99 / 140
第五章 忘れられし過去の記憶
11
しおりを挟む「早う答えぬか!!」
妾は未だオズに対し臨戦態勢でいるリーゼを厳しく誰何した。
「おい危ないだろうが!! お前は俺の後ろで護られていろ!!」
全く何処までも頓珍漢なオズの物言いに妾は呆れつつも何処か、そう心がふわふわと温かく感じるこの感情は何なのか。
時間があればオズに問うてみたい。
だが今はその時ではない。
「オズそなたの方こそ引っ込んでおれ。これはそなたの様な人間には解決出来ぬ問題ぞ」
今は名の知らぬ感情よりもリーゼだ。
そしてオズ、そなたは今は邪魔であるぞ。
命を大事にせねばいけないのは妾ではなくオズ。
ところが何故かオズは少しも退こうとしない。
「何を言うかと思えばはぁ、お前も俺と同じ人間だろうが。然も俺よりもか弱い女だぞ。お前の様な女は男に護られているのが一番だ」
「はあ?」
その一言にカチンときた。
何故に女は男に護られなければならぬ。
抑々妾は雄雌関係なく皆平等という精神の許で生命を創ったのだぞ!!
妾の預かり知らぬ所でよもや男尊女卑の思想が蔓延っているとは思わなかったわ。
「オズよ、先ずそなたの勘違いを正すとしよう」
「勘違いってなんだ。それよりも今は――――」
「妾は人間に非ず。この世界を育みし神であるぞ」
反論するオズの言葉へ妾は被せる様に自身の正体を明らかにした。
全く以って面倒な雄だ。
妾の正体を知りこれで少しは大人し――――。
パチン
「いだい……!?」
何故にデコピンをされなければいけない。
妾はオズの行動に理解が追い付かないと言うか、最早理解不能だ。
そこは普通に創造神である妾を崇め平伏……されたい訳でもないのだがな。
とは申せデコピンは断じて容認できぬ!!
「妾は神……」
「それがどうした」
「いやだから……!!」
「ルルが神だから崇め敬えと言うのか?」
「違う!!」
誰もその様な事を望んではおらぬ。
「では何故今正体をばらす」
それは――――。
「あの者はお前の知るコリンナと言う娘であって娘ではない」
またこれ以上名の知れぬ感情を知りたいようで知りたくはない。
「ああ、恐らくはそうだと思った。元のコリンナは大人しい娘だからな」
「気づいて……」
「そこは普通に気が付くだろう。行き成り現れたかと思えば問答無用でこの俺を思いっきり吹っ飛ばしたのだからな。アレはコリンナであってコリンナではない。そしてお前は、ルルはアレの正体を知っているのだろう」
確かに知っている。
正確に言えば嘗て知っていた……のやもしれぬ。
今のリーゼは昔の、私の知るトルテリーゼではない。
「はぁ、本当に何処までもお前は邪魔ね。何時までも私の愛する姉様の傍で話しているのではない。今直ぐ死ぬがよい下等な人間――――」
「止めよリーゼ⁉」
リーゼは怒りに身を任せながらもピンポイントでオズへと黒剣で切り付けようとする。
妾は咄嗟にオズへ結界を展開させればリーゼからの攻撃を躱す。
「ルルお姉様これ以上邪魔をなさらないで」
「何故にこの様な行いをするのだ」
「まぁお姉様は私の唯一。私の番う者。そのお姉様へ群がる下等で下劣な蠅を打ち払うのは私の義務ですわ」
うっとりとした眼差しでそう語るリーゼに違和感しか感じられない。
確かに我ら神々は兄妹であり番う事も出来る。
だがそれは稀な関係。
抑々神とは全てを超越した存在。
そこへ生命体の持つ性欲、いや繁殖行為自体神には必要とはされない。
何故なら神を創造するのは混沌の母と大神である父のみ。
また性別も特に問題視される事はない。
妾達は男神であり女神でもある。
妾の様に母より生み出された姿でいる者もおれば気分により性別を変換させる者もおる。
故に番衝動と言うものも妾には存在しない。
妾にはリーゼの気持ちを理解出来ないばかりではなく受け入れる事も出来ない。
それよりも何よりも妾の愛しい世界を壊す事に憤りさえ感じておる。
あぁそうだ、妾はリーゼの行いに腹を立てておるのだな。
「お姉様?」
「リーゼ」
「はいお姉様」
「妾の世界を壊すのではない。いやこの世界だけではないオズもだ。そしてコリンナの身体も返せと言いたいがコリンナの魂はどうしたのだ。その肉体よりコリンナの魂の光は感知出来ぬ。また再度問う。何故そなたはここにいる!!」
22
お気に入りに追加
2,678
あなたにおすすめの小説
【完結】この胸が痛むのは
Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」
彼がそう言ったので。
私は縁組をお受けすることにしました。
そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。
亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。
殿下と出会ったのは私が先でしたのに。
幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです……
姉が亡くなって7年。
政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが
『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。
亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……
*****
サイドストーリー
『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。
こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。
読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです
* 他サイトで公開しています。
どうぞよろしくお願い致します。
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)
婚約者を想うのをやめました
かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。
「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」
最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。
*書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる