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第五章 忘れられし過去の記憶
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しおりを挟む決着をつけると決めたものの先ず神である妾とリーゼは人間達の様に武器を用いての戦いはしない。
また感情のままに争う行為程低俗なものはない。
妾達神と呼ばれし一族は人間や他の生命体より優れたる存在。
全ての者より超越した存在、至高なる者が神なのである。
抑々妾達には感情となるものが存在しない。
リーゼの、妾を慕うてくれる想いが異質であり新鮮だったのだ。
故に妾自身もリーゼを寵愛したのやもしれぬ。
「決着? お姉様は私を滅すると仰るのですか。実の妹でありイルメントルート、貴女の唯一の半身である私を滅すると?」
信じられないと、リーゼはふるふると頭を左右に振る。
だが同時に自信に満ちた意志の強い瞳で以って妾を見据えるのだ。
妾にリーゼを滅する事は出来ぬ……とな。
随分と侮られたものだ。
成体へと進化を遂げたばかりのリーゼに侮られる様な弱き存在ではない。
確かに大姉様や大兄様方の様な母と父に次ぐ力を妾は有してはいない。
抑々神々の中で争い等起こりようもなかったのだ。
つい最近までは……な。
故にお互いの力量と言うものすら関心がない。
また神の力に強弱は関係はない。
父より託されし世界を清く正しく導き育てる事こそが妾達神の生きる意味なのだから……。
しかし今その平和は目の前にいるリーゼによって破壊されてしまったのだろう。
正直に言えば神界の現状が気にならない訳でもない。
神界にいただろう母と父、多くの兄弟神の安否が気になる。
とは申せ闇を纏うリーゼがここにいると言う現実が全てを物語ってもいる。
恐らく誰もリーゼを止める事は不可能だったのだと――――。
これは本気を出さなければ妾だけでなく妾の世界、いやありとあらゆる全てが虚無へと誘われる。
妾の命を対価に果たして何処までリーゼを滅する事が出来るのか。
譬え滅する事が出来なくともだ。
妾の全てを懸けてでもリーゼの力を封じそうして未来へ、リーゼを滅する者が現れるまでの時間稼ぎをしなければいけない!!
「お姉様、とても怖いお顔をなさっておいでですわ」
「それをそなたが申すのか」
「どうかご安心を。私は貴女を決して滅しはしない。愛しき存在なのですもの。だから少しだけ大人しく、えぇ貴女の目の前で全てが終わるまで静かにして頂くだけですわ」
「戯けた事を申すのも大概にしろリーゼ。観念をするのはそなたの方ぞ」
そうしてお互いに、ほぼ同時に大地を蹴れば空高く昇っていく。
あの場で気を練り上げる事も出来たのだがしかし傍にはオズがいた。
二柱同時に気を練り上げれば問答無用でその場にいるだろう者達は一瞬にして死してしまうだろう。
地上にいるオズがゴマ粒の様に見えるくらい高く飛翔したこの場所ならば、それでも多少の被害はあるやもしれぬが先ず死する事はないだろう。
「本当にあの様な屑に御心を傾ける等あってはなりませんわ」
私が今直ぐ目を覚まさせて見せます……とリーゼが自身の気を練り上げていく。
「余り姉を見縊るではないぞ」
そう妾は何としてもだ。
妾の生命を賭してでもオズとこの世界を護ってみせる!!
こうして妾とリーゼの生死を賭けた戦い……と言うものが始まったのだ。
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