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終章   エルネスティーネ、彼女の選んだ決断と未来

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「……く様?」
「エル!!」

 ぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅ

 まるで雑巾絞り最中の雑巾になってしまったのかと思う程の力でよ。
 ジークヴァルト様は万力の力を込めて目覚めたばかりの私を掻き抱く。

 全身の至る所でミシミシと軋む音とこれは物凄くい、痛い!?
 呼吸もままならない程に痛い抱擁って全くロマンティックの欠片すらない。
 
 待って、その前に私とジークヴァルト様の間にロマンティックな関係云々な要素ってあったのかしら。

 いやない。
 
 譬えロマン云々の要素があったとしてもこの抱擁は頂けない。
 だから私は、そうこれは致し方がないの。
 うん、私は何も悪くはない。
 悪いのはジークヴァルト様の馬鹿力。
 私はただ一言「痛い」と発する心算だったの。
 なのに漏れ出た声は――――。

「ぐふぁっ……!?」

 全く乙女らしさの欠片のないものだった。
 また侯爵令嬢にあるまじき呻き声。
 もう穴があったら、いやいやここがゴツゴツの岩だらけの山であったとしてもそこは根性で掘ってみせましょう。      
 穴が完成した暁には暫くの間真っ暗闇の中で籠ってみせる!!
 そのくらい9歳の乙女の心は地味に傷ついていると言うのに……。

「エル、エル間に合って良かった!! 俺はもう二度と貴女を失いたくはない!!」

 麗しのイケメン騎士様は薄らと涙を滲ませ?
 いえ違うわよ。
 エメラルドグリーンの双眸よりしっかりと涙を流して感涙しておられた。
 おまけにその涙が差し込む光の加減でキラキラと光を放ち、イケメン具合が何時もよりも三割程増しているわね。
 
「ぐふぇっ⁉」

 そこからの熱い抱擁ならぬ再びの雑巾絞りに私はまた乙女らしかぬ呻きを漏らす。

 もう本当に嫌。
 目覚めて最初のシーンがこんなのって本当に受け入れ難い。

 エルネスティーネ、お願いだから目覚めるシーンくらいもう少し乙女らしさを演出してくれてもいいでしょ……って心の中で独り言ちる。


『野猿令嬢なのだろう。そなたとジークならばこれが正しいのでは?』


 心の奥で朗らかに微笑んでいるエルネスティーネの姿があった。
 
 あぁ本当に還ってきたのね。

 過去のエルネスティーネとイルメントルート様の力とその願いを受け入れた私は、としてこの最終決戦の場へ還ってきたのだと確信した。

 これより先トルテリーゼとその贄となったアーデルトラウトの魂と向き合うのは過去のエルネスティーネではなく、現在を生きるエルなの。
 
 さぁ覚悟は出来たかしら二人共!!
 今からこのエルのターンが始まるのだからね。
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