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第二章  干渉と発露する力

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「尊い!! あぁ我が愛しき天使!!」


 はい?
 今物凄く物騒なお言葉が?
 いやいや私ってば到頭とうとう聴覚にも異常をきたしたのかしら。
 何故なら9歳の私とジーク様は初対面、なのに漏れ出た言葉が使って、私の耳は本当に可笑しくなったとしか思えない。
 然もジーク様には愛する女性がいらっしゃる筈なのにどうして私へ、アルお兄様と同じ蕩ける様な優しい笑顔を向けてこられるの?

 もしかして今絶対にあり得ない事態が私の身に起こっている!?

 大きくもご立派なお身体を私の視線に合わすべく床へ跪けばよ。
 ジーク様はゆっくりとお身体を屈められたまま、私の様なお子様の手へそっと、まるで淑女の様に恭しく掬い上げればまさか本当にキスを落とすお心算なのだろうかそれとも――――。

「…………」

 何なのかしら。
 今目の前ではジーク様のものよりも遥かに小さい私の手をぎゅっと握り締められたまま、何故か決して離そうとはせず、だからと言って挨拶のキスを落とす訳でもない。
 なのに私の手より約20㎝程の所で大きなお身体を前傾へ傾けられたままのジーク様のお顔があると言うちょっとした……えーっと今までの経験上私にしてみればこれはかなりな混沌カオスで理解不能状態。

 どうしてジーク様はその体勢のまま固まっておられるのかしら。
 ううん、ただ固まっておられ鵜訳ではないわ。
 静かに、何か物言いたげな切ない眼差しで私を見つめておいでになるの。

 理由なんてわからないわよ。
 でもその憂いを帯びた眼差しが堪らなく私の心をギューッと鷲掴みにするのは何故?
 
 ねぇジーク様、貴方はあの方をお好きでいらっしゃるのでしょう。

 16歳のエルネスティーネと貴方は王命による婚約で、そこに愛情云々何てものはなかった筈。
 なのにどうしてその様な切なくて、悲しくて堪らないと言った様な眼差しで私を見つめるの?
 それともあれは本当に単なる……夢?


 わからない。
 本当にわからないの。
 頭の中が色々なものでぐちゃぐちゃで全く整理が出来ていない。
 とは言えこの状態をどうすればいい?
 
 この永遠にも等しいと思う状況に一条の光……ではなく救いの声が現れたの。

「……ねぇジーク僕の大切な天使に何時まで、そして一体君は何をしているのかな」

 それはもう禍々しい魔王様宜しくと言った具合の真っ黒なオーラを纏うアルお兄様。
 実の妹の私でさえも正直に言って若干引きたくなるくらい壮絶過ぎる程の凍れるお色気むんむんの笑みを湛えたまま、私の腕を掴んでいるだろうジーク様の大きな腕と手ををがっちりとホールドされておりました。

 まぁそれは置いておいて、一応状況的には助かったからアルお兄様には後でお礼を言っておかなきゃ。
 


 でも不思議なの。
 こんな感じやり取りとぬいぐるみを私は以前誰かからプレゼントをされた様な気はするのだけれど……。

 あれは夢、だったのかしら。
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