているし、ユリナも薙刀を持たせたら並ぶ者がいないほどの使い手だとうわさされている。そんな二人に助けてもらえただなんて、僥倖だ。

「とりあえず、いったん街に戻るか。さすがにボス戦をやったし霊素の残りが心もとないしな」

「レンカも一緒に戻らない? さっきカレルもちょっと口走っていたけれど、実は私たち、近いうちにあなたの工房に行こうと思っていたんだ」

 おっと、お客様でしたか。ますます僥倖。しかも、一緒に戻るってことは、ようは街までボディーガードをしてくれるって意味だよね。こいつは乗るっきゃない。

 ユリナの提案に、私はうなずいた。今日はここまですこぶる運が悪かった。ボスとは言わないけれど、また変なモンスターに絡まれる危険もある。ご厚意に甘えるとしよう。

 強者二人の護衛付きだったためか、何事もなくヴィーデの街へ帰った。
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