110 / 140
終章 エルネスティーネ、彼女の選んだ決断と未来
4
しおりを挟む転移して最初に視界に入った景色は……って瘴気が充満している故にほぼ何も見えない。
青紫の、そう王宮の森の中で感じたものよりも瘴気の濃度は数倍濃い。
森の中が霞ならばこの場所はまさに猛毒ガスで充満されていると言っても過言ではない。
恐らく普通の人間ならば、いえ動植物達も一瞬で死ぬ若しくは廃人になっているでしょうね。
はぁ、二人のお兄様達とジークヴァルト様を強制的に王宮へ戻ったと同時に眠らせておいて正解だわ。
アルお兄様も煩いからついでに眠らせていたわ。
本当に溺愛度が重いと色々と大変。
お父様と王陛下だけでも十分ウザいと感じたのよ。
でも何れの想いも全ては私と言う存在を愛おしんで下さっているからだ。
とても有り難いし幸せな事なのだと感謝していてよ。
そして私は私を愛する人達の為にもここより逃げる事は許されない。
とは言え私自身身の内に秘められたるイルメントルートお母様の力と自身の持つ力を合わせた神の力。
これが果たしてトルテリーゼに何処まで対抗できるかはっきり言ってわからない。
肉体は神力で強化をしているとは言え元は脆弱な人間の器なのだから、この場所に長居をしていい訳ではない。
まぁ最悪肉体が駄目になれば本来の精神体で勝負するしかないわね。
叶うならばこの身体のまま皆の許へ帰りたい。
でも世界を形成している大地は既に蒼く変色し、上を見上げれば大気はどんよりとした禍々しくも青紫の分厚い雲でしっかりと覆われている。
本当に一条の、陽光さえもこの地へは届かない。
生命を育む陽光を遮られ、浄化する事も出来ない不毛の地イルクナー。
それでもクレメンティーネお母様の封印によってトルテリーゼ自身はまだ辛うじて封じられている。
だけど千年もの長き時により歪みきった彼女の思念までもはどうやら封じられなかったみたいね。
今千年ぶりに新たなる器を手に入れたって訳?
「そうでしょうトルテリーゼ。いえ貴女の名は……」
私は気配を察知し祠近くに立つ者へと振り返る。
「私はお前を憎みそしてお前自身になりたい者」
ギラギラと強く愛憎の籠る眼差しで私を睨みつける存在は女性。
正確に言えば私と彼女は初対面。
正式に会った事もなければ紹介をされた事もない。
ただ私はある理由で彼女を見知っていると同時に怒りをも抱いていた。
そう歪められた空間において彼女は私からあるものを奪ったのだから……。
今の私にしてみればどうでもいい……と言うのかほんの少しだけ微妙な感覚なのかもしれない。
また彼女を浄化しトルテリーゼ引き離したとしてもだ。
多分心から彼女とは分かり合えないのやもしれない。
本当にある意味人間の持つ感情は厄介極まりない。
「名乗りたくないのなら私が当ててみましょうか」
えぇ貴女の名は――――。
22
お気に入りに追加
2,693
あなたにおすすめの小説
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
婚約者を想うのをやめました
かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。
「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」
最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。
*書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。
【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです
たろ
恋愛
騎士であった夫が突然川に落ちて死んだと聞かされたラフェ。
お腹には赤ちゃんがいることが分かったばかりなのに。
これからどうやって暮らしていけばいいのか……
子供と二人で何とか頑張って暮らし始めたのに……
そして………
【完結】この胸が痛むのは
Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」
彼がそう言ったので。
私は縁組をお受けすることにしました。
そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。
亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。
殿下と出会ったのは私が先でしたのに。
幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです……
姉が亡くなって7年。
政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが
『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。
亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……
*****
サイドストーリー
『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。
こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。
読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです
* 他サイトで公開しています。
どうぞよろしくお願い致します。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる