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第二章  干渉と発露する力

14  Sideレオン

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「先日は十日、此度は十四日。意識を失う頻度は益々増えておるではないか。この状況は妹のクレメンティーネの比ではない。一体エルネスティーネの身に何が起こっておるのだ大神官長!!」

「陛下どうか落ち着いて下さいと言うかだ。今大神官長へ八つ当たりしても仕方がないだろう」


 わかっておる、頭ではわかっておるのだ。
 だが幼い娘が苦しむ様を見るのがどうしようもなく辛い。
 伯父であるわしがこの様に辛いのだ。
 父親であるユリアンの辛さは如何ばかりであろう。
 妹のクレメンティーネの時は兄であるにも関わらず、わし自身も幼かったが故何も出来ず、ただ傍で見守るしかなかった。

 だからこそあの時の歯痒い想いは二度としたくはない!!

 また甥のアルフォンスの心情は誰よりも理解出来た。
 何故なら今のアルフォンスの姿は遠い昔のわし自身。

 だが今は違う。
 わしは何も出来なかった子供ではない。
 年齢を重ね大人となり、そうしてこの国の王でもある。
 あの時に出来なかった事を、ティーネに出来なかった分を含めエルには出来得る事をしてやりたい。
 
 

 そうあれは今から九年前、つまりエルが誕生した際にだ。
 わしとユリアンはエルの誕生の喜びも束の間、王宮内の蔵書室の奥にある王族のみしか立ち入る事を許されぬ記録保管庫へと向かった。
 
 目的は我がファーレンホルスト王家にこれまで誕生した女児に関する事。

 エルがまもなく発症するだろう病の治療に役立つヒントはないかと調べたのだ。

 結果は惨敗。

 記録にはわしが先王より伝えられた情報と大差はなかった。
 しかし僅かではあるが得られたものもあった。
 
 それはエルの誕生こそが特異である事実。

 調べる限り我が一族の女児の誕生は約百年前後毎に一人のみ。
 また誕生した女児には呪いと同時にある使命を課せられていた。
 
 我が世界に大災厄を引き起こした大魔女の封じられている祠の前で封呪の儀式を行う。

 そう我が妹のティーネも15歳を迎えた年に行っている。
 ただ何故かその場所は王家にも秘匿されている故に王であるわしも場所は知らぬ。

 場所を知るのはファーレンホルストの女児とその時代に存在する我が国の大神官長のみ。

 それ以外の者が知る事はないし出来ない。
 理由もわからないときている。

 後にその話をティーネにしたのだが、何と封印の儀式の内容だけでなく祠の場所ですら彼女の記憶より失われていた。

 これに関しては記録にもあるのだが、ティーネだけではなくそれまでに存在したであろう女児達も同様であった。
 無論大神官長にも問い質したのだが『煩い!!』と一喝されてしまったのだ。

 『わからない』と記憶を失っている様ではなく『煩い』と申したのである。

 当代の……しか知らぬが、大神官長なる者は普通の人間から見てなんとも不思議な存在なのだ。
 エルの誕生の間際には突如転移をしてきたと言う経緯もある。

 転移は高度な魔法故に自由自在に扱える者は極僅か。

 また基本王家と神殿の仲は余り宜しくはない。
 エルの為にも神殿との関係は良好でありたいとは思うのだ。
 だがあの者はわしよりも年上の女性であり、わしの赤ん坊の頃より大神官長を務めていたと言う女傑。
 あの青灰色の瞳に何もかも見透かされている感じが半端ではない。

 時折大神官長が人ならざるものに見える時……いやいやこれは考え過ぎだろうて。

 兎にも角にもわしはあの大神官長が苦手なのだ。
 そう全ては苦手意識がそう見せているのであろう。
 とは言え――――。

「エルがこれ以上苦しまないよう何か対策はないであろうか」

 苦手云々をほざいている場合ではない。

「陛下、これはまだまだ序章にしかすぎませぬ」
「序章!?」
「大神官長様序章とは一体……」

 冷徹な宰相と称されているユリアンもわしの後を続き大神官長へその続きを促す。
 大神官長は沈痛な面持ちで我らを見つめ二の句を告げる。

「……詳しい事はまだお話は出来ません。ですが例の祠の封印に関係があるのです」
「じゃがあれは例年通り約百年前後に一度封呪の儀式をしているであろう。現にティーネも15の年に儀式を行ったではないか!!」

 ティーネの行った儀式に何か不備が――――。

「原因はクレメンティーネ様では御座いませぬよ」
「では何が原因と……」

「恐らく時の流れ……と言うものでしょう」
「時の、流れ?」
「然様に御座います。何事も全てに永遠は御座いません。始まりがあれば必ず終わりは存在します。それが多分今……なのでしょう」

 始まりが終われば終わり……とはそれでは!?

「で、ではまさか、まさかその為に我が娘が、エルネスティーネが生まれたと⁉」

 そう思ったのはわしだけではなかった。
 父親のユリアンが先に言葉を発しておった。

「まだ確定では御座いません。ただ今、この時代にエルネスティーネがこの世に存在する。それが答えなのかもしれません」
「そんな……」

 ではわしら大人は、男ではエルの為に何か役に立つ事は出来ないのか!!
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