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第四章 指し示される道
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しおりを挟むドドォォォォオオオォォォォォォン!!
余りの大きな音に吃驚して目が開いたと同時に視界に入ってきたのは……。
砂の大海原と同じ金色に近い黄色に、約10mはあろうかと思うくらい大きな身体。
手足はなく大きな蛇の様で蛇ではない?
頭は……果たして頭と呼んでいいのかしら。
でも一番先端で、上へと掲げている部分はのっぺりとした大きな亀の様な形をしている。
だからと言って目や鼻と言う顔らしいものは存在しない。
そう唯一存在しているものは、ぱっくりと開く大きな口。
然も口の中は血の様に真っ赤で見ているだけで気持ちが悪い。
うねうねとうねる身体には薔薇とはまた違う棘が無数に生えている。
身体が大きいから棘もその分一本一本が太くて大きい。
刺されれば痛いだけではなさそうね。
そんな大きな巨体の化け物が少し動くだけでサラサラの砂は煙の様に立ち上がれば、私達の視界は何も見えなくなってしまう。
まるでそれを見越して態と砂煙を絶たせているかの様に、視界を遮られ苦しんでいる私達へ向かってシュルシュルと奇妙な音共に襲い掛かってくる!?
「これでも喰らえ!!」
ラインお兄様は極大の雷を化け物へ向けて投げ落とされる。
ギャっ⁉
バシィィィィィィン!!
「おいおいこれが効かないのか!?」
「お兄様!?」
極大の雷撃に対しほんの少しの痛みしか感じなかっただろう化け物は、仕返しとばかりにラインお兄様へ尻尾を勢いをつけて叩きつける。
間一髪でお兄様はひょいと飛んでその攻撃を躱された。
「エル、お願いだからジークと一緒に離れていてね。でなければ怪我をしてしまうから……って、次はどう――――だって言うのかなって!!」
ラインお兄様は素早く雷属性に炎を纏わせた剣で化け物へと切りかかられる。
ぶにゅ?
「何だよ。ゴムの様な身体だなんて反則だろってうわぁ!?」
然も粘り気のある身体の様で、ラインお兄様は気持ち悪いと言いながら一旦化け物より距離を取られる。
「ライン無理はするな」
「わかっているけれど、注意を逸らせって言ったのはエーベルだろう」
「う、有無……」
そこ、口論している場合ではないですってお兄様!!
化け物に雷属性や炎属性はほぼ効かない。
なのにどちらもラインお兄様の得意とされる魔法。
一方エーベルお兄様は雷属性のみだけれども剣の腕は超一流。
ん、身体が粘々しているのだったら――――。
「凍らせるのはどうかしら? あ、でも氷属性はお兄様方は不得意でした……よね」
失言でした。
ごめんなさいお兄様。
断じて嫌味なんかで言葉にした訳ではないです、はい。
そして当然私はその何れもどころか何も出来ない。
一体何の為に金の玉を引き当てたのよぉ。
もっとこう、物語の様に仲間の役に立てられるものが私にあれば……。
「――――俺の得意魔法は氷属性ですよエル。勿論水も扱えます」
完全にその存在を忘れていた。
そういたのだわもう一人。
好感の持てない人の存在ってつい空気になりがちな、いやいや婚約云々がなければ普通に親戚としてはOKよ。
「嘘?」
「この様な場面で虚言を言ってどうするのですエル」
確かに!!
「ではあの化け物を凍らせる事が出来ますか?」
得意と言われてもどれ程の魔力があるのかなんて知らないもの。
小さな氷の結晶を一つを作る事しか出来なくとも、その人にとってそれがベストならば得意と言っても間違いではない。
お願いだからもう少し、せめてあの大きな頭と口くらい凍らせられる程の魔力はあって欲しい……な。
切実に、現在進行形で私達全員の命が懸かっているのだからと必死の形相で私はジークヴァルト様の顔を見つめたわ。
お姫様抱っこをされているから距離的に近過ぎて少し辛い。
「エルの、姫の願いならば喜んであの化け物を見事氷漬けに致しましょう」
キラキラスマイルに思わず胸がどきんと打つのは勿論気の所為……よね。
多分私自身目覚めてから、うん本当に色々とあり過ぎて少し疲れているからだと思う。
私はこれ以上ジークヴァルト様のお顔を見る事が出来なくなって俯いてしまった。
胸のどきどきが煩くて、何故かジークヴァルト様に聞かれたくなくて、ついでに顔も見られたくなくて咄嗟にぎゅっと力一杯目を閉じた。
「おーいそこ、このクソ忙しい時に何で花弁を散らばせているのかな。今絶賛戦闘中なのだよ。その桃色オーラをって言うかさ、俺の可愛いエルにこれ以上ちょっかいを出すなジーク!!」
「そうだ、任務中だぞ」
「ち、ちが……!?」
「婚約者なのですからこれくらいは普通です。何も疚しい事はしておりませんよ」
「な、なな、やま……⁉」
いやいやいやいや何がって言うかよ。
私と貴方は何もっ、そう一切関係なんてないのですからね!!
お兄様達もこれ以上変な事を言わないで!!
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