58 / 272
第六章 一人の少女と一匹の猫
9 マリエと魔術の勉強を
しおりを挟む
冬になった――。
ミュニホフ周辺に雪が降ることはめったにない。ただし、強風が吹く日が多いので、体感ではかなり寒く感じられる。道行く人も、みなマフラーを巻き、耳まで覆える帽子をかぶり防寒対策をしていた。
この日も恒例の街の視察を終えたラディムは、ザハリアーシュ、エリシュカと別れて、世界再生教の教会へ向かった。視察後に教会へ寄り、マリエと魔術談義を楽しむのが恒例になっていた。
「マリエ、いるかー? うー、寒い寒い」
教会の礼拝堂へ入るや、ラディムはマリエを呼んだ。そのまま、かじかんだ手をこすりながら、マリエが来るのを待つ。
「あ、これは殿下、いらっしゃい」
呼びかけに応えて、すぐに礼拝堂の奥からマリエが現れた。
初めてミュニホフの街中で出会ってから半年、マリエのやせ細っていた身体は、普通の子供と同じくらいまで肉付いていた。ぼろぼろにすり切れた服ももう着ていない。庶民の子供が着る、色とりどりに刺繍が施されたかわいらしいドレスを着ていた。痛み放題だった黒髪も、今はきれいに梳かされ艶を放っている。
「今週も来たぞ。待たせたか?」
マリエの姿を確認するや、ラディムは片手をあげて挨拶をした。
「べ、別に待ってなんかいません」
マリエは少し慌てたような声を上げる。
「殿下、マリエったら先ほどから殿下はまだか殿下はまだかって、落ち着きがなかったんですよ」
マリエの後ろから、教会の司祭が現れた。茶目っ気たっぷりな笑顔を浮かべている。
「ちょ、司祭様! 私そんなこと言っていません!」
マリエは司祭へ向き直ると、興奮した声を上げた。顔がわずかに紅潮している。
「ふふ、恥ずかしがって」
マリエの反応が面白いのか、司祭は悪戯っぽく笑った。
「司祭様ぁー」
少し涙声で、マリエは司祭へ抗議の声を上げた。
「ごめんごめん、じゃあ、殿下とごゆっくり―」
さんざんマリエを弄り倒した司祭は、手をひらひらとさせながら、再び奥へと引っ込んでいった。何しに出てきたのだろうか、あの人は。
「相変わらず面白い人だな、あの司祭は」
『生命力』持ちとして世界再生教の聖職者見習いとなったマリエの、直属の上司に当たる女性司祭。まだ二十代前半だろう若さだが、布教活動で結構な成果を上げたらしく、司祭の地位に就いていた。
言動の軽さとは違い、なかなか優秀な人物だとラディムは聞いている。
「私のことをからかってばかりなんです! ひどいですよね、殿下」
頬を膨らませ、不満の態度を隠そうとしないマリエ。だが、本気で怒っているわけではないことを、ラディムは知っている。マリエが事あるごとに、司祭様はすごい司祭様はすごい、と言っているのを見てきたからだ。
マリエは同じ女性として、若くして出世をしている司祭を尊敬しているようだった。
「ま、邪険にされるよりは良いではないか」
からかわれるのは、かわいがられていることの証左だ。決して悪いことではないだろう。尊敬する相手から気にかけてもらえ、マリエ自身まんざらでもない気持ちもあるはずだとラディムは思う。
「まぁ、そうなんですけどねぇ」
まだ不満が少し残っているのか、マリエは口をとがらせている。
「まぁ、ここで突っ立っていても仕方がない。奥へ行こう」
暖炉はあるものの、かなりの広さを誇る礼拝堂だ。外部と入口の扉一枚で直接つながっている部屋でもあるので、隙間風も入り込み、底冷えがひどい。さっさと暖かい部屋へ移動したかった。
「じゃあ、私の部屋へ行きましょうか」
マリエはラディムの手を取り、礼拝堂奥のマリエの自室へと向かった。マリエの手は温かかった。かじかんでがちがちのラディムの手にとって、マリエの手はまさに懐炉のように感じられた。
