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第十三章 グリューン帰還
2 聖女様に花を持たせましょうか
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フェルディナントとの話を終え、アリツェは応接室から自室に戻った。椅子に座り、子爵領行きについて改めてゆっくりと考える。
(さて、クリスティーナも一緒となれば、また話は変わってくるな)
悠太は「どうしたもんかねぇ」とつぶやいている。
「クリスティーナ様に嫌がらせをしつつ、お養父様に復讐をもくろみ、なおかつ国王陛下の失望するような失敗をやらかす。併せて、子爵領の精霊教受け入れはきちんと果たす。なんだか盛りだくさんですわね」
思いがけずクリスティーナというお荷物が増え、アリツェは頭を抱えたくなる。
(そういわれると、なんだかわくわくしてくるな!)
「楽しまないでくださいませ! 大事なミッションなんですのよ!」
やけくそ気味に笑い飛ばす悠太に、アリツェは思わず声を荒げた。
(悪い悪い。さて、クリスティーナについては、道中やグリューン滞在中にいつもどおりの対応をしてやればいいだろう。あとは、クリスティーナ自身が使い魔を使って、精霊術でオレたちの邪魔をしないように注意をしていればいいかな。何やら今回の件で意気込んでいるようだから、グリューンで何らかの動きに出る可能性は高い)
クリスティーナ自身からわざわざ参加をねじ込んできた。当然、思惑があっての行動だろう。
「ドミニクにいいところを見せたいのでしょうか? ここで手柄を立てれば、婚約者の地位が近づくとして」
フェイシア王国内でクリスティーナの評判を上げるのには、もってこいの状況と言えなくもなかった。
(そうか、そういう考えができるのか。であれば、うまくクリスティーナに花を持たせる形で話をつけるように仕向ければ、よりドミニクとクリスティーナの婚約話へもっていきやすくなるな)
「国王陛下のクリスティーナ様への評価が向上すれば、確かにわたくしよりもクリスティーナ様を婚約者にした方が、という流れになりそうですわね」
悠太の意見に、アリツェはなるほどとうなずいた。
アリツェ自身は、今回のマルティン説得の件では、わざと失敗を犯すように行動する予定だ。であるならば、アリツェの失敗分をクリスティーナに挽回させるようにうまく動かせれば、クリスティーナの評判は上がり、一方で、アリツェの国王からの信頼は低下する。一挙両得のように思えてきた。
子爵領の精霊教禁教問題自体もきちんと解決しないと、フェイシア王国にとってはよくない。その点でも、アリツェ単独で行動して子爵領の問題がうやむやになるよりは、クリスティーナのフォローできちんと解決の方向に持っていけるのであるならば、よほど好都合だった。
(じゃあ、その形で進めよう。で、オレたちは今、表面上は世界再生教に鞍替えしているように見せかけている。この点を使って、マルティンの懐にうまいこと入り込もう。そして、アリツェがマルティンと国王との関係を取り持つと言ってマルティンを篭絡させ、うまいこと王都プラガまで連れて行く)
「うまくいきますでしょうか?」
あのマルティンが、そう簡単にアリツェの言葉を信じるとも思えない。
(今、マルティンは王国内に味方がいない状況だ。後ろ盾にしていたフェイシア王国の世界再生教の勢力も弱まるばかりだし、大分困っているんじゃないか? そこで、王家との関係回復の橋渡しをすると言ってアリツェが近づけば、まず間違いなく乗ってくるぞ)
「では、悠太様の案で試してみましょう」
悠太の意見に納得がいったので、アリツェは首肯した。
(さて、クリスティーナも一緒となれば、また話は変わってくるな)
悠太は「どうしたもんかねぇ」とつぶやいている。
「クリスティーナ様に嫌がらせをしつつ、お養父様に復讐をもくろみ、なおかつ国王陛下の失望するような失敗をやらかす。併せて、子爵領の精霊教受け入れはきちんと果たす。なんだか盛りだくさんですわね」
思いがけずクリスティーナというお荷物が増え、アリツェは頭を抱えたくなる。
(そういわれると、なんだかわくわくしてくるな!)
「楽しまないでくださいませ! 大事なミッションなんですのよ!」
やけくそ気味に笑い飛ばす悠太に、アリツェは思わず声を荒げた。
(悪い悪い。さて、クリスティーナについては、道中やグリューン滞在中にいつもどおりの対応をしてやればいいだろう。あとは、クリスティーナ自身が使い魔を使って、精霊術でオレたちの邪魔をしないように注意をしていればいいかな。何やら今回の件で意気込んでいるようだから、グリューンで何らかの動きに出る可能性は高い)
クリスティーナ自身からわざわざ参加をねじ込んできた。当然、思惑があっての行動だろう。
「ドミニクにいいところを見せたいのでしょうか? ここで手柄を立てれば、婚約者の地位が近づくとして」
フェイシア王国内でクリスティーナの評判を上げるのには、もってこいの状況と言えなくもなかった。
(そうか、そういう考えができるのか。であれば、うまくクリスティーナに花を持たせる形で話をつけるように仕向ければ、よりドミニクとクリスティーナの婚約話へもっていきやすくなるな)
「国王陛下のクリスティーナ様への評価が向上すれば、確かにわたくしよりもクリスティーナ様を婚約者にした方が、という流れになりそうですわね」
悠太の意見に、アリツェはなるほどとうなずいた。
アリツェ自身は、今回のマルティン説得の件では、わざと失敗を犯すように行動する予定だ。であるならば、アリツェの失敗分をクリスティーナに挽回させるようにうまく動かせれば、クリスティーナの評判は上がり、一方で、アリツェの国王からの信頼は低下する。一挙両得のように思えてきた。
子爵領の精霊教禁教問題自体もきちんと解決しないと、フェイシア王国にとってはよくない。その点でも、アリツェ単独で行動して子爵領の問題がうやむやになるよりは、クリスティーナのフォローできちんと解決の方向に持っていけるのであるならば、よほど好都合だった。
(じゃあ、その形で進めよう。で、オレたちは今、表面上は世界再生教に鞍替えしているように見せかけている。この点を使って、マルティンの懐にうまいこと入り込もう。そして、アリツェがマルティンと国王との関係を取り持つと言ってマルティンを篭絡させ、うまいこと王都プラガまで連れて行く)
「うまくいきますでしょうか?」
あのマルティンが、そう簡単にアリツェの言葉を信じるとも思えない。
(今、マルティンは王国内に味方がいない状況だ。後ろ盾にしていたフェイシア王国の世界再生教の勢力も弱まるばかりだし、大分困っているんじゃないか? そこで、王家との関係回復の橋渡しをすると言ってアリツェが近づけば、まず間違いなく乗ってくるぞ)
「では、悠太様の案で試してみましょう」
悠太の意見に納得がいったので、アリツェは首肯した。
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