【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki

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第五章  忘れられし過去の記憶

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「早う答えぬか!!」

 妾は未だオズに対し臨戦態勢でいるリーゼを厳しく誰何すいかした。

「おい危ないだろうが!! お前は俺の後ろで護られていろ!!」

 全く何処までも頓珍漢なオズの物言いに妾は呆れつつも何処か、そう心がふわふわと温かく感じるこの感情は何なのか。
 時間があればオズに問うてみたい。
 だが今はその時ではない。
 
「オズそなたの方こそ引っ込んでおれ。これはそなたの様な人間には解決出来ぬ問題ぞ」

 今は名の知らぬ感情よりもリーゼだ。
 そしてオズ、そなたは今は邪魔であるぞ。
 命を大事にせねばいけないのは妾ではなくオズ。
 ところが何故かオズは少しも退こうとしない。

「何を言うかと思えばはぁ、お前も俺と同じ人間だろうが。然も俺よりもか弱い女だぞ。お前の様な女は男に護られているのが一番だ」
「はあ?」

 その一言にカチンときた。
 何故に女は男に護られなければならぬ。
 抑々妾は雄雌関係なく皆平等という精神の許で生命を創ったのだぞ!!
 妾の預かり知らぬ所でよもや男尊女卑の思想が蔓延はびこっているとは思わなかったわ。

「オズよ、先ずそなたの勘違いを正すとしよう」
「勘違いってなんだ。それよりも今は――――」
「妾は人間にあらず。この世界を育みし神であるぞ」

 反論するオズの言葉へ妾は被せる様に自身の正体を明らかにした。
 全く以って面倒な雄だ。
 妾の正体を知りこれで少しは大人し――――。


 パチン


「いだい……!?」

 何故にデコピンをされなければいけない。
 妾はオズの行動に理解が追い付かないと言うか、最早理解不能だ。
 そこは普通に創造神である妾を崇め平伏……されたい訳でもないのだがな。
 とは申せデコピンは断じて容認できぬ!!

「妾は神……」
「それがどうした」
「いやだから……!!」
「ルルが神だから崇め敬えと言うのか?」
「違う!!」

 誰もその様な事を望んではおらぬ。

「では何故今正体をばらす」

 それは――――。

「あの者はお前の知るコリンナと言う娘であって娘ではない」

 またこれ以上名の知れぬ感情を知りたいようで知りたくはない。

「ああ、恐らくはそうだと思った。元のコリンナは大人しい娘だからな」
「気づいて……」
「そこは普通に気が付くだろう。行き成り現れたかと思えば問答無用でこの俺を思いっきり吹っ飛ばしたのだからな。アレはコリンナであってコリンナではない。そしてお前は、ルルはアレの正体を知っているのだろう」

 確かに知っている。
 正確に言えばかつて知っていた……のやもしれぬ。
 今のリーゼは昔の、私の知るトルテリーゼではない。

「はぁ、本当に何処までもお前は邪魔ね。何時までも私の愛する姉様の傍で話しているのではない。今直ぐ死ぬがよい下等な人間――――」
「止めよリーゼ⁉」

 リーゼは怒りに身を任せながらもピンポイントでオズへと黒剣で切り付けようとする。
 妾は咄嗟にオズへ結界を展開させればリーゼからの攻撃を躱す。

「ルルお姉様これ以上邪魔をなさらないで」
「何故にこの様な行いをするのだ」
「まぁお姉様は私の唯一。私の番う者。そのお姉様へ群がる下等で下劣な蠅を打ち払うのは私の義務ですわ」

 うっとりとした眼差しでそう語るリーゼに違和感しか感じられない。

 確かに我ら神々は兄妹であり番う事も出来る。
 だがそれは稀な関係。
 抑々神とは全てを超越した存在。
 そこへ生命体の持つ性欲、いや繁殖行為自体神には必要とはされない。

 何故なら神を創造するのは混沌の母と大神である父のみ。

 また性別も特に問題視される事はない。
 妾達は男神であり女神でもある。
 妾の様に母より生み出された姿でいる者もおれば気分により性別を変換させる者もおる。
 故に番衝動と言うものも妾には存在しない。

 妾にはリーゼの気持ちを理解出来ないばかりではなく受け入れる事も出来ない。

 それよりも何よりも妾の愛しい世界を壊す事に憤りさえ感じておる。
 あぁそうだ、妾はリーゼの行いに腹を立てておるのだな。


「お姉様?」
「リーゼ」
「はいお姉様」
「妾の世界を壊すのではない。いやこの世界だけではないオズもだ。そしてコリンナの身体も返せと言いたいがコリンナの魂はどうしたのだ。その肉体よりコリンナの魂の光は感知出来ぬ。また再度問う。何故そなたはここにいる!!」
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