もう幾度となく訪れているため、勝手知ったるマリエの部屋、ラディムはいつも使う椅子を取り出し、座った。マリエも正対するように椅子を出し、座る。
「じゃ、さっそく先週の続きと行くか」
ラディムは提げていたバッグから、ランタンを取り出した。
「はい……。言われたとおり、ランタンに明かりを灯す魔術の練習を積んでおきました」
マリエもベッド傍からランタンを取り、手に持った。
先週から始めている、初級魔術の練習だった。ランタンに『生命力』を使って炎を灯す、というものだ。
「基本の魔術だとザハリアーシュも言っていた。まずはこいつを、完璧にしようか」
魔術を操る導師になるための育成プログラムを、世界再生教は二年前に作った。今、ラディムとマリエはその育成プログラムに沿った練習を積んでいる。ザハリアーシュからの勧めだった。最初のうちは定評のある方法で修練を積み、ある程度力が付いたら、個々のやり方に合わせて腕を磨くといいのではとの助言に従った形だ。
「すみません殿下。まだ私、殿下の足を引っ張ってばかりで」
ラディム自身はもうすでにランタン灯火の訓練は済ませている。魔術を学び始めたマリエに合わせて、復習のつもりで一緒に取り組んでいた。
そんなラディムのやり方に、マリエは恐縮しているようだった。ラディムの成長を妨げてしまうのではないか、と。
「構わない。魔術を学び始めたばかりだしな、マリエは。じきに一緒に研究ができるようになれば、私としては十分だよ」
ラディムとしては、誰かに教えるという行為が自身の魔術に対する理解をより深めてくれる事実に気づいたこともあり、マリエに足を引っ張られているという認識は全くなかった。それに、マリエが魔術を早く習得すれば、同じ目線で研究に取り組めるパートナーができるわけで、ラディムにとっても大いに利のある行為だった。
「ありがとうございます、殿下っ」
うれしそうにマリエははにかむ。
第一皇子としての立場から、ラディムは同年代の子供と触れ合える機会がほとんどなかった。そのため、このマリエとのひと時は、エリシュカをからかって遊ぶのと並んで、ラディムの重要な気分転換の手段になっていた。
「見ているので、魔術を実演してみてくれ」
ラディムはジッと、マリエの手元のランタンを注視した。
「はい。おかしなところがあったら、指摘をお願いしますね」
少し緊張した面持ちで、マリエは意識を集中しだした。
ランタンを持つマリエの手に、『生命力』が集まりだすのをラディムは感じる。やがて、ポンッと小さな音を立てて、ランタン内に火が灯った。
「うん、やはりマリエは筋がいい。ランタンを灯す魔術はもう卒業だな。私より早いぞ」
灯火までの時間、炎の勢い、どちらも問題がなかった。非常にうまく制御されているとラディムは思う。
ラディム自身が今のマリエのレベルに達するまで二週間程度はかかった。一週間足らずで成し遂げたマリエの魔術の才は、実際、かなりのものだった。
「そんな……。殿下が手取り足取り、丁寧に教えてくださるからですよ」
照れて顔を真っ赤にしながら、マリエは謙遜した。
「そういってもらえると、教えがいがあるよ」
まさに、打てば響く。実に教え甲斐のある弟子だった。
ミュニホフ周辺に雪が降ることはめったにない。ただし、強風が吹く日が多いので、体感ではかなり寒く感じられる。道行く人も、みなマフラーを巻き、耳まで覆える帽子をかぶり防寒対策をしていた。
この日も恒例の街の視察を終えたラディムは、ザハリアーシュ、エリシュカと別れて、世界再生教の教会へ向かった。視察後に教会へ寄り、マリエと魔術談義を楽しむのが恒例になっていた。
「マリエ、いるかー? うー、寒い寒い」
教会の礼拝堂へ入るや、ラディムはマリエを呼んだ。そのまま、かじかんだ手をこすりながら、マリエが来るのを待つ。
