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第三章 別離
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しおりを挟む当然俺達は年齢が離れすぎている前に、エルはまだ生まれたばかりの赤ん坊。
何も出来ないと言うか、そこは泣いているエルをあやしているだけだったのかもしれない。
それでも俺はエルの笑顔が今でも、そしてこれからも一番大好きで大切にしたい。
何よりも一番に護りたいと思う程に……ね。
父上はエルを思い、彼女の運命の番を探そうと躍起になっていると言うかもう最近では意地だな。
でも何よりエル、皆が君を大切に思うからなのだよ。
あぁ話が少し逸れたね。
ジークも漏れなくエルを前にした瞬間、特別な感情を抱いたのを俺は直ぐに理解した。
だからあいつを俺達の仲間へと引き入れた。
無論問答無用で協力をしてくれたよ。
愛しい姫へ少しでも覚えて貰いたい一心でね。
だがこれまでの結果可笑しな事に、エルはジークに関してだけ記憶が失われる。
叔母上の症例やこれまでファーレンホルストに誕生したであろう女児の記録とすり合わせても理解の出来ない事が多かった。
今回の様に意識を失えば、彼女は確実に数日から最長半年くらいの記憶が失われてしまう。
現実の記憶よりも空白が次第に多くなっていく。
でもだからと言ってエルが家族や俺達を忘れる事はない。
失われた部分は周囲の者が彼女に不審がらせないようしっかりと、綻びが生じない様に繕えばいいだけ。
なのにジークに関しては滑稽で哀れにすら思える程エルの記憶には残らない。
ほぼ毎回初対面状態。
気付けば何時の頃よりかあいつはエルに対し初めましてを使わなくなった。
その代わり御機嫌よう若しくはこんにちわを使う様になった。
可哀想だとは思うけれどもだ。
所詮はエルの心に残らない存在で、エルの運命の番ではないと思ったよ。
しかしその考えが覆される日が来るとは思わなかった。
そう一週間前の午後――――。
エルの影と言う名の護衛はこの俺が認めた精鋭達。
その影より報告を受け俺は直ぐに動いた。
エルが庭園で消えた……と!!
怒りで身体中の血が沸騰しそうになったけれどもだ。
今はまず先にエルの安全と保護を優先しなければいけない。
俺は直ぐに騎士団全員に指示をすればだ。
自らもエルのお気に入りでもある森へと向かう。
当然の事だが森の前には数名の影達がいた。
何故森の中へ入らない――――と言葉を発しようとしたのだが、影達同様俺自身も森の中へ勿論入ろうとした。
だが何故なのか俺達は森の中へ入れなかった。。
管理された森だけに貴婦人や令嬢達が好む様な可愛らしい小径がだよ。
常ならば見えていると言うか普通に存在している筈。
それが小径は完全に閉ざされ、その代わりとばかりに鬱葱とした木々が生い茂っていた。
まるで外界より途絶しているかのようにね。
無論無理やり立ち入ろうとしたよ。
すると足、いや手で剣で枝を振り払おうとした刹那何かに、そう結界に弾かれる様に飛ばされてしまう。
騎士の魔力では解けないレベルの強固な結界。
直ぐに魔法師長へ連絡をした時だった。
ジークが慌ててやってきたのは……。
俺達同様ジークも拒まれると俺は高を括っていた。
とは言え高を括っている心算はないのだけれどね。
でもエルの記憶からも弾かれているくらいだから当然この結界も同様なのだと思ったのだよ。
これでもジークは将来有望な騎士だから、そこは何としてもエルの救出には役立って貰いたい。
まぁ伝令を飛ばしたから直ぐに魔法師長も飛んで来るだろう。
さすればこの強固な結界は解かれるに違いない。
エルを心配する気持ちは皆同じなのだからと思えばだ。
「って、おいジー……う、嘘だろう!?」
俺が制止する前にジークはエルがいるだろう森へと向かえば難なく中へと入って行った。
まるで結界なんてものが張られてはいないかの様にだ。
勿論直ぐ俺と影達は後を追い掛けたよ。
結界が解かれたのだと思ったからね。
バチっ!!
何故あいつだけ?
俺とジークの一体何が違う。
俺はジークと同じいや、ジークより百日も早くエルと出逢い、そして何よりも大切な存在だと認識していた!!
まぁ生まれたばかりの赤ん坊相手に色々と突っ込まれる覚悟もしていたさ。
奇病や様々なものを丸ごと抱えたままでもいいと思えるくらい、そんなエルを護れるくらい強い人間になりたいと思ったからこそ俺は騎士になったと言うのにだ!!
これが違い……なのか。
わからない。
だがこの場を見た者達は直ぐに父上へこの状況を報告するだろう。
そして……。
でも俺はまだ諦めない。
何故ならエル自身がジークを受け入れるかなんてまだわからないからね。
エル自身が決めたのならば俺はそれに従おう。
それまでは俺からはあいつに何も教えない。
いいだろ。
少しばかり遠回りをさせられたとしても大目に見てくれよ叔父上殿。
だが俺は元来諦めが悪い方なのだよ。
ふふ、これから十分足掻かせて貰うからね。
はぁ、ベルンがこの事を知ればショックを受けて当分の間国へ帰ってこないかもしれない。
何しろあいつはあいつで自由な冒険家と称し、例の奇病の原因を探す為に世界中渡り歩いているのだからな。
失恋が確定した際は、兄弟仲良く飲み明かそうかな。
先ずは結界が解ければ直ぐにエルと、おまけ程度にジークの救出へ向かう事にしようか。
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