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第四章  指し示される道

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 本当に何処まで歩いても砂砂砂。
 靴の中は当然だけれどワンピース、ううん下着の中まで砂が入っているみたいで気持ち悪い。

 口の中までじゃりじゃりしているし、あぁ思いっきり冷たいお水で思い存分嗽をしたい!!

 おまけに何なの。
 この射す様な日差し。
 普通に王宮の地下へ行くと思っていたから、当然今は帽子もなければ日傘なんてものはない。
 これって確実に日焼けするでしょ。
 無事に部屋へ戻った時真っ赤に日焼けをした姿をテアに見つかればきっとお小言だけでは終わらない。

「大丈夫ですかエル。日差しをガードする為に防御結界を張っていますが、あぁそろそろ歩くのもお辛いでしょう。
どうぞ私の背へ凭れて下さい。私がしっかりとおぶって差し上げましょう」
「――――っ⁉」

 な、何何何何何言っているのこの人!?

 日差しをガード……ってそれは理解出来るし有り難い。
 疲れている上にテアのお小言は正直に言って辛過ぎるもの。

 何故私が初対面の人――――って訳でもないのだけれどでもっ!!

 然も家族でもない男性の背におぶわれなければいけないのよ!!


 そういうものってお父様若しくはアルお兄様ならば家族だから理解は出来るわ。
 お兄様方は……と想像しつつちらりとラインお兄様とエーベルお兄様を交互に見る。

 駄目、ギリとかではなく王子様と言うご職業の時点でアウトよ。

 ふるふると力なくかぶりを左右に振ってしまった。
 それを見ていたお兄様達は――――。

「エル、俺は何時でも構わない。何なら今直ぐにでもおぶってやろう」

 エーベルお兄様、何時になく食い気味ですね。
 寡黙なお兄様は何処へお散歩に行かれましたの。

「いやいやエーベルよりも俺の方がいいよねエル」

 にこやかに、そして颯爽とこちらへ向かってくるラインお兄様。
 一体何を基準にお兄様がいいのでしょうか。
 それよりも警戒とやらは宜しいのかしら。

「何を仰るかと思えばですね。この際はっきりと申し上げますがエルの婚約者である俺が適任です。エルの愛らしくも可愛いお尻を支えるのは――――」
「馬鹿あああああああああ!!」

 思いっきりぶんぶんと手を振り解こうと暴れたのだけれど、ジークヴァルト様が手を絶対に離してくれる筈がない。

「この手だけは何があろうとも離しませんよエル」

 爽やかな笑顔でそう宣う貴方が一番変態よぉ。
 それでもって私にとって一番危険な存在なのではないの!!

 そう思い至る私は正しいと思う。


 はぁ本当に嫌。
 9歳とは言え私はもう立派なレディなの。
 なのにレディのお尻を支えるだなんて……絶対にありえない!!

 ぷんすかと怒りながら強引に進もうとした時だった。


「――――ジーク、エルを頼む」
「了解です殿下」
「え、なっ、きゃああああああああああ⁉」

 それは行き成りだった。
 私の身体がふわりと宙に浮けばよ。
 ジークヴァルト様にお姫様だっこってこれはこれで物凄く恥ずかしいぃぃぃ。


「来るぞ!!」
「ライン注意を逸らせてくれ」
「なるべく早く仕留めてよエーベル」

 凄まじい轟音と共に砂煙が舞い上がる。

「けほっ!?」
「大丈夫ですかエル」
「だ、い……」
「これで鼻と口を覆っていて下さい。そして目はしっかりと閉じていて。大丈夫。絶対に貴女を護りますので」

 私は手渡されたハンカチで言われた通り鼻と口を覆う。
 とは言えこの砂煙と砂塵で目と喉が痛い。
 でも今はそんな文句何て言っていられない。
 
 
 私達の行く先を阻む様に現れたのは――――。

『ギュォォォォオオオオオオオン』

 大きな雄叫びを上げる見た事のない化け物だった。
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