「あ、これは殿下、いらっしゃい」
呼びかけに応えて、すぐに礼拝堂の奥からマリエが現れた。
初めてミュニホフの街中で出会ってから半年、マリエのやせ細っていた身体は、普通の子供と同じくらいまで肉付いていた。ぼろぼろにすり切れた服ももう着ていない。庶民の子供が着る、色とりどりに刺繍が施されたかわいらしいドレスを着ていた。痛み放題だった黒髪も、今はきれいに梳かされ艶を放っている。
「今週も来たぞ。待たせたか?」
マリエの姿を確認するや、ラディムは片手をあげて挨拶をした。
「べ、別に待ってなんかいません」
マリエは少し慌てたような声を上げる。
「殿下、マリエったら先ほどから殿下はまだか殿下はまだかって、落ち着きがなかったんですよ」
マリエの後ろから、教会の司祭が現れた。茶目っ気たっぷりな笑顔を浮かべている。
「ちょ、司祭様! 私そんなこと言っていません!」
マリエは司祭へ向き直ると、興奮した声を上げた。顔がわずかに紅潮している。
「ふふ、恥ずかしがって」
マリエの反応が面白いのか、司祭は悪戯っぽく笑った。
「司祭様ぁー」
少し涙声で、マリエは司祭へ抗議の声を上げた。
「ごめんごめん、じゃあ、殿下とごゆっくり―」
さんざんマリエを弄り倒した司祭は、手をひらひらとさせながら、再び奥へと引っ込んでいった。何しに出てきたのだろうか、あの人は。
「相変わらず面白い人だな、あの司祭は」
『生命力』持ちとして世界再生教の聖職者見習いとなったマリエの、直属の上司に当たる女性司祭。まだ二十代前半だろう若さだが、布教活動で結構な成果を上げたらしく、司祭の地位に就いていた。
言動の軽さとは違い、なかなか優秀な人物だとラディムは聞いている。
「私のことをからかってばかりなんです! ひどいですよね、殿下」
頬を膨らませ、不満の態度を隠そうとしないマリエ。だが、本気で怒っているわけではないことを、ラディムは知っている。マリエが事あるごとに、司祭様はすごい司祭様はすごい、と言っているのを見てきたからだ。
マリエは同じ女性として、若くして出世をしている司祭を尊敬しているようだった。
「ま、邪険にされるよりは良いではないか」
からかわれるのは、かわいがられていることの証左だ。決して悪いことではないだろう。尊敬する相手から気にかけてもらえ、マリエ自身まんざらでもない気持ちもあるはずだとラディムは思う。
「まぁ、そうなんですけどねぇ」
まだ不満が少し残っているのか、マリエは口をとがらせている。
「まぁ、ここで突っ立っていても仕方がない。奥へ行こう」
暖炉はあるものの、かなりの広さを誇る礼拝堂だ。外部と入口の扉一枚で直接つながっている部屋でもあるので、隙間風も入り込み、底冷えがひどい。さっさと暖かい部屋へ移動したかった。
「じゃあ、私の部屋へ行きましょうか」
マリエはラディムの手を取り、礼拝堂奥のマリエの自室へと向かった。マリエの手は温かかった。かじかんでがちがちのラディムの手にとって、マリエの手はまさに懐炉のように感じられた。
もう幾度となく訪れているため、勝手知ったるマリエの部屋、ラディムはいつも使う椅子を取り出し、座った。マリエも正対するように椅子を出し、座る。
「じゃ、さっそく先週の続きと行くか」
ラディムは提げていたバッグから、ランタンを取り出した。
「はい……。言われたとおり、ランタンに明かりを灯す魔術の練習を積んでおきました」
マリエもベッド傍からランタンを取り、手に持った。
先週から始めている、初級魔術の練習だった。ランタンに『生命力』を使って炎を灯す、というものだ。
「基本の魔術だとザハリアーシュも言っていた。まずはこいつを、完璧にしようか」
