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第二章  干渉と発露する力

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 温か、い。
 ぽかぽかと温かな陽の光を感じるわ。
 肌に感じる温かさに沈んでいただろう意識がぐんぐん上昇して……。


「あ……」

 そうして目覚めればそこは今までと変わりのない朝。
 ゆっくりと周囲を見回せば見慣れた可愛らしい感じの調度品に、白と金を基調とした可愛らしい天蓋の付いた女の子心を擽る可愛らしい寝台。
 天蓋には真っ白なカーテン、それには小さな小花の刺繍が幾つも施されている。

 全て私のお気に入り。
 
 あぁ無事に元へ戻って?
 
 はい?何が無事に戻ってなのかしら?
 普通に朝が来たから目を覚ましただけでしょ。

 何だか変なの。
 さぁ朝が来たなら起きなきゃね。
 何時までも寝ているとテアが般若様に変身しちゃうわ。
 そうなると私のおやつの量が減ってしま……。

 つらつらとそんな事を思いながら上体を起こそうとしたの。
 すると――――⁉


 な、に?
 何だか物凄く身体が重怠い。
 重怠いなんて生易しいものではないわ。
 何だか身体に頑丈な鎧を着せられているかと思う程、自分の身体なのに思い通りに動かせない。
 
 ううん、全く動かせないのではないわ。
 ただ起き上がるのが凄く辛いだけ。
 身軽が自慢のエルネスティーネ様なのに……。

 これはちょっと、ううんかなりショックだ。

 そんな私がもぞもぞと寝台の上で足掻いているのを察したのはやはりテアだった。

「エル様⁉」

「あ、おは、よう、テア!?」

 な、何このガラガラの声?
 おまけに喉が物凄くカラカラで、言葉が上手く発する事が出来ない。

 一体一晩でどれだけ私干乾びたの⁉

 一晩でこれでは一週間も眠った状態になれば間違いなく私はミイラと化しているわ。
 あぁ生きたミイラ。
 いやいや今はミイラではない!!
 ただ単に喉が渇いているだけ!!
 断じてミイラにはならない。

「だ、大丈夫ですかエル様」

 そう言って私の状態を支えつつ、背に幾つものクッションを差し込み身体のバランスを整えてくれたの。

「喉が渇いているのですね」
「う、ん、冷た、いお、水、飲み、たい」

 出来れば氷沢山入れて欲しい。

「白湯にしましょう」
「冷た、いお水、は?」
「それは後でです。今は身体に優しい白湯にしましょう」

 うぅ残念。
 でもなんだろう何時になくテアが物凄く優しい。
 何時もならもっとそう、お布団と仲良くしている私にはもっと厳しい態度だった筈。
 リリーと一緒に嫌がる私を見て、笑いながら寝台より引き摺り下ろしていた鬼軍曹様なのに。
 
「……エル様。今良からぬ事を考えておられませんでした?」

 考えてない!!
 そんな恐ろしい事を考えたら殺される!!

 重怠い身体を酷使し、ぶんぶんと音が鳴るかと思う程に左右へと、否定の意味を込めてかぶりを振ったわ。
 
「はぁ、今のはなかった事にします。それよりも……」

 テアは頭を無理に振った事で上体のバランスの崩れた私をそっと抱き締める。
 
「……せないで下さい」

「テ、ア?」

 ……の身体が小刻みに震えている?
 どうしたの?
 寒いの?
 今の季節は初夏なんだけれど……。

「ふふ、相変わらず失礼な事ばかり」

 あれ、心の中読まれている!?

「そこがエル様の良い所であり悪い所でもあるのですけれどね」

 ちょっと何気に失礼過ぎよテア。
 白湯を飲んで落ち着いたら思いっきり文句を言うわよ。
 勿論テアが怒らない程度……だけれどね。

 私の身体の位置を整えるとテアは白湯を持ってくると部屋を後にした。
 何時もならリリーか他の誰かがするだろう仕事なのに、テアは私の自称専属侍女だけれど私のお義姉様なのに……。
 
 
 ぽつんと一人になると何だか心細い。
 ううん、それだけではないわ。

 何だろう、何か心の中が変な感じ。
 上手く考えが纏まらないけれど、何かがすっぽりとなくなっている感じが否めない。

 こんな事初め……て?
 うーん初めて、なのかな?
 初めてにしては何となく既視感みたいな感じだわ。
 
 変なの。
 私が変なのか、それとも周りが変なのかそれすらもわからない。
 何時の日かこの感じがすっきりするのかしら。
 だとすればなるべく早くなって欲しい、な。


 自分の中にある不可解な感覚を持て余していたらテアの持ってきた白湯と一緒にお父様とお母様、アル兄様まで何だろう。

 物凄く感極まった表情をされて部屋の中へ入ってこられたわ。
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