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第二章  干渉と発露する力

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「直ぐに侍医が来るでしょう。それまで休んでいて下さい」
「は、はいっ」

 まるで壊れ物を扱う様に私を運んでくれただけではなく、女官達の示す部屋の続き部屋の奥にある寝台へと、お姫様抱っこのままジークヴァルト様はゆっくり寝かせてくれたの。

「ありがとう御座いますじ、シュターデン公爵様」

 いけないいけない。
 思わずジークヴァルト様って言いかけたわ。 
 初対面でいきなりの名前呼びは幾ら何でも失礼過ぎ――――。

「その様な余所余所しい呼び方は是が非ともして欲しくはないですね」
「え?」

 右手で優しく私の頬を撫でられる。
 剣を嗜んでいらっしゃるのかしら。
 ごつごつとした感じがお父様のものとよく似ている。
 あ、でもお父様よりお若いから手の感触はジークヴァルト様の方が滑らかね。

「柔らかい。まるでマシュマロの様ですね」

 何だろう。
 向けられる表情は蕩ける様に甘く、まるで私の事がとても大切で……いやいやジークヴァルト様一体どうしたの⁉
 それだけでなく、次の瞬間見つめられるこちらの心がギュッと鷲掴みされる様な切ない眼差しであり得ない事を懇願された。

「どうかジークと呼んで欲しい私の愛らしい天使よ」

 どきどきどきどき。

「さぁジークと、その可愛らしいサクランボの様な唇で私の名を呼んでくれないでしょうか」

 駄々洩れ過ぎる色気に圧倒される9歳児。

 これって色々と問題があるのではないかしら。
 とは言えこの部屋には私とジークヴァルト様だけではない。
 隅にはちゃんと女官達が控えている。

 ただし何故か空気と化しているみたいだけれど!!

「どうしてジークと呼んでくれないのですか?」

 何だろう。
 絶対にある筈がないのだけれど、ジークヴァルト様の頭に大きな耳がペタンとなり、また腰の辺りに見えるのは大きな尻尾が力なく下がっている?

 可哀想な大型犬みた、い。

 親切に寝台まで運んで下さったものね。
 第一私達は親戚同士。
 お会いするのは今日が初めてだけれど。
 
「じーくさま?」

 今だけだからと思い、本人の望むならと私はそう呼んだ瞬間――――⁉

「ありがとうエル、ネスティーネ嬢。ジークと呼んでくれてこれ程嬉しい事はないです」

 まさかの大感激されてしまった。
 感極まって泣く――――まではなかったけれど、それに近い感じと言うか、エメラルドグリーンの瞳が何かでキラキラと輝きを放っていた。
 
 私は心の中でどうか涙ではありません様に……と思わず願ってしまったわ。
 
 それから数分後王妃様と侍医の先生が来られたの。

 診察の結果は特に問題なし。

 少し疲れが出たのかも……との事だった。
 その後お父様と陛下が扉の前で争う様に入ってこられたりと、何かと騒がしかったけれどもだ。

 今は夕刻にお母様が迎えに来られるのを寝台で休んだ状態で待っているの。
 王妃様は次の公務があるからと女官長に連行されてしまった。
 当然お父様と王陛下もお仕事中。

 ジーク様も騎士団へと戻っていかれた。
 何度も何度も後ろを振り返りながら……ね。
 騎士様だから剣ダコがあんなに沢山あったんだわ。
 
 はぁ、お母様に内緒で王宮へ来てしまったからどうしよう。
 きっと帰ったらフルでお説教だわ。
 お母様とテアのダブルでお説教タイム何て想像するだけで怖過ぎる。

 然も意を決して一人で来たと言うのに、結局その目的も未だ果たしてはいない。

 このまま何もせずに帰るのはダメ。
 だって今日を逃せば一人で王宮へ行くチャンスはきっと来ないと思う。
 そうだから――――。

 私は目的を果たすべく行動を起こす事にしたわ。
 
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