魔術を操る導師になるための育成プログラムを、世界再生教は二年前に作った。今、ラディムとマリエはその育成プログラムに沿った練習を積んでいる。ザハリアーシュからの勧めだった。最初のうちは定評のある方法で修練を積み、ある程度力が付いたら、個々のやり方に合わせて腕を磨くといいのではとの助言に従った形だ。
「すみません殿下。まだ私、殿下の足を引っ張ってばかりで」
ラディム自身はもうすでにランタン灯火の訓練は済ませている。魔術を学び始めたマリエに合わせて、復習のつもりで一緒に取り組んでいた。
そんなラディムのやり方に、マリエは恐縮しているようだった。ラディムの成長を妨げてしまうのではないか、と。
「構わない。魔術を学び始めたばかりだしな、マリエは。じきに一緒に研究ができるようになれば、私としては十分だよ」
ラディムとしては、誰かに教えるという行為が自身の魔術に対する理解をより深めてくれる事実に気づいたこともあり、マリエに足を引っ張られているという認識は全くなかった。それに、マリエが魔術を早く習得すれば、同じ目線で研究に取り組めるパートナーができるわけで、ラディムにとっても大いに利のある行為だった。
「ありがとうございます、殿下っ」
うれしそうにマリエははにかむ。
第一皇子としての立場から、ラディムは同年代の子供と触れ合える機会がほとんどなかった。そのため、このマリエとのひと時は、エリシュカをからかって遊ぶのと並んで、ラディムの重要な気分転換の手段になっていた。
「見ているので、魔術を実演してみてくれ」
ラディムはジッと、マリエの手元のランタンを注視した。
「はい。おかしなところがあったら、指摘をお願いしますね」
少し緊張した面持ちで、マリエは意識を集中しだした。
ランタンを持つマリエの手に、『生命力』が集まりだすのをラディムは感じる。やがて、ポンッと小さな音を立てて、ランタン内に火が灯った。
「うん、やはりマリエは筋がいい。ランタンを灯す魔術はもう卒業だな。私より早いぞ」
灯火までの時間、炎の勢い、どちらも問題がなかった。非常にうまく制御されているとラディムは思う。
ラディム自身が今のマリエのレベルに達するまで二週間程度はかかった。一週間足らずで成し遂げたマリエの魔術の才は、実際、かなりのものだった。
「そんな……。殿下が手取り足取り、丁寧に教えてくださるからですよ」
照れて顔を真っ赤にしながら、マリエは謙遜した。
「そういってもらえると、教えがいがあるよ」
まさに、打てば響く。実に教え甲斐のある弟子だった。
0
お気に入りに追加
291
あなたにおすすめの小説
《完結》転生令嬢の甘い?異世界スローライフ ~神の遣いのもふもふを添えて~
芽生 (メイ)
ファンタジー
ガタガタと揺れる馬車の中、天海ハルは目を覚ます。
案ずるメイドに頭の中の記憶を頼りに会話を続けるハルだが
思うのはただ一つ
「これが異世界転生ならば詰んでいるのでは?」
そう、ハルが転生したエレノア・コールマンは既に断罪後だったのだ。
エレノアが向かう先は正道院、膨大な魔力があるにもかかわらず
攻撃魔法は封じられたエレノアが使えるのは生活魔法のみ。
そんなエレノアだが、正道院に来てあることに気付く。
自給自足で野菜やハーブ、畑を耕し、限られた人々と接する
これは異世界におけるスローライフが出来る?
希望を抱き始めたエレノアに突然現れたのはふわふわもふもふの狐。
だが、メイドが言うにはこれは神の使い、聖女の証?
もふもふと共に過ごすエレノアのお菓子作りと異世界スローライフ!
※場所が正道院で女性中心のお話です
※小説家になろう! カクヨムにも掲載中
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる