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第三章 別離
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しおりを挟む私は少し離れた所で二人の戦う様子を見ていたわ。
然も攻撃を行う前に大神官長様は重防御結界を張られていたのは言うまでもない。
とは言え頑強な重防御結界にも拘らず、あの二人の攻撃の凄まじさが結界を通して振動で伝わってくる。
また同時に先日の攻撃なんて本当にあの化け物にとってお遊びだったと酷く納得もさせられる。
一進一退、どちらも負けてはいない。
そして王族だけが扱える雷属性の魔法をどうして大神官長様が……と言う突っ込みも、ううん少しの呼吸すらも許されない様な激しい攻防が続いていく。
短くて長い。
長くて短い戦い。
様々な魔法って、本当に見た事のない力で大神官長様は攻撃を行っていらっしゃる。
また化け物も負けじとそれ以上に大神官長様へとあらゆる反撃で対抗する。
空?空間全体が二人の放つ魔法で様々な色へと変化している。
私はその中で何も出来ない、大神官長様の役に立つ事の出来ないもどかしさにやきもきしたわ。
でも魔法も使えない私が大神官長様の傍近くにいるだけできっと邪魔になる筈。
ここは大神官長様が張ってくれた結界の中で大人しく見ているしかない。
「――――⁉」
最初に地面とも呼べない闇の空間の中で膝を地へと着けたのは大神官長様だった。
「情けない。これしきの攻撃に根を上げるとは、どうやら長く生き過ぎたのやもしれぬ」
『何時までも世界の理を曲げ、人の世に長居をした愚かな心の所為ですね。やはりあの御方とは違う。あの御方は貴女とは違い、世界を制するのに相応しい御方です』
化け物のうっとりと恍惚とした表情と物言いに腹立たしさを抱く。
それと同時に何故か、そう何故なのか悲しみが、心を締め付ける様な哀れみが心の中へと広がっていく。
何故!?
どうして私があの化け物をほんの少しでも可哀想だって思わなければいけないの!!
大変なのは大神官長様なの!!
このままでは大神官長様が……。
「貴女は一体何を望むのです。そしてその望みはあの者によって強制的に叶えられれば貴女は満足するのですか? 貴女の望む心は強制的に手に入れる事により、それで貴女自身は幸せになるのですか。真に愛する者がいるとわかっているのにそれでも心を捻じ曲げ手に入れたい――――」
『……さい!! 煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩いぃぃぃぃぃ!! お前に一体何がわかる!! 何もかも恵まれないのは環境だけではない。どれ程に努力をしても没落する家に借金地獄な毎日。生きていく為にただ働くしかなかった。ずっと呪われし一族と呼ばれ続け、どの様に徳を積もうともお前達神官が手を差し出してくる事はなかった。そんな地獄の中で私は漸く巡り合ったのだ。たった一人。私を一人の人間として見てくれる者にだ!! そうあの人は私だけのもの。絶対にお前に渡しはしない!! 今度こそだ。そう今度こそあの御方の力で私は誰よりも幸せになるのだから邪魔をするなああああああああああ』
血を吐く様な言葉と共に触手が一斉に大神官長様へと伸びていく。
ダメ!!
これ以上は!!
やめてっ、大神官長様が死んで――――